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【編集部注】仕様については関連記事をご覧ください。
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●親しみやすいが厚手で質感に欠けるボディ
本機の最大の特徴は、やはりそのデザインにある。もともとオリンパスは、コンパクトカメラの世界で“名機”と呼ばれる数多くのモデルを世に送り出しているメーカーだ。しかも、現在のCAMEDIAシリーズは初代の「C-400」シリーズや高画素モデルの走りとなった「C-800L」の時代から一貫して、コンパクトカメラ風デザインをベースとしたデジタルカメラを送り出してきた。これは、一般のカメラユーザーが違和感なく扱えるようにと配慮した結果といえる。
その意味で今回の「C-900 ZOOM」は、同社の大ヒットシリーズである「μ(ミュー)シリーズ」系列の流麗なデザインを大胆に採用したモデルであり、コンパクトカメラ風デザインを追求してきた同社にとっては、大きな転機となるモデルといえる。
実際、本機は同社のミューズームと見間違えるほど似通ったデザインコンセプトに仕上がっており、この外観を見ただけでも食指が動くという人もいることだろう。また、デザインとしての完成度という点でも、他社のライバル機を含めて、頭ひとつ抜きんでた完成度を備えたモデルといえる。
最初に見た写真ではボディーの質感も上々で、なかなか高級感のある仕上がりとなっているように見えた。
しかし、実機を手にし、冷静に見てみると、写真で見たときほどの高級感が感じられず、どことなく質感に欠ける部分がある。9万円近いモデルであることを考えると、安っぽい感じすらする。これはなかなか説明が難しいのだが、おそらく、素材があまりにプラスチックぽい感じで、表面処理もややきめが粗く、ぎらぎらした感じなのが原因と思われる。また、ボディー前面のレンズカバー部分にある金色の小さな指掛かり(?)部分が金ピカに光っている点もマイナス要素といえる。デザイン的なまとまり感はあるのに、このような部分で損をしているのは、実に残念だ。
また、実機を見ると、意外なほど厚みがある。これは、3倍ズームを搭載していることもあるが、そのレンズの真後ろに厚みのある液晶モニタを配置した結果といえる。これはスペース効率から考えると不利なレイアウトではあるが、カメラとしての使いやすさという点では高く評価できる部分でもある。
つまり、撮影レンズと液晶モニタ、さらに光学式ファインダーまでもが、直線上に配置されているため、ファインダーで見たときと、実際に撮影される画像との視差がきわめて少なく、違和感のない撮影ができるわけだ。確かにカメラの厚みという点では不利だが、あえて実際の使いやすさを優先させたものであり、個人的にはとても好感が持てる。もちろん、もっと厚みが薄いに越したことはないわけだが……。
また、レンズをカメラの端ではなく、中央よりに配置したことで、普通のコンパクトカメラと同じような自然なホールディングができる点も高く評価できる。とくに、実効感度が低めで、カメラブレの影響を受けやすい1/3インチクラスの130万画素モデルだけに、この安定したあるホールド感は実際の写りに大きく影響する好要素といえる。
●やや疑問が残る手動ポップアップ式ストロボ
CAMEDIAの3桁シリーズとしては三世代目にあたるモデルだけに、カメラとしてのまとまりはなかなか。
日常的にフルオートで撮影するときの操作性はとても良好だ。普段の撮影操作は、レンズカバー兼用のメインスイッチを開くだけでOKという簡単さ。カバーを開くと自動的に沈胴式のレンズがせり出してきて、約4秒で撮影準備が整う。この起動時間は、数値的に見るとライバル機と同等か、やや早めだが、レンズがせり出すときの動きが結構遅く感じられるのが残念。これは同社のミューズームなどに比べると、かなりのんびりしたもので、軽快感をややスポイルしている。
なお、起動時は、液晶モニタがOFFになっており、ストロボもOFFになっている。
【手動ポップアップ式ストロボ】 |
●明るくクリアなファインダー
一方、本機は光学式ファインダーがメインという仕様のため、今回もメインスイッチONと同時に液晶モニタは点灯せず、点灯させるような設定機能もない。もちろん、モニタ表示ボタンひとつで、簡単に点灯させることができ、マクロやデジタルズームモードのように液晶モニタが不可欠なモードでは自動点灯するので、さほど気にならないケースも多いかもしれないが、やはり液晶モニタ派にとっては、起動とともに常時点灯させるモードも欲しいところだ。
ファインダーの見え味は、光学式、液晶ともに良好。もともと、同社はカメラメーカーだけにファインダーにはこだわりがあり、CAMEDIAシリーズの光学ファインダーも初期から実像式のものを採用しており、見え味は良かった。もちろん、本機も明るくクリアで気持ちのいいものに仕上がっている。また、視度調整機能も内蔵しているため、近視や遠視気味の人でも、シャープな視野が得られるように配慮されている点でも好感が持てる。
ただ、光学ファインダーがメインのモデルであれば、やはり近距離撮影時のパララックス(視差)補正マークが欲しいところ。また、できれば、もう少し視野も大きく(ファインダー倍率を高く)して欲しい。
液晶モニタは2インチの低温ポリシリコンTFTを採用している。もちろん、撮影時に液晶ファインダーとして利用できる。こちらも見え味は良く、表示レスポンスが高速なのはもちろん、明るい屋外での視認性も比較的良好だ。
●やや煩雑だがよく考えられた操作性
本機は従来のC-800系列のモデルに比べて、詳細な機能設定ができるようになり、基本的な操作感も向上している。
前記の通り、普段はレンズカバーを開くだけで簡単に撮影できるうえ、カメラ上部にはシャッターボタンとズームレバーとモード表示用液晶しかないという、とてもシンプルなものとなっている。そのため、不用意な操作ミスが少なく、誰でも気軽に使える点に好感が持てる。
一方、細かな操作ボタンは、すべてボディ背面に集約されている。また、基本的に、撮影・再生の各モードごとに、ひとつのボタンに対してひとつの機能が割り当てられている点も、従来機と同様だ。
しかし、本機では機能が増えた分だけ、ボタンの数が多くなり、結構煩雑な印象を受ける。しかも、機能表示のほとんどがアイコンになっており、パッと見ただけでは、どれが何の機能なのかわかりにくい部分があるのも気になるところ。この表示方法なら国内向けと輸出向けを別々に作る必要がないというメリットもあるが、取扱説明書を一読しないとわかりにくい点はあまり感心しない。
このほか、連写、マクロ、デジタルズーム、パノラマ撮影のモード切り替えが同じボタンに割り当てられており、それが★マークのアイコンになっている点も一考を要する。
【ボタンが配置された背面部】 |
【背面部拡大】 |
一方、操作面で大幅に改良された部分もある。なかでも感心したのが、撮影から再生モードへの切り替えと、拡大表示機能だ。
これまでのC-840L系モデルでは、撮影中に、撮影した画像を液晶上で確認するためには、一度レンズカバーを閉じてカメラをOFFにしたあとに、背面のボタンを押して再生モードとしてカメラを再起動させる必要があった。
しかし本機では、撮影モードの状態で、液晶モニタ表示ボタンをダブルクリックするだけで、即座に再生モードに切り替わる機能が盛り込まれている。しかも、一度再生モードに入って画像を確認したあとは、シャッターボタンを押すだけで、簡単に撮影モードに戻ることができる。この機能の便利さはそうとうなもので、一度これに慣れてしまうと、従来機を使う気がしなくなるほど。特許や実用新案が絡むかもしれないが、このシームレスな操作性を、ぜひとも他機種でも実現して欲しいものだ。
このほか、撮影モードでは、ホワイトバランスの固定モード、画面中心部を中心に露出が決定されるスポット測光、非圧縮のTIFFファイルでの記録といった新モードが追加されている。また、詳細設定ボタンを押すと、最初に使用頻度の高い露出補正モードが表示される点も好ましい。
また、再生モードでは、撮影画像のピントやブレの確認に便利な、画像の拡大表示モードが同社モデルとしては初めて採用されている。しかも、画像再生中にズームレバーを動かすだけの簡単な操作で拡大することができるなど、操作性もいい。
さらに、画像の再生時に割り込み処理ができる点も便利だ。従来機では前のコマの表示が完全に終了しないと、次のコマの表示が始まらなかったわけだが、本機では再生途中(画像が上から下へ順次表示している最中)でも、コマ送りボタンを押すことで、そのコマ全部が表示される前に、次のコマの表示が始めるもの。そのため、数コマ先の画像を表示したいときには、コマ送りボタンをその数だけ押せば、即座にそのコマの表示が始まるわけだ。このあたりの改良はあまり目立たないが、実際に使ってみると便利なものといえる。
【露出補正】 |
【ホワイトバランス固定モード】 |
オリンパスの最新モデルは総じて、起動、記録時間ともに短く軽快だが、本機もきちんとその流れを汲んだものとなっている。
前記の通り、レンズカバーを開いてから撮影できるまでの起動時間は4秒。さらに、画像の記録時間はSXGAサイズの標準モードであるHQモードで約4秒、JPEG圧縮率が低い画質優先のSHQモードでも約5秒と、実用十分な速度を実現している。
もっとも、C-1400XLのような大容量バッファメモリを搭載したモデルに比べると、待ち時間が長く、できれば同機並みの軽快さが欲しい面もある。もちろん、この点はコストにモロに響くだけに、この価格帯モデルには搭載しにくいわけだが、カメラの印象を大きく左右する点だけに、ぜひ次機種では搭載を検討して欲しいところだ。
なお、今回新設された非圧縮モードでは、カードに書き込むデータ量が4MB強と巨大になるため、記録時間も30秒前後とかなりの時間を要した。
一般撮影 |
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●ワンランクアップした画質
レンズは、デジタルカメラ用に光学系自体を新たに開発したという、マルチバリエーター式の光学3倍ズームを搭載。画角は35mmカメラ換算で35~105mm相当で、明るさはF2.8~4.4と明るい。また、解像度もメーカー公称値では、画面中心でミリ200本と高く、数値的には1/2.7インチの130万画素CCDの性能を引き出せるだけの解像度を備えている。
また、実際の写りに大きな影響を与える測光系も進化している。従来は画面中央部を重点的に測光するタイプだったが、本機では画面内の光量バランスを考慮し、その条件にあった露出設定となる「デジタルESP測光」を採用している。
CCDは基本的に従来と同じ1/2.7インチ131万画素タイプだが、実際には実効感度が向上した改良型を搭載しているという。
画質は従来のC-840Lよりもワンランク向上している。とくに、解像度は、1/3インチ130万画素クラスではトップレベルの実力といえる。また、C-840Lに見られた画面周辺部のレンズ性能の低下が感じられなくなり、画面全域で良質な画像が得られるようになった。
色再現性も向上しており、C-840Lよりもわずかに彩度が高めになり、やや見栄えのする感じになっている。とはいえ、補色系CCDを搭載したモデルだけに、原色系CCD搭載機のようなピュアで透明感のある色調ではなく、若干地味な印象を受ける。もちろん、肌色などはなかなか自然な感じに仕上がるのだが、どうしてもグリーンやブルー系が濁りがちになる点が、個人的には気になった。
また、階調の再現性もなかなか良好。C-840Lではハイライトの白飛びを極端に抑えた結果、全体に眠い感じの画像になるケースがあったわけだが、C-900 ZOOMではそのような傾向が改善されており、適度にメリハリのあるものに仕上がっている。また、本機では露出決定がより的確になったことで、実質的な階調性が向上している点も見逃せない。
オートホワイトバランスは、なかなか的確で、日常的なシーンで違和感のある色再現になるケースは少なかった。もちろん、本機ではデーライトやタングステン、蛍光灯など、主だった光源にホワイトバランスを固定できる機能が追加されているため、オートで厳しい条件下での撮影でも安心だった。
このほか、AFの測距速度が早くなっており、測距時の機械音もC-840Lに比べ静かになっている。これはピントを合わせる方式が、レンズ全体を動かすタイプから、レンズ光学系の一部だけを動かすタイプに変更されたことが大きな要員であり、ある意味では副次的な改良点ともいえる。
一般撮影 |
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人物撮影 |
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【蛍光灯下自然光撮影】 |
【ストロボ撮影】 |
●この冬、一番の“妥協”モデル!?
今回の「C-900 ZOOM」の特徴を一言でいうと、“誰もが違和感なく使えるデジタルカメラ”といえる。実際に本機を使ってみると、デザイン、操作感、機能、画質といった各要素がうまくバランスしており、なかなか使いやすいモデルに仕上がっている点に感心する。
もっとも、大きな欠点はないものの、まだ普通のコンパクトカメラよりも一回り大きく、価格も89,800円と気軽に購入できるレベルではない。また、外観の質感ももうワンランクアップしたいところだし、できれば大容量バッファによる軽快連写も実現して欲しいなど、要望点はまだまだ山ほどある。
とはいえ、残念ながら現時点の、この価格帯のモデルとしては、適当な“妥協点”といえる。その意味で本機は、この冬メインとなる130万画素3倍ズームクラスを選ぶときの、最有力候補のひとつといえるだろう。
ぜひ、次機種では、一回りコンパクトで、さらに軽快で、高い質感を備えた、手頃な価格で、より完成度の高いモデルの登場を大いに期待したい!
一般撮影 |
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マクロ撮影 |
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画角比較 |
定点撮影 |
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【ワイド端】 |
【テレ端】 |
【ワイド端】 |
【テレ端】 |
□オリンパス光学工業のホームページ
http://www.olympus.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.olympus.co.jp/LineUp/Digicamera/c900z.html
□関連記事
【'98年9月10日】「オリンパス、マニュアル機能を充実させたC-1400XLほか」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980910/olym.htm
デジタルカメラ関連記事インデックス
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/digicame/dindex.htm
■注意■
('98年10月30日)
[Reported by 山田久美夫]