プロカメラマン山田久美夫の

三洋電機 VPC-Z400EX(DSC-SX1Z)
フォトキナ現地実写レポート


VPC-Z400EX」(日本名DSC-SX1Z)  三洋電機は今回のフォトキナで、同社初の130万画素3倍ズームモデル「VPC-Z400EX」(日本名DSC-SX1Z)を発表した。幸い、同機を借り出すことができたので、フォトキナ現地での実写レポートをお届けしよう。
 このモデルは、21日に発表された「DSC-SX1Z」の欧州仕様だが、画質や機能面ではほぼ日本仕様と変わらないことから、今回の実写結果は「DSC-SX1Z」と同等という。仕様などについては関連記事を参照されたい。

 まず、最初に見たときに思ったは、結構厚みがあってズングリとしたモデルだということ。しかし、実際に手にしてみると、見た目よりも軽く、グリップ感も良好なため、さほど大きい感じはしなかった。また、外装がマグネシウム合金でできているためとても独特な質感があり、高級感もある。また、欧州仕様の場合、外観のカラーリングがベージュ系であり、国内仕様のブラック仕上げよりもスマートな感じだ。



●操作しやすいコンパクト機風デザイン

VPC-Z400EX」(日本名DSC-SX1Z)  基本デザインは、コンパクトカメラ風のもので、この点では従来からのマルチーズの流れを汲んだものとなっている。そのため、使用感も普通のカメラに近い。レンズがボディーの中央よりにあるのも安心感がある。
 レンズは光学式3倍ズーム。それだけに、本来はかなり全長が長くなるわけだが、本機は携帯時にレンズがボディ内に収まる沈胴式を採用することで、コンパクトカメラ風デザインを成立させている。メインスイッチを撮影モードにすると、レンズが前方に繰り出されるわけだが、鏡胴部が意外に細いため、さほど違和感はない。また、繰り出された状態では、指で押してみると、繰り出された部分が簡単に凹むようになっており、レンズに無理な力がかからないのもいい。
 もっとも、携帯時でもレンズが剥き出しなので、レンズが汚れやすい点はやや気になった。

 操作性はなかなか良好。基本的には、ボディ上面のメインスイッチを撮影モードにするだけで、撮影できる。起動時間も約3秒程度と早い。画像の記録時間は標準的なSHi2モードで約5秒と必要十分なレベル。もっとも、圧縮率の少ないSHi1モードでは記録時間はかなり長くなる。

一般撮影 一般撮影 一般撮影

●日中でも見やすい採光式液晶

VPC-Z400EX」(日本名DSC-SX1Z)  本機の特徴として、液晶モニタのバックライトに、外光を取り込める点があげられる。これに似た機能はすでにソニーの新型デジタルマビカ「MVC-FD71」で採用されているが、本機の場合には外光を取り込むモードに切り替えると、液晶のバックライトが消える点がデジタルマビカとの相違点だ。つまり、ソニーは外光取り込みをバックライトの補助として使っているのに対して、本機ではバックライトの消費電力を抑えることで省エネ化も図っているわけだ。
 実際に撮影してみると、日中の屋外で太陽光が直射しているケースなど、バックライトが外光に負けてしまい液晶が見えなくなるシーンでの効果は絶大。なにしろ、外光を取り込んだ瞬間に液晶表示がパッと明るくなり、屋内で液晶モニタを見ているようなクリアな表示になる。しかし、これは液晶上部の外光取り込み口が明るい方向(空や太陽など)に向いているときに限られる。日中の横位置撮影には威力を発揮するが、縦位置撮影では取り込み口の方向によって、かなり急激に明るさが変化するケースもあった。また、外光を取り込むと液晶モニタの色調がややグリーン寄りになる点も気になる。できれば、外光を取り込んだ状態でも液晶のバックライトを点灯しておけるモードもほしい。
 いっぽう、省エネという点では結構威力があるようで、屋外で外光を取り込むモードを積極的に利用したところ、単三型のニッケル水素電池で、約200枚程度の撮影を楽にこなすことができた。
 本機は光学式ファインダも装備しており、見え味もクリアでシャープ。そのため、液晶表示をOFFにし、光学ファインダをメインに使っても、使用感は軽快だ。

一般撮影 一般撮影

●撮影意図を生かせる便利で充実したマニュアル機能

 本機の大きな魅力として、撮影モードがとても充実している点があげられる。しかも、通常のオート撮影モードから、自分で設定したモードに瞬時に切り替えることができる点は実に便利だ。
 マニュアル的な撮影モードとしては、露出補正はもちろん、簡単な絞り優先AE機能やカラーバランスのマニュアル設定機能なども装備している。
 まず、絞り優先AEというのは、レンズの絞りを開いて撮影したり、絞って撮影するもので、それによりピントの合う範囲が変化するもの。つまり、絞りを開く(Open)にすれば、ピントの合う範囲が狭くなり、被写体の全体がボケて写り、立体感が出る。また、絞りを絞れば(Close)、ピントの合う範囲が広くなり、前景から背景までピントのあったシャープな写りになる。もちろん、カメラ側はこれらの絞り設定にあわせてシャッター速度を自動制御してくれるので、カメラの調整範囲を超えない限り露出面での心配はないわけだ。
 この機能を有効に生かすことで、従来のパーソナル機では難しかった、ピントの合う範囲(被写界深度)を生かした作品作りができるわけだ。実際に撮影してみても、その効果は予想以上に大きく、一眼レフなどで被写界深度の概念や使い方がわかっているユーザーにとっては、実に魅力的な機能といえる。

【絞り優先】
【Program】
【Open】
【Close】

 また、ホワイトバランスの設定機能では、従来のような光源別の設定機能に加えて、ビデオカメラのように白紙やグレーボードを使って正確にカラーバランスを調整する機能も装備している。操作自体はやや面倒だが、色再現の正確さという点ではきわめて効果的な機能といえる。むしろ、この機能がこれまでのモデルで採用されなかったのが不思議なほど。
 さらに、これら露出補正やホワイトバランス、絞り優先AEといったマニュアル設定内容は、カメラ側でまとめて保持されている。そのため、撮影モードをオートからマニュアルに切り替えるだけで、前回使用した設定内容で撮影ができる点も便利だ。

【ホワイトバランス】
【Auto】
【Day】

●130万画素クラストップレベルの写り

マクロモード
【マクロモード】
 実写の結果は十分に良好。まず、感心するのは自然でしかも適度に見栄えのするバランスのいい色再現性。今回はドイツでの試写であり、日本とは光線や空気感が異なるわけだが、それでもその再現性のよさは十分に感じ取れた。また、解像度は1/2.7インチ 130万画素CCD搭載機のなかでも高い部類。輪郭の立ったシャープさではないが、適度な立体感を感じさせる自然な印象の写りといえる。
 また、このクラスのモデルで問題になる実効感度の低さもさほど感じられず、比較的ブレによる失敗が少ない点も好感が持てる。

●バランスよく、使いやすいオススメモデル

 残念ながら今回は、本機のウリである特殊な画像補間ソフト「Agfa PhotoGenie」の効果を試すことができなかったが、本機はカメラ単体としてみても、十分に完成度の高い、バランスのいいモデルといえる。
 正直なところ、きわめて突出した特徴があるわけではないが、痒いところに手が届く、細部まで心配りがゆきとどいたモデルという印象だ。これでボディがもう少し薄くなれば、より魅力的なモデルになるのだが、このあたりは次期モデルへの期待としておこう。

□フォトキナのホームページ(英文)
http://www.icia.org/photokina/photokina.html
□関連記事
【9月21日】「三洋、光学3倍ズーム搭載の131万画素デジタルカメラ」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980921/sanyo.htm
【9月18日】「フォトキナ初日レポート『プリンタ内蔵デジカメ、フィルム型デジタルアダプタ』」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980918/p_kina2.htm
デジタルカメラ関連記事インデックス
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/digicame/dindex.htm

■注意■

('98年9月28日)

[Reported by 山田久美夫]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp