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Windows CE版ノート「ジュピター」が来月登場!?


●ついに、Windows CE版ノート「Jupiter」がお目見えか?

 長いことウワサだけだった、Windows CEベースのサブノート「Jupiter(ジュピター:コード名)」が、いよいよ姿を現わすらしい。「Microsoft to debut higher profile WinCE on Oct. 12」(InfoWorld,9/21)によると、JupiterとJupiterをサポートする新バージョンのWindows CEは、10月12日から米国デンバーで開催される、Microsoftのソフト開発者向けカンファレンス「Professional Developers Conference(PDC)」で発表されるという。また、Microsoftの発表に合わせて、Compaq Computer、富士通、Hewlett-Packard、IBM、LG Electronics、NEC、Philips、シャープなどが実際の製品を出すという。

 Jupiterに関しては、これまでにも何度も出るというウワサが流れたため、いよいよというより、ようやくといった感が強い。また、あんまり何度もニュースになっているので、仕様も結構細かく伝わっている。たとえば、「Jupiter lures chip makers」(Electronic Buyer's News,9/28)によると、Jupiterデバイスのサイズは幅10インチ(25.40cm)、奥行き7インチ(17.78cm)と、ちょうどB5ノート程度。厚みは1インチ(2.54cm)で800×600ドット液晶ディスプレイを搭載し、重さは約1kgだという。これなら、別にWindowsのサブノート/ミニノートとそんなに変わらないと思うかも知れないが、バッテリ駆動時間が違う。ハードディスクや高速MPU、大量のDRAMといった電力大食いデバイスを持たないため、バッテリは6~8時間は保つと言われている。でも、売れるだろうか?

●今度は太陽系シリーズだ

 再来週は、このPDCのおかげで、久しぶりにMicrosoft関連ニュースの洪水になりそうだ。なかでも注目されているのは、Windows NT 5.0の進行状況や、OS製品の将来計画。これに関して、秀抜な記事は「Will NT 5.0 debut early?」(PC WEEK,9/21)だ。この記事では、Windows NT 5.0のデビューが来春に早まるかも知れないという情報を伝えるほか、Windows関連のコード名を山のように紹介している。たとえば、「Windows NT 5.0 Service Pack 1」は「Asteroid(アステロイド:小惑星帯)」で、「Windows NT 6.0」は「Janus(木星)」、そしてウワサの「Windows NT 6.0 Consumer」が「Neptune(海王星)」といった具合だ。この記事に限らず、PC WEEKの記事には、Microsoftのコード名がふんだんに登場する。このあたりのコード名も先月くらいから報じ始めていた。しかし、地球の都市名シリーズ(Windows 98=Memphis:メンフィスなど)が終わったら、太陽系というのもちょっとすごいかも知れない。

 Windows NT 5.0が早まるのではというニュースはほかにも流れている。「Microsoft Weighs Split NT 5.0 Release」(Computer Reseller News,9/21)によると、MicrosoftはWindows NT 5.0のWorkstation版だけを先にリリースする可能性があるという。これは、Microsoftに近いある会社からの情報で、Microsoftは、OEM先にこのアイデアを非公式に伝えているそうだ。確かに、Windows NT 5.0でやっかいなのはServer版の方だから、このアイデアもわからないわけではない。しかし、Windows NT 5.0の売り物のTCO削減機能の多くは、Windows NT 5.0 Serverに依存しているのだから、あまり意味はないのでは?

●ついにサブ400ドルがデスクトップPCの激戦区に!?

 日本のPCも、最近はローエンドの実売価格が15万円以下にまで落ちてきた。しかし、米国ではもっとアグレッシブな価格下落が続いている。コンシューマ市場に力を入れているトップPCメーカーは、年内にローエンドの戦場をサブ600ドル(600ドル以下)にまで引き下げるつもりらしい。「Top Tier Eyes Sub-$600 PC」(Computer Retail Week,9/25)によると、CompaqがCyrix MII 300MHzベースのシステムを11月に599ドルで出すことを検討しており、IBMもK6 266MHzベースで599ドルのシステムを開発中だという。どちらも、599ドルで先行したPackard Bellを追う構えだ。この記事の通りの展開になれば、'97年頭に999ドルで始まったサブ1,000ドルPC戦争は、799ドルを経て、いよいよ599ドルラインにまで降下することになる。

 しかし、下には下がいる。通販系の新興メーカーや中小メーカーは、さらにアグレッシブな価格攻勢をしかけている。いよいよ399ドルのマシンが小売店で売られるようになりそうだ。「New Venture Aims Sub-$500 PCs at Retail」(Computer Retail Week,9/18)によると、韓国のベンチャーemachinesが、Cyrix MII 266MHzベースのマシンを399ドル(50ドルのキャッシュバック)で出すらしい。流通コストの低い通販メーカーではすでに399ドルという価格設定が登場しており、サブ400ドルの戦いが本格化しそうだ。

●AMDは380MHzと400MHzを10月に発表?

 PCの低価格化に拍車をかけているのは、言うまでもなく互換MPUメーカーの活発な動き。「AMD Plans Deep K6-2 Cuts; New 380MHz, 400MHz Due」(Computer Reseller News,9/24)の報道では、AMDは、10月26日に、K6-2の380MHz版と400MHz版を発表するという。380MHzという半端な数字は、AMD独自のベースクロック95MHzによるもの。本命は400MHzだが、最初は400MHzのボリュームが確保できないので380MHzも設定したのかも知れない。また、新MPUの発表にともないK6-2 333MHzを95ドルにするなど、アグレッシブな価格引き下げを行なうらしい。

 一方、National Semiconductorは、子会社Cyrix設計のMPUに関するIBMとの製造パートナー契約を終了すると発表した。これまでIBMは、工場を持たなかったCyrixのためにMPUを製造する一方、その見返りとして6x86MXなどをCyrixが製造するのと同数販売する権利などを持っていた。しかし、これでIBMは自社で売ることができるx86互換MPUを失ってしまったことになる。もっとも、「National severs ties between Cyrix and IBM」(Electronic Buyer's News,9/24)などが伝えている通り、この話はしばらく前からウワサに上っており、意外とは受け止められていないようだ。また、National Semiconductorにしてみれば、自社工場の0.25ミクロンラインが運転を始めたなら、他社に製造を委託する必要性は低い。また、こういう展開なら、National Semiconductorが、Cyrixの次期MPU「Cayenne(カイエン:コード名)」コアの製品をなかなか出さなかった理由も説明がつく。IBMとの契約をどうせ打ち切るなら、Cayenneコア製品は自社のプロセスだけに合わせて物理設計をした方がロスが少ないと判断した、ということではないだろうか。

●IntelはXeonで思わぬ苦戦か?

 対するIntelは、年内の主要製品の発表を終えて、とりあえず一段落といった雰囲気。今年残っているのは、ソケット版Celeronプロセッサと、来月発表とウワサされているPentium II Xeonプロセッサくらいのもの。ところが、そのXeonで意外な苦戦をしているというニュースが。「Xeon Freeze」(Computer Reseller News,9/21)によると、Intelは、Pentium II Xeonの低い歩留まりと、4ウェイ(4個のMPUでマルチプロセッサ構成をする)時のトラブルで苦しんでいるという。この記事では、注文したXeonが4分の1しか納入できないと言われたという、OEMメーカーの話を伝えている。また、情報筋からとして、IntelはXeon 400MHzで、4ウェイで動くものと動かないものを手作業でより分けているからなかなか進まないというコメントも報じている。なんにせよ、あれだけ高速なMPUを、4ウェイで動かすのはなかなか大変そうだ。

●MPU製造はますますスリリングに

 しかし、半導体メーカーにとって本当の試練の時は、これからになりそうだ。というのは、CMOS系半導体は、これまで10年ほとんど基礎技術が変わらなかった。ところが、来年から始まる0.18ミクロンプロセス以降は、製造技術自体が、激しい技術革新の波にもまれるからだ。こう解説するのは「IC Manufacturing Complexity Increases」(Microprocessor Report,9/14)。この記事によると、今後は、銅配線、低比誘電率層間絶縁膜、silicon-on-insulater(SOI)などの新技術をどんどん導入しないと、ムーアの法則通りの性能向上が見込めなくなるという。そのため、0.18ミクロン以降は、技術開発のコストが大きくなる一方、量産立ち上げがすんなり行かないというリスクも大きくなる。つまり、MPU製造は、ますます掛け金がつり上がり、スリリングなゲームになって行くらしい。

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('98年9月28日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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