先月末に行なわれたソニーの「メモリースティック」の発表会のもう一つの目玉は、参考出品されたズームレンズ搭載の本格派デジタルスチルカメラだった。この魅力的な一眼レフデジタルカメラについて山田久美夫氏のレポートをお届けする。
(編集部)
●5倍ズーム付き本格派デジタルカメラを参考出品
今回のメモリースティックの発表会で気になったのは、参考出品された新型デジタルスチルカメラだった。これはハイクラスのアマチュア層をターゲットに新開発したという、かなりの意欲作だと思われる。とはいっても、参考出品だけに、詳しいスペックについては、一切ノーコメントだった。
この手の参考出品モノの場合、完全なモックアップ状態で、アクリル越しに見るだけというケースが多い。今回も最初は「触れてはいけないのかなあ~」と思って、外観写真を撮っていると「どうぞ、手にとってご覧になってください」といわれ、少々ビックリ。
しかも、手にしてみると、単なるモックではなく、ファインダの光学系までシッカリと作られている動作品に近いもの。感覚的には、正式発表までさほど時間がかからないレベルのものという感じだ。
もちろん、正式名や型番なども公開されておらず、ボディ側面には型番のインスタントレタリングを削った形跡もあった。
PCMCIA Type2の |
いっけん交換式に見えるが |
ボディ側面には諸機能を |
さて、今回の出展で外見上分かる範囲のことをまとめると下記のようになる。
まず、デザインは写真で分かるように、どことなく「オリンパス C-1400L」を連想させるようなスタイル。もちろん、ソニーのオリジナル設計。サイズはC-1400Lよりも大きめで、どちらかというと発売が延期された「キヤノン PowerShot Pro70」に近いもの。また、試作レベルとはいえ、質感もよく、高級感もある。もっとも、業務用のデジタルカメラ「DKC-D5PRO」を手掛けたスタッフが開発しただけに、パーソナル機として見ると、あまりに実用本意で色気がない点が気になった。
レンズは一見交換式に見えるが固定式で、光学式の5倍ズーム(5.2~26mm)を搭載。ズームも電動式ではなく手動式だ。ピントはオートフォーカスで、マニュアルフォーカスも可能。ファインダは光学式で、ビューファインダ式ではなく、撮影レンズを通過した光をピント版上で確認する一眼レフ的な形式を採用しているようだ。
また、背面には2.5インチ程度の液晶モニタが装備されているが、これは再生用なのか、ファインダとしても利用できるかどうかは不明。
CCDのサイズや画素数は未公開。だが、わざわざメモリースティックではなく、PCMCIA Type2カードを採用しているところを見ると、結構な高画素モデルと推察される。まったくの推測だが、おそらくは145万画素から200万画素クラスのCCDを搭載していると思われる。
また、CCDのサイズはワイド側が5.2mmということから推察すると、2/3インチではなく、1/2インチか、1/3インチタイプということが予想される。もっとも、レンズが異様に大きいことを考えると、レンズ設計上、かなりの高解像度を実現している可能性もあり、比較的小さなCCDを採用している可能性も高い。
機能はかなり充実しているようで、ボディ側面のダイアルで諸機能を簡単に呼び出せるようだ。ダイアル上にはストロボモードのほか、「AE」(露出モード)、「WB」(ホワイトバランス)、「DRIVE」(1コマ撮りと連写の切り替え?)、「QLTY」(JPEG圧縮率?)、「SIZE」(画像サイズ)、「ISO」(実効感度切り替え?)、「USER」(ユーザー設定?)といった文字があり、これらの点を見ても、単なるフルオート志向ではなく、かなり本格的な撮影に対応できるモデルであることが推察される。
このほかにも、シャッターボタン付近には、露出補正とスポット測光(?)専用ボタンがあり、ファインダ部には視度調整機能があるなど、フィルム式の高級機を思わせる仕上がりだ。
このように、今回参考出品されたものは、かなり本格的なモデルであり、正式発表される時期もさほど遠くないものと思われる。もしかすると、9月中旬にドイツで開催される世界最大のカメラショー「フォトキナ」で公開される可能性もある。
もともと同社は、アナログ記録式のマビカを発表した時点から、スチルカメラ市場に参入したいという意志がある。それだけに、本機の登場は、デジタルカメラ時代の到来で、同社が本格的にスチルカメラ市場に参入する意志を明確にアピールしたものとしても注目される。
なにしろ、ソニーは今回のメモリースティックの発表により、メモリカードや各種記録媒体から、カメラ、PC、画像処理システム、プリンタまでのすべてを網羅できる体制となったわけで、今後の展開次第では、かなりドラスティックな動きを見せる可能性もある。ライバルメーカーは戦々恐々だろうが、ユーザーにとっては大いに魅力的な展開になりそうだ。
背面に書き込み禁止の |
接続端子には手で触れない |
メモリースティックの注目すべき点は、従来からの「コンパクトフラッシュ」や「スマートメディア」、「ミニチュアカード」などと比べ、一般ユーザーを強く意識したものに仕上がっている点だ。
実際に現物を手に取ってみた印象としては、CFカードとスマートメディアの中間的な感じで、“スティック”という語感から想像していたものよりはやや大きめだった。色は写真でわかるように、VAIOのイメージカラーである薄手のバイオレットだ。
構造自体は比較的シンプルなものだが、10ピンのコネクタになっている接点部に直接指などが触れないように工夫してあったり、不用意にデータを消去しないようなプロテクト機能もあるなど、メモリカードに対する知識があまりない人でも安心して使えるように考えられている。
今回発表されたものは、容量が4MBと8MBのものだが、現時点では32MBタイプまでは予定に入っているという。また、将来的にはより大容量のものになる可能性もあり、それを見越して、独自のシリアルプロトコルを採用している。これにより将来にわたる互換性を確保している。このあたりは、同じ新規格のメディアであっても、規格がコロコロ変わっているスマートメディアと大きく異なる点といえる。
□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/index-j.html
□関連記事
【7月30日】「ソニー、新記憶媒体『メモリースティック』」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980730/sony1.htm
('98年8月6日)
[Reported by 山田久美夫]