4回目の今日は、今まで解説できなかったWindows NT 5.0の新機能について引き続き紹介しよう。
たとえば、DFSを利用した分散ファイルによるデータベースをDCOMやMTSを利用して別のマシンでハンドリングし、ユーザーインターフェイスはさらに別のマシンのIISで実現するといったように、Windows DNAの分散コンポーネントを利用して、リソースが分散されたネットワークアプリケーションを構築することができるのだ。
また、ネットワークを利用してのアプリケーションのインストールについては、サーバー側でアプリケーションをインストールすると、それがそのままクライアント側に反映される仕組みが実現されるようだ。TechEd 98ではこうしたネットワークインストールに関してのデモが実演された。
また、任意のドライブをディレクトリにマウントし、複数のドライブをひとつのドライブとして扱う機能もサポートされる。さらに、ファイルアクセスのスピードは約20%向上するとアナウンスしていた。
従来のNT4ドメインではPDC(Primary Domain Controller)とBDC(Backup Domain Controller)とで構成するのが一般的で、さらに複数のドメインがある環境では、ドメイン間の信頼関係を結ばなければならなかった。Windows NT 5.0のドメインはこれとは異なり、Active Directoryのサポートによって、DNSのゾーンがWindows NT 5.0のドメインとなる。また、WINSやNetBEUIなどのプロトコルはNT5.0ドメインでは利用されない。つまり、NT4ドメインを完全にWindows NT 5.0のドメインにするためには、莫大な工数がかかることが予想される。
1ドメイン構成の小規模なネットワーク構成ならば移行についてもそれほど問題にはならないかもしれないが、複数のNT4ドメインで構成された大規模なネットワークをNT5.0ドメインに移行するには、非常に大変な作業となるだろう。そもそもドメインの概念が異なってしまうため、ネットワークの再構築が必要になるかもしれない。また、クライアントについても考えなければいけない。今のところWindows 95/98は、NT5.0ドメインのネットワークには参加できない。Windows NT 5.0がリリースされてもこの状況が変わるわけではなく、Windows NT 5.0のドメインに参加するためには、サービスパックなどのなんらかのアドオンが必要になってくるハズだ。つまり、完全にNT5.0ドメインにするためには、サーバの構成だけではなく、クライアントのアップグレード作業が必要だろう。
TechEd 98ではTCOの削減がWindows NT 5.0のもっとも重要な部分だと解説していた。たしかに、Windows NT 5.0を完全に運用できる形に持っていけばTCOを削減することはできるが、現状のNT4ドメインをNT5.0ドメインに移行することを考えるとその部分で莫大な費用がかかる。つまり、企業などではTCOが削減できるというメリットを全面に出してWindows NT 5.0をアピールするというわけにはいかない。
また、ユーザーマネージャ、ドメインマネージャといった管理ツールがMMC(Microsoft Management Console)に変更されてしまうことでも、より多くの費用がかかるだろう。たしかに、ツリービューを採用したMMCは優れたツールかもしれないが、従来の管理ツールとはまったく異なるため、管理者の教育が必要になるだろう。
ただし、NT4ドメインをWindows NT 5.0で運用することもできる。NT4ドメインをWindows NT 5.0で運用するためには「ミックスド・モード(NT4ドメインで運用するモード)」を採用しなければならない。「ミックスド・モード」ならばWindows NT 5.0でNT4ドメインを管理することはできるが、Active DirectoryなどのWindows NT 5.0独自の機能を利用することはできない。はっきり言ってしまえば、「ミックスド・モード」ではWindows NT 5.0にアップグレードする意味はほとんどないと考えられる。しかし、NT4ドメインで利用しているプロトコル(NetBEUI、NetBIOS)やWINSなどは将来のWindowsでは完全になくなり、プロトコルはTCP/IP、名前解決はDynamic DNSに完全に切り替わってしまうため、コストがかかるとしても、早い段階(Windows NT 5.0の時点)での移行が必要になってくるだろう。
('98/8/5)
[Reported by 広野忠敏]