発売前は、Windows 98はWindows 95のような売れ行きを見せることはないだろうというのが大方のアナリストらの予測だった。理由は、Windows 98はWindows 95のマイナーチェンジで、新しいハードウェアを持っている人でないとあまり変化を実感できない、対司法省裁判の関係で、MicrosoftがWindows 95の時のような大々的PRを避けていた、ビジネスユーザーはWindows 98よりWindows NTに移行しつつあるなどだ。
別の調査会社Dataquestも、Windows 98のアップグレード版についてはユーザーの関心は低~中程度との予測を出していた(「GartnerGroup's Dataquest Says Windows 98 to Capture 51 Percent of Operating System Shipments in 1998」)。
PC Dataの調査を伝えた米国のメディアの多くが挙げていたのは、次の2つの理由だ。ひとつはWindows 95が出た3年前よりはるかにパソコンが普及していること。だから、低調との予測のWindows 98がWindows 95と同程度の売れ行きを見せたのはパイの拡大による自然増のようなものというとらえ方だ。それにビジネスユーザーはWindows NTへ移行しても消費者はWindows 98。PC Dataがまとめた小売店での数字は消費者の動向を反映するのでNTの影響は出なかったと考えられる。
もうひとつはMicrosoftがPRを控えても、裁判自体が格好のパブリシティになったという説。連日、新聞やTVが裁判の報道をする中でWindows 98の特徴などを説明してくれた。一般の消費者にとってはMicrosoftが反トラストかどうかよりソフトの出来のほうが身近な問題。だからMicrosoft自体がPRを控えめにしてもWindows 98への関心が高まったというわけだ。
むしろWindows 95でもWindows 98でも、発売したてのOSにすぐにアップグレードするユーザー層は一定しており、すそ野ユーザーでなく彼らが購入したと見るほうが自然だろう。
だが、Windows 95はともかく、彼らが今回の新OSに喜んで飛びついたのかというと、ちょっと怪しいかもしれない。Windows 95はInternet Explorer 4.0(IE4)と相性が悪く、IE4をインストールすると動作がおかしくなるのは有名な話。だから“わかっている”ユーザーが必要に迫られてWindows 98にアップグレードしたことは十分考えられる。
ユーザーは必要だから急いで買っただけで、新しい多くを期待したのでない、だからブームが起きなかった――これがWindows 98の意外な売れ行きの真相なのかもしれない。
[Text by 後藤貴子]