【コラム】


スタパ齋藤

俺とDoCoMo



■俺とDoCoMo

DII HYPER
DoCoMo DII HYPER。800MHz帯デジタルは、このあとの世代の端末から、ハーフレートに切り換えられた
 なんでも日本は世界一携帯電話が普及しちゃった国になっちまったそうだが、なるほど最近では小学生がデジタル携帯電話を使っていたりするから驚く。ランドセルしょった子供が「もしもし。ママ? うん。そう。これから帰る」とかやっている。すげえ。

 俺の場合、初めての携帯電話はTuKaだった。ソニーの(たぶん最初の)端末。5年ほど前だったか、現在に比べるとかなりの金を払って手に入れた。何でTuKaだったかと言うと、TuKaのCMがモックンで、DoCoMoのCMがサザンだったからとかいう、非論理的な理由からだったと思う。

 で、使ったわけだが、なーんかイマイチであった。ポチポチとよく途切れた。そして前回のPHS編よろしく、やっぱり俺の部屋のなかではギリギリ使えるか、あるいは圏外な携帯電話だったのだ。

 結局、しばらくしてキャリアをDoCoMoに変えた。そしたら入る入る。電波入りまくり。しかも月日を追うごとに加速度的に通話可能エリアが広がる。俺の部屋内でも最初はアンテナマークが1~2本だったのに、2ヶ月もすると2~3本となり、さらに半年後にはビシッと3本立つようになった。くぅ~ッさすがNTT、基地局建造パワーが違う!! とNTT DoCoMoを見直したものだった。

 その頃はまだTuKa(1.5GHz帯)でもDoCoMo(800MHz帯)でも、そ~んなには音質の差もなく、TuKaの方がちょっと音いいかも、程度の差だった。DoCoMoもちゃんとフルレートだったのだ。ちなみに、使っていた端末はDII HYPER(三菱)。コレは去年くらいまで使っていた。



■乗り換えなきゃよかったァ~

D203
DoCoMoは'97年秋にフルレート端末を対象として、2万円引きで最新機種に交換できるキャンペーンを実施。写真のD203 HYPERへの乗り換えが9,800円、いちばん高いP203 HYPERで14,800円だった
 で、去年くらいのこと。ウチの近所のDoCoMoショップが装いも新たに新装開店した。おっようやく本格的に始めやがったな、という感じで入ってみると、何だか激安で新機種を売っている。確かこのDII HYPERって10万円くらい出して買ったんだよなァ安くなったよなァ冗談じゃねえよなァと思いつつ、チラシを読んでみると、DII HYPERなどから新機種に乗り換えると、ななな何とたったの1万円ぽっきり(くらいだったと思う)で最新機種に!! これは乗り換えるしかねえ!! でも俺のDII HYPERはフルレート端末。そして新機種はハーフレート端末。でも、激安で最新機種というのにはソソられる。う~んどうしよう。

 今使ってる機種は白ロムにして、新機種を買って、気に入らなかったらまたDII HYPERに電話番号入れてもらおう。そうだそうしよう。そういうコトでいいですか、DoCoMoのお姉さん!!
「機種交換でしたらこのお値段なんですが、交換でないと定価になってしまうんですけど」
 ありゃま。そうですか。ん~。どうしよう。ん~。むむ~。むむむむむ~。むむむむむむ~ッ!!
 というわけで機種交換を選んだ俺がバカだった。ハーフレート端末ってのはココまで音が悪かったのか!! ヴォコーダーかこの電話は!! イヤ~ン。キーッ!! あー失敗したーッ!!

 結局、俺の親愛なるフルレートDoCoMo端末ことDII HYPERは手の届かないところへいっちゃって、糞音の悪い糞ハーフレート糞端末しか糞使えなくなってしまった。なお、手元にやってきた新端末はNTT DoCoMo D203 HYPERの青(三菱)。使い勝手は良かったが、もはやデジタル携帯電話に音質を期待することはできなくなっていた。あ、いや、三菱の端末が良くないんじゃなくて、どこの端末だろうとハーフレート端末だと音と呼べないレベルの音でしか通話できないということである。もちろん、次々に発売されるDoCoMoの携帯電話は全部ハーフレートだ。

 フルレートとハーフレートについて少々ご説明。デジタル携帯電話は、ひとつの周波数帯域を時分割して音声情報を送受信している。つまり、いくつかの回線(音声)をデジタル技術でまとめ、ひとつの周波数で送っている無線なわけだ。で、具体的に3回線をひとつにまとめているのがフルレート。一般の電話回線で使われる周波数帯域に比べると、フルレートでもかなり音が悪く、何と言うか、こもっていてガサガサしがちな音になる。が、携帯電話の普及と電波帯域不足から、ひとつの周波数帯域でより多くの通話をする必要が出てきた。そこで使われたのがハーフレート。具体的には、6回線の通話をひとつにまとめていて、音声データの圧縮率は2倍になっている。JPEG画像の圧縮率が高いほどその画像が荒くなるのと同様に、ハーフレートはフルレートより音が悪い。こもっていてガサガサしがちなどころか、ちょっとアンタ誰ですかみたいにまるで違うイメージの音になってしまうのであった。しくしく。



■音なんかどーでもいいや~

 もうどうすることもできない。俺のデジタル携帯電話の音は良くならない。インターネットを探し回っても、もはやフルレート端末なんかめったに手に入らない。
 なので、俺はかなり強引に、携帯電話の音質を諦めた。ホントはイイ音の携帯電話が欲しいのだが、それでも無理に欲望を抑え込んだという感じである。だってイイ音の端末が手に入って、俺の行動半径内をすべからくカバーしてるキャリアってないんだもーん。

 ちくしょう!! もう音なんかどうだっていい!! 質より量だ!! だからもう一台携帯買ってやるッ!! というわけのわからない精神状態に陥った俺は、使い慣れているからという理由で、色違いのD203 HYPER(グレー)を買った。強引に自分の欲求を抑えたというか、音が悪くなって悲しいという、かわいそうな自分にせめてものプレゼントをしたというか、そんな感じで1台買った気がする。
 考えてみれば、その頃から携帯電話に夢も希望も持たなくなったような気がする。話が通じれば音なんかどーでもいーや、というふうに、無理に、考えるようになった。

D206 N206S
D206 HYPER。約93g、連続待受約320時間。色は写真のクリスタルシルバーの他、マリンブルー、プラチナホワイトの3色 N206S HYPER。約105g、連続待受約280時間。色は写真のエレガントゴールドのほか、エクセレントシルバーがある
 そしてつい最近。久々にDoCoMoショップへ行ったら、また新機種が出ている。フッ、またか。じゃあ買うぜ。ヘッ。と、2台の携帯電話を新機種に乗り換えた。
 今度はD206 HYPER(銀/三菱)と、N206S HYPER(金/NEC)。音は相変わらず最強に悪い。ぐへぇ~。でもまあいいや。端末としては相変わらず三菱の端末が気に入っていたし、とりあえず通話できればいい装置なのである、携帯電話なんか。

 が、N206Sは、ちょっとどうにも気に入らなかった。例えば……、いや、書けば書くほどネガティブになってしまう気がするので書かないが、とにかく、俺の嗜好にマイナス1を掛けたような、まるで俺と合わない端末だったのである。肌に合わない端末を使っていると、ギリギリ我慢できていた音の悪さまでもが強調されてくる。俺は滅入りに滅入った。

 あーもうだめだ。N206Sの方は解約しちゃおう。そうだ、どうせ解約するならD206の方も解約しちゃえ!! そうだそうだ!! もうデジタル携帯電話なんかやめた!! と、速攻でDoCoMoショップへ走った俺であった。



■SH206って、ザウルスと!!

 解約のことだけを考えてDoCoMoショップへ入ったら、やけに混んでいた。8人の順番待ち。しょうがないのでパンフレットというパンフレットを読みまくっていたら、新型端末発見。
 シャープの端末、SH206である。

 シャープの端末と言えば、そうそう、以前、必死で探し回った覚えがある。型番は忘れたが、携帯情報ツールのザウルスの住所録データを転送できちゃうという、ザウルスユーザー必携な感じの携帯電話だ。あの端末さえ手に入れれば、俺のザウルス内のデータをドワーッと転送して、楽勝で膨大な電話番号データを利用できるようになったのだが、結局どこを探しても品切れ&メーカーでは生産完了で、手に入らなかった。
 その後継機種が、SH206だ。し、しかも!! DoCoMoショップのキレイなお姉さんの肩越しに見えるのは、SH206の箱!! ししし、しかもその箱ときたら、3個くらい積まれているではないか!!

 俺は、俺の前に並ぶ8人の順番待ち野郎が誰もSH206を買い求めないように全身全霊を込めて祈った。祈りに祈って祈りまくった。が、祈る必要はなく、8人全員誰もSH206を買わなかった。もちろん俺は、SH206を思いっ切り買った。D206からSH206に乗り換えたのだ。ついでにN206Sを解約した。

 よっしゃァ!! これで俺の最強に強まったザウルス内の住所録全部が携帯電話に転送できる!! しかも携帯電話のボタンをほとんど押さずにだ!!

 で、数日後、ザウルスとSH206を接続するための専用ケーブル(XN-CB10)を手に入れ、ザウルスのデータを携帯電話に転送したら、いきなりDoCoMoの携帯電話がヒジョーに良い装置に見えてきたので、俺はそれまでの苦汁の日々をリセットし、明るく愉快で楽勝なDoCoMoライフのエンジョイを開始したのであった。



■ナイス!! SH206!!

SH206
SH206。重量約96g。連続待受時間が約180時間と、現在のDoCoMo 800MHz帯端末ではノキアNM206の約160時間に次いで短く、一般的にはあまり注目されないかもしれないモデル
 SH206は、DoCoMoの他の206シリーズ端末と、基本的には同等の内容だ。漢字電話帳が使えたり、ショートメールに対応していたり、データ通信ができたり。他の機種と大きく違うのは、まず端末自体がけっこうデカいことと、電話帳にパーソナルデータという付加データを書き込めること。

 端末のデカさは俺にマッチした。俺の手はデカいのだ。また、端末がデカいうえに、フリップタイプなのがいい。俺は顔もデカいので、耳から口までの距離も人一倍ある。なので、通話時には端末のデカさ(長さ)があると便利なのだ。で、SH206は俺の手にも顔にもマッチした大きさがある。俺にとってサイズ的にナイスなのである。Dシリーズ(三菱端末/フリップタイプ)を愛用してきたのもそんなところに理由がある。

 それに加え、フリップしたカバーの先端にマイクが埋め込まれている。確かDII HYPERもそうだったと思うが、とにかく、フリップ部の先っちょにマイクがあると、こちらの言葉が相手に明瞭に伝わる。非フリップタイプのように、雑音が多い場所での通話時にマイク部と口を覆うようにしなくても、十分大きな音量で声を伝えられるのである。わりと些細なことと思うかもしれないが、ハーフレート時代では、これはけっこう重要なことだ。ハーフレートとは言え、送る声のS/N比が高ければ、それなりによい音が伝わる。声の大きさが周囲の騒音の大きさを大きく上回れば、ハーフレートでもけっこうイイ音で通話できるのだ(ってさっきまでハーフレートをあれほどけなしていたとは思えない発言ですな>拙者)。

 電話帳にパーソナルデータを書き込めることは、まあ普通に使った場合はそれほど便利だとは思わない。が、ザウルスからデータを転送するとなると、これは非常に便利だ。

 ザウルスから転送されるデータは、アドレス機能の名前、名前の読み、電話番号、住所の4つだ。SH206のパーソナルデータ部分には、アドレス機能の住所部分が転送される。だから、アドレス機能の住所部分にいろいろなデータを書き込んでおけば、SH206を従来の携帯電話以上に有効に使える。店舗の開店時間や休日、覚え書き、役職、内線番号などを書いておけば、通話時に必要な情報を見られる。これはことのほか便利である。

 なお、SH206に接続できるザウルスは、オプションポート4を持つ機種のみ。また、オプションポート4を持つシャープ製の電子手帳や、WIZなども接続できる。
 あと、SH206の充電器が意外に便利で、壁掛けができる。携帯電話にできそうでできないコトに、壁掛け状態の充電が挙げられるが、シャープの端末では見事にコレができる。またこの充電器は、直接コンセントに挿せるし、電源ケーブルを介してもコンセントに挿せるという、気の利きよう。端末がデカいわりには取り回しがいい感じがする。

 総合的な使い勝手は、かなり良い。俺は実は、J-PHONEのシャープ端末ことDP-203(基本的にはSH206と同じ)も持っているのだが、使い勝手はSH206の方が上だと思う。メニューのまとまり具合もいいし、ボタンのフィーリングもいい。普通に使うにも、使い込むにも、かなりこなれた作りの端末だと思う。これでフルレートで、しかもskymail(J-PHONEの電子メールサービス/J-PHONEについては別の回でご紹介)みたいなサービスが使えたら、俺はSH206を5台くらい買っちゃうんだゼ本当だゼという感じだ。

□NTT DoCoMoホームページ
http://www.nttdocomo.co.jp/

[Text by スタパ齋藤]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp