【コラム】 |
●Microsoft裁判をBusinessWeekが予測
審理開始までの準備に入って、静かになった米Microsoftの裁判だが、BusinessWeekが最新号で、今後の展開について、かなり突っ込んだ予想を行なっている。「MICROSOFT VS. THE FEDS: ODDSMAKERS BET ON BILL」(BusinessWeek,6/29、有料サイト、http://www.businessweek.com/ から検索)によると、司法省にとって最大の障害は、控訴審裁判所と最高裁になるだろうという。というのは、今度裁判が行なわれる連邦地方裁判所と異なり、控訴審裁判所と最高裁は経済活動への介入に関して保守的な考えを持つ判事が多く、Microsoftにとってより有利になりやすいということらしい。
同じくBusinessWeekの「U.S. vs. Microsoft: Sizing Up the Two Game Plans」(BusinessWeek,6/29、有料サイト、http://www.businessweek.com/ から検索)では、Microsoftと司法省の戦略を予測している。Microsoftの戦略は、弁護士に時間を与えるためとWindows 98の売上を伸ばすために、できるだけ長引かせる戦略になるだろうという。またインテグレーションはなんとしても守り抜き、また、この裁判が不利な結果に終わっても、さらに上級の裁判所へ控訴して行くだろうという。一方、司法省の戦略は、Microsoftにプレッシャーをかけつつ、Netscapeを排斥しようとしたというMicrosoftの意図の立証にフォーカスするだろうという。しかし、Windows 98を再デザインさせるような結果ではなく、もっと簡単な救済措置を求める方向で行くのでは、と見ている。
また、「The Road Ahead」(BusinessWeek,6/29、有料サイト、http://www.businessweek.com/ から検索)では、今後の裁判のスケジュールも予測している。それによると、連邦地裁での判決は、おそらく今年秋に出るだろうが、控訴審裁判所へ持ち込まれた場合は、その判決が出るのは'99年の春になるだろうという。そして、最高裁に持ち込まれた場合には、判決は2000年の夏頃になるそうだ。まだまだこの先は長いということらしい。ちなみに、この一連のMicrosoft裁判記事は、BusinessWeekのアジアエディションには載っていない。
サブ1,000ドル/サブ800ドルPCの旋風がこの1年吹き荒れたが、台湾のAcer Groupは、以前発表したラディカルなローコストコンピュータ構想「XC」について、いよいよ具体的な発表を行なうらしい。「Acer to unveil PC-like electronic devices」(San Jose Mercury News,6/22)によると、ワシントンで火曜日に行なわれる発表では、200~1,000ドルのXCデバイスのディテールが明らかにされるという。子供用コンピュータが199ドルで、学生やジャーナリスト向け1kgサブノートが600~700ドルだそうだ。「Acer Plans New Desktop Computer For $199; Based on Windows CE」(The Wall Street Journal,6/23、有料サイト、 http://www.wsj.com/ から検索)によると、Windows CEベースになるという。Acerの会長はこの種のデバイスが、2010年にはPCの10倍の数出荷されるようになると見ているという。
先週は米国サンフランシスコで、LSIの設計技術に関するカンファレンス「35th Design Automation Conference(DAC)」が開催された。今年は、銅配線や0.18ミクロンデザイン、IP流通といった旬のネタもあって結構盛り上がったようで、ニュースは多かった。PCには直接関係のないニュースが多いのだが、なかには次のような記事も。「EDA vendors plan for the nanometer era」(Electronic Engineering Times,6/17)によると、Intelは今後1年半から3年の間に、0.18ミクロンプロセスで1GHzへのアプローチを行なうという。ただし、今後は開発ツールの改良が必要で、ピコ秒単位の正確さ(配線遅延をより正確に予測するためだと思われる)や、アドレスノイズの対策などが求められているという。逆に言えば、このあたりが解決できないと、0.18ミクロンはともかくとしても、その先のプロセスでGHzレベルの動作のMPUを設計できないということなのだろう。また、これは彼らが0.18ミクロンでの次世代MPU「Merced(コード名:マーセド)」のデザインなどで、感じ始めている問題も示しているのかも知れない。
DACでのIntel関係ではもうひとつ大きなニュースがあった。「Intel, Seagate And UMC Join VSI Alliance」(Electronic Buyer's News,6/18)によると、Intelが日米欧の半導体メーカーとEDAメーカーが作った業界団体「Virtual Socket Interface alliance (VSIA) 」に加盟したという。これの何が面白いのかというのを説明するには、まずVSIAがどんな団体かを説明しなければならない。
今、半導体業界では、「IP(Intellectual-Property)」と呼ばれる半導体の設計データを自由に交換したり流通できるようにしようという動きが活発化している。最近では、MPUやメモリ、その他もろもろの各種半導体は、大規模マクロセルと呼ばれるブロックとして、ASIC(特定用途向けIC)の中で使えるようになりつつある。ところが、これまでこのマクロセルは各メーカー間で互換性がなく、移植するのも難しかった。そこで、マクロセルのインターフェイスやフォーマットを標準化してしまおうというアイデアが出てきた。それが実現すると、各社のIPを簡単に組み合わせて、自由に多機能のワンチップLSIを作れるようになる。つまり、今、電子部品を基盤上で組み合わせて電子製品を作るのと同じように、マクロセルをチップ上で組み合わせてワンチップ製品ができるようになるわけだ。VSIAは、そのための標準策定を行なっている団体なのだ。しかし、IP流通への動きは、Intelのように、自社のIPを守りそれを標準品として独占的に提供してゆくメーカーの方向とは相反するトレンドでもある。さて、Intelはどう考えているのだろう。
('98/6/23)
[Reported by 後藤 弘茂]