IIJ SEIL(ザイル) |
IIJ DSU内蔵ターミナルアダプタ |
まず最初は、つい先日、IIJから発表されたISDNダイヤルアップルータ「SEIL」だ。昨年来、各社からISDNダイヤルアップルータが数多く販売されてきたが、いよいよプロバイダ自身が販売し、しかもIIJという国内プロバイダのトップブランドからという点は非常に注目に値する。
本体にはLANと接続するEthernetポートを1つのみ備え、アナログポートなどは搭載されていない。セットアップはWebブラウザからできるようになっており、IIJ4Uにアカウントを持っているときの設定、IIJ4Uにオンラインサインアップするときの設定、汎用の設定などのメニューが用意されている。NATやDHCPサーバの機能を搭載するだけでなく、IPマルチキャストにも対応している。価格は予価だが、29,800円とかなり安い。
また、SEILとまったく同じデザインで、アナログポートのみを備えたDSUも展示されていた。SEILとはバス配線で接続することになるため、本体にはS/T点が2つ用意されている。屋内配線引き込み口や電話機などが居間にあり、PCが他の部屋にある環境などでは理にかなった使い方ができるというわけだ。何でもかんでも一体化する最近のISDN機器には筆者もがっかりしていたが、ネットワークに精通しているIIJが自社ブランドの製品で、こうしたアプローチをしてきたのは高く評価したい。
価格は20,000円を予定しており、SEILと合わせると49,800円になる。MN128-SOHOやNetVehicle-fx3、COMSTARZ ROUTERと真っ向から勝負する価格帯というわけだ。販路がハッキリしていないのはやや不安だが、かなり期待できる商品と言えるだろう。
アンリツ Surfin'boy 1/Pro |
アンリツ Surfin'boy 1/Pro背面 |
一方、既存のネットワーク機器メーカーも負けずにISDNダイヤルアップルータを出品している。上は先日、アンリツが発表したSurfin'boy 1/Proだ。DSUを内蔵したISDNダイヤルアップルータで、NATやIPマスカレード、DHCPサーバー機能などを搭載し、2つのアナログポートと4ポートHUBを備えている。もちろん、S/T点端子も2つ備えており、拡張性は問題ない。
筆者ははじめて実機を見ることができたのだが、ちょっと変わっているのがモジュラジャックからの配線を接続するINS回線コネクタ(U点)の位置だ。多くのDSU内蔵ISDN機器は、本体の背面にINS回線コネクタを配しているが、Surfin'boy 1/Proは付属のACアダプタにINS回線コネクタを用意している。つまり、ACアダプタから本体に接続するケーブルの中に、配線が含まれているというわけだ。同様の手法はNTTのISDNデジタル電話機「S-1000」でも採用されている。どういったメリットがあるのかはわからないが、本体に接続するケーブルが1本減ることは確かだ。
プラネックスコミュニケーションズ ISDNルータとIPルータ |
HUBやLANカードといったネットワーク機器で知られるプラネックスコミュニケーションズもISDNダイヤルアップルータとIPルータを参考出品していた。
EIR-5020(写真左端)はISDNターミナルアダプタの機能も内包したDSU内蔵ISDNダイヤルアップルータで、5ポートHUBを備え、NATやIPマスカレードをサポート。DHCPサーバ機能も搭載している。FIR-1020(写真中央)はLANと接続するEthernet部分を10/100Base対応にしたのが特徴だ。 IPルータ(写真右)の方は4ポートHUBを内蔵したISH-4000と、HUBを持たないISH-1000の2種類がある。ともにNATやDHCPサーバ機能を搭載しているため、モデムやISDNターミナルアダプタを接続するだけで、ISDNルータなどと同等の環境を得られる。コストパフォーマンスでは定評のある同社だけに、価格設定などが気になるところだ。
アクトンテクノロジィ iSharer201 |
関西電機 I CRAB及びC CRAB |
また、COMPUTEX TAIPEIのレポートで紹介したRS-232Cポート直結のIPルータもいくつかのブースで見ることができた。左上はアクトンテクノロジィ(Accton Technologyの日本法人)に展示されていたiSharer201、右は関西電機のブースに展示されていたI CRABとC CRABだ。
iSharer201は価格が明らかになっていないが、I CRABは39,800円という価格が設定されている。筆者がCOMPUTEX TAIPEIで取材してきた価格から考えると、かなり高い価格設定のような気もするが……。
松下電工 マルチメディア対応先行電力情報配線システム |
松下電工 アナログポート付きDSU |
ネットワーク機器の展示会であるN+I 98 Tokyoでは、配線システムなども展示されている。昨年のレポートでも紹介したが、松下電工は今年も「マルチメディア対応先行電力情報配線システム」を出品していた。同社は従来からISDN配線を効率よく家庭などで利用するための配線システムを提供していたが、このシステム専用のアナログポートのみを備えたDSU内蔵ターミナルアダプタ(アナログポート付きDSU)を用意し、さらに使いやすい環境を実現している。このDSU内蔵ターミナルアダプタで特筆すべき点は、アナログ機器の数珠つなぎ、つまりブランチ接続を可能にしているという点だ。
通常、ISDNターミナルアダプタのアナログポートは1ポートにつき、1台のアナログ機器しか接続できないが、アナログポートを強化することにより、1つのポートに複数のアナログ機器を接続できるようにしているわけだ。
NEC AtermIT65EX/D |
同様の機能はNECのAtermIT65EXシリーズでも採用されており、これからのISDNターミナルアダプタのトレンドになる可能性が高い。Atermシリーズと言えば、フジテレビ系列で放映中のドラマ「With Love」が関係者の間で、ちょっとした話題になっている。
電子メールでのやり取りをフィーチャーしたドラマなのだが、主人公はAtermIT65Proを使っており、電子メール着信通知機能により、MSGランプがチカチカするシーンが何度も映し出されている。内容はともかく、こういった場面にもISDNターミナルアダプタが登場するようになったんだと感心してしまう。
NECは今回のN+I 98 Tokyoでも発表されたばかりのAtermIT65EXを展示し、MSGランプを点滅させて、電子メール着信通知機能をアピールしていた。非常に便利な機能なのだが、個人的な感想を言わせてもらえれば、そろそろ仕様を公開し、BIGLOBEだけでなく、他のプロバイダでも利用できるようにして欲しいところだ。
アイ・オー・データ機器 Snap Connect |
アイ・オー・データ機器 NDA-P1 |
アイ・オー・データ機器はすでに発表したものも含め、通信機器関連商品がかなり充実している。発表済みのものとしては、PalmPilot及びPalm III用のモバイル通信アダプタ「Snap Connect」(写真左)、ナンバー・ディスプレイアダプタ「NDA-P1」などが展示されていた。なかでも注目はSnap Connectだ。海外でも携帯電話と接続する同様の製品は販売されているが、日本ならではのPHSにも対応した点は高く評価したい。単に海外からモノを持ってくるだけでなく、日本のインフラストラクチャに合わせたローカライズが行なわれているのは、さすがと言えるだろう。
アイ・オー・データ機器 PCカード製品 |
未発表製品ではPCカード関連が充実している。今回はISDNカードとPHS(PIAFS)、デジタル携帯電話が接続できる「PCDI-128DC」、V.90対応56kbpsモデムにデジタル携帯電話用カードの機能を内包した「PCDM-560DC」、V.90対応56kbpsモデムとISDNカードを1枚のカードにまとめた「PCMI-560/128」の3種類を展示していた。
いずれも今夏以降に順次発表される予定だそうだが、それぞれにニーズがあることはハッキリしているので、幅広いユーザーに受け入れられることになりそうだ。
スリーコム PCカード製品 |
PCカードと言えば、スリーコムがN+I 98 Las Vegasのレポートで紹介した製品をN+I 98 Tokyoでも展示していた。10Base-TのEthernetと56kbpsモデムをまとめたマルチファンクションカードの「3CXEM556 T/C」、Ethernet部分を10/100Mbps対応にした「3CCFEM556」の2種類が目新しいところだ。
当然、国内でも夏以降に販売する予定だ。個人的にも非常に欲しい商品なので、発売が待ち遠しいところ。気になる価格は未定とのことだ。為替レートがこういう状況では、海外製品(特に米国製)の価格設定はかなり難しいだろう。
余談だが、同社はN+I 98 Las Vegasのときとまったく同じデザインのブースを構えていた。筆者も「あれ? 同じもの?」と驚いてしまったが、日本の展示会にはないデザインで会場でも目立っていた。
理経 TUT SYSTEMS HomeRun |
N+I 98 Las Vegasで注目を集めていたTUT SYSTEMSのHomeRunがN+I 98 Tokyoでも展示されていた。出展社はネットワークやコンピュータ機器の商社として知られる理経だ。
HomeRunは家庭内に敷設されているアナログ回線の配線を活かし、ネットワークを構築するというシステムだ。米国ではxDSLモデムを接続し、家の中のどこからでもインターネットに接続できるようにしていたが、日本向けにはやはりISDNを検討しているようだ。ただ、現時点では、具体的にいつ、どのような形で展開するかということは決まっていないそうだ。国内でもかなりニーズがあると思われるので、今後の発表に期待したい。
[Text by 法林岳之]
[Text by 法林岳之]