非同期通信レポート 第32回
Networld+Interop '98 LasVegas Telecomレポート

xDSLで盛り上がる米国市場


 日本国内でインターネットに適した個人ユーザー向け通信インフラストラクチャと言えば、ISDN(INSネット64)をおいて他にないが、アメリカではxDSLとケーブルモデムが注目を集めている。特に、xDSLは一部の通信事業者がサービスを開始したこともあり、最もホットな通信インフラストラクチャと言われている。

 今回のN+I'98LasVegasでも各社から数多くのxDSL製品が出品されていた。ちょうど28.8kbpsモデムが登場した直後を彷彿させるほどの充実ぶりだ。とてもすべてを紹介しきれるわけではないので、出品された中から一部の製品を紹介することにしよう。

Ascend Commnications DSLpipe
Ascend Commnications DSLpipe
Cisco Systems Cisco675
Cisco Systems Cisco675

 まず、先陣はアクセスサーバーやルータなどでおなじみの2社から。米Ascend Communications社は昨年発表したSDSLベースのルータ『DSLpipe』を、米CISCO Systemssha社は開催中に発表したばかりのADSLルータ『Cisco675』を出品していた。DSLpipeは同社が販売するISDNルータのPipeline 25-Fxなどと同サイズの筐体を採用しているため、あまり代わり映えがしないが、Cisco675の方はかなりコンパクトで、ちょうど巨大なマウスといった感じのデザインだ。ちなみに、このCisco675は同社が買収した米NetSpeed社というメーカーが開発したものをCiscoブランドで発表したものだ。

Hayes ADSL
Hayes ADSL
Paradyne HotWire System
Paradyne HotWire System

 続いて、モデムでおなじみの2社。創立20周年を迎える米Hayes社PCIバス用内蔵ADSLカードを出品、米Paradyne社は国内の展示会でも見かけるHotWire MVL and DSL Systemsなどを出品していた。HayesのADSLカードは昨年冬のN+I'97Atlantaで発表した製品で、Windows 95/98、Windows NT 3.51/4.0/5.0をサポートし、実売価格で250ドルを狙っているという。

 対するParadyneのHotWire Systemは企業向けからコンシューマ向けまで幅広いラインアップを揃えており、最廉価モデルは1台あたり225ドルとかなり安い。ちなみに、このParadyneのHotWire Systemは信号の周波数を制限し、ダウンストリームの速度を768kbpsまで抑えることにより、従来のADSLで問題とされてきたISDNとの干渉やアナログ機器を接続するためのスプリッタを不要にするなどの解決策を示している。米MicrosoftIntelCOMPAQなどが標準化を進めているUniversal ADSLの統一規格もこれに近い仕様になるのではないかと言われている。

WESTELL FlexCap2
WESTELL FlexCap2
ADTRAN EXPRESS L1.5
ADTRAN EXPRESS L1.5
FlowPoint 2000 ADSL Router
FlowPoint 2000 ADSL Router

 日本であまりなじみのないメーカーでは、米WESTELL社米ADTRAN社米FlowPoint社などがxDSL関連製品を数多く出品していた。WESTELLの『FlexCap2』は、RADSL(Rate Adaptive Digital Subscriber Line)モデムで、ダウンストリームが640kbps~2.24Mbps、アップストリームが272kbps~1.088Mbpsに対応する。アナログ機器を接続するためのスプリッタを内蔵するモデルと外付けにできるモデルがラインアップされている。ADTRANの『EXPRESS L1.5』はHDSLモデムで、1.5Mbpsという速度を実現する。PCとは10BASE-Tのケーブルで接続する。FlowPointの『FlowPoint 2000 ADSL Router』はアップストリームが1.1Mbps、ダウンストリーム6.2Mbpsを実現するADSLルータで、DHCPサーバーやNAT機能も搭載している。セットアップはWindows用ユーティリティを利用する。

GVC ADSLモデム
GVC ADSLモデム
Samsung ADSLモデム
Samsung ADSLモデム
Rockwell International ZipSocket
Rockwell International ZipSocket

 また、アジア勢も頑張っている。世界のPCマーケットの震源地とも言える台湾に本拠を置き、通信機器では最大シェアを持つGVCもADSLモデムを出品。写真右上にあるのはPCIバス用のADSLカードだ。おとなり韓国のSamsungもADSLモデムを出品。曲面を活かしたデザインも印象的だが、ちょっと変わった縦置きスタンドも珍しい。

 さらに、半導体メーカーではRockwell InternationalCDSL(Consumer Digital Subscriber Line)のデモンストレーションを行なうとともに、HDSL用モデムチップセット『ZipSocket』などを出品していた。モデムチップセットで圧倒的なシェアを持つ同社がxDSL関連に手を出してくるということは、かなりのコストダウンが期待できる。

 この他にも、ADSL Forumがブースを構えるなど、米国のxDSL市場はまさに百花繚乱の状態。『今まさに旬』といった感じだ。来場者の関心も高く、xDSL製品の回りでは質問待ちをしている人を多く見かけた。

 しかし、これらの製品が日本にも登場するとは考えにくい。まず第一に、日本ではADSLのサービスが開始されていないからだ。国内ではNTTフィールドテストを開始した段階で、正式なサービスがいつになるのかはまだ発表されていない。

 第二に、日本はすでに光ファイバーが敷設されている地域が多いため、サービスが提供できる地域がかなり限定されている。xDSLは既存の銅線による配線に高い周波数の信号を流し、距離を限定することでMbpsクラスの速度を実現している。しかし、途中に光ファイバーなどが敷設されていると、利用することができない。実際に、どれくらい光ファイバーが敷設されているかは、NTTの光ファイバ化計画ページをご覧いただきたい。都市圏は光ファイバー敷設が驚くほど進んでおり、xDSLサービスを提供したくても事実上不可能というのが現時点での見方だ。

 つまり、xDSLは全国的に光ファイバーを敷設しにくいアメリカだからこそ生まれてきたトレンドであり、日本にはマッチしないというわけだ。国内ではおそらくビル内や工場内、特定の町や村といった限定区域で利用されるケースが主流になるだろう。

[Text by 法林岳之]


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