非同期通信レポート 第32回
Networld+Interop '98 LasVegas Telecomレポート

米ISDN機器事情/TA、ルータなど


海外のISDNターミナルアダプタはどう?

 日本で急速に普及したISDNは、アメリカを中心とするマーケットでどのような状況なのだろうか。

EICON Technology DIVA T/A ISDN MODEM
EICON Technology DIVA T/A ISDN MODEM
ZyXEL omni.net LCD
ZyXEL omni.net LCD

 まず、ISDNカードなどで知られる加EICON TECHNOLOGY社は、外付けISDNターミナルアダプタ『DIVA T/A ISDN MODEM』を出品していた。日本のDSUに相当するNT-1を内蔵したモデル(U Interface版)と、ないモデル(S/T Interface版)がラインナップされており、いずれもアナログポートを2つ備えている。シリアルポートは230.4kbpsまで対応し、64/128kbpsを自動的に切り替えるBODを搭載。設定ユーティリティも添付されており、AO/DI(Always On/Dynamic ISDN)もサポートしている。ただ、価格的に折り合わないようで、日本での販売は考えていないという。

 日本でもおなじみの米ZyXEL社は、従来から販売してきたOmni TA128に液晶ディスプレイを付けた『omni.net LCD』を出品していた。内部的には従来のOmni TA128とまったく同じものだが、現段階では値段や出荷時期などがはっきりしていない。1,2カ月後には何らかの情報を公開できるという。日本での発売も期待したいところだ。

ADTRAN EXPRESS2000 & EXPRESS L128
ADTRAN EXPRESS2000 & EXPRESS L128

 xDSLでも紹介した米ADTRAN社は、EXPRESS 2000というISDNターミナルアダプタ(写真内上側)を出品していた。アナログポートを2つ備えたDSU内蔵TAで、BOD、AO/DI、hi/fn LZSによる圧縮などをサポートしている。製品としては非常に地味だが、意外にコンパクトにまとめられている。ちなみに、写真内下側に置いてあるのは、同社が販売するISDNルータの『EXPRESS L128/L128T』という製品。L128Tの方はアナログポートを2つ備え、ターミナルアダプタとしての機能も持ち合せている。セットアップはやはり専用ユーティリティを利用する形式になっている。

 これらの製品を見てわかるのは、サービスや機能面での不足はないものの、実力的には日本製品の方がはるかに優れているということだ。日本のISDNターミナルアダプタは今や液晶ディスプレイ付きが主流になり、USB接続やアナログポートからの設定など、海外製品にはない優れたユーザビリティを持ち、価格も安い。

 こうした差はアメリカと日本のISDN普及率の違いから来るものであり、xDSLの反響なども見ると、いかに日本とアメリカで温度差があるのかがわかる。個人的には海外のISDNターミナルアダプタは日本製品に較べて2年遅れという印象を得た。いっそのこと、日本製ISDNターミナルアダプタを海外に輸出してみるのも面白いかもしれない。



ISDN/アナログルータへの期待

 ルータの話が少し出たところで、話をルータに移そう。国内ではMN128-SOHOの登場以来、パワーユーザーを中心にISDNルータが人気を集め、すでにISDNターミナルアダプタやモデムを持っているユーザーのためのルーティングのみを行なう機器も登場した。海外マーケットに目を移すと、まだこうしたルータの種類はさほど多くないが、メジャーブランドが徐々に新製品をラインアップし始めている。

NETGEAR RH348
NETGEAR RH348
Intel Express 8100 Router
Intel Express 8100 Router

 たとえば、米NETGEAR社のISDNルータ『RH348』もそのひとつだ。NETGEARは大手ネットワーク機器メーカーのBay Networks社がSOHO向け製品を開発・販売するために設立した会社で、国内では日本法人内に営業部が設けられている。Bay Networksの青いボディのHUBなどを目にしたことのあるユーザーも多いだろう。RH348はNAT、DHCPサーバ、4ポートHUB、2つのアナログポートを一体化した製品で、データ圧縮機能のhi/fn LZS(従来のSTAC LZS)、帯域制御のBOD(Bandwidth On Demand)などをサポートしている。セットアップはWindows95用ユーティリティを使い、10BASE-T経由で設定内容を転送する形式になっている。実売価格はおよそ300ドルで、日本向けにも販売される予定だ。

 米Intel社も'98年2月に発表したExpress 8100 Routerを出品し、デモンストレーションを行なっていた。DSU内蔵モデルとDSUなしのモデルがラインアップされており、いずれも価格は700ドル程度。セットアップはWindows用ユーティリティを利用する。ただ、今のところ、国内のラインアップには加わっていない。

3Com ISDN LAN Modem
3Com ISDN LAN Modem
FlowPoint 128
FlowPoint 128

 米3Com社も昨年9月に発表したISDNルータの『ISDN LAN Modem』を展示していた。Modemという名称が当てられているが、4ポートのHUB、2つのアナログポートを備えたISDNルータで、NAT、BODなどをサポート。DHCPサーバやDNSサーバなども搭載し、セットアップはWebブラウザから行なうことができる。価格も500ドル以下とそれほど高くないので、日本市場での登場も期待したい製品だ。

 xDSLでも紹介した米FlowPoint社はxDSL製品の他に、ISDNルータ『FlowPoint 128』も展示していた。DSUの有無、2つのアナログポートの有無の組み合わせで、合計4つのモデルがラインアップされており、価格は500~800ドルのレンジに設定されている。セットアップはWIndows用のユーティリティを利用する。もちろん、NATやBOD、hi/fn LZSによる圧縮などもサポートしている。

SerComm Widelink IPS150
SerComm Widelink IPS150
ramp NETWORKS WebRamp M3
ramp NETWORKS WebRamp M3

 国内でマイクロ総合研究所がすでにISDNターミナルアダプタやモデムを使っている人のために、ルーティングのみを行なう『NetGenesis4』という製品を発表し、注目を集めているが、こうした製品もいくつか出品されていた。

 台湾のSerCommが展示していた『Widelink IPS150』はシリアルポートを1つ備えたルータで、既存のISDNターミナルアダプタやモデムを接続し、ネットワーク上で共有することができる。もちろん、NAT機能も備えており、DHCPサーバも搭載している。セットアップはWebブラウザからできるが、必要な項目を1画面に収めているという。LAN側のインターフェイスに10BASE-Tだけでなく、10BASE-2も用意しているのが珍しい。

 米Ramp NETWORKS社が出品していたWebRamp M3シリーズは4ポートのHUBを備えたアナログルータで、シリアルポートを3つ備えたWebRamp M3t、2台の56kbpsモデムと1つのシリアルポートを備えたWebRamp M3i Plusなど4製品をラインアップしている。セットアップはWWWブラウザから行なうことができ、DHCPサーバ、NATなどの機能もサポートしている。ちなみに、モデム部分はK56flexに対応し、V.90へのアップグレードも可能だ。価格はシリアルポートのみのWebRamp M3tが約600ドル以下、モデム内蔵のWebRamp M3i Plusが約800ドル前後と高いが、構成をもう少しシンプルにすれば、安くできそうだ。ちなみに、同社ではISDNルータなどもラインアップしており、ルータ関連の製品が非常に充実している。SerCommのWidelink IPS150とともに、国内市場への登場を期待したい。

[Text by 法林岳之]


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