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プロカメラマン山田久美夫の

オリンパス「CAMEDIA C-840L」製品版 実写レポート

~ 軽快だがややメリハリが足りない、お手頃130万画素モデル! ~


C-840L 11日発売予定のオリンパスのメガピクセル機「CAMEDIA C-840L」製品版の山田久美夫氏による実写レポートを公開する。画像は、以前掲載したベータ機の画像とは異なった傾向になった。なお、本機のスペックなどについては参考記事を参照されたい。(編集部)



●外観はそのまま、中身は一新

 オリンパスから、コンパクトカメラ風シリーズで初めての130万画素モデル「CAMEDIA C-840L」が登場した。このモデルは人気の「C-820L」系列のコンパクトなボディーに、本格的な130万画素CCDを採用した最新モデルだ。

 ボディーは「C-820L」と同じデザインで、カラーリングのみが若干変更されたもの。外観上の違いは主にボディー上部の操作部が銀色から金色になった点と、ボディーの後側がグレーから黒の変更された点のみ。そのため、遠目で見ると、ほとんど見分けが付かないのが残念。これは製造コストを抑えるのが一番の目的だと思われるが、新世代ともいえる本格的なメガピクセル機だけに、個人的にはやや残念な気もする。

もっとも、本機は外観こそ従来機の流用品だが、その中身は全くの別物といっていいほど、大幅な改良がなされている。

 まず、CCDはC-820Lの補色系長方画素1/3インチの81万画素タイプから、同じ補色系ながらも正方画素タイプの1/2.7インチの130万画素CCDに進化している。読み出し方式はいずれもインターレースタイプ。フィルターも原色系ではなく補色系だが、今回のものはフィルターの配列などがより理想的なものになっており、色や階調の再現性も向上しているという。

 さらに、処理系も一新。内部処理回路も高画素化に対応して、かなり高速なものに変更されている。おそらく高速化のために、処理系統の一部がソフト処理から専用チップによるハード処理に変更されたようだ。


●コンパクトで使いやすいカメラ風ボディー

 ボディーサイズは、現行の130万画素クラスのなかでも、まだまだコンパクトな部類で、携帯性はなかなか良好。もっとも、FinePix700ほど薄型ではなく、凹凸のあるデザインなので、胸ポケットに入れてみると結構嵩張るが、常時バッグに入れておく分にはさほど気にならないレベルといえる。また、収納時にはレンズや光学ファインダーがきちんとカバーされる点は便利で、この点はFinePix700よりも安心感がある。

 カメラを構えたときの安定感は、なかなか良好。デザイン自体がコンパクトカメラ風なので、自然な構え方ができ、その分、カメラブレも少ない点には好感が持てる。この持ち易さには、やや大きめにも思えるグリップ部(内部に単三型電池が収納されている)も大きく貢献している。

 操作性は基本的に「C-820L」系列のものを踏襲している。もっとも今回は、デジタルズーム機能が加わったうえ、画質モード(SHQとHQモードの切り替え)がカメラ単体でできるようになった(PC接続しないと変更できなかったC-820Lのほうがおかしかった?)こともあって、ひとつのボタンに割り当てられた機能が増えてはいるが、まだ説明書を一読すれば理解できるレベルといえる。

 また、細かな機能の見直しも図られている。なかでも、マクロモードやデジタルズームモードに切り替えると、自動的に液晶モニターが点灯するようになった点は実に便利で合理的だ。もっとも、C-820L登場時にも指摘が多かったメインスイッチと液晶モニターの連動(自動点灯)機能やホワイトバランスの固定機能は今回も実現されなかったのは、やや残念だ。


●起動2秒、記録4秒の軽快メガピクセル!

花壇
花壇【HQモード】
(189KB)

 実際に撮影してみて感心するのは、そのスピーディーさ。なにしろ、撮影後の記録時間(処理とメモリーカードへの記録時間の合計)は、標準的なHQモードでたったの4秒! しかも、液晶モニターを使っていても同じ時間で記録することができる。

 なにしろ、C-820Lでは液晶不使用時でも約8秒、液晶点灯時には13秒もかかっていたのだから、これは長足の進歩といえるだろう。もっとも、ニコン COOLPIX900のエコノミーモードの2秒には及ばないが、それでも130万画素クラスでは十分に高速な部類といえる。

 そのため、撮影自体も十分に軽快でスピーディー。さすがに最新VGAモデルほど高速ではないが、それでも通常のスナップ撮影なら十分なレベルで、”待たされ感”は大幅に軽減されている。これなら高画素機でも気軽に人物のスナップができるというもの。

 さらに感心するのが、起動時間。本機はレンズカバーがメインスイッチになっているわけだが、カバーを開いてから実際に撮影できるまでの時間が短く、最短で約2秒程度で撮影OKとなる。ときにはストロボ充電をするために多少時間がかかることもあるが、それでもライバル機の多くが5~8秒前後かかっていることを考えると、このスピーディーさは特筆に値する。

ストロボによる接写
ストロボによる接写【HQモード】
(195KB)

 オートフォーカスの測距時間も短め。また、本機は最短撮影距離が10cmと、C-820L(20cm)よりも短くなっており、この距離でストロボ撮影をしても露出オーバーにならないのは立派だ。

 ファインダーは光学式と液晶の両用タイプ。光学ファインダーは従来通り、明るくクリアで視野も大きくて見やすいもの。液晶も低温ポリシリコンTFTで、表示レスポンスは秒30フレームレベルのリアルタイムなもの。また、表示品質もC-820Lより一段とシャープなものになっており、なかなか気持ちがいい。

 電池の持ちは、単三型アルカリ電池で液晶ファインダーをメインに撮影しても50枚以上、平均して80枚程度の撮影ができるようだ。もちろん、光学式ファインダーがメインなら、楽に100枚以上の撮影ができるだろう。

 記録媒体はスマートメディア。標準添付が8MBカードなのもうれしい。また、高画素化で気になる撮影枚数だが、これが81万画素のC-820Lとさほど変わっておらず、ほぼ同等。具体的にはHQモードで36枚以上、SHQモードでも18枚以上となっている。これは、C-820LよりもJPEGの圧縮比を高めて記録しているためだ。

 単純に考えると、その分、JPEG圧縮時の画質低下が問題になりそうだが、実際には、約1/16という高圧縮のHQモードでも実用十分な画像が得られる。これは高画素されるにつれて、JPEG圧縮ノイズが相対的に目立たなくなるためだと思われるが、もしかすると、高速圧縮のために内部処理をハード化したことも好結果に結びついているのかもしれない。

 ちなみに、オフィシャルには、16MB以上のスマートメディアカードのサポートをうたってはいないが、設計上は16MB~128MBの規格に対応しているという。もちろん、現時点ではまだ16MBカードが出荷されていないために確認が取れないので、このようなアナウンスになっているわけだ。

家 山 ベンツ
家【HQモード】
(199KB)
山なみ【HQモード】
(194KB)
ベンツ【HQモード】
(203KB)



●難しい1/3インチクラスの高画素CCD

桜 パンジー
桜【HQモード】
(182KB)
パンジー【HQモード】
(161KB)

 まず最初に、今回のモデルは、C-820Lとは異なる、より素性のいいCCDを採用している。そのため、基本的なポテンシャルはC-820Lよりもワンランクも2ランクも向上している。しかしながら、従来とほぼ同じサイズのセルのなかに、130万もの画素が詰まっているわけで、81万画素タイプよりも1画素あたりの密度がかなり高まっているわけだ。

 そのため、レンズに要求される解像度も、従来よりさらに高いものである必要があり、それ以外の精度も一段と高いものが要求される。その点では、同社のC-1400Lのように2/3インチと大きな141万画素CCDのほうがセルが大きい分、ほぼ同じレベルの画素数でも余裕があるわけだ。つまり、同じ画素数でも本機の方が、より条件が厳しいわけだ。

 しかし、2/3インチCCDはサイズが大きい分、高価でこのクラスのモデルには採用できず、スペース的にもこのボディーのままでは光学系が大きくなることもあって、今回の1/2.7インチ130万画素CCDの採用となったわけだ。


●β版から変更された、ややメリハリに欠ける絵作り

 本機の実写データは、以前にβ版のものを、一度参考に公開している。だが、その後、メーカー側から画質変更の連絡があり、今回掲載したものは同じボディーで、ファームウエアのみをバージョンアップした、ほぼ製品版といえるボディーで撮影している。

 もちろん、β版から最終的な製品化までに、画質の再評価や改良が加えられて、見違えるほどよくなるケースもあるわけだ。そこで今回は、メーカー推奨の改良型ファームウエアによる実写結果についてレポートしよう。

ベータ版 ロータリー 製品版 ロータリー 製品版 ロータリー
β版 ロータリー【HQモード】
(193KB)
製品版 ロータリー【HQモード】
(190KB)
製品版 ロータリー【SHQモード】
(363KB)

 さて、実写結果を見ると、さすがに解像度はほぼ同じ実効画素数のC-1400Lに比べると、やや落ちている。とはいっても、130万画素クラスでは「ニコン COOLPIX900」に次ぐ実力。実際にA6版なら余裕であり、A5判にプリントしてみても、さほど見劣りしないレベルの解像度を実現している。もちろん、C-820Lに比べると、明らかにワンランク上の解像度といえる。

 だが、画面中心部はなかなか高解像度なのだが、画面周辺部になるにつれて、解像度が低下しており、画像の縁に色の滲み(色収差)が見られる。とくに近接撮影時には色収差が顕著に見られるケースもあった。これらはCCD側ではなく、今回新設計されたというレンズ性能がこのCCDの性能を下回っていることが原因といえる。また、画面周辺部では直線がタル型に歪む歪曲収差も見られるなど、実に残念な結果といえる。

 もっとも通常の撮影では、画面中心部にメインの被写体を配置するケースが多いので、さほど気にならないと思われるが、本格的な撮影をしたいときには、若干心配な面もある。

 さらに気になるのが、β版から製品版にファームに変更した際に生じた、階調再現性の違いだ。メーカー側の説明によると、β版ではハイライト部の白飛びが気になったため、製品版ではそれを抑える方向でのチューニングが施されたという。

ベータ版 オルガン 製品版 オルガン
β版 オルガン【HQモード】
(203KB)
製品版 オルガン【HQモード】
(200KB)

ベータ版 子供 製品版 子供
β版 子供【HQモード】
(192KB)
製品版 子供【HQモード】
(226KB)

 しかし、実際に使った感じでは、β版のほうが画像全体にメリハリがあり、よりクリアで見栄えのする画像だったという印象がある。今回は、天候や撮影条件が若干異なるが、同じシーンをβ版と製品版で撮影した比較カットを掲載した。残念ながら、同一ボディーでファームを書き換えたため、同一条件での撮影ができなかったわけだが、それでも階調性の変化の一端を知ることができるだろう。

 これらを比較してみると、確かにβ版ではハイライトがわずかに白飛びする傾向があり、製品版ではそれが抑えられている。しかし、画像全体から受ける印象は、β版の方がメリハリがあって明快だ。それに比べて、製品版では階調を抑えた分、全体にコントラストが低くなってしまい、メリハリに欠ける。さらに、色の再現性までもが今一つ冴えないものとなっている。

 もちろん、情報量としては製品版でも十分に備えているため、画像処理ソフトで補正すれば、十分に見栄えのするものに調整することはできる。しかし、これからの標準機として、デジタルカメラは初めてという人が多く購入する可能性のある、このクラスのモデルでは、むしろβ版くらいメリハリがあり、無補正でも十分に見栄えのする絵作りのほうが適しているのではないだろうか?

 また、個人的にはβ版モデルをベースに、中間調の明るさを若干高めた(ガンマをわずかに上げる)くらいの絵作りの方が、見栄えがして、きれいな仕上がりになると思う。もちろん、このあたりは微妙な世界で、好みの問題もかなりあるが、いずれにしても、本機の製品版の絵作りには、まだ疑問を挟む余地があると思われる。

 今後もこのようなケースがでてくる可能性は大いにあるため、パーソナル向けモデルでも、裏モードやPC接続による設定変更で、2つの設定値を内蔵し、ユーザーの好みに応じて切り替えられるような工夫が欲しい。しかも、このような絵作りのチューニングができることも、デジタルカメラならではのメリットなのだから、そのあたりの特徴をもっと生かすべきだろう。


●β版のままなら、ほぼ満足だったのに……

 実は、本機のβ版を使っていて、「これなら今年前半の『デジタルコンパクトカメラ』のイチオシになるかも……」と思っていた。実際に起動や記録時間の速さは大きな魅力であり、デザイン的な新鮮さはないにしても、コンパクトで安定感があり、誰でも違和感なく扱えるこの系列のボディーには、ライバル機にはない魅力がある。また、84,800円という、比較的手頃な価格設定にも好感が持てる。

 しかし、せっかくの新設計レンズはCCDのポテンシャルを生かしきれていないし、製品版になってメリハリのない絵作りになってしまったのには、少なからずガッカリした。もちろん、製品版の初期ロットはこのままの設定で出荷されるに違いないが、個人的にはユーザーの希望があれば、β版ベースで適度なメリハリのあるファームへの入れ替えをサービスセンターなどでおこなって欲しい。

 また、レンズもより高画質なものに改良した「C-840L II」のような進化モデルや、ボディー外観をよりコンパクトでスタイリッシュなものに進化させた次期モデルの早期登場を、ぜひとも期待したい!


□関連記事
【3/17】プロカメラマン山田久美夫のオリンパス「CAMEDIA C-840L」実写データ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980317/840l.htm
【3/17】オリンパス、メガピクセルのコンパクト機
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980317/olympus.htm
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■注意■

('97/4/10)

[Reported by 山田 久美夫 ]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp