【コラム】 |
●新たな提訴でWindows 98の阻止を狙うか?!
司法省は、Microsoftに対してさらに別件での反トラスト法訴訟を検討している。Wall Street Journalがこんなスクープを飛ばした。「Justice Department MullsNew Charges vs. Microsoft」(Wall Street Journal、有料サイトhttp://www.wsj.com/ から検索)によると、司法省はMicrosoftの内部文書などによって、新しい提訴に足りるだけの十分な証拠を得たため、4月末までに法廷に持ち込む可能性があるという。同紙は、関係筋からの情報として、このケースは、もしこのまま進めば、パソコンOSへのMicrosoftの支配に対する“Illegal maintenance andextension(違法な維持と拡張)”として申し立てられるだろうという。つまり、Windowsのシェアを、その市場支配をより堅固なものにするための武器にしたという理由で提訴するつもりらしい。とすると、明らかに提訴の内容は、現在提訴しているWindows 95に関する法廷侮辱罪よりも重大なものになる。
現在の提訴の内容は、'95年に結ばれた、Windows 95にアプリケーションをバンドルしないという合意にMicrosoftが違反し、法廷を侮辱したというものだからだ。今の提訴では、司法省が全面的に勝っても、Windows 95/98からInternet Explorer(IE)を削除するように命令できるだけだが、新しい提訴が本当にこの内容で申し立てられるとすると、MicrosoftのOS戦略全体をもっと厳格に規制したり、場合によってはMicrosoftをOS部門とその他で分離させるといった要求も可能になるかも知れない。
もちろん、Windows 98へも影響が及ぶことは確実だろう。というか、この時期に司法省がこれを出してくるとすると、それはWindows 98の出荷阻止を狙ったものに間違いはない。この記事も、捜査官たちが、MicrosoftがWindows 98をOEMメーカーに渡す5月15日より前になんとかしようと急いでいると指摘している。ただ、記事では、司法省上層部がWindows 98出荷を食い止めることにあまり乗り気ではないとも報じている。もっと深読みすれば、このスクープは、そうした司法省中枢の態度にいらだった司法省の現場サイドに近い筋から持ち込まれたのかも知れない。記事によれば、司法省はMicrosoft幹部と来週ミーティングを持つ予定で、この件はもし司法省が進めるとしても、早くてもそのミーティングが終わるまでは法廷に持ち出されることはなさそうだ。
●MicrosoftはWindows 98を6月25日にひっそりとリリース
こんな状況であるため、Microsoftは米国ではWindows 98をできるかぎり“そっと”出そうとしている。3年前のWindows 95の発表の時には、Microsoftは人気トークショウのホスト、ジェイ・レノ氏を司会に呼んで、華やかに発表を行った。また、深夜0時の発売というしかけによって、各地のコンピュータショップでは夜中にWindows95を買い求める列ができた。ところが、「Microsoft Is Quiet as It Prepares To Start You Up on Windows 98」(Wall Street Journal、有料サイト http://www.wsj.com/ から検索)によると今回は、「ピンを落とす音も聞こえるくらい」静かだという。Windows 98の発売日は、6月25日というのが公然の秘密となっているが、3ヶ月を切ったというのに、ほとんどプロモーション活動はない。大きなイベントも予定されていないという。その理由は、Windows 98はWindows 95と比べて新フィーチャが少ないことと、司法省の注意をむやみに引きたくないだとか。おそらく、後者の方が主な理由なのではないだろうか。
●IBMがAMDに資本を投入か?
ウォールストリートからは、今週、もうひとつスクープがあった。苦境に陥っているAMDに対して、IBMが助けると、アナリストが発表したという。AMDは、フラッグシップのAMD K6プロセッサの歩留まり問題と、それによる連続赤字で苦しんできた。しかし、「Analyst Says IBM Is Pumping Up AMD in 'Last Stand' Against Intel」(Wall Street Journal、有料サイト http://www.wsj.com/ から検索)によるとIBMはIntelに対抗するため、AMDに資本をそそぎ込むという。また、長年AMDのCEOを務めてきた、AMDの“顔”であるジェリー・サンダース氏が、その座を降りるとも話したという。真偽はまだわからないが、IBMがx86市場に興味をというウワサは、このところくすぶっていただけに、こういう展開があってもおかしくはない。
●x86MPUが供給過剰になる
きな臭いにおいが漂ってきたx86市場だが、さらに面白い分析が出てきた。「x86 Market Approaching Overcapacity」(Microprocessor Report,3/30)によると、今年後半からx86 MPUが供給過剰になり、競争により価格下落が起きるかも知れないという。DRAMが供給過剰で、ここ1~2年価格下落が落ちたのと同じことだ。このレポートによると、AMDが歩留まり問題を解決できた場合、同社の新しいファブ(工場)がフル稼働時には、'99年には3,000万のMPUを製造できるという。また、CyrixのMPUを製造するNational Semiconductorも新工場を稼働させつつあり、Intel自身も現在週18,000のウエーハ製造能力を2000年には30,000ウエーハに引き上げようとしているという。各MPUメーカーは、2次キャッシュSRAMをMPUと同じダイ(半導体本体)に集積しようとしているため、実際には同じウエーハから取れるMPUの数は今よりも減るのだが、それでも供給過剰になるのは確実という。
●Intelはマルチプロセッサが嫌い?
また、同じMicroprocessor Reportに、IntelはPCでのマルチプロセッシングの普及を望んでいないという分析もあった。「Can Multiprocessing Go Mainstream?」(Microprocessor Report,3/30)によると、マルチプロセッサが普通になるとIntelの価格構成が崩れてしまうという。それは、IntelのMPUの高速版の価格は、割高だという。つまり、ローエンドのMPUより性能が2倍でも、価格はずっと高いというわけ。それでも、シングルプロセッサ以外の選択枝があまりないと、ユーザーは高くても高速なMPUを買う。ところが、低速でも安価なMPUを2個買った方が安くつくと気づけば、これが崩れてしまう。だから、サーバーやワークステーションではマルチプロセッサをサポートしても、PC用のSlot 1ではデュアルプロセッサに止めているという。
●Intelは2001年にはMcKinleyを出す
さて、Intelは64ビットMPU、Mercedを来年後半に控えている。しかし、「Intel, HP plan Merced's successor」(NEWS.COM,4/6)によると、同社は早くもMerced後継のより高速なMPUを開発しているという。コード名は「McKinley(マッキンレー、アラスカ州にある北米最高峰)」で、2001年に登場、1GHzからスタートすると見られているそうだ。昨年、Intelは第2世代のIA-64 MPUは、Mercedの2倍のパフォーマンスと明かしていた。まだまだMPUの高速化のペースは衰えずということか。ところで、Intelはまだ米国の国立公園&保養地シリーズのコード名を続けているらしい。
●MicrosoftがIEEE 1394インターフェイス搭載に報奨を
このほか、Microsoftに関する新しい話題もいくつかあった。MicrosoftはPCメーカーとの契約「Market-Development Agreements (MDAs)」に新しい条項を加えたという。「Microsoft offers cash incentives to implementers of key PC features」(Electronic Engineering Times,3/27)を信じるなら、この7月から出荷するPCの15%にIEEE 1394インターフェイスかTVチューナーを装備したPCメーカーに、報奨金を与えるという。なかなか進まないPCへの新フィーチャの取り込みに、ついに金を払ってまで奨励するという手に出るつもりだろうか。
('98/4/8)
[Reported by 後藤 弘茂]