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●満員の聴衆を前に、デジタルイメージの重要性を熱弁
FlashPixについて語るジョン・スカリー氏 |
基調講演はまず、インターネット市場がこれからではなく、現在すでに有望な市場として成り立っていることを数字を交えて説明することから始まった。ただし、スカリー氏に言わせれば、現在のインターネットはまだまだテキストベースでしか使用されておらず、グラフィック、音楽、アニメなどを統合したマルチメディア的な展開はこれからだという。そして、そういった次世代の環境を実現するのがFlashPix(FlashPix自体はLive Picture社の独自技術ではない)であり、ジョン・スカリー氏率いる米Live Picture社なのだと説明。ついで、その中心技術となるFlashPixフォーマットの説明に移った。
●FlashPixフォーマットや自社製品を紹介
FlashPixフォーマットに関しては、今回の講演ではデモを交えながら簡単に説明された。デモではことあるごとにJPEGフォーマットと比較して、FlashPixフォーマットの優位性を訴えた。
ここでは、腕時計の写真をブラウザ上で表示し、拡大していくデモが行なわれた。
JPEGフォーマットの画像だと、10MBのファイルをいっきにダウンロードするため、かなり時間がかかり実質的には使用に耐えない。だが、FlashPixフォーマットでは、それぞれの解像度に応じた容量をダウンロードするため時間がかからず表示が早いというものだ。
例えば時計を小さく表示する場合、画像データはLow Resolutionのため、データ容量は小さくてすむ。拡大した場合(High Resolution)は、画像データすべてをダウンロードするわけではなく、表示領域の画像データだけダウンロードするわけだ。画像データは10MBでも表示領域は150KB程度しかなく、少しの時間でダウンロードでき、画像の劣化もないというわけだ。
また、紳士服の写真を拡大表示するデモでは、FlashPixフォーマットを用いることで生地の質感まで表わすことができることを証明して見せ、「これまでは質の悪い画像をWEB上で公開して、商品を買ってくれと言っていたが、それではお客は購入しない。しかし、FlashPix技術を用いれば画質が向上しているので、すみずみまで細かくチェックでき、その商品をより知ることができる。電子商取引やオンラインによる不動産売買などで、新たな市場を生むことになるだろう」とスカリー氏は語った。
このあともLive Picture社の製品のデモンストレーションが続く。
今度はパノラマ写真作成ツール「PhotoVista」とマルチメディアWEBコンテンツ制作ツール「reality studio」のデモだ。「PhotoVista」はQuickTimeVRを作った開発者がLive Picture社で作り上げたソフトで、QuickTimeVRの1/10の容量でVR同様のパノラマ処理を実現するというものだ。また、ただ単に写真をつなげていくだけではなく、カラーマッチング処理も同時に行なうという。デモでもパノラマが作成されるまでの過程を細かく実演していた。
スカリー氏は「これまでプロが1日がかり作業していたことが、デジタル処理で瞬間的に完了する。またデジタルカメラ内にこのソフトを内蔵するという話もある」と発言。
続いては「reality studio」。WEB上でQuickTimeVR(パノラマ写真)や動画、音声を統合する、一種のマルチメディアコンテンツを制作するアプリケーションで、いわゆるマクロメディアのShockwaveのようなモノと考えてもらえればわかりやすいだろう。
デモでは、日本庭園のパノラマ写真の中にある池をクリックすると鯉が跳ねるアニメーションが見られたり、貼り込まれているFlashPixフォーマットの画像を拡大して見せたりしていた。また、これらのコンテンツの制作過程も披露。特別な知識がなくても、ごく簡単に作成できることを実証して見せた。
スカリー氏は「これまでマルチメディアコンテンツを作るには、PhotoShopやDirectorといった特別な知識を必要とするアプリケーションが必要だったが、『reality studio』はそういった知識を必要とせず、簡単にコンテンツを作れる点が重要だ」とし「これまで以上にクリエイターのスキルが重要となる」と言ってのけた。
FlashPixフォーマット、Live Picture社製品紹介ときて、3つ目はNetwork Publishingに関する話題に移った。現在、印刷イメージを画面上で確認する方法としては、PDFファイルが有力だが、スカリー氏は、PDFファイルは画像イメージをビットマップファイルとして添付しなければならない点を指摘し、「容量が肥大化することになりネットワーク時代としては不的確だ」としたうえで、「FlashPixであれば容量も小さく鮮明である」と強調した。
実際のデモでは、朝日新聞をスキャニングしたFlashPixフォーマットの画像を表示、拡大して見せ、クオリティの高さをアピール。この他にもレントゲン写真を表示し「これまでは医療現場での使用に耐えなかったが、FlashPixフォーマットならば大丈夫だ」と発言。また、「現在のアメリカ企業では、電話代よりもFAX送信代の方が高くついている。これをすべてFlashPixフォーマットの画像にしてやりとりすれば、かなりの節約となる」と新しいアイディアを披露してみせたりもした。
「Network Publishing部門は、高画質化によってまだまだのびる市場。そのためにも我々は、キヤノンと技術的に協力しいろいろな開発を行なっていく」とスカリー氏は締めくくった。
●「日本でも最新の技術を採用してほしい」
スカリー氏は最後に「新しいテクノロジーを日本の人にも使ってほしい」と発言して講演を終了させた。この最後の発言にみられるように今回の講演は、Live Picture社の製品紹介の要素が濃く、新しいビジョンの提示などは行なわれなかったため、内容的には面白味に欠けるものとなったことは残念だ。
●ライブピクチャージャパン新製品記者発表会
ただ、会見の最後に行なわれたスカリー氏の質疑応答ではなかなか興味深い談話が飛び出したので、ここに紹介しよう。
まず最初に、「Live Pictur社の存在はApple Computer在籍時から知っていたのか?」の質問に対して「Apple退職後に知ったのだが、そのとき同時にFlasPixフォーマットの優位性も知った。そこで、私はAppleに正式採用するように薦めたのだが、当時、彼らは興味がなかったようで採用されなかった。そこで、私自身がLive Picture社に関わることにしたんだ」とLive Picture社に関わり合った経過を説明。
また、現在のApple Computerについての感想を求められた際は、「私の記憶ではApple Computerは優秀な会社だ。そのなかでも、日本での実績は特に誇りに思っている。小さな会社が、私が退任する頃には巨大企業になっていたのだから。私がやめてから5年ほどたつが、退職から5年あまりのAppleの方針には落胆していた。だが、現在はスティーブ・ジョブズが会社の威厳を取り戻したように思う。Appleがプロのアーティストに向けてクリエイティブな商品を作る方針に、ジョブズが戻してくれたことをうれしく思う」と大人の発言で締めくくった。
□COMDEX Japan '98のホームページ
http://www.sbforums.co.jp/comdex98/comdex.htm
□参考記事
【'97/4/14】COMDEX Japan '97レポートインデックス
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/970414/comdexj.htm
('98/4/7)
[Reported by funatsu@impress.co.jp]