【イベント】

PCゲームゾーンでは新作ゲームが目白押し
Intel、Microsoft共にゲーム産業に注目


東京ゲームショウ'98春、会場レポート

「FINAL FANTASY VII」「Quake II Arcade Edition」など
話題作が目白押し

会場前 会場内
会場:幕張メッセ
開催期間:3月20日(業者、関係者日)21日~22日(一般公開日)



行列
幕張メッセをグルッと囲んだ行列
 ユーザーが実際に最新のゲームを遊ぶことができるイベントとして、人気を集めている「東京ゲームショウ」。昨年9月に開催された「東京ゲームショウ」は、イベント規模としては過去最大を記録したが、出展作品の多くがコンシューマー機用ソフトであり、パソコンゲームはほとんど出展されなかった。今回のショウでもその傾向は変わらないのだが、PCゲームを集めたコーナー“PCゲームゾーン”が会場のほぼ中央に設置されたこともあり、それなりにユーザーの注目を集めていた。

 また、今回の東京ゲームショウにあわせて、米Intelのディベロッパ・リレーションズ・グループ ゲームエバンジェリストのJason Rubinstein氏が、Pentium IIに関する優位性やOAA Forum(Open Arcade Architecture Forum)の動向に関して記者会見を開いたり、米Microsoftのエンターテインメント事業を統括するジェネラルマネージャEd Fries氏が来日したりと、PCゲーム業界が活発な活動を繰り広げていた(このほかにも海外のゲームプロデューサーが来日した)。

 今回のレポートではこういった動きを中心に、いくつか公開された新作ゲームをレポートする。

■Intel、Microsoftのゲーム事業統括者がPCゲームの優位性を力説

 今年の東京ゲームショウでは、これまでにないほどPC業界の動きが活発だ。昨年5月に開催されたE3(Electronic Entertainment Expo:アメリカのアトランタで開催されたゲーム関連の見本市)ではIntelの社長がカンファレンスでスピーチを行ない、出展社で一番大きいブース面積を誇ったのは他ならぬMicrosoftだったという。このPCゲーム業界を大きく左右する巨人たちの動きが遂に、日本上陸を果たしたといったところか。

Ed Fries氏
Microsoftのエンタテインメント事業を統括するEd Fries氏。仕事上はもちろん仕事外でもゲームを楽しんでいる
 このところエンターテインメント・ソフトの開発にも力を注いでいる米Microsoftだが、エンターテインメント事業を統括するEd Fries氏が、東京ゲームショウにあわせて来日した。
 お話を伺ったところでは、「秋葉原なども視察でき、キャラクターに関する重要さなど日本市場に関しても得るものがあった」とする反面、「ただ、我々はインターナショナルに事業を展開している。どのゲームも、全世界どこの国ででもヒットするようなゲームを目指して開発している。日本だけに向けた独自のゲーム開発は考えていない」とのこと。たとえば、Microsoft Gamestock '98(Microsoftが'98年に発売を予定しているゲームの発表会)で発表した3Dシューティングゲーム“ Spitfire ”のゼロ戦バージョンなど、日本市場独自の仕様は考えられないという。「ただし、開発しているソフトは多岐にわたる」といい、テーブルゲームからキャラクターゲームまで、かなり多くのゲームを同時進行で開発中のようだ。
 より多くの人に楽しんでもらえるゲームを開発することは大変難しい。ましてや、それぞれの国民の嗜好性の違いが顕著で、たとえば、ドイツではリアルタイムシミュレーション「Age of Empire」が爆発的に売れ、アメリカとほぼ同数を売り切ったという。Ed Fries氏によれば「とにかくドイツはシミュレーション・ゲームが熱い」ということで、かなり極端な売れ行きを示していると思われる。逆にイギリスやスペインではサッカー関連のソフトが売れるなど、国によってソフトの売れ行き動向にかなりの差が生じている模様だ。
 また、日本ではコンシューマー市場が確立されているが、Microsoftとしてはこの現状にどのように切り込んでいくつもりなのだろうか? 「もちろんPCならではのゲームを提供していく。アクションゲームとシミュレーションが統合した新しいタイプのゲーム『Urban Assult』がその答えになるだろう」という。つまり、高解像度、通信対戦、“Force Feedback”対応など、コンシューマー機より優位な機能を強調した、パソコンならではのゲームを発表していくというわけだ。その昔、パソコンゲームに注目が集まったのは、パソコンでしかできないゲームがそこにあったからだが、通信対戦ゲームを除けば、そういったゲームは現在ではあまり存在しない。Fries氏のいう「パソコンならではのゲーム」の登場が待たれるなか、Microsoftの新作ゲームにより一層注目していきたい。
 

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Intel発表会
Intelでゲーム事業を手がけているJason Rubinstein氏。OAA Forumを推進していきたい考え
 インテルは今回、Pentium II、およびIntelの持つ技術がいかにゲーム表現に適応しているかという発表およびデモンストレーションを、東京ゲームショウに合わせて行なった。
 デモンストレーションでは、現在、米SQUARESOFT Inc.が開発中のロール・プレイング・ゲーム「FINAL FANTASY VII(PC英語版)」や、イギリスのRage Softwareが開発したアクションシューティング「INCOMING」(日本ではイマジニアが発売)、Digital Image Designのフライトシミュレーター「F-22 Air Dominance Fighter」(日本ではイマジニアが発売)などが最新PCゲームとして公開された。いずれの作品も、これまでのゲームにはない美しい画像処理を実現しており、特に「INCOMING」の画像処理は鳥肌が出るほど美しい。もちろん、これだけの画像処理を実現するには最新のマシンが必要だが、ワークステーションクラスの画像表現がパソコンで手に入る時代が、すぐそこまで来ているのがひしひしと伝わってきた。
 このほかでは、昨年Intelが発表したアーケードゲーム向けハードウェア仕様「Open Arcade Architecture(OAA)」に関して説明があった。これは、Pentium IIをベースとしたPCのハードウェアで、ソフトウェアベンダーはアーケードゲームをPCで開発できるため、開発資金の削減が実現でき、アーケードゲーム業界でもパソコンのインフラストラクチャの利点を利用することができるようになるという。このハードはハードディスク、CD-ROMなどを搭載し、現在のAT互換機とほぼ同様の構成になっている。現在のアーケードゲームはROMによる供給となっているが、OAAのシステムではソフトはCD-ROMで供給され、ハードディスクにインストールされる仕組みとなっている。
 質疑応答で、「家庭やオフィスより過酷な条件が想定されるゲームセンターという環境で、ハードディスクなど衝撃に弱い機器を使うことに関しては、どのように考えているのか?」といった現実的な問いがでたが、これに関しては「特にクラッシュなどの障害については考えていない」と答えるにとどまった。

 この発表の延長として、OAA上で動くゲームとしては日本初公開となる「Quake II Arcade Edition」が会場でも展示されていた。スタートから少し遊んでみたが、グラフィックやステージ構成は特にパソコン版と変わりはない。ただし、入力がジョイスティック+6つボタンということもあり、パソコンで慣れたものにとっては若干の違和感とやりづらさを感じた。グラフィックの滑らかさなどはさすがだが、逆にこれぐらいのグラフィックが実現できなければ、ゲームセンターでは見向きもされないかもしれない。とはいえ、アーケードと、パソコンゲームの垣根が無くなり、より新しいゲームが登場する可能性が出てくるのでこういった動きにも注目していきたい。

 これまでに何度も“変わる”といわれながらもブレイクしなかった日本のPCゲーム業界だが、IntelやMicrosoftといった“外圧”によってどこまで変わるかが楽しみなところだ。

PCゲームゾーンでは「Outwars」などMicrosoftの最新ゲームを遊ぶことができた Intelは、Pentium IIベースのPCを展示。PCの優位性を強調 今回の発表でもっとも注目を集めていた「Quake II Arcade Edition」。筐体はなぜかSEGA 内容的には違わないが、操作系がアーケード仕様となっているため、パソコンとは違った戦い方を編み出す必要がありそう
「F-22 Air Dominance Fighter」グラフィックだけでなく、行動心理学を応用した敵機の動きなどゲーム性もかなり奥深い動き 「INCOMING」日本ではイマジニアから完全日本語版となって4月2日に発売される シグノシスの「G-Police」以上の超美麗グラフィックが体験できる「INCOMING」。 ほんの少し見ただけだが、グラフィックが美しいだけでなく、キャラクタの動きも滑らかで素晴らしい。


■PCゲームゾーンでは新作がゾクゾク展示

ブース全景
PCゲームゾーン全景。どちらかといえばアクション系のほうが人気だった
 PCゲームゾーンは幕張メッセのほぼ中央に位置する“展示ホール4”に設置され、派手さはないが、かなり大きな作りとなっていた。ブースの真ん中にはステージが設置され、時間によってはゲーム大会が行なわれるなどイベント関連もなかなか盛況だったようだ。いくつか展示されていたものの中でも、目立っていたものを紹介しよう。

 セガ・エンタープライゼスは、すでに発売中となるパズルゲーム「ガラパゴス」、レースゲーム「セガ ツーリングカーチャンピオンシップ」、「バーチャファイター2」をはじめ、4月2日に発売するシミュレーションゲームの傑作「アドバンスド大戦略98 STORM OVER EUROPE」や海外で人気のシミュレーションゲーム「インキュベーションScreen Shots are here)」、そして本邦初公開となる「THE HOUSE OF DEAD PC版」と「エネミー・ゼロ PC版」だ。
 「THE HOUSE OF DEAD」はゲームセンターで現役稼働中のホラータイプのガンシューティング。基本操作はマウスなのでアーケードやセガサターンのようなダイナミックさは感じられないが、グラフィックはセガサターン版よりも細かく、よりアーケードに近い出来となっている。
 「エネミー・ゼロ」は、'96年末にWARPが発表したアドベンチャーゲーム。デモムービーはもとより、全編を通じて美しいグラフィックが特長だが、ゲーム開始直後のシーンを見た限りでは、PCのほうが高解像度であることを差し引いてもセガサターン版より格段に美しくしあがっている。アイテム選択時のロード時間も短く、かなりのレベルで移植が進んでいる模様。ただし、このゲームの肝となる音関係の移植がこれからということで、完成までにはもう少しかかり、発売は夏頃を予定しているようだ。

イベント風景
時々ゲーム大会が開かれていた
 すでにPC Watchなどでも紹介しているスクウェアの「FINAL FANTASY VII 英語PC版」。米SQUARESOFT Inc.が開発、Eidos Interactiveがディストリビュートするこのゲーム。日本での発売予定はと聞いたところ、「未定です」との答え。ただしブースの人気はダントツで、PCゲームゾーン1、2位を競うほどの混雑ぶりだった。こちらも「エネミー・ゼロ」同様、高解像度なぶんパソコン版のほうがグラフィックが美しく、戦闘シーンでのキャラクターの動きも滑らかなようだ。これからユーザーの要望が高まれば、日本語版も発売されるかもしれない。

 コナミは、アーケードで人気の恋愛シミュレーション「ときめきメモリアル~おしえてyour heart~」を展示。このゲームではゲーム終了時に、登場キャラクターがプリントされたカードが出力されるのだが、PC版でも同じ機能を持っており、プリントアウトする代わりに、デスクトップの壁紙などにも応用することができる。さらにPC版独自機能として、ときめきキャラと写真を合成してプリントアウトする機能が添付されている。これはエプソンのプリンターに搭載されているプログラムを利用したものなのだが、ファンにはたまらない、そしてパソコンならではの機能といえるだろう。

 このほかではワールドカップ熱も手伝って来場者の関心を集めていたエレクトロニック・アーツの「FIFA Road to World Cup」。スポーツものの得意なエレクトロニック・アーツだが、この「FIFA Road to World Cup」もかなり練りこまれた作りになっている。選手の動きもかなりリアルで、まるで自分がフィールドでサッカーをしているようだった。
 アスキーは先日発売されたリアルタイムシミュレーションゲーム「KKND Xtreme(Krush Kill'n Destroy)」とアニメのデータベース「魔法陣グルグルどきどきアニメコレクション」を展示。このほかにもアスキーブースで「トゥルー・ラブストーリー~Remenber My Heart~ + アクセサリーBOX Vol.2」、「シミュレーションRPGツクール95」を展示。「トゥルー・ラブストーリー」は、昨年12月にプレイステーションで発売された同作品の移植に加え、昨年9月に発売された同作品のアクセサリーBOX第2弾をカップリングしたものとなる。おまけ要素もてんこもりなのでファン必携の内容だ。
 システムソフトは4月に発売が延びた「大戦略マスターコンバット2」を展示。ゲームバランスなども調整し終わり、かなり完成系に近いものが出来上がっていた。やはり人気の大戦略シリーズということもあり、かなり人だかりができていた。
 コンパイルは、年4回発行しているミニゲームを集めたCD-ROM付きの雑誌「Disc Station Vol.18 <春号>」とパズルゲーム「ぷよぷよSUN」、ビジネスソフト「パワーアクティ」を展示。一番人気はなんといっても「ぷよぷよSUN」。ぷよぷよ人気はいまだに衰えずって感じだ。

 土曜日午前中のPCゲームゾーンの雰囲気は、コンシューマーソフトを展示しているブースに比べれば、訪れる人も少ない感じだったが、「FINAL FANTASY VII」や「Quake II Arcade Edition」といった人気作品には人が群がり、それなりの認知度アップにつながったのではないだろうか?

SEGA「セガ ツーリングカーチャンピオンシップ」 SEGA「THE HOUSE OF DEAD」ブース写真 SEGA「エネミー・ゼロ」ブース写真 SEGA「エネミー・ゼロ」画面写真
スクウェア「FINAL FANTASY VII」ブース全景 スクウェア「FINAL FANTASY VII」戦闘シーン スクウェア「FINAL FANTASY VII」フィールド画面 EA「FIFA Road to World Cup」
コナミ「ときめきメモリアル~おしえてyour heart~」ブース全景 コナミ「ときめきメモリアル~おしえてyour heart~」画面アップ アスキー「魔法陣グルグルどきどきアニメコレクション」 アスキー「トゥルー・ラブストーリー~Remenber My Heart~ + アクセサリーBOX Vol.2」


■他ブースでもPCゲームを展示

 この他にも、数社のブースでPCゲームが展示されていた。このところ新作ラッシュが続いている光栄は通路に面した所にパソコンソフトを展示。一番人気はなんといっても「三国志VI」。いつ見ても誰かがプレイしている状態で、人が途切れることがない。改めて老舗の強みというか、かなりの人気だ。このほかでは「織田信長伝」「維新の嵐・幕末志士伝」「チンギスハーン・蒼き狼と白き牝鹿」などを出品。

 サン電子はブースは狭いが、いつも人があふれていた。出展していたPC用ゲームは、4月23日に発売されるパチンコ実機シミュレーション「必殺パチンココレクション3」と、昨年、他の展示会では発表済みの「SKY-X(仮)」の2作品。「SKY-X(仮)」は、航空宇宙分野の制御システムを応用するなど、自機の動きもなかなかよく期待作なのだが、開発が遅れ気味なのが残念。

 先日、和議を申請したコンパイルも出展。いつもほどの大きさではないが、ぷよまん本舗は元気に営業中。土曜日も多くのファンが立ち寄っており、“魔道物語”や“ぷよぷよ”などコンパイルが持つキャラクターの人気の大きさを、あらためて知らされた。
 業者や関係者のみの特別招待日(金曜日)の終了間際にコンパイル社員が、自社ブース内の特別ステージ上で、今回の和議申請にいたる経過とこれからの方針を説明。「株主をはじめ、内定が決まっていた新入社員の方々にも大変申し訳ないことをしました」と頭を下げ「ただ、今回の件で倒産したわけではなく、現在開発中のタイトルに関してもきちんと発売していくので、楽しみにしてください」と締めくくった。ブースの裏側には「コンパイルはがんばります。皆様の熱い応援メッセージをお願いします」と題したボードが設置されていたのが印象的だった。
 これからも、楽しいゲームソフトの開発を続けて欲しい。

光栄ブース。やっぱり一番人気は「三国志」の新作 サン電子のブース。パソコンゲームは目立つ所に展示されていた コンパイルのぷよまん本舗。和議申請もなんのそので、大盛況。キャラクタービジネス強し! コンパイルブースの裏手に設置された「励ましのお言葉」ボード。がんばれの声のほかに厳しいお言葉も……


■PCゲームはブレイクするか?

 メーカー側も「やっぱりゲームショウはコンシューマー」と口をそろえているように、来場者のパソコンゲームへの興味は薄いように感じる。土曜日午前中のPCゲームゾーンも、もう少し人が集まってもいいソフトのラインナップだった。
 だが一方で、「東京ゲームショウ」のような、これまでにない市場に対しても認知度をあげる作業がこれから必要となってくるだろう。パソコンならではのゲームが登場し、認知度がアップしたときからが、本当の勝負となる。


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('98/3/24)


[Reported by funatsu@impress.co.jp]


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