【コラム】

究極のハイエンド・デジタルカメラ登場!!
Canon EOS D2000

 
Text by Kazuhisa Nishikawa
Canon EOS D2000

 今日2月2日、200万画素CCD搭載ハイエンド・デジタルカメラ Canon EOS D2000(以降D2000)が発表された!!このモデルは、130万画素CCD搭載ハイエンド・デジタルカメラEOS DCS 3c(以降3c)の後継機であり、実に3年ぶり(1995年2月発表)のモデルチェンジだ。残念ながら、筆者はまだ物をゲットしていないものの、Canon Inc.の協力で2時間程触る事ができたので、3cユーザーの視点からファーストインプレッションをお届けする。

D2000本体の写真&資料提供 Canon Inc.

●3cとの違いは!?

 これまで筆者が3cを使っていて「これは不便!!」と思った所を中心に、○×式でD2000の新機能をまとめてみた。ただし、もともとあまり不便を感じなかった点は△、凄く良くなったと思う点については◎を使っている。
 
1)200万画素アスペクト比3:2のCCD

× 3cのCCDは130万画素、有効画素数は1,268×1,012ドット/アスペクト比5:4。理屈は分からないが、なぜか35mmフィルムのアスペクト比3:2に画像を合わせた方が構図の収まりが良いので、筆者はほとんどのケースで必ず1,268×845ドットへトリミングしている。130万画素のCCDをわざわざ107万画素に落とし非常にもったいない使い方なのだ。(^^;

 D2000は、200万画素、有効画素数1,728×1,152ドット/アスペクト比3:2であり、筆者から見た場合、画素数が2倍になった事になる。印刷物を考えると、この差はかなり大きく嬉しい限りだ。さらにノイズが出やすいブルーチャンネルがこのCCDは改善されている。

2)ファインダーの向上

× いくら大判のCCDとは言え、35mmフィルムと比較すると小さくなってしまうので、その画角は35mmフィルム換算で3cは約1.7倍、D2000は約1.6倍となる。(600万画素CCD搭載EOS DCS 1cでさえも約1.3倍) このため、3cはファインダーの中に更に枠が書いてあり(つまり視野率100%以上)、この範囲で構図を決める必要があったのだ。カメラマンによっては「まわりが見えるので、この方が便利!!」と言う人もいるだろうが、筆者を含む大多数から文句続出。

 D2000はファインダーに大細工して、見かけ上普通の一眼レフと同じファインダーになった。ただし、これに伴って、EOS-1NやEOS DCS 3c/1cでは、15分割評価測光なのに対して、D2000は12分割評価測光とスペックダウンしている。しかし、評価測光のアルゴリズムをD2000用に組み直しているので安心して使用できる。

EF70-200mm f2.8L USM,ISO200,Av,f2.8,1/1250,Eval
レンズ側にHot Mirror Filter装着
48ビットRGBモードでAutoLevel補正
24ビットモードへ変換後、疑似カラー処理
彩度+10,UnsharpMask 30/1.5/3
Sample Photo-1
(1,728×1,152ドット 422KB JPEG)
Photo by Kazuhisa Nishikawa
モデル:秋乃ソナタ(MECENAS)
3)着脱式のNi-Cd充電池

× 3cは固定式のバッテリなので現場でバッテリが切れると、いちいち充電しに戻らなければならなかった。これは非常に不便であり、特に去年のLE MANS24時間耐久レースやLiveの撮影では困った事が多々あった。

 D2000は着脱式のNi-Cd充電池を採用。何本か持って出れば、とりあえず何とかなる。一応、一本のバッテリで340MBのHDD二枚分程度(340MB/約2MB=約170枚×2=約340枚)は撮影可能だ。ただ一本30,000円は何とかならないだろうか!?しかも本体には一本も付属しない(充電器は付属)。

バッテリ&PCMCIA Slot
バッテリ(上)とTypeII×2のPCMCIA Slot(下)
サイズ比較
サイズ比較
いかにコンパクトになったか?良く分かる
4)コンパクト化

 EOS-1Nを縦に二倍したような3cのボディーはかなり大きく、取り扱いも非常に大変。とは言え、撮影会などでは凄く目立つので「目線がもらいやすい」と言う利点はあったのだが……。(^^;

 D2000は高さが174mmとなり、EOS-1N HSとそれほど(?)変わらなくなった。またこれに伴いType IIIのHDDは横向きに入るように。これなら、普通の人が見ても裏さえ見なければ、デジタルカメラだとは分からないであろう。ずいぶんカッコ良くなったものだ!!

Sample Photo-2
(1,728×1,152ドット 466KB JPEG)
Photo by Kazuhisa Nishikawa
5)秒間約3.5コマ・連続12コマの高速連写

 秒間約2.7コマ・連続12コマから、秒間約3.5コマ・連続12コマに連写性能は向上した。筆者の場合は3cの秒間約2.7コマでも十分なので、問題にはなっていない。

6)E-TTL調光

 フィルムからの反射を利用し測光する(A-)TTL調光は、その面にCCDがあるので理論上全く機能しない。しかも、540EZなど(A-)TTL調光に対応しているストロボをそのまま使うと「あたかも作動しているように見える」のでたちが悪い。この関係で筆者はストロボに散々苦労したが、最近では外部調光にも対応しているストロボ(Nikon SB-26やCanon 480EG)へ切り替え、それほど深刻な問題ではなくなっている。

 D2000では、相変わらずTTL/A-TTL調光は使えないものの、E-TTL調光に対応した。もちろんこの場合、E-TTL調光に対応しているストロボ、220EXや380EXが必要になる。

7)オート・ホワイトバランス

 基本的に3c/D2000共、撮影したデータはCCDの値がそのままファイルに入っていて(CCD Raw Data)、Photoshop Plug-in/MacやTWAINドライバ/Windows95(NT4.0)を使い画像を開く時にホワイトバランスをとる。その設定は“デーライト”、“タングステン”、“ストロボ”、“クリックポイント”などがあり、画像ごとに設定するのだ。面倒と言えば面倒であるが、もう慣れてしまったので、それほど問題は感じていない。

 D2000は縦位置用シャッターボタンの直ぐ側に白いセンサー窓がある。これを使って、撮影時のホワイトバランスが自動的にファイルへ書き込まれるのだ。パネルを見ると、従来のホワイトバランスに加え“AtCapture”の項目が増えており、これを設定すればOKだ。

ホワイトバランス・センサー
白い窓がセンサー
その右横は、縦位置用シャッターボタン
8)1.8インチ液晶パネル

 遂にハイエンド・デジタルカメラにも液晶パネルが付いてしまった。(^^; 普通のデジタルカメラ同様、これで本体の設定や撮った写真のプレビューが可能になる。興味深いのは“ヒストグラム表示”ができ、更に“プレビュー時にハイ飛びしている部分が点滅する”事だ。液晶パネルを使ったプレビューだけでは、周囲が明るかったり、液晶パネル自体の輝度調整ができていないと、露出オーバー/アンダーの判定は正確にできないが、ヒストグラム表示が出ればどんな状況でも一瞬でしかも正確に把握できる。これは是非とも一般的なメガピクセル級デジタルカメラも真似して欲しい部分だ。ただ、「そんな物、プロが使うか!!」と言う意見もあるだろう。とは言えその昔、AFが出た時も同じだったように、近い将来、プロも液晶パネルを見ながら露出を考える時代が来る可能性も否定できない。

1.8インチ液晶パネル
外ではちょっと見ずらい液晶パネル
9)IEEE1394

 D2000は、これまでのSCSIからIEEE1394に切り替わった。3cではSCSIを接続しないとカメラ内部の日付すら設定できなかったが、液晶パネルが備わった関係で、IEEE1394の用途は、Le Mans Internet Project'97で実験したRemote Shutter Systemのような遠隔操作だけに限られる。これを外して少しでも安くして欲しい……と、思うのは筆者だけではないだろう。

IEEE1394
IEEE1394、この用途は何??
赤外線カット&ローパスフィルタ
筆者はHot Mirror Filterを持っているので、
取り外して撮影。ドライバ一本で簡単に外れる
10)赤外カットフィルタ&ローパスフィルタ

 従来Hot Mirror Filterとしてレンズ側に装着した赤外カットフィルタと、疑似カラーやモアレを低減するローパス・フィルタがカメラマウント部とミラーの間に備わった。これにより、高価なHot Mirror Filterをレンズごとに買う必要も無くなり、疑似カラーを低減する面倒な(? *1)Photoレタッチも不要になる。但し、ローパスフィルタの影響でどうしても画像が眠くなるので、それを嫌う場合は外す事もできる。

*1 Photoshopを使って、“RGBカラー→Labカラー”へモード変換、“a/bチャンネルをダスト&スクラッチ(2~4/pixels)”、“Labカラー→RGBカラー”でもとに戻し、疑似カラー低減処理を行なう。

サブ電子ダイアル
筆者の場合、EOS DCS育ち(?)なので、
あまりサブ電子ダイアルは関係ない(^^;
11)可逆圧縮ファイル

 3cではCCD Raw Dataをそのままファイルへ書いていたが、D2000は可逆圧縮を使ってデータを圧縮する。 当然、可逆圧縮なので効果は少なく平均30%程度(非圧縮=3MB、圧縮時=平均ファイルサイズ2MB)。 D2000は長野オリンピックで導入され、白い雪が多い写真は意外と圧縮率は高いかもしれない。

12)サブ電子ダイヤル

 「これが無いとEOSとは呼べない!!」と言う人が多い中、何故か3cには無かった。もちろんD2000では復活し、加えて縦位置用シャッターボタンも搭載。


●総評

 以上のように、これまで3cの欠点とされていた部分は全て直っている。「D2000はデジタル版EOS-1Nの完成形」と呼ぶのに相応しい魅力的な内容だ。「絶対欲しい!!!!」と思う筆者であるが、相変わらず価格は198万円……。(;_;) 残念ながら簡単に買える値段ではない。何時まで待てばこのクラスのハイエンド・デジタルカメラが“最高級パソコン程度”の価格になるのだろうか!?

□ Canon EOS D2000製品情報
http://www.canon-sales.co.jp/Product/DCS/eosd2000.html

[Text by 西川和久]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp