【イベント】


プロカメラマン山田久美夫の
CESフォトレポート

デジタルカメラ編2 「カシオ、日立」


「1998 International Winter Consumer Electronics Show(CES)」
'98/1/8~1/11 開催(現地時間)

開催地:米ラスベガス


●ストロボ内蔵で簡易動画記録やパノラマ撮影もできる
QV-10系列の完成版!「カシオ QV-770」

カシオ QV-770 カシオ QV-770 カシオ QV-770


カシオ QV-770 カシオ QV-770 カシオ QV-770


 カシオといえば、今回はPalm PC「CASIO E-10」を始めとしたWindows CE 2.0マシン一色では……と思われたが、意外や意外、ブースでは「E-10」と並んで、新型のデジタルカメラを発表していた。それがこの「QV-770」だ。 このモデルは初代QV-10の流れを汲むコンパクトなボディーに、QV-700で採用した内蔵ストロボやVGAの原色系CCDなどをギュッと詰め込んだ、QVのエッセンスいっぱいの魅力的なモデルだ。さらに、同社がこのところ強く指向している”楽しめるデジタルカメラ”という要素も存分に盛り込まれており、約1秒の高速記録はもちろん、高速処理を生かした3.2秒間の簡易動画録再、カメラ内で可能なパノラマ合成機能、IrTran-Pによる赤外線転送などまでも盛り込まれた、意欲作といえる。

 ボディーサイズはほぼQV-200と同じだが、基本的なボディーデザインは妙に角張ったQV-100系列ではなく、QV-10系の滑らかなもので、なかなか高級感もある。手にした感じは、QV-10系列の歴代モデルと同じフレンドリーなもので、古くからのユーザーとしては、どこかホッとするような雰囲気を備えている。

 操作性は比較的大きな変更を受けているが、使い勝手はよく、ボタンが丸形なのも初代モデルに近い感じだ。

 ファインダーは従来通り、液晶式のみ。だが、今回は液晶モニターがより高画質なものになっており、表示がとてもシャープに感じられる。また、メモリーも内蔵式専用で容量は4MBと十分。交換式メモリーカードをサポートしていない点はやや残念だが、これは割り切って使うしかないだろう。 一方、今回は「IrTran-P」による転送をサポートしているので、IrTran-P対応のプリンターや周辺機器なメーカーを問わずに利用できる点は便利だ。

 本機の機能面での目玉としては、前記の通り、簡易動画録再とパノラマ合成がある。まず、簡易動画は先代のCyber-shotと同じように、画面分割(16分割)による高速連写(秒間10枚)したものを液晶モニター上で高速に連続再生するもの。そのため、画像サイズは1/16VGAと小さく粗いが、液晶上で楽しむなら実用レベルであり、見ていても、結構楽しい。もちろん、パソコンへの転送時にはオリジナルの16分割画像となっている。 パノラマはQV-700で採用されたものと同じで、パノラマモードで撮影すると、画面の左端に半透明に1コマ前の右端の画像が表示されるので、それを見ながらつなげてゆくという、合理的でミスの少ないもの。しかも、QV-770では撮影したパノラマ画像を、カメラ内で合成表示することができるため、記録されているのはごく普通のコマなのだが、液晶上ではきちんとパノラマとして見えるわけだ。また、表示時には自動的に画面が横方向にスクロールし、往復再生する点もわかりやすい。こちらもパソコン転送時は普通に撮影したコマになっており、付属のパノラマ合成ソフトでユーザーが合成をしてパノラマ化するわけだ。

 もちろん、基本機能も充実しており、ストロボもレンズといっしょに回転するので自分撮りとするときにも利用できるし、ピントは従来通りの手動式ながらも、面倒な絞りの切り替えは自動化されている。また、画像の記録も約1秒前後と高速だ。なお、現地での価格は399ドルとアナウンスされており、もちろん、この春には日本国内でも発売される。

 先だって、VWはゴルフをベースに名車「ビートル」を現代風にアレンジし復活させたが、この「QV-770」を見ていると、現在の技術で甦った名機「QV-10」という感じがする。このモデルを手にして感じる、なんとも懐かしい雰囲気は、一体何なんだろう。QV-10発表からわずか3年でこれほど急速に発展したデジタルカメラは、機能の充実と高画素化に明け暮れて、いつの間にか人間が使う道具としてもっと大切なものを失っていたのかもしれない……。と、本機を見ながら感慨にひたってしまった。


●DVD準拠のディスクを採用した
超薄型デジタルムービーを出品した日立

日立プロト 日立プロト 日立プロト


日立プロト 日立プロト 日立プロト


 日立のブースでは、プロトタイプとして、3インチの光学式ディスクを利用した、超薄型でコンパクトなデジタルムービーカメラが展示されていた。このモデルは、どちらかというと、プロトタイプというよりも、将来的なコンセプトモデルに近い雰囲気を備えたもの。そのため、詳しいスペックなどはなく、パネルが一枚あるだけというシンプルな展示だった。

 DVDプレイヤーやDVD対応PCでの再生が可能で、記録方式はもちろんMPEG IIがベースとなっている。また、レンズに関しては、20倍ズームと回転式のレンズ部に刻まれているくらいで、それ以上のことは不明だ。このモデルはブースで手にすることができたが、案の定、稼働しなかった。 まあ、DVDシステムの可能性をアピールするためのデモの一環という感じだが、もし、こんなモデルが登場したら、さぞかし魅力的だろうなあ~と思ってしまった。


□「1998 International Winter Consumer Electronics Show(CES)」ホームページ
http://www.cesweb.org/

('98/1/12)


[Reported by 山田 久美夫]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp