スマートメディアFDアダプタ「FlashPath」使用レポート
まず外観は、3.5インチFDDで読み込むため、サイズ・形状ともに3.5インチフロッピーと同じだ。もちろん、回転部分はないが、パソコンに装着したことを検知するために、フロッピーのディスクカバーにあたる部分に簡単なスイッチが設けられている。
また、「FlashPath」はフロッピーのような単なる磁気媒体ではなく、スマートメディアに記録されたデータを磁気ヘッドで一度磁気データに変換し、パソコンのFDDの磁気ヘッドで読みとれるように変換するもの。そのため、電源が必要で、本体にはCR2035という超薄型のボタン型電池を2つ搭載されている。
セッティングはいたって簡単。付属のドライバーソフトをPCにインストールし、再起動するだけでOK。あとは、「FlashPath」にスマートメディアを差し込んで、FDDドライブに入れれば、普通のフロッピーディスクとまったく同じ感覚で、スマートメディアのデータを扱うことができる。
なお、今回の「FD-A1」がサポートしているのは、5Vと3.3Vの8MBまでのスマートメディアで、取扱説明書などには今後登場する内部構造が異なる16MB以上のカードに対する記述はない。
また、当然のことながら、ドライバソフトをインストールするだけで使えるため、PCの裏側に回ってケーブルを接続したり、ケースの蓋を開けて取り付ける各種カードドライブと違い、誰にでも簡単に扱える点は大きなメリットといえるだろう。
しかし、便利で手軽な半面、データの読み書き速度にはやや不満を感じる部分もある。感覚的にはフロッピーディスクへの読み書きとほぼ同じ速度。とくに筆者は普段SCSIタイプのPCカードドライブを愛用していることもあって、かなり遅く感じた。とはいっても、トータルで数MBクラスのファイルを扱うなら、実用上は十分な速度といえるし、デジタルカメラのシリアル転送に比べれば、遥かに高速であることは確実だ。
では実際にどれくらいの速度なのか、具体例を挙げて紹介しておこう。この「FD-A1」は富士フイルムの測定値では、読み出し速度200~250kbps、書き込み速度70~100kbpsとなっている。単純に通常のシリアル転送と比較すると、数値的にはシリアルポート側の上限である115.2kbpsに対して、FD-A1は読み出しで約2倍、書き込みでは約2/3となるわけだ。しかし、実測では様々な要因があって、かなりFlashPathのほうが有利になる。
実際に同じ画像データ(富士フイルム DS-30のFineモードで撮影した約85KB/枚のデータ10枚)を使って、他の媒体やドライブと読み書きに要する時間を比較してみた。結果は下表の通り。
書き込み時間 | 読み出し時間 | |
---|---|---|
FDD | 約35秒 | 約25秒 |
FlashPath | 約60秒 | 約33秒 |
DS-30シリアル接続 | 約200秒 | 約90秒 |
パラレルポート接続カードドライブ (フラッシュメイト2000+PCカード変換アダプター) | ― | 約12秒 |
SCSI接続カードドライブ (「KERNEL PCD500」カーネル+PCカード変換アダプター) | ― | 約7秒 |
数値的に見ると、フロッピーディスクよりもやや遅いものの、シリアル転送に比べれ約3倍くらい高速なわけだ。この結果から見ると、現在デジタルカメラからのデータの読み書きをシリアル転送でおこなっている人にとって、かなり転送時間が短縮できることが容易に理解できる。逆に、すでにPCカード用のカードドライブを持っている人にとっては、速度面でメリットのない製品といえる(もっとも、このようなユーザーがわざわざ別途購入するとは考えにくいが……)。
一方、デジタルカメラ用の接続キットは価格はまちまちだが、さまざまな付属ソフトやケーブルが付いているものでも、FlashPathとほぼ同等。さらに、接続ケーブルだけ購入して、そのメーカーのホームページからTWAINドライバをダウンロードしてくれば、かなり安価にシリアル転送の環境がそろう。このことを考えると、やはりFlashPathのほうが結構高くつくわけだ。
しかし、シリアル転送に比べ、3倍くらい高速なうえ、大容量フロッピーとしても利用できることを考えると、さほど高い買い物とはいえないだろう。
次に、最近安価になってきたパラレルポート接続のPCカードアダプターやISAバス用スマートメディア用ボードに比べるとどうだろう。パラレルポート用ドライブの場合、スマートメディアを直接アダプターなしで読めるドライブはないので、結局は別途PCカード変換用アダプターを購入することになる。この場合には、当然のことながらFlashPathのほうが安価になる。
もちろん、PCカードやCFカードも利用したいという場合には、スマートメディア専用のFlashPathがあっても、結局はドライブを購入することになるので、このケースではどちらが得とは言い難いだろう。
また、ISAバス用ではスマートメディア専用カードが5,000円前後から発売されているので取り付ける手間や操作性を考えなければ、こちらの方がFlashPathよりも高速で安価になるわけだ。
このように考えると、自分が利用する環境や使い方によって、FlashPathのお買い得度は結構違ってくるが、スマートメディアを利用する人には、とても便利なツールとなることだけは確実だ。
最後になるが、この「FD-A1」の場合、パッケージや取扱説明書を見ても、利用できるカードは最大で8MBカードまでという記述になっている。もちろん、まだ16MBカードは発表されただけで、出荷時期は来年の第二四半期になるために、あえて記述していないのかもしれないが、そう遠くない時期に出荷される期待の大容量カードだけに、その対応が気になるところだ。もっとも、現状では16MB以降のスマートメディアを正式にサポート表明しているデジタルカメラは存在しないので、いずれにしろ、今後の話といえばそれまでだが、規格面でユーザーを困惑させがちなスマートメディアだけに、このあたりの対応については、しっかりと明記して欲しい。
そして、より多くのユーザーが気軽に購入できるよう、16MB以上の大容量スマートメディア完全対応で、より安価に購入できる次期「FlashPath」の早期登場を期待したい!
('97/12/18)
[Reported by 山田 久美夫 ]