外観上は先代モデル(DSC-F2)とさほど大きな違いはないように見えるが、内容的にはかなり大幅な変更が加えられている。その主だったものとしては、CCDの小型化(1/3インチ→1/4インチへ)、内蔵メモリーの大容量化(4MB→8MBへ)、連写性能の向上(最速0.25秒間隔で20枚)、モノクロ&セピアモード、フレーム合成(プリクラ風)モードなどの新設など、実に多方面に渡っている。さらに今回、取り込み用ソフトも大幅な高機能化が図られ「Pic'n Roll」というネーミングで新発売されている。
ともすると、メモリーの大容量化だけに目を奪われがちに見える「DSC-F3」だが、その実力や楽しさについてレポートしよう。
マクロ撮影例 |
とにかく、楽しめる機能が満載されていること。この点が従来機とDSC-F3との一番の違いといえる。
もともと、このCyber-Shotシリーズは、“デジタルだからできること”に重点をおいたモデル。それは初代から受け継がれているスタイリッシュなデザインであり、フィルム代を気にせずに素早く軽快に撮影できる連写機能であり、美しい液晶再生であったわけだ。二世代目となったDSC-F2はそれを受け継ぎレベルアップした“改良機”だった。
そして、今回のDSC-F3は、より一歩進んで、デジタルならではの魅力をさらに追求したモデルとなっている。それは高速連写であり、アニメ化、パノラマ、モノクロ&セピア、フレーム合成といった機能なわけだが、それらが実に気軽に楽しめる点に好感が持てる。
「Pic'n Roll」操作画面例 |
そして今回は、内部バッファーメモリーの容量を増やすことで、VGAモードでも、エコノミーモードならば、0.25秒間隔で最大20枚もの連写を実現。つまりシャッターを押しっぱなしにしておけば、5秒間の連写ができるわけだ(メモリーへの記録は、バッファー内に貯めた画像データを順次処理してゆくため、それなりの時間が必要だ)。また、アニメモードを使うことで4分割撮影(一画面は1/4VGA)で5枚(20画面分)の撮影ができ、それをカメラ内でアニメ風に簡易動画として表示できる機能が加わっている。また、DSC-F2ではVGAの9分割だったので画面がかなり粗く、PC上でみるには解像度が不足していたが、今回は1/4VGAなので解像度も十分だ。
もっとも、これらの連写やアニメは、画像データとしては連続した静止画という形で記録されているため、それを簡易動画にするためには、今回同時に発売された別売アプリケーション「Pic'n Roll」でおこなう。これはCyber-shotからのシリアルやIrDAでの画像転送機能も備えているわけだが、それ以外に、アニメ化や後記のパノラマ化、ホームページ作成、簡易ビュワーといった豊富な機能を備えている、魅力的なソフトといえる。
今回紹介するものでは、犬と富士山のアニメーションGIFは、アニメモード(画面サイズは320×240ドット、画質はエコノミーモード)で撮影したもので、プラレールのカットはエコノミーモード(640×480ドット)で連続撮影したものをもとに、本ソフト上でアニメGif化している。
ほんの数秒の短い動画なのだが、実に気軽に撮影できるうえ、200枚撮影できる圧縮率の高いエコノミーモードでも十分実用になる画質が得られるため、5コマ消耗するアニメモードや20コマ使うVGAでの連写モードでも、残りの枚数をさほど気にせずに使える点がいい。とくに、ホームページ上でのアニメGifを使った簡易動画を作るのに実に便利だ。もっとも、この楽しさは実際に使ってみないと、なかなか実感できないかもしれない。
【左上】617KB 【右上】271KB 【左下】268KB |
「犬」(2,140KB) | 「パノラマ」(873KB) |
また、この「Pic'n Roll」には、パノラマ合成モードやWebページ作成モードもあり、実に便利。パノラマはごく普通に画面の半分くらいが重なるように、何枚か撮影しておいて、それを自動的に合成するもの。最初はなかなかうまく撮影できないが、結構いい加減に撮影しても、それなりに見られるパノラマになる。しかも、つなぎ目の処理も比較的自然だし、コマごとの明るさの調整も自動的に施してくれる点もいい。
パノラマ画像作成画面例【1,024×768dot 164KB】 |
パノラマ画像【3,310×410dot 286KB】 横にスクロールしてご覧ください |
さらに、Web機能では、指定したコマを使って、自動的に画像にリンクが貼られたHTMLファイルを作成することができる。まあ、あまりレイアウトの自由度はないが、とにかく簡単にページが作成できる点には感心する。
このほか、最近多くなってきた、モノクロやセピアモードも、なかなか雰囲気がある。とくに液晶画面自体がモノクロやセピアで表示されるので、最終的な雰囲気が掴みやすい点がよく、ひと味違った写真が楽しめるモードといえる。
モノクロ | セピア |
フレーム合成もカメラ内は10パターンのみと、ちょっと少なめだがきちんと用意されている。また、「Pic'n Roll」側にも別に24種のフレームがあり、カメラ側にアップロードして利用することもできる(Windows版のみ自作フレームのアップロードも可能)。カメラ側には一度に10枚しか収納できないが、それなりに楽しめるモードといえる。
海外での撮影サンプル |
内蔵メモリーが8MBに増えたことで、撮影枚数は、ファインでも約50枚、ノーマルモードで約105枚、エコノミーモードでは約200枚もの撮影ができるようになった。もちろん、已然として内蔵専用であるとはいえ、VGAモデルで8MBのメモリーがあれば、実用十分。しかも、一般的なシーンではノーマルモードでも十分実用的なクォリティーが得られるため、以前のように残り枚数をいちいち気にしながら撮影するケースはかなり減ったのは事実。やはり、その分、精神的な負担は結構軽減されている。とくに、連写をする時にはかなり余裕を感じる。
とはいっても、電池の持ち時間は公称35分(DSC-F2は30分)といくらも延びていないので、一回の充電で8MBをフルに使うには、かなりこまめに電源をON-OFFする必要がある。実際に撮影してみると、連写が中心ならば、100枚くらいの撮影は十分にこなせるが、スナップ的な撮影になると液晶を点灯しておく時間が長くなることもあって、100枚撮影するのは困難な感じだ(使用状況にもかなり左右されるが……)。そのため、やはり予備の電池は常時携帯していたほうが安心なのは、従来機通りといえる。
また、画像の転送は、従来通り、シリアルケーブルか、IrDA。さすがに8MBすべてを転送するのは、かなり時間がかかるので、食事前や昼休みに転送しておくというのが現実的。このあたりは、やはりメモリーカード方式のように、カードドライブ経由でコピー感覚で転送できるモデルと大きく差が出る点といえる。
もちろん、約1秒という高速記録やリアルタイムといえる液晶表示のレスポンスのよさは、きちんと受け継がれており、実に気持ちよく、軽快に撮影することができる。
操作性も基本的には先代のものを踏襲しており、使用頻度の高い機能は専用ボタンが割り当てられ、それ以外の詳細設定などは同社独自のジョグダイアル式となっている。また、ジョグダイアル内のモード切替もメニューが若干変更されており、従来よりも分かりやすいものになっている。
DSC-F2(旧型) | DSC-F3(新型) |
まず、CCDが小型化することで、1ピクセルあたりの面積が小さくなる可能性が高く、それに伴って、要求されるレンズの解像度も高くなる。さらに、受光面積が減るため、感度が低下する場合もある。だが、CCDを制作する場合には、1枚の大きなチップから得られる枚数が増えるのでコストが安くなるし、専用に光学系を設計すればレンズを小型化することもできるというメリットがある。
さて、今回の「DSC-F3」だが、結果を先にいえば、従来モデルよりノイズが増えているものの、輪郭強調により見かけ上の解像度が若干向上し、彩度も高くなっているので、見栄えのする絵作りとなっており、さほど1/4インチ化されたデメリットを感じさせないものに仕上がっている。
まず、同じシーンをDSC-F2といっしょに撮影してみると、写る範囲が大幅に変わっていることに気付く。これはCCDが小型になっているにも関わらず、レンズが変更されていないためで、35mmカメラ換算ではDSC-F2が35mm、DSC-F3が46mmレンズ相当になっている。従来機より結構狭くなっているが、従来機が結構ワイドだったので、1/4インチになっても、従来機を知らずに使っていれば、さほど狭い感じはしないかもしれない。もっとも、46mm相当になると、よほど腕が長くても、背景を入れたセルフポートレートを撮るのは結構難しいだろう。
個人的には、CCDサイズを変更すれば、当然、それにあった最適なレンズに変えるのが当たり前だと思っているが、今回のモデルに関していえば、46mm相当とやや狭くなったことで、簡易動画やパノラマ撮影が若干撮影しやすくなったというメリットが、おそらくは期せずして生まれたので、実用性としては許容範囲に収まっているが、この点はなんとも釈然としない。
なぜなら、CCDを小型化するメリットは、コスト面以外にほとんど見られないからだ。もちろん、そのお陰で、メモリーを増やし、内部バッファーを増やしても、従来よりも低価格になっているのかもしれないが、この点だけは妥協の産物という感じが拭いきれない。
さて、画質面だが、前記の通り、CCDの小型化によるデメリットは、やや感じられる。とくに、従来の1/3インチタイプのような、ノイズが少なくて丸みのある滑らかな再現性ではなく、どちらかというと、ソフト的に輪郭やコントラスト、彩度などを強調することで、実用的な“見栄え”を優先させたものになっている。
実際に同じ位置から、同じシーンをDSC-F2と今回のDSC-F3で撮影してみると、中遠景の解像度は大きく写っている分だけ、新型のF3のほうがシャープに見える。また、ソフト的な輪郭強調処理もF3のほうが強めな点も、見かけ上の解像感のよさに貢献しているような感じだ。
また、カラーチャートを同じサイズに写りように、各機で距離を変えて撮影したカットでみると、それぞれの絵作りの違いがよくわかる。とくに、下の文字の部分やチャートを見ると、F3のほうがコントラストや彩度が高めに設定されているのがわかるだろう。そのため、F3のほうが印象がよく、見栄えがする写りとなっている。しかし、カラーチャートの均一な色の部分を見ると、ノイズ成分は明らかに先代のF2のほうが少なく滑らかであり、輪郭の描写もより自然だ。
レンズは変わっていないが、直線の歪みはF3のほうが少ない。これはF3のCCDはサイズが小さいため、レンズの中心部の歪みが少ない部分だけを利用しているためといえる。
まあ、ごく普通の人が見ると、F2よりもF3のほうが、見栄えがよく見えるケースが多い。よくいえば、欠点をうまくカバーした絵作りではあるが、やはりCCDの小型化および変更は、釈然としない部分を含んだ、大きな“変更点”といえる。
魅力的なモデルが続々と登場しているデジタルカメラだが、“デジタル”と“カメラ”という二つの要素でみると、最近のモデルは圧倒的に“カメラ”指向のモデルが多くなっている。しかし、“デジタル”ならではの楽しさを追求したモデルは意外に少なく、その意味で、Cyber-Shotシリーズはなかなか貴重な存在といえる。なかでも、DSC-F3はこの“デジタルならではの楽しさ”にこだわったモデルとして、とても魅力的な存在といえる。
確かに画質や絵作りという点ではまだ気になる部分もある、本機には「VGAは楽しくなくっちゃ!」という感じのどこか吹っ切れた、いい意味での割り切りが感じられる。
画質にこだわるメガピクセル機もいいが、フィルム式カメラには到底できないデジタルの面白さを堪能できる本機には、また違った世界がある。その意味で本機は、「もっと楽しく、もっと軽快にカッコよく、デジタルカメラをエンジョイしたい人!」というにオススメしたい、とても素敵な“デジタル・グッズ”だ。
□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/index-j.html
□製品情報
http://www.sony.co.jp/ProductsPark/Consumer/DSC/DSC-F3/index.html
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【10/22】ソニー、MDカメラと「サイバーショット」の後継モデル
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/971022/sony.htm
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■注意■
('97/12/2)
[Reported by 山田 久美夫 ]