●IBMブースではネットワークビークルを展示
毎年COMDEXで大型ブースを構える米IBM社の今年の目玉は、米Netscape Communications社や米Sun Microsystems社などと共同開発をしたネットワークビークルだった。これは、バンにさまざまなコンピュータと通信機器を組み込んだ、近未来インテリジェントカー。各座席にはモニターが組み込まれ、無線通信により走りながらWebにアクセスしたりEメールをチェックしたり、テレビを見たりできる。もちろん、GPSカーナビゲーションも兼ねている。
搭載されているのはNC (Network Computer)だが、ユーザーはキーボードやマウスで操作する必要はない。IBMの音声認識技術「ViaVoice」とテキスト読み上げ技術により、車と本当に「対話」をして操作することができる。たとえば、デモでは「Read E Mail」と言うとメールを抑揚の効いた音声で読み上げるといった様子を見せた。また、インターネット経由で流れてくる株価を読み上げさせるというデモも行った。
また、専用PDAによるリモートコントロールも可能で、ドアロックから温度コントロールまでさまざまな操作ができるという。また、このクルマでは外部からのデータのダウンロードは衛星経由でハイスピードで行われる。衛星用のアンテナはクルマのルーフに組み込まれており、ちょっと見ただけではわからないようになっている。外部へのアクセスには携帯電話を利用するようになっている。デモストレータによると、このビークルは夢ではなく、ほんの数年先には商品として売られるようになるそうだ。ちなみに、ビル・ゲイツ氏もこのクルマに試乗(走らせたのではなく乗っただけ)したという。
米IBM社は、COMDEXの直前に発表した16.8GBのデスクトップ用3.5インチHDD「Deskstar 18GP」を、ブースに一時出展した。これは、次世代のHDDヘッド技術と言われる「GMR」ヘッドを初めて採用したドライブ。GMRヘッドは記録密度が上げられるのが特徴で、2001年には10Gビット/平方インチになるという。回転速度は5,400RPM、平均シークタイムは5.56ms。インターフェイスにはUltra DMAを採用している。ただし、今回の製品はOEM向けオンリーで小売りはしない。また、このHDDを採用したPCが登場するのは、少なくともあと3-4ヶ月は後になるという。
●IBMはNCで音声認識もデモ
米IBM社はNC (Network Computer)も多数展示していた。IBMは、PowerPC 403を採用した従来のNetwork Station Series 100(33MHz)とSeries 300(66MHz)に加え、今週からPowerPC 603eを採用したNetwork Station Series 1000を出荷し始めたという。Network Station 1000では、これも今月発表されたばかりのJavaベースのアプリケーションスィーツ「eSUITE(コード名Kona)」を搭載デモをしていた。また、音声認識ソフトウェアViaVoiceのデモをNCで行っているコーナーもあった。サウンドをサポートするNetwork Station 1000を使い、認識エンジン自体はサーバー上に置くカタチとなる。
会場担当者によると、IBMではこの3タイプのNCを用途別に棲み分けてユーザーに提供してゆくという。基本的には、Network Station 100はサーバー側でアプリケーションを走らせるターミナルとして、Network Station 300はWebブラウジング機能ターミナルとして、そしてNetwork Station 1000はJavaベースのアプリケーションを利用する多機能ターミナルとして売り込むという。また、最近持ち上がってきた、NC陣営内部でのWebベースのデスクトップ環境「Webtop Specification」の実現化の動きに関しても、それに追従するのはNetwork Station 1000だけであり、Network Station 100/300は関係がないという。
●IBMが画期的な半導体製造技術CMOS 7Sを展示
また、米IBM社の半導体部門IBM Microelectronicsでは、今夏発表した銅配線技術を使ったASIC技術「CMOS 7S」のサンプルを出展。実行チャネル長は0.12ミクロンで、最大7層レイヤ(ローカルインターコネクト1層を含む)で、1チップ上に1200万ゲートを集積が可能という。会場では、最下のタングステンによるローカルインターコネクト層の上に、6層の銅配線を配する拡大写真も展示していた。この技術では、ゲート遅延も極めて小さくなるので、先月学会発表を行ったような1GHzを超えた超高速プロセッサも可能になるという。IBMでは、98年第1四半期までに、基本的なセルライブラリを揃えテストが可能な段階にし、第3四半期から第4四半期にかけて、ライブラリを完成させるつもりだという。
英Geofox社は、PsionからOS「EPOC32」と基本アプリケーションのライセンスを受けたハンドヘルドコンピュータ「Geofox-One」を、COMDEXに出展した。これは、今月発売したもので、640x320ドットのモノクロ液晶ディスプレイとキーボード、グリッドポイントを装備。標準モデル(499ドル)と、モデムやアプリケーションを搭載したプロモデル(949ドル)の2タイプがある。同社では、当初OSにWindows CEの採用も検討したが、「Windows CEではサポートするディスプレイサイズが限られていたことと、アプリケーションが不在であることからPsionを採用することにした」という。
米3COM社は、CATV業界の標準仕様に沿ったケーブルモデム「U.S. Robotics Cable Modem VSP/VSP Plus」を発表した。これは、最大手のCATVプロバイダ4社が主導する業界団体Multimedia Cable Network System (MCNS)が策定した規格を満たす業界では初めての製品。RFレシーバー部分は64 QAMと256 QAMをサポートし、最大27Mbps(64 QAM)~38Mbps(256 QAM)でのデータ転送が可能。2方式をサポートしたのはMCNS仕様に沿ったもので、CATV会社の回線品質の違いによって選択するという。また、VSP Plusはケーブルモデムにx2のアナログモデムを組み合わせた製品で、データの下りはCATV回線、上りは電話回線を使う。これは、米国に80%程度残るという片方向のCATV網に対応するため。3COMによると、「2から3年前にケーブルモデムが騒がれた時は、標準が不在のため普及にはいたらなかった。しかし、今後はMCNS仕様により標準化されたモデムが小売りもできるようになり大きく変わるだろう」と今後を予測する。3COMの製品も小売り予定で200ドル程度からになるという。また、仕様のフィックスしていない部分に関しては、内蔵フラッシュメモリのアップグレードにより対応可能という。なお、この製品に関しては、サンプル版のため写真撮影は許可されなかった。
米Microsoft社、米Sharp社、米Hewlett Packard社、米Intel社の4社は、PCと家電向けのコントローラ用赤外線通信規格「IrBus」をCOMDEXに出展した。これは、キーボードやジョイスティック、ゲームコントローラ、マウス、PDAなどを使い、PCやインテリジェントTV、セットトップボックスやその他の家電をコントロールするための新規格。特徴は(1)最大8個までのデバイスを同時に利用可能、(2)6~8メートルの遠距離からも通信が可能、(3)13msと高速なレスポンスタイムなど。展示では、高速で正確なレスポンスが必要なバーチャファイターなどのゲームをデモ。また、スペックを上回る10メートル以上離れた場所からのデモも行った。ちなみに、6~8メートルというスペックは米国のリビングの広さに合わせたとのこと。正確には5個までのデバイスが同時に利用可能だが、空いたチャネルにさらに3個のデバイスをダイナミックに割り当てることで最大8デバイスのサポートが可能になるという。従来の赤外線通信の規格では、高速通信は可能であってもコントローラに要求される多数デバイスや遠距離、高速レスポンスなどは保証されていなかったため、この規格を策定したという。現在は規格提案の最終段階で、早ければ来年2月に正式に規格化されるという。
米Techmedia社は,超音波を使ってポインティングをするワイアレスコントローラ「3DZoneMaster」を出展した。これは、ディスプレイに装着する「く」の字型のフレームユニットと、銃型の携帯コントローラの2つのパートからなる。フレームの3ヶ所から発信する超音波を、携帯コントローラで受けて3次元上での位置を測定する。超音波によって、従来にない正確な位置検出とスムーズな移動位置の検知が可能になったという。
Windows PC市場に進出したUMAXは、Intelが未発表のノートパソコン用MMX Pentiumの高速版を搭載した機種を展示した。これは、Tillamook(コード名)の266MHz版で、Intelが来年1月頃に発表すると見られているMPU。同社の会場では、233MHz版MMX Pentiumを266MHz版に載せ替えたノートパソコンをデモしていた。表示は233の文字をマジックで消して266と書き換えてあり、担当者によると「急きょサンプルチップを載せたデモ機を用意した」のだという。IntelからMPUが正式に発表され次第、正式製品として発表するという。
米SyQuest Technology社は,発表したばかりの1GBの低価格リムーバブルカートリッジハードディスク「SparQ」を出展した。外付けパラレルポートタイプと内蔵EIDEタイプの2種類がある。Jazドライブとパフォーマンスはほぼ同等で、よりリライアブルで低価格な製品を目指したという。カートリッジやドライブの入り口が簡単に開かないようになっており、ダストが入りにくくなっているという。
[Reported by 後藤 弘茂]