【イベント】
【エレクトロニクスショー】
プロカメラマン山田久美夫の
エレクトロニクスショー デジタルフォトレポート
'97/10/6~10 千葉幕張メッセにて開催
国内の大規模なデジタル関係イベントのトリを飾る「エレクトロニクスショー」。このイベントは完成品はもちろん、電子デバイス関係の展示が大半を占めるという異色の存在といえる。今年のイベントでもデジタルフォト関係の新製品や、注目すべきデバイスが数多く登場。その概要をレポートしよう
[製品編]
昨年はシャープやサンヨー、松下などが参考出品としてデジタルカメラを展示しており、いずれもがその後、製品として発表された。それに対して、今回のイベントでは参考出品はナシ! いずれもすでに発表済みのものだが、先々週のWorld PC Expoではなく、あえて家電色の強いエレクトロニクスにあわせて発表するあたりに、そのメーカーのデジタルカメラに対する考え方が現れているようで、なかなか興味深いものがある。
●81万画素の新型マルチーズを出品したサンヨー
サンヨーは先だって発表されたばかりの81万画素モデル「DSC-X1」を出品。高画質で、しかもスマートメディア対応プリンターとのセットでプリントが容易にできる点をアピール。使い勝手がよく、コンパクトカメラ感覚で扱えるモデルだけに、来場者の反応も上々だった。
また、今春のビジネスショーでも参考出品されていた、PIASFによる画像転送システムを再び出品。カメラの性格やアダプターのサイズから考えても不釣り合いなシステムだが、たびたび出品されるところを見ると、PHSとデジタルカメラを組み合わせたシステムを考案しているのかもしれない。
●VE-LC2とIrTran-Pを積極的にアピールしたシャープ
シャープも、先週発表したばかりの、コンパクトなアルミボディー採用の「VE-LC2」を出品。広い会場で見ると、その小ささは際立っており、ほんとうに、よくこのサイズに回転式レンズと2.5インチ液晶を搭載したもんだ……と感心してしまう。
とくに今回のイベントでは、静止画の赤外線転送規格として提唱されている「IrTran-P」を積極的にアピール(まだ国際規格にはなっていない)。この規格は「VE-LC2」よりも先に「パワーザウルス」に採用されており、さらに今回は「IrTran-P」対応のプリンターも発表し、本規格を中心としたシステムを展開。実際にカメラ間でのデータ転送のデモなども行われていた。まだ、他社が正式にサポートした製品を発表していないので、どの程度の広がりを見せるかは未知数だが、今後の他社の展開が注目される規格といえる。
●MD Cyber-shotとツァイスレンズ付きデジタルビデオが注目のソニー
ソニーは今回、World PC Expoで参考出品した話題の「MD Cyber-shot」を参考出品。とはいっても、PC Expoでのアナウンス以上の話はなく、詳細は正式発表待ちといった感じ。しかし、ほとんど製品レベルの仕上がりなので、正式発表もそう遠くないことが予想される(もっとも、33万画素クラスは今年の年末商戦に間に合わないと、かなり厳しいと思われるが・・・)。
また、今回初登場のものとしては、ソニーが開発した画像関係アプリケーションがあげられる。これは従来のCyber-shot用アプリケーションをベースに、レイアウトやお絵かき機能をふんだんに盛り込んだもので、かなり楽しめるものに仕上がっている。撮った後に楽しめるという、現在比較的手薄になっているポイントに着目したアプリケーションとして注目される。なお、今回は参考出品で、発表・発売ともに未定という。
そのほか、個人的にきわめて気になったのが、ドイツの名門「カール・ツァイス財団」が設計したツァイスレンズを搭載したデジタルビデオ「デジタルハンディーカム PC10」。アナログタイプでは限定モデルとしてツァイスレンズ搭載機はあったが、デジタルでは初めて。描写力に定評のあるツァイスレンズを搭載したと聞いただけで、カメラマニアなら誰もが食指を動かしそう・・・。はたして、どの程度、描写に違いが見られるかは分からないが、私自身、「ツァイスの故郷をたずねて」という作品集を出している大ファンなので、これはもうgetするしかない!という感じだ。
●自社ブランド「DJ-1」を展示していた三菱
三菱電機は、以前からT-ZONEブランドで発売している超薄型モデル「DJ-1000」の自社ブランドモデルである「DJ-1」を出品。外観も仕様もすべて同じで、単に型番だけが違うモデル。やっぱり、この価格と外観と携帯性は大きな魅力であり、自社ブランドでの発売も納得できる。しかし、もう少し画質を向上させないと・・・・ね。
●PCカード対応昇華型プリンターを出品した松下
松下は今回、DVD一辺倒という感じのブース展開だったが、それに埋もれるように、先日発表されたばかりのPCカード対応昇華型プリンター「MV-MPX1」を出品。このモデルは、JPEG圧縮でPCカード式のデジタルカメラの画像なら、どれでもカードを挿すだけでパソコンなしにプリントアウトできるもの。もちろん、PCMCIA Type2のATAカード相当に変換できればいいので、コンパクトフラッシュカードでも、スマートメディアでもアダプターを介せばOK。そのため、大抵のモデルが利用できる(J6IフォーマットのリコーもOK)ので、記録メディアが混沌としている現時点では一番安心な選択肢といえる。
解像度は288×144dpiだが、解像度も十分に高く、画質は上々。とくに階調と色の再現性に優れており、通常のビデオプリンターのようにシャドー部がドスンと落ちない点に好感が持てる。今回のイベントではさほど目立たない存在だったが、デジタルカメラユーザー必見のプリンターといえる。
●異色のプリントソフトを参考出品したビクター
ビクターのブースでは、なんとも異色のプリント用アプリケーションが参考出品されていた。これは「しろやぎさんとくろやぎさんのPrint Town」というもの。基本的にはパソコンの操作にあまり馴染みのない主婦や子供向けに開発されたもので、画像を選んでプリントアウトするまでの工程を、楽しいアニメーション操作で行えるもの。画面を見れば分かるように、全体が街になっており、そのなかに、ペーパーショップやシールの自販機、Tシャツ屋さん、写真のレンタルなどのお店が並んでいるという仕組み。各キャラクターも可愛らしく、なかなか楽しいものとなっている。また、プリンターはインクジェット式を前提にしており、シールやカード、名刺などの本ソフト対応紙も用意されるという。
もっとも、かなり凝りすぎていて、本当に、パソコンに不慣れな人が楽しみながら操作できるかどうかという点に疑問を感じる部分もあるが、いかにも家電系メーカーらしいチャレンジとして注目される。
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http://www.watch.impress.co.jp/pc/docs/article/digicame/dindex.htm
('97/10/8)
[Reported by 山田 久美夫]
ウォッチ編集部内PC Watch担当
pc-watch-info@impress.co.jp