プロカメラマン山田久美夫による
コダックから109万画素の正方画素・原色CCDを採用した本格的なメガピクセルモデル「DC210」が発表された。ワイド系の2倍ズーム搭載AFモデルで、液晶モニターも装備。さらに、記録媒体もCFカードで、フォーマットも同社で初めてのJPEGと、世界で初めてカメラ内でFlashPixフォーマットとして記録できるという、かなりの意欲作。しかも、本格的なメガピクセルモデルでありながらも、81,000円(4MBのCFカード付)という大胆な価格設定となっている点も多いに注目される。
初めて目にした印象は「おっ、結構カッコいいじゃん!」という感じ。今春発売された「DC120」とデザインコンセプトが大きく異なり、こちらは「DC20」の延長上という感じのコンパクトカメラ風。とくに、レンズが中央、ファインダーがその斜め上という、見慣れたレイアウトを採用していることもあって、妙に親しみやすい感じに仕上がっている。このレイアウトを実現するために、結構苦労していると思うが、その甲斐は十分にあるだろう。
サイズ的にはさすがに、ちょっと大きめ。とはいっても、巨大なものではなく、無理をすればワイシャツの胸ポケットに入るレベル。まあ、2倍ズーム搭載の液晶モデルとしては、納得できる範囲といえる。重さは見た目よりも軽く、携帯性はさほど悪くない。
基本的な操作性は、コンパクトカメラ的で、メインスイッチをいれて、シャッターを押すだけで撮影できる容易さを備えている。詳細なモード設定は液晶表示を見ながら行うが、この表示がなんとも派手でアメリカンな感じがするのがいい。また、撮影直後、撮影画像が液晶表示されている間に、ゴミ箱表示下にあるボタンを押すと、メモリーカードへの書き込みをキャンセルできる機能があるため、失敗したコマを後で消す手間が省ける点は便利だ。
●デジタルカメラ初のワイド系ズーム搭載
レンズは2倍ズーム。しかも、35mmカメラ換算で29~58mm相当という、ワイド系のズームレンズを採用している。パーソナル向けデジタルカメラにこれだけワイドまでカバーできるレンズが標準搭載されたのは初めて。デジタルカメラの場合、屋内での撮影が多いこともあって、実際に使ってみるとワイド側が足りないケースが多かったわけだが、本機なら狭めの屋内や建物の撮影などでも、比較的楽に撮影できる点は大きなメリットといえる。
また、ワイド系ズームレンズで問題になる歪曲収差(直線が曲がって写ること)もよく補正されており、直線が多い建築のカットも安心して撮影することができる。望遠側は58mmとやや控えめだが、記念写真や旅行写真などスナップ中心に撮影するなら実用上十分だろう。
なお、本機はオートフォーカスではなく、ワイド系ならではのピントの深さ(合う範囲が広い)を利用したパンフォーカス式を採用している。画質面では、不利ではあるが、コストを抑える面で有利だ。もっとも、今回の実写では、パンフォーカス式であることが明確に感じられるカットはほとんどなく、このレベルならまずは実用範囲と判断することもできるだろう。
ファインダーは基本的に光学式がメイン。実像式の光学ファインダーで、周囲まで明るくて見やすいのがいい。だが、視野がやや狭めなのは、若干気になるところ。
もっとも、必要に応じて液晶を撮影時にファインダーとして利用することもできるので、ややレスポンスは遅めだが、こちらを利用する手もある。もちろん、今回はSTNではなくTFT型が採用されている。
記録速度はJPEGの最高画質で10秒ジャスト。このあたりは製品版ではやや高速化される可能性もあるが、現行の81万画素クラスと同等なので、現時点でも許容範囲という感じだろう。
記録媒体はコンパクトフラッシュのみ。標準では4MBカードが添付されるという。記録フォーマットは、JPEGとFlashPixのいずれかを選択することができる。今回はJPEGで撮影したが、実はこのファイル、どこにも明記されていないが、コダックが富士とともにJAIDAにデジタルカメラの標準フォーマットとして提唱している「Exif」のJPEGファイルのようだ。
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【1,152×864pixel(285KB)】 | 【1,152×864pixel(358KB)】 | 【1,152×864pixel(246KB)】 |
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【1,152×864pixel(238KB)】 | |
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【1,152×864pixel(265KB)】 | |
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【1,152×864pixel(272KB)】 |
今回発表当日に実写したものは、まだベータ版モデル。もちろん、製品版ではさらに画質が向上するという。もちろん、ベータ版といえども、写真を見ればわかるように、いかにもメガピクセルモデルらしい、シャープでクリアな写りを実現している。とくに色調やコントラストが自然で、違和感のないものとなっている。このあたりの絵作りは、「DC120」の流れを汲むもので、いかにもフィルムメーカーらしいノウハウが活きた、好感が持てるものとなっている。
今回は短時間の実写で、しかも、台風で天候には恵まれなかったため、屋外での十分な実写はできなかったが、それでもその実力の片鱗を知るのに十分な写りといえる。
実際に今後登場すると思われるメガピクセルモデルでは、CCD自体の解像度は実用十分なレベルとなるが、今度は色や階調性といった絵作りの部分が問われる時代になる。そのため、この分野で膨大な蓄積のあるフィルムメーカーの優位性がきわだつ可能性があり、カメラメーカーや家電系メーカーの、絵作りに対するノウハウが問われる時代になるわけだ。その意味で本格的なパーソナル向けメガピクセルモデルの第一弾が、フィルムメーカーから登場したことには、大きな意味があるだろう。
なお、発売までにまだ一ヶ月以上の時間があるので、細部はかなりチューニングが施されて、より完成度の高いものになると思われるので、今回の画像データはあくまでもベータ版のものであることを念頭に置いて見て欲しい。
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【1,152×864pixel(276KB)】 | 【1,152×864pixel(301KB)】 |
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【864×1,152pixel(257KB)】 |
しかし、これだけの基本性能を備えたメガピクセルモデルが、81,000円とは、なんともビックリしてしまう。なにしろ、実販価格で考えると、仮に15%引きでも6万円台に突入してしまうのだから、これはもう、大胆きわまりない。もちろん、ユーザー側から見れば、実に喜ぶべきことで、これなら適当なプリンターとセットで購入しても10万円で仕上がりそうだ。
なお、パソコン接続キットは14,800円と高めだが、これはシリアル転送ケーブルのほかに、「Adobe Photo Deluxe」と「Adobe PageMill」がバンドルされているため。できれば、ケーブルとTWAINやPhotoshopプラグインだけのキットの発売も希望したいところ。もちろん、PCカードが使える環境の人なら、CFカードのアダプターだけあれば、JPEG記録での使用は本体を購入しただけでOKだ。
ほんの数ヶ月前までは81万画素モデルでも128000円だったのだから、それよりも47000円も安く、本当のメガピクセルモデルが入手できる時代になったわけだ。もちろん、本機発売までに強力なライバル機が登場する可能性もあるが、この価格でこの性能なら、現時点では、十分にお買い得なモデルといえそうだ。
□日本コダック株式会社のホームページ
http://www.kodak.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.kodak.co.jp/NEWS/87103a00.shtml
□参考記事
【9/16】コダック、81,000円で2倍ズーム装備のメガピクセルデジタルカメラ
http://www.watch.impress.co.jp/pc/docs/article/970916/kodak.htm
デジタルカメラ関連記事インデックス
http://www.watch.impress.co.jp/pc/docs/article/digicame/dindex.htm
■注意■
('97/9/16)
[Reported by 山田 久美夫 ]