【リレー連載 物欲道修行記】


リレー連載 物欲道修行記

第55講 業界通情報講座 講師:一ヶ谷兼乃

 今回のお題はスイッチングハブ。いまやOSでも標準サポートされていたりするわけで、自宅でLANを引いている読者の方も少なくないと思います。しかし100BASE-Tとなると、カードは1万そこそこでも、ハブは20万以上からという感じで、個人にはまだまだ高嶺の花……でしたが、なんと今回一ヶ谷氏が導入されたハブは標準価格98,000円、実売なら6万円台のスイッチングハブとのこと。しかもポート数は24も! ネットワークに興味のある方は必読です。
(ケーブルだけは1年前からカテゴリー5な編集担当)

あこがれのネットワーク機器
~スイッチングハブ「VEGA 0024」~

快適なネットワークを得るには

 インターネットって聞いても、PC Watchの読者にはあまりにも自然な環境で、すでに特別なものではなくなっているはずだ。使い込むにつれ、ネットワークはあって当たり前の自然な環境になっていく。そうなったら、快適じゃないと面白くないと感じるのは私だけだろうか。

 ネットワークを快適にする方法はいくつか方法がある。最初は、使用する人数以上に端末を用意すること。筆者の自宅だと、一人住まいではあるものの、パソコンだけは沢山ある。それだけではなく、プリンタやダイヤルアップルータといった周辺機器もある。これらを残らずネットワークに繋ぎ、環境を整備するのがネットワークを快適にするための第一歩だ。

 次に行なうべきことは、トラフィックを整理すること。ネットワークを使い込むにつれ、そこに流れる情報が増えていく。その増えてきた情報をよりスムーズに流れるような工夫をすることが大切なのである。具体的な方法としては、10Mbpsのイーサネットを100Mbpsタイプに変更するとか、ルータを使って無駄なパケットを塞ぎ止めるとか、スイッチングハブを使って積極的にパケットの流れを整理するといった方法が考えられる。

 最近は、100BASE-Tをサポートした機器も増えてきて、しかも安価になっている。ネットワークカードにいたっては、きちんとパフォーマンスが得られる製品でも1万円余りで購入できるようになた。ただ、ハブに関しては思ったほど安くなっていないが、それでも価格は下がりつつあるのは確かである。もちろん、自宅の環境を全て100BASE-T対応にすれば、快適なネットワークに近づくことはわかっているのだが、プリントサーバやMacintoshの内蔵イーサネットポートなどを考えると、100BASE-T化を実現することは難しい。

 それに、筆者は単に100BASE-Tにするのは、エレガントじゃないと感じてしまう。ただ、車を速くするために、排気量の大きなエンジンに積み替えたようで、エンジニアとしてのロマンが感じられないからだ。


憧れはスイッチングハブ


 そこで、憧れていたのがスイッチングハブ。安価なハブは、すべてのポートを複数のユーザで共有しているのだ。あるポートに接続された機器から、パケットが送られると、ハブのすべてのポートにそのパケットは配られてしまう。そこで、そのパケットの受け手が反応するといった仕組みになっている。
 これがスイッチングハブの場合は、あるポートからパケットが送られてくると、そのパケットの相手が、どのポートに繋がっているのかをこれまでの通信で学習結果で判断し、そのポートだけにパケットを送り出すのだ。とってもインテリジェントで、エレガントである。

 情報量が増えてきて、パケットの衝突が発生するような環境に、スイッチングハブを導入することで、無駄なパケットの流れが制御され、シェイプアップされたネットワークが実現する。結果的に、ネットワーク全体のパフォーマンスが向上するわけだ。10Mbps帯域のイーサネットだとしても無駄なパケットをシェイプアップすることで、かなり効果が期待できるのがスイッチングハブなのだ。

 ただ、これまでのスイッチングハブは価格が高かった。8ポート程度でもゆうに10万円を超えてしまう。企業で導入されている製品では、12ポートでも50万円程度する機種さえある。エレガントなテクニックにはコストかかっていると理解できるが、ハブにそれだけの額を捻出できるほどの割り切りは持ち合わせていないというのが正直なところだった。



これなら手に入れられる「VEGA 0024」

 最近は、自宅の機器も増えてきて、最初に買った8ポートHUBでは足りなくなってきた。とはいっても、もうひとつハブを購入して、カスケード接続するのは美しくない。そこで、もっとポート数の多いハブへの買い換えを考えていた。ただ、12ポートや24ポートHUBは、意外と高価。8ポートハブを複数買ったほうが、1ポートあたりのコストは安くなるというのが現状だ。しかし、美しくない。

 そこで目についたのがテレコムデバイス株式会社が販売しているスイッチングハブ「VEGA 0024」だ。24ポートのスイッチングハブである。驚くのは、その実売価格で、60,000~65,000円程度なのだ。ネットワーク機器の相場を知っている人なら、ちょっと目を疑う価格である。

 もっとも、安いのにはちゃんと理由があった。まず、SNMP機能がない。次にこれが、この製品の特徴となっている仕様で、1ポートあたり管理できるMacアドレスが1個なのだ。通常、スイッチングハブは接続された機器のMacアドレスを512とか1,024個データベースに登録しておき、適切なポートにパケットを振り分けていく仕組みになっている。これが、1ポートあたり1個のMacアドレスしかサポートされてないということなのだ。

 しかし、自宅の環境だと各ポートには直接機器が接続されているため、1ポートあたり1つのMacアドレスの管理でも、まったく差し支えない。スイッチングハブのポートから、カスケードしてハブを接続し、ネットワーク機器を繋ぐようなネットワーク設計では役に立たないが、パソコンのネットワークカードから直接ハブに接続するような配線だと、まったく問題ないのだ。

VEGA 0024動作中

VEGA 0024ロゴ

VEGA 0024全体


「うちのはスイッチングハブなんだよね」

 VG0024を手に入れ、設置して、電源を入れる。ハブに電源スイッチがついている機種があるが、何かの拍子にスイッチに荷物が触れて電源が切れて慌てることが多々あったので、HUBの電源スイッチは個人的には認めていない。シンプルがいい。VG0024も電源スイッチが無く、うれしい限りだ。電源が入ると背面にある空冷ファンが回り始める。ホントは、空冷ファンも使っていくうちにトラブルの原因となる可能性を秘めているので、あまり好きではない。
 一見したところではダムなハブと見分けがつかないが、そこが控えめで渋い選択というわけ。やっぱり自分の持ち物にはこだわりが必要だ。ちょっとケースを開けてみたが、シンプルな作りは十分耐久性はありそうだ。金属製のケースも綺麗な仕上げで好感が持てる。

 24個ある10BASE-Tのコネクタの24番目は、通常のネットワーク機器と接続する目的と、カスケードで接続するためのアップリンク用と切り替えて使うことができる。当然のことながら、そのポートはMacアドレス管理はマルチエントリになっている。
 もちろん、動作はバッチリで、すんなり自宅のネットワークに溶け込んでくれた。自宅ではDBをカリカリアクセスして、ネットワーク全体のトラフィックが溢れてしまうような状態にはなっていない。しかし、エレガントなスイッチングハブが嬉しいのだ。

 筆者の自宅の環境では、たしかに贅沢品といえるだろう。しかし、SOHOなどで小規模であれ、業務でネットワーク上のデータを頻繁にアクセスするとか、ネットワークプリンタで文書をガンガンに出力するといった使い方をしているユーザがいるのであれば、そのネットワークは他のユーザにとってあまり好ましい状態だとは言えない。特に、NetBUEIといったプロトコルは、データ通信が高速であるといったメリットもあるが、ネットワークのトラフィックを溢れさせやすいというデメリットもあり、このような場合はスイッチングハブが効果的だ。

 発売元のテレコムデバイス社に問い合わせたところ、100Mbpsのネットワークバックボーンと接続するポートを持った、低価格スイッチングハブの発売を検討しているということだった。業務で使用する機器は、壊れないでどれだけ連続稼動するかといったような稼動実績がないとすぐには採用できないとは思うが、ATMやFDDIがバックボーンになっており、そこと100BASE-Tで接続するといった使い方ができる低価格スイッチングハブは、結構な需要があるのではないかと感じる。登場が楽しみだ。

シンプルな基板レイアウト

ヒートシンクのついた制御LSI

VG-0024の電源部分。空冷ファンが交換可能になっている

[Text by 一ヶ谷兼乃]



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