ネットワークを快適にする方法はいくつか方法がある。最初は、使用する人数以上に端末を用意すること。筆者の自宅だと、一人住まいではあるものの、パソコンだけは沢山ある。それだけではなく、プリンタやダイヤルアップルータといった周辺機器もある。これらを残らずネットワークに繋ぎ、環境を整備するのがネットワークを快適にするための第一歩だ。
次に行なうべきことは、トラフィックを整理すること。ネットワークを使い込むにつれ、そこに流れる情報が増えていく。その増えてきた情報をよりスムーズに流れるような工夫をすることが大切なのである。具体的な方法としては、10Mbpsのイーサネットを100Mbpsタイプに変更するとか、ルータを使って無駄なパケットを塞ぎ止めるとか、スイッチングハブを使って積極的にパケットの流れを整理するといった方法が考えられる。
最近は、100BASE-Tをサポートした機器も増えてきて、しかも安価になっている。ネットワークカードにいたっては、きちんとパフォーマンスが得られる製品でも1万円余りで購入できるようになた。ただ、ハブに関しては思ったほど安くなっていないが、それでも価格は下がりつつあるのは確かである。もちろん、自宅の環境を全て100BASE-T対応にすれば、快適なネットワークに近づくことはわかっているのだが、プリントサーバやMacintoshの内蔵イーサネットポートなどを考えると、100BASE-T化を実現することは難しい。
それに、筆者は単に100BASE-Tにするのは、エレガントじゃないと感じてしまう。ただ、車を速くするために、排気量の大きなエンジンに積み替えたようで、エンジニアとしてのロマンが感じられないからだ。
情報量が増えてきて、パケットの衝突が発生するような環境に、スイッチングハブを導入することで、無駄なパケットの流れが制御され、シェイプアップされたネットワークが実現する。結果的に、ネットワーク全体のパフォーマンスが向上するわけだ。10Mbps帯域のイーサネットだとしても無駄なパケットをシェイプアップすることで、かなり効果が期待できるのがスイッチングハブなのだ。
ただ、これまでのスイッチングハブは価格が高かった。8ポート程度でもゆうに10万円を超えてしまう。企業で導入されている製品では、12ポートでも50万円程度する機種さえある。エレガントなテクニックにはコストかかっていると理解できるが、ハブにそれだけの額を捻出できるほどの割り切りは持ち合わせていないというのが正直なところだった。
そこで目についたのがテレコムデバイス株式会社が販売しているスイッチングハブ「VEGA 0024」だ。24ポートのスイッチングハブである。驚くのは、その実売価格で、60,000~65,000円程度なのだ。ネットワーク機器の相場を知っている人なら、ちょっと目を疑う価格である。
もっとも、安いのにはちゃんと理由があった。まず、SNMP機能がない。次にこれが、この製品の特徴となっている仕様で、1ポートあたり管理できるMacアドレスが1個なのだ。通常、スイッチングハブは接続された機器のMacアドレスを512とか1,024個データベースに登録しておき、適切なポートにパケットを振り分けていく仕組みになっている。これが、1ポートあたり1個のMacアドレスしかサポートされてないということなのだ。
しかし、自宅の環境だと各ポートには直接機器が接続されているため、1ポートあたり1つのMacアドレスの管理でも、まったく差し支えない。スイッチングハブのポートから、カスケードしてハブを接続し、ネットワーク機器を繋ぐようなネットワーク設計では役に立たないが、パソコンのネットワークカードから直接ハブに接続するような配線だと、まったく問題ないのだ。
VEGA 0024動作中 |
VEGA 0024ロゴ |
VEGA 0024全体 |
24個ある10BASE-Tのコネクタの24番目は、通常のネットワーク機器と接続する目的と、カスケードで接続するためのアップリンク用と切り替えて使うことができる。当然のことながら、そのポートはMacアドレス管理はマルチエントリになっている。
もちろん、動作はバッチリで、すんなり自宅のネットワークに溶け込んでくれた。自宅ではDBをカリカリアクセスして、ネットワーク全体のトラフィックが溢れてしまうような状態にはなっていない。しかし、エレガントなスイッチングハブが嬉しいのだ。
筆者の自宅の環境では、たしかに贅沢品といえるだろう。しかし、SOHOなどで小規模であれ、業務でネットワーク上のデータを頻繁にアクセスするとか、ネットワークプリンタで文書をガンガンに出力するといった使い方をしているユーザがいるのであれば、そのネットワークは他のユーザにとってあまり好ましい状態だとは言えない。特に、NetBUEIといったプロトコルは、データ通信が高速であるといったメリットもあるが、ネットワークのトラフィックを溢れさせやすいというデメリットもあり、このような場合はスイッチングハブが効果的だ。
発売元のテレコムデバイス社に問い合わせたところ、100Mbpsのネットワークバックボーンと接続するポートを持った、低価格スイッチングハブの発売を検討しているということだった。業務で使用する機器は、壊れないでどれだけ連続稼動するかといったような稼動実績がないとすぐには採用できないとは思うが、ATMやFDDIがバックボーンになっており、そこと100BASE-Tで接続するといった使い方ができる低価格スイッチングハブは、結構な需要があるのではないかと感じる。登場が楽しみだ。
シンプルな基板レイアウト |
ヒートシンクのついた制御LSI |
VG-0024の電源部分。空冷ファンが交換可能になっている |
[Text by 一ヶ谷兼乃]