文字放送を簡単に説明すると、一般のテレビ放送に使われる映像信号の隙間(垂直帰線消去期間:VBI)を使って放送されているもので、グラフィックや文字を使ったデジタル放送のことだ。このデジタル放送は、受信設備さえあれば、別途情報料などがかからず無料で、誰でも受信することができる。
既に文字放送は10年以上の歴史を持っており、bitcastやADAMSといった、新しい形でのデジタル放送も始まっている。
さて文字放送に話題を戻すとして、現在どれくらいの情報が提供されているか、ご存知だろうか。驚くことに、関東圏においては400を超す番組が無料で提供されているのだ。受信する場所によって、文字放送を行なっている放送局の数が違うもの、最も多くの番組を放送しているNHK系のテレモ(日本文字放送)であれば、国内各地で受信できるのではないだろうか。
文字放送で提供されている番組には、経済や時事のニュースのほかにも、スポーツニュースや、天気予報、交通情報、航空機国内線の予約状況などがある。これらが、一定時間毎に更新されていくのだ。刻々と変化する株価や為替といった情報が充実しているのが特徴だ。この時期は、全国各地で繰り広げられている高校野球の地区予選の結果なども、知ることができる。
MOJiDAS本体ボード |
I/Oポートアドレスを設定するスイッチ |
文字放送自体は文字と簡単なグラフィックを使った静止画で、その静止画を何枚か集めて一つの情報を提供している。そのため、TVアンテナが文字放送を着実に受信さえすれば、一応どの製品も文字放送を見ることはできる。ただ、受信した内容を、Windowsの画面上でどのように表示するか、受信した内容をデータとして蓄積・加工できるのか、表示方法はカスタマイズできるのか、などの部分がうまくできていないと、折角の文字放送が楽しみにくいということになってしまう。この部分は非常に重要で、文字放送を真剣に利用するつもりであれば、必ず検討したいところなのだが、実際には添付ソフトの操作感というものは、なかなか調べることが難しい。たまたま筆者は、これまで文字放送関連製品のレビュー記事を手がけたり、知り合いの文字放送受信ユーザからの情報を集めたりしていたので、良いソフトにめぐりあうことができた。
「MOJiDAS/V」のインストールは、非常に簡単だった。Plug and Playでないので、導入するマシンが使用しているI/Oポートアドレスとかち合わないように、MOJiDASの設定を行なって、マシンに組み入れる。あとはソフトをインストールして、I/Oポートアドレスや使用するIRQを指定する。最後に、TVアンテナをMOJiDASのコネクタに接続すれば、文字放送の受信準備は完了だ。
「MOJiDAS/V」に付属するソフトは、アクセスビジョンが開発を行なったもので、MOJiDASを使って文字放送を受信し、その内容をデータとして保存する「チャンネルスキャナー CHScan」と、それを画面に表示する「文字放送電子新聞 TTNews」の2つである。
受信したいチャンネル(放送局)が決まったら、チャンネルスキャナーで設定し、そのまま動作させていけば、何もしていなくても、自分のマシンに情報が流れ込んでくるのだ。受信データが取り込まれてくれば、それをTTNewsを使って画面に表示することになる。画面表示のサンプルが沢山入っているため、面倒なカスタマイズを行なわなくとも、自分の使い方にあったものが見つかるはずだ。スクリーンセーバーで文字放送を表示するサンプルもあり、表示方法にいたっては、カスタマイズ次第でどうにでもなるといってもいいほど充実している。
アクセスビジョンに問い合わせしたところ、ホームページ上で紹介されているTTNewsの32ビット版は、8月にはMOJiDASにも添付される予定になっているほか、I/Oデータ機器製品への対応も検討しているとのことだった。
文字放送受信ボードからデータを取り出すチャンネルスキャナー |
1画面だけ表示した文字放送 |
とにかく、400チャンネルを超える番組の情報の幅広さは、圧倒されるものがある。CDシングル/CDアルバムの最新ランキングや、レンタルビデオランキングといったものから、都政ニュースなどの地域に密接した情報、航空機のフライト・空席情報、人気パソコンの実売価格情報といったものまで、様々な情報が提供されているのだ。
日本テレビ AXES4の放送をテキスト形式で表示している |
TBS TDVの放送を文字放送形式で、一画面に9番組表示している |
パソコンで文字放送をやる意味というのは、受信したものがデータとして残すことができるということで、株価のデータを使っていろいろと解析したりすることが可能になる。例えば、文字放送では競馬のオッズなどの情報を利用して、予想に関連する様々な情報を整理された形で表示してくれるフリーソフトウェア「TeleOdds」がある。刻々と変化していく馬場状態やオッズの最新情報が簡単に手にいれることができるほか、競馬予想支援ソフトで扱えるデータに変換することも可能だ。
また、文字放送を利用した面白い活用方法を実現したものに、「放送時計」がある。これは、時刻が提供されているチャンネルを受信し、パソコンの時刻設定を自動的にやってしまうスクリーンセーバーだ。文字放送の新しい活用方法の例として、おもしろい試みだといえる。これが、unixマシンやWindowsNTといったサーバマシンで実用化されると、タイムサーバとしての利用方法も考えられる。
筆者のメインマシンのデスクトップの隅には、最新ニュースのウインドウが常時開かれている。文字放送受信に関して、あまりマシンパワーが割かれないこともあり、何をやっているときでも、何かしら文字放送のウィンドウが開かれている状態だ。
ちょっとした情報なら、インターネットやこの文字放送で事足りるようになったため、筆者は本当に新聞の購読を止めてしまった。月々の購読料をインターネットに振り替えることができたというメリットを生んでくれた文字放送とは、これからも長い付き合いになりそうである。
[Text by 一ヶ谷兼乃]