後藤弘茂のWeekly海外ニュース
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Windows 98は大ヒットにならないとMicrosoftが予測


●Windows 98来年第1四半期出荷はかなり確実

 先週最大のニュースは、言うまでもなくMicrosoftによるMemphisの正式名を含めたWindows戦略の発表だった。これに関しては、どの記事を読むよりもMicrosoftのPlatforms and Applicationsグループ副社長、ポール・マリッツ氏のスピーチ「Microsoft Windows Platform Briefing, Remarks by Paul Maritz」(Microsoft,7/24)を読む方がてっとり早いし正確だ。このスピーチは長いのだが、Q&Aのところだけも読む価値がある。

 まず、Memphis改めWindows 98のスケジュールだが、カレンダーイヤーで'98年の第1四半期に出せるというかなりの確信を持っていると言っている。どうやら、今度はホントウにこのスケジュールで行きそうだ。ただ、長期的にはWindows NTをビジネスユースに据えるとしており、Windows 98は少なくともビジネス向けでは積極的な展開はあり得ないようだ。ちなみに、Windows NT 5.0のスケジュールにもマリッツ氏は言及しており、それによるとβ版は9月23日から開催される同社のカンファレンス(PDC)で配布される予定だという。

 それから、Windows CEの展開についてもかなり具体的なことを話している。今年のクリスマスには、ハーフVGAスクリーンのハンドヘルドPCや小型でキーボードのないものが出てくるらしい。5社がこれらのデバイスを開発しているそうだ。それから、Windows CE版車載コンピュータの計画も進んでいて、このアナウンスは近いうちにあるという。やれやれ、今年もまだまだMicrosoftに振り回されそうだ。


●Windows 98は大ヒットにならないとMicrosoftが予測

 しかし、このところ、マリッツ氏に限らずMicrosoftの幹部は揃ってWindows NTを強調、Windows 98を意図的に小さく見せようとしている。たとえば、「MS: Windows 98 no blockbuster」(CNET NEWS.COM,7/24)では、Microsoftの財政責任者CFOであるグレッグ・マッフェイ氏が、同社ではWindows 98がWindows 95のような大ヒット(ブロックバスター)になると見積もっていないと断言している。重要なアップグレードには違いないが、Windows 95の時のようなマーケティング大宣伝でプッシュするつもりはないそうだ。Microsoftにとって、OSの主軸がWindows NTに移ったと見なしているのはもはや明白。でも、メーカーやユーザーがそれについてゆけるだろうか。


●Microsoftの行く手は危機だらけとバルマー上級副社長が指摘

 また、Microsoft幹部はこの7月から始まった'98年度の成長は、'97年度ほどよくならないだろうという見方もしきりに口にしている。たとえば、「Microsoft asks market to get real about its prospects」(InfoWorld,7/24)によると、Microsoftの上級副社長でナンバー2のスティーブ・バルマー氏は、Microsoftがさまざまな難題に直面しており、そのために収益も変動するだろうと財政アナリストとのミーティングで指摘したそうだ。その難題というのは、主に次の4つだという。

 とくに、バルマー氏はサーバーアプリはまだまだだと強調している。Microsoftにスゴミを感じるのは、こういう自己分析の部分だ。表向きはWindows NTは大成功しているとか、NCに成功の芽はないとか強気の発言をするが、じつはかなりシビアに自社を取り巻く状況を分析している。こういう企業を打倒するのはなかなか大変だ。

 また、「Gates, Ballmer tout corporate strategy」(CNET NEWS.COM,7/24)は、バルマー氏がこうした難題を乗り切るために、来年度に4つのゴールを設定したと伝えている。

 が、そのゴールだそうだ。うーん、ここまではっきりと断言されるとすごい。
●Microsoftは株価が下がることを期待

 さて、Microsoftの幹部が、こうやって自社の状況が見かけほど万全じゃない、業績が悪化する可能性がある、危機に直面しているとしきりに発言するのは、じつは株価対策のためだ。しかし、株価対策と言っても、株価をつり上げるための対策ではない、株価を沈静化するための対策なのだという。「Microsoft Will Boost Spending On Sales, Marketing This Year」(The Wall Street Journal,7/24,http://www.wsj.com/で検索、有料)の中で、バルマー氏は株価が膨れ上がっているのは不健康な状態だと力説。「我が社がほんとうに1,800億ドル(のマーケットバリュー)に値するのか? 私の想像を超えている」とあきれている。先週伝えた通り、Microsoftの株価は売り上げ規模からすると完全にバブル状態で、Microsoftとしてはこれ以上膨れ上がらせてなんかの拍子にバブル崩壊が起こる危険を避けたいというわけだ。しかし、こういうゼスチャーを取れば取るほど、余裕の証拠と見られて逆効果になるかも。


●Intelは266MHz版MMX Pentiumの投入へ

 Microsoftの次はIntelのニュース。かねてからのウワサの通り、Intelはいよいよ8月1日から大幅なMPUの価格カットを行う。主要チップの価格表を見たい人は「Intel revs it up」(CNET NEWS.COM,7/22)をどうぞ。この表を見れば、いかに劇的な価格引き下げかがよくわかる。とくにPentiumとMMX Pentiumの200MHzは半額セールで、このクラスが一気に米国ではローエンドに近いクラスに載ることになりそうだ。また、この記事は、IntelがMMX Pentiumの266MHz版を出すことを決定したと伝えている。Pentium IIへの移行までの中継ぎをすると見られるこの新MPUは年末か来年頭に登場、'98年前半には1,500ドル以下のマシンに載ってくるという。一体いつPCを買っていいのやら。


●440LXもいよいよあと一月で登場

 また、「AGP preps for holiday deadline」(Electronic Buyers' News,7/22)によると、IntelはPentium II用のAGP対応チップセット440LXも、いよいよ8月下旬に投入してくるらしい。この記事によると、440LXの投入が遅れた一因は、AGPに対応するWindows 98がずれ込んだためVxDドライバなどを用意しなければならなかったためだという。また、AGPは騒がれているが、ほとんどのアナリストやベンダーは、AGPが本格的に出るのは'98年になってからと予測しているそうだ。

 ちなみに、AGPではIntel自身もグラフィックスアクセラレータチップ市場に乗り出す。「Intel to buy leading chip maker」(CNET NEWS.COM,7/27)によると、今回の米Chips and Technologies社買収も、それに絡んだ動きらしい。Intelネタではこのほか、同社が低価格デジタルカメラのガイドラインを28日に発表するというニュース「Intel to push for cheaper digital cameras」(CNET NEWS.COM,7/25)もあった。KodakやMicrosoft、Hewlett-Packardがこのガイドラインに賛同するそうだ。また、「Intel to ship Tillamook chip Sept. 8」(InfoWorld,7/25)では、ノートパソコン用200/233MHz MMX Pentium「Tillamook」の発表日も伝えている。


●Apple次期CEOは食品業界から?

 最後は米Apple Computer社ネタで締めよう。このネタには強いSan Jose Mercury Newsが、今度はエレン・ハンコックエグゼクティブ副社長のインタビュー「Hancock reflects on her ouster」(San Jose Mercury News,7/21)を掲載している。アメリオ氏とは対照的に、短いセンテンスで明快に答えてゆくところは、この人物の性格を表していて面白い。これを読むと、アメリオ退陣はある程度予期してはいたものの、突然だったことがわかる。また、ウワサされていたスティーブ・ジョブズ氏との軋轢についても触れている。

 ちなみに、AppleはCEO探しに有名はヘッドハンティング会社を雇った。「Apple Hires Hotshot Headhunter Firm」(San Francisco Chronicle,7/23)によると、このヘッドハンター米Heidrick & Struggles社というのは、IBMの現CEO兼会長、ルー・ガースナー氏をスカウトしたことなどで知られているのだそうだ。ガースナー氏は食品会社ナビスコの会長から転身、IBMの救世主となった。となると、やはりApple次期CEOも食品業界か?

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('97/7/28)

[Reported by 後藤 弘茂]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp