SIM TUNES
|
|
15時間のプレイで描きあげた力作。 | カラードットの上を、楽器の音や声を出すバグズたちに這わせることで、音楽を奏でることができる。 |
『SIM TUNES』は乱暴に言ってしまえば『キッドピクス』と同じく「お絵かきソフト」に分類される作品だ。ただし、絵を描いて保存することだけが最終目的になるわけではない。
このCD-ROMのなかには楽器によく似た「バグズ」と呼ばれる48種類もの虫たちが生息していて、あなたが描いた絵の上を歩きながら、置かれたドットの色に応じてさまざまな音を奏でてくれるのだ。プレイヤーがやるべきこと、それは好きなように絵をペイントしつつも最大4匹の「バグズ」がお互いに気持ちよく音を奏でられる道、もしくはフィールドを作ってあげること。つまりプレイヤーは好きなように落書きをしながらも、アーティスト、作曲家、指揮者の三役を同時にこなすことになる。
もちろん誰もが絵心を持っているわけじゃないし、自在に名曲を作れる才能が備わっているとは限らない。しかしそんなことは「やってみなくちゃわからない」。幸いこのソフトにはスタンプやバックグラウンド、サンプルギャラリーなど、未経験者でも容易に作品を作れるだけの材料が豊富に揃っているので気負う必要はまったくナシ。それこそ子供に帰ったつもりでいろんなツールを試していくうちに、いつのまにか予想もしなかった「バグズ」とのコラボレーション作品が完成していることだろう。
●楽しみ方は自由自在
このソフトの最も優れたところは、適当にドットを置いていっても、それなりに音楽らしきものができてしまうところだ。なんせ楽器、いや、楽器のかわりとなる「バグズ」は48種類もいる。それもオーケストラに使用される楽器ばかりではなく、尺八、琵琶、コンガ、カリンバ、スティールドラムなどの国籍を問わないラインナップが勢揃い。また流行の曲が作りたい人のためにはギター、エレキベース、テクノドラム、サウンドエフェクト、そしてドーワップ系やソウル系のボーカルもあるので、どんなジャンルの音楽でも再現できる。
今回私は初めて作曲に挑戦したが、自分が置いたドットの通りに体をふるわせながら歩いていく「バグズ」が奏でる「ソウルトレイン風」の音楽に我ながら大満足。これがただ音が出るだけなら画面なんてなくてもいいくらいだが、「バグズ」のおかげで“観て楽しい音楽”という不思議な感覚が味わえる。もちろん絵が描けない人は曲作りに専念してもいいし、逆に好きな絵を描いて「バグズ」を歩かせ、ノイズ系の不協和音を笑って楽しんでもいい。何かを作るたびに新しい発見がある。まずはすごい作品を作ろうなどと難しく考えずに、楽しむことを前提に遊んでみてほしい。そして「これは」と思う作品ができたら、誰かにプレゼントするといいだろう。作品をセーブするときに「スタンドアローン形式ファイル」を選ぶと、なんと自動的に独立圧縮ファイルが作成され、ソフトを持っていない人にも作品を「バグズ」ごとプレゼントすることができるのだ。(渡すときはフロッピーディスクなどに保存するか、電子メールの添付ファイルで)自己満足で終わるだけではなく、誰かに観て、聴いてもらえる。物を作るうえで、これほどうれしいことはない。だから私はライターやってるんだけども。
完成済みの絵が収録された「ギャラリー」も用意されている。 | 「ギャラリー」に収録された絵の1枚。 |
●楽に作業を進めるための裏技が満載
これまでにさまざまなペイントソフトを使いこなして来た人のなかには『SIMTUNES』を立ち上げたときに表示される色数やツールの少なさにガッカリする人も多いだろう。
しかし、そこでやる気をなくしてしまうのはちと早計すぎるというものだ。後で詳しく述べるが、もともとこのソフトは小さい子供から大人まで、幅広く楽しめるように開発されているので初期段階では必要最低限のツールだけが出てくるようになっている。
そういう私も最初は「黒の絵の具がない!」と慌てふためいたが、黒地のバックを選択することで解決できたし、塗りつぶす際もバケツがない代わりにコピースタンプで太い筆を自分で作ることによって快適に作業することができた。その後マニュアルを読み進むうちに、シンプルに遊びたい初心者のためのベーシック、さらに凝った作品を作りたい人のためのアドバンスと、2種類のメニューが用意されていることが判明。初めは基本ツールの使い方を覚え、そこからステップアップしてアドバンスメニューで色数を増やしたり、ワープやジャンプ、ターンなど、「バグズ」に、より複雑な動きをつけるドットをうまく設置することで、よりクオリティの高い作品が作れる仕組みになっているというわけだ。
それでも作品の作り方がよくわからない、という場合はあらかじめ用意されている膨大な数のギャラリー作品を鑑賞して研究したり、作品そのものに手を加えてアレンジすることからスタートすればよい。「楽器の種類やテンポを変えてみる」、「絵の一部だけを描き換えてみる」。それくらいの作業なら、小学生でも簡単にチャレンジすることができるはずだ。ちなみにこのギャラリーにはいろんなパターンの作品が並べられていて観ているだけでも充分楽しめるし、ありとあらゆるテクニックをマスターするにはもってこい。欲を言うなら小さい子供やパソコン初心者のために作業の経過がよくわかるビデオ再生機能をつけて欲しかったが、それはバージョンアップした『SIM TUNES2』に期待、ということにしておこう。(2が出るかどうかはまったく不明なのだが……)
[Reported by 平野裕子]
□Weekend Summary
●オープンブック9003の「pinna」発売日決定 ほか