カシオのQVシリーズといえば、液晶付きカメラというスタイルを確立し、ライバルが続々登場している今でも、高い人気を誇っている、実績ある製品群だ。その原型となった「QV-10」は、1/4VGAモデルながらも、暗さに強く、コンパクトで、操作性に優れたモデルとして、ビジュアルメモとしてのデジタルカメラという分野を切り開いた名機といえる。だが、VGA版の「QV-100」になって、サイズや操作性は受け継がれたものの、画質面では解像度こそ高くなったが、暗い場所に弱く、さらにスミア(強い光源からの光跡)が盛大に発生するという大きな欠点を抱えていた。
今回登場した「QV-200」は、ベースにQV-100を踏襲してながら、画質面での欠点を補い、エフェクト機能を追加し、さらに50,000円という低価格を実現したモデルといえる。
その実機(ベータ版)を入手することができたので、早速、ファーストインプレッションをお届けしよう!。
【編集部注】
●復活した「暗さに強いQV」
【QV-100で撮影】 | 【QV-200で撮影】 |
【QV-100で撮影】 | 【QV-200で撮影】 |
画質の話にはいる前に、本機は基本的にQV-100とほぼ同じ筐体を採用しており、携帯性もよく、操作性も従来のものを踏襲しているため、この点に関してはほぼ従来通りだと思っていい。
さて、私がQV-100を使って気になったのは、暗さに弱い点だ。なにしろ、QV-10シリーズでは普通の屋内はもちろん、夕暮れや夜景でも、結構きちんと撮影できた。もちろん、ノイズは多かったがメモ用として考えれば十分だった。だが、QV-100ではCCDの感度が低下したこともあって、事実上、ほとんど写らなかった(実はリコール前のモデルの方が暗い場所が写ったが、ノイズが盛大に発生して、単に写るだけで、絵になっていなかった)。
だが、QV-200では、CCDを変更するとともに、レンズを明るくすることで対応。写真を見ればわかるように、夕景や夜景でも十分に撮影できるレベルになっている。また、夜の喫茶店やショーウインドーなどでも難なく撮影できるため、この点に関しては、まさに「暗さに強いQV」が復活した感じだ。
【QV-200で撮影】 | 【QV-200で撮影】 | 【QV-200で撮影】 |
【QV-200で撮影】 |
もうひとつ、QV-100で問題だったのがスミア。これはQV-300では、光路の違いから偶然それなりに改良されていたもの。もちろん、今回のQV-200でもきちんと改良されており、QV-100と比較すると雲泥の差となっている。
実際に点光源が入る夜景撮影などで、ほとんど目立たなくなっている。これはスミアの絶対量が減っていると同時に、スミアが発生する方向が変わっていることにも起因している。
スミアはCCDから画像情報を読み出すときの、情報伝達方向に大きく関係する。簡単に言えば、バケツリレーのようなもので、どちらに向かって読み出すかで、スミアの出る方向が変わるわけだ。そのため、QV-100では光源や画面内の明るい部分から下方向に向かってスミアが伸びていたのだが、今回のQV-200ではCCDを逆さに配置することで、スミアを上方向に向かって発生させているわけだ。
【QV-100で撮影】 | 【QV-200で撮影】 |
【QV-100で撮影】 | 【QV-200で撮影】 |
これでようやく、QVのVGAシリーズも同社の1/4VGAモデルに近い再現性を実現できたわけで、ビジュアルメモとしては十分に機能するレベルになった。だが、基本的な再現性が向上しているのかというと、そうでもない。これは好条件でQV-100と比較したカット(人物や花)などを見ると分かるだろう。とにかく、今回は基本性能の向上よりも、先代モデルの欠点を克服することに専念したというのが正直なところだろう。このあたりは、次期モデルに大いに期待したいところだが、それも早急に行う必要があるだろう。
さて、今回のQV-200には、従来のQVにはない、なかなかユニークな機能が追加されている。それがフィルターとタイトルという機能だ。これはカメラ内に簡単なエフェクト機能を追加したもので、これがなかなか楽しめる。とくに、モノクロやセピアは雰囲気も良く、結構ウケそう。
また、タイトル機能もよく考えられている。簡単に説明すると、撮影した画像とは別に、タイトルにしたい文字や絵柄を撮影し、それを2値化して完全な白・黒のデータに変換。さらに色や背景を追加し、カメラ内で画像と合成するというものだ。説明すると面倒くさそうだが、実際にやってみると、意外に簡単。へたにパソコンソフトで処理するよりも、簡単で便利だ。
【元画像】 |
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【モノクロ】 |
【セピア】 |
【ファンタジー】 |
【ヌーボー】 |
【イラスト】 |
【タイトル合成】 |
【QV-200で撮影】 | 【QV-200で撮影】 |
内蔵メモリー専用機とはいえ、これだけコンパクトで使いやすい、液晶付きモデルで5万円と比較的安価なため、常時携帯したい気軽なビジュアルメモと割り切れば、この操作性や携帯性はかなり魅力的だ。
もっとも、49,800円で内蔵メモリー専用でストロボ付きの「リコー DC-3」と比較すると、画質や記録・再生速度などの点で遥かに及ばないのも事実(近日レポート予定)。だが、デジタルカメラならではの楽しさや、パソコンなしでもプリントや外部メディアへの画像記録が容易にできる点では、より幅広いユーザー層に受け入れられるモデルといえそうだ。もっとも、今後はデジタルカメラからのプリントサービスが続々開始され、コンビニやカメラ店の店頭での、セルフサービス型プリンターが登場することもあって、これからはメモリーカードの採用か、IrTran-Pの搭載が必須となりそうだ。QV-200がある意味で初代QVシリーズの完成型であるとすれば、そろそろメモリーカードなどを採用した新世代モデルの登場を期待したいところなのだが。
□参考記事
【6/19】カシオ、タイトル合成機能などをそなえたデジタルカメラQV-200を7月に発売
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/970619/casio.htm
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http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/digicame/dindex.htm
■注意■
('97/6/23)
[Reported by 山田 久美夫 ]