後藤弘茂のWeekly海外ニュース
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●IBMがVLIW型のJava MPUを開発中!?

 IBMがVLIW型のJava用MPUを開発!? のっけからディープな技術ネタで失礼するが、先週のニュースのなかで、地味ながらかなりのサプライズだったのがこれだ。「IBM plans VLIW chip that runs Java code」(Electronic Engineering Times,5/19)。IBMのあの有名なT.J. Watson研究所で現在計画しているプロジェクトだそうで、リサーチプロジェクトながら、記事を読むとかなり具体的で面白い。「VLIWでJava?」と聞いて、ポンと膝を打った人もいるかも知れない。そう、ようは、JavaはどうせJavaバーチャルマシンでトランスレートして実行するのだから、その時にソフトウェアトランスレータで命令レベルのパラレリズムに並べ替えてしまって、それを8ユニット内蔵のVLIWコアで実行すればいい!! というアイデア。しかもそのトランスレータがPowerPCのコードも処理できて、しかもMPUのインターフェイスはPowerPC 6xx互換と来る。確かに、この方法ならVLIWのネックであるバイナリの継承性のないところも解消できるけど……、でも肝心のそのトランスレータ、本当にできるの?


●Exponentialの500MHz PowerPCは消え去るのか?

 新しいMPUのプロジェクトと思えば消え去るかもしれないMPUもある。「Apple drops Exponential chip」(CNET NEWS.COM,5/13)によると、先週のWWDCで米Apple Computer社は例のオーバー500MHz PowerPCのメーカー米Exponential Technology社のチップを採用する計画がないと明らかにしたそうだ。「Exponential pulls plug on its PowerPC efforts」(InfoWorld Electric,5/15)は、同社がそれを受けて、PowerPC互換プロジェクトを取りやめ、今後はIntel互換のMPU開発だけを続けるとことを明らかにしたと伝えている。


●MicrosoftのTalismanの命運はTridentの手に

 次はMicrosoftネタ。先週のスクープは、Microsoftの推進するグラフィックスハードウェアのアーキテクチャTalismanに関する「Trident Gets Talisman License From Microsoft」(Electronic Buyer's News)の報道。TalismanはこれまでPhilips Semiconductors社や米Cirrus Logic社など5社からなるチームが複数のチップで構成するプロジェクト「Escalante」を推進していた。ところが、先週Cirrus Logicがこのプロジェクトから手を引いてしまった。そこで今度はMicrosoftは米Trident Microsystems社と契約、Tridentがワンチップの製品を開発するのだという。3Dテクノロジとしてはなかなか素晴らしいのだけれど、なかなか前進しないTalismanプロジェクト。さて、今度は本当に実現するの?


●UNIX版IEは4.0で来年まで延期

 Microsoftがらみではもうひとつ冴えない話が。Microsoftは同社の遅れに遅れているInternet ExplorerのUNIX版では、ついに3.0を諦めて、4.0を98年第1四半期に出すということにしたらしい。「Unix Explorer will jump to 4.0」(CNET NEWS.COM,5/13)によると、この情報はいつの間にかWebサイトにポストされていたのだそうだ。遅れる時になると声が小さくなるのは、誰も同じかな。


●DECがIntelに宣戦布告

 出るくいは打たれる...PentiumII発表前後からのIntelは、こんなことわざを実感しているかも知れない。タイミングを見計らったようなPentiumIIバグ騒動、それに続く米DEC社と米Cyrix社による特許侵害訴訟。PentiumIIを発表してほっと一息というわけには、ぜんぜん行かなくなってしまったようだ。ただ、「Digital's Intel patent challenge a surprise, analysts say; Cyrix also files suit」(InfoWorld,4/14)などニュースサイトの記事を見ると、PentiumII高速化技術の根幹をターゲットにしたDECの訴訟は、かなり唐突でまだ狙いがわからないという論調が多数派。「Digital Files Suit Against Intel, Claiming Patent Infringement」(The Wall Street Journal,5/14,有料)は、「DECはなにか強力な証拠を持っているに違いないと思うのだが、もしそうだとしても法廷は最後の手段のはず」とか「Intelは地上で最強の法務部門を持っている(から無謀)」といったアナリストのコメントを載せている。もちろん、裁判の結果は見当もつかないが、それにしても、DECはPCに搭載するMPUではIntelの顧客でもあるわけで、こうなると、自分のとこのWindows 95 PCには何を載せるつもりなのだろう。あ、なるほど、それでAMD-K6の採用を決定したのか、と納得。


●Intelは2世代目のMobile ModuleでAGPをサポート?

 さて、Intel関連の技術ネタで面白かったのは「Intel's Mobile Module revision due next year」(InfoWorld,5/16)。Intelは、ノートパソコン向けにMPUとチップセットなどをセットでボードに載せたMobile Moduleを発表したが、早くも次世代のMobile Moduleも計画しているのだという。これは、AGPをサポートするためで、モジュールのピン数を増やしてモバイル用のPentiumIIを搭載して提供するらしい。

 もうひとつIntel関連のニュース。「Intel, HP plan Merced follow-on」(InfoWorld,5/13)は、Microprocessor Reportで報じられたとして、IntelとHPがMercedの次世代の21世紀のMPUの開発を始めたことを報じている。しかし、DECが勝訴するとMerced開発にも影響が出る可能性(マイクロアーキテクチャは全然違うにしても)がある。さてどうなることか。


●OracleがNavioを買収か?

 米Oracle社のラリー・エリソン会長兼CEOは、またまた大きな買い物を計画しているらしい。今度話題に上がっているのは、米Netscape Communications社の関連会社で、家電やNC (Network Computer)向けのWebブラウザやOSを開発しているNavio Communications。「Oracle Navio? Netscape reportedly making a deal」(MSNBC)によると、月曜日にアナウンスをするらしい。もし、この買収が本当なら、OracleはNC推進と、家電分野へのNCの展開に強力な武器を得たことになる。しかし、NC陣営全体としては、Netscapeが一歩引いてしまったことになるわけで、損失になる可能性がある。


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('97/5/19)

[Reported by 後藤 弘茂]


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