【イベント】

プロカメラマン山田久美夫が見た

ビジネスショウ '97TOKYO デジタルカメラレポート

~いよいよ混乱時代に突入したデジタルカメラ~


 とどまるところを知らないデジタルカメラの世界。ビジネスショウでも、各社とも意欲的な新機種を続々発表。今年の夏の商戦に向けての攻防がいよいよ始まり、今回はその第一弾が登場したわけだ(もちろん、第二弾、第三弾もあるぞ!)。具体的にはショーに先立って発表された「エプソン CP-500」「リコー DC-3」「京セラ DR-350」などが一般向けに初公開され、周辺環境やプリント環境を含めた展開も見られるなど、それなりに価値あるイベントとなった。





●カラーモデルも出品された「DC-3」

リコーブース

DC-3  OA機器の大手リコー(もともとはカメラメーカーなんだけどな~)は、ブースの前面を使い発表されたばかりのべーシックモデル「DC-3」をアピール。なかなか力の入った展示とデモを積極的に行っていた。

 本邦初公開の「DC-3」は、従来のDC-2Lの後継機というわけではなく、より低価格帯を狙った普及モデル。ちょっと肩すかしを食った感じがなくはないが、本格的なデジタルカメラシステムを構築するための布石という意味合いが強いモデルのようで、とにかく多くの人にデジタルカメラの楽しさをアピールするためのモデルなので、DC-2Lのような多機能でマニアック(?)なものではない。

 ブースはなかなかの賑わいを見せており、手に取る人も結構多かった。まあ、デザインもそこそこスマート(個人的にはレンズ部が出っ張っているのが嫌いだけど……)で、携帯性も比較的いいし、内蔵メモリー専用機で転送はやや面倒とはいえ、容量は4MBあり、撮影枚数は必要十分なレベル(撮影枚数はエコノミーモードで100枚、スタンダードモードでも50枚の撮影ができる)。しかも、TFT式の液晶モニターもストロボもあって、49,800円という手頃な価格。まあ、面白味には欠けるが、PCカードタイプでもシリアル転送がメインとなるデスクトップ機ユーザーが意外に多いことや、実販価格が4万円を割りそうなことを考えると、これはこれで存在価値は結構ありそう(ヘビーユーザーの選択肢にはならないけどね)。


DC-3カラーモデル  むしろ、ブース内に参考出品されていた「DC-3」のカラーモデルのほうが目を引いた。実際に商品化されるかどうかは不明だが、会場で人気投票がおこなわれており、メタリック系のブルーやワインレッドのボディーは人気も高く、ノーマルの「DC-3」よりも遥かにオシャレで魅力的だった。どうも実用重視という側面が強かったデジタルカメラ(とくにリコーはその代表格という感じだったけど)だけに、このような試みを高く評価したいし、実際に商品化されることを希望したい。





●データスコープとの連携を見せた「DR-350」

京セラブース データスコープとDR-350
通信用アダプター DR-350

 京セラは発表されたばかりの35万画素液晶付きモデル「DR-350」を公開。会場での人気はまずまずといったところで、やはり同ブースでは「データスコープ」を中心とした通信機器のほうに注目が集まっていた。  35万画素CCDモデルでコンパクトフラッシュカードを採用し、光学ファインダーやストロボまで装備した意欲的なモデルだが、液晶がSTNである点やボディーサイズ(とくに厚み)が結構ある点などが気になる。だが、デザインがカメラ風で、ダイアル式の操作部を採用するなど、カメラ感覚で扱える点は好感が持てた。もっとも、まだ画質は未知数だが……。

 もちろん、「DR-350」も同社が積極的に押し進めている通信情報機器システムの一環としてシステム化されており、今回もデータスコープと組み合わせての画像転送ができる通信アダプターを参考出品していた。これはデータスコープの下側(PCカードとしてパソコンに挿入する側)のカバーの代わりに、通信用アダプターを装着するもの。まだ簡単なモックアップの状態だったが、デジタルカメラと画像通信という、近い将来はかなり親密な関係になる分野にいち早く取り組んだものとして注目される。




●デジタルカメラ+プリンターを大々的にアピールしたエプソン

エプソンブース

デモ CP-500

 エプソンはかなり大きなブースを構え、プリンターを中心とした積極的な展開をおこなっていた。もちろん、先頃発表された81万画素モデル「CP-500」も展示されており、自由に触れることができるが、専用スペースが設けられているわけではなく、プリンターに埋もれている感じで、私自身、ブースの人にどこに展示してあるのか聞いてしまったほど。かなり魅力的なモデルだけに、見逃しそうな扱いになっているのはなんとも残念だ。

 一方、ブース内にあるステージでは、現行機種である「CP-200」とインクジェットプリンターを実際に使って、その便利さを体験できる、かなり大がかりなデモがおこなわれていたのが、とても印象的だった。





●35mmとAPS共用フィルムスキャナーを発表したミノルタ

ミノルタブース ミノルタブース

 ミノルタはデジタルイメージングにポイントを絞ったブース展開を図っていた。まず、今回ようやく発売にこぎつけた「DimageV」のデモを始め、画像の入力から加工、出力までをシステムとしてアピールしていたのが印象的。


Dimage Scan Dual Dimage Scan Dual Dimage Scan Dual

 とくに今回、参考出品ながらも新型フィルムスキャナーが初公開された。このモデルは「Dimage Scan Dual」という35mmフィルムとAPSフィルムからのスキャンができる低価格モデルで、光学解像度は2438dpi、10bit A/D変換というもの。価格は本体(35mm判用)が7万円前後、APS用アダプターが2万円弱という。フィルムスキャナーの人気が高まりつつある昨今だけに、なかなか注目される新製品といえそうだ。

 また、同社は「デジフォトマネージャー」などデジタル画像関係のアプリケーションにも力を入れており、この分野でも今後の動きが注目される。





●着々とデジタルイメージ関連機器を充実されているキヤノン

キヤノンブース フィルムスキャナ
マテリアル 水槽

 デジタルカメラに関してはややおとなしいキヤノンだが、今回ブースではPowershotとBJプリンターとの組み合わせをメインにした、具体的な展開をアピール。とくに、BJ関係では、ポピュラーなシールプリント用はもちろん、特殊な面質を備えたものまで、さまざまなマテリアルを一堂に展示。とくに、インクジェット式のウイークポイントといわれている耐水性に関しては、その高さを証明するため、小さな水槽にBJでのプリントを浸けっぱなしにして展示するといったデモもおこなわれていた。また、先頃バージョンアップを表明したフィルムスキャナーの展示もあった。入力から出力まで一貫したシステムを自社製品で組める数少ないメーカーだけに、今後のシステム展開が注目されるところだ。





●Piconaとモバイルギアで頑張るNEC

NECブース Piconaとモバイルギア
モバイルギア

 NECは今回、「Piconaが拡げるデジタルライフ」というタイトルで、結構広いスペースを使ってPiconaをアピール。とはいっても、基本的には小型軽量がウリのPiconaに触れてもらおうという意図がメインで、画像関係アプリケーションの展示もあったが、あまり明確なライフスタイルを打ち出すにはやや力不足の展示だった。また、携帯系ではもう一つのウリとなっているモバイルギアをさまざまな側面からアピール。その中には先日公開されたモバイルギア用のグラフィックビュワーソフトを使ってPiconaの画像を表示するデモもおこなわれており、MAILの添付データとして画像データの通信もできることをアピールしていた。もちろん、モノクロ液晶では画像内容の確認程度しかできないわけだが、あくまで、軽量な携帯端末で画像データを送りたいというビジネスユーザー向けという感じだ。デジタルカメラの活用法として、個人的には興味はあるが、どれほどの実用性があるかはやや疑問だ。





●大容量を前面にアピールしたシャープMDカメラ

シャープブース

MDカメラ
 シャープは話題のMDカメラをビジネスツールとして積極的にアピール。とくに、MDデータならではの大容量さを生かして、画像データベースや電子アルバム的な使い方のデモをおこなったり、ビデオ出力と音声記録機能を活かしてプレゼンテーション用ツールや電子カタログとして利用できるといった点に重点がおかれていたようだ。実際に20台近いMDカメラが置かれており、自由に触れるようになっており、この会場で初めて本機を手にする人も多かったようだ。





●新QVは登場しなかったカシオ

カシオブース ワイド&テレコンバーター

 QV-10AとQV-30が登場してから早一年。そろそろ次機種が登場してもおかしくない時期にさしかかっているカシオ。しかし、今回のビジネスショーでは新機種は一切登場せず。やや目立ったのは、QV-10シリーズ用の純正ワイド&テレコンバーターのみという、結構さびしい状態だった。もっとも、このコンバーターは純正らしく(?)とってもコンパクトでよくまとまっており、けっこう魅力的。しかも、両方セットで9,800円と価格も手頃だ。なお、QV-100用も近日発売予定という。





DSC-V1 DSC-V1
富士ゼロックス

 このほか、サンヨーブースでは「DSC-V1」を積極的に展示し、同社自慢の低温ポリシリコンTFT液晶の美しさをアピール。また、富士ゼロックスのブースでは「富士フイルム DS-300」のOEMモデルの展示もあった。さらに、会場の来場者にも、デジタルカメラを手にした人がかなり多く、松下 COOLSHOT2のOEMと見られるプラス社のデジタルカメラを手にしていた人の姿もあった(おそらく関係者だと思われるが……)。

 残念ながら、期待したほど大物の新製品は登場しなかったが、まだまだ今夏の商戦までには来月始めのCOMDEX(アトランタ)やWindows World Expoといった大型イベントが控えているため、今回のビジネスショーはその第一弾がようやく登場したという感じだった。



□ビジネスショウ '97TOKYOのホームページ
http://www.noma-businessshow.or.jp/bs97/index.html
□関連記事
デジタルカメラ関連記事インデックス
http://www.watch.impress.co.jp/pc/docs/article/digicame/dindex.htm

('97/5/13)

[Reporterd by 山田 久美夫]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp