●接続キット込みで8万円台の81万画素モデル
富士やコダックなどメガピクセルモデルの登場など、デジタルカメラの高画素化への進展が見られる今日この頃。しかし、これまでの高画素モデルはいずれも12万円の高価格なものばかりで、なかなか手が出なかった。もちろん、実販価格はそれなりにこなれてきたが、接続キットなどを含めると10万円は覚悟しなければならなかった。だが、今回発表された「CP-500」は81万画素CCDであり、液晶も「サンヨー DSC-V1」で話題の低温ポリシリコンTFTを採用し、さらに「C-800L」の最大のネックとなっていたメモリーも内蔵で4MBあり、さらにコンパクトフラッシュ(CF)カードを採用した意欲作であり、しかも価格は接続キットや8種類ものソフトまで同梱されて89,800円という低価格。おそらく、実販では7万円前後となる、かなりのお手ごろモデルといえる。
以前のCP-100やCP-200は、もともとアメリカ市場を重視した設計で、デザインもかなりアメリカンなものだった。しかし、今回のモデルはデジタルカメラの最先端市場である日本のマーケットをかなり意識したものになっている。
デザインも実用本位な先代とは違って、結構オシャレ。しかも、いわゆるコンパクトカメラ風デザインを踏襲している点は好感が持てる。このデザインは好みが分かれるところだが、個人的にはもう少しスマートでスタイリッシュでもいいかなあ~と思った。
また、写真で見るとサイズが分かりにくいが、意外に小さめでDS-8と比べて高さは低いが、横幅は1cmくらい長い程度。厚みはCFカードの採用などでやや厚手でだが、この程度なら許容範囲という感じだ。もちろん、常時携帯することを考えるとまだまだ大きいし、よりコンパクトになって欲しいところだ(でも、そのぶんコストが高くなるんだろうなあ~)。
円形のレンズ周りがなかなか個性的だが、この部分がメインスイッチとなっており、誤操作を防ぐため、OFFのときは光学ファインダーが見えなくなるように考えられている。
ファインダーは光学式と液晶式の併用型で、通常のコンパクトカメラ感覚で撮影したい人や、電池の消耗が気になる場合は光学式がメインとなるだろう。だが、本機の場合、液晶に高品位な「低温ポリシリコンTFT」が採用されており、明るい場所でも十分によく見え、ファインダーとしてきちんと機能するのが大きな魅力だ。ま
た、視野角(斜めから見たときの視認性)が広いのも大きな特徴だが、本機では左右方向はかなり広いが、上下方向では画像の明るさが大きく変化する傾向が見られた。しかし、「サンヨー DSC-V1」と違って明るさ調節機能が備わっているので安心だ。
しかしまあ、現在多くの機種に採用されているMIM式液晶の供給元であるエプソン自身が、わざわざコストの高い他社製品の低温ポリシリコンTFT液晶をあえて採用したということ自体が、エプソンがこのモデルにかけた意気込みが感じられる。
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【1,024×768pixel(170KB)】 |
本機の最大のウリは、やはりなんといっても、81万画素CCDの採用といえる。このCCDはもともとデジタルビデオ用のもので、補色系の長方画素のもの。おそらく「オリンパス C-800L」と同じものだろう(なにしろ、高画素で量産可能なCCDはあまり種類がないからね)。
出力画像サイズは1,024×768ピクセルのXGA相当となっている。まあ、キャッチフレーズだけでいえば、画像補間処理を大胆に施して、メガピクセルとうたいたい部分もあるだろうが、ここは正直に、長方画素の縦横比補正のみに留めたものとなっている(出力解像度のみメガピクセルという「DC120」の次に登場した高画素モデル が、このような正直なタイプでよかった……)。
もちろん、CCDのポテンシャルは画質をかなり左右するが、問題はCCDが得た画像をどのように料理して絵作りをしているかという点だ。開発者サイドはこの点にかなり気を配ったようだ。
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【768×1,024pixel(395KB)】 |
その点、CP-500なら、81万画素でしかも、コンパクトフラッシュカードが使えるし、ファイル形式もJPEG準拠なのできわめて便利だ。
また、内蔵メモリーが4MBあるので、CFカードを持っていなくても、本機を購入してすぐに使える点もいい。もちろん、最初からCFカードを添付するという話もあるだろうが、同社は国内屈指のCFカード販売元だけに、そうもゆかなかったのかなあ~とも思えた(もっとも、いまさら4MBカードを添付されてもあまり利用価値はない かもね)。まあ、ハードユーザーでも、普段はCFカードで撮影していて、カードが一杯になったときの緊急用として利用できるというメリットもあるわけだ。
レンズは解像度とコストやサイズの点で有利な単焦点レンズ(36mmレンズ相当)を採用している。もちろん、フォーカス方式はAFだ。また、本機は高画素を生かして、640×480ピクセルのVGAモード時には画像補間によって画像を拡大するデジタルズームを採用している。もちろん、ソフト的に拡大するだけなので、光学式ズームと違って倍率が1.6倍を越えると画質低下を伴う。しかし、VGAモードならば、もともと画素数的に余裕があるため、実用レベルの画質を得ることができる。これはアイデアとしては十分にアリだと思うし、本機をホームページの作成やメモ用としてVGAモードで利用する人やテレビ画面で楽しむ人にとっては、ズームレンズ感覚で望遠撮影が楽しめるし、ズームレンズ搭載モデルよりもコンパクトでコスト的に有利なことを考えると、結構実用性がありそうだ。
等倍 【640×480pixel(51KB)】 |
×1.6 【640×480pixel(57KB)】 |
×3 【640×480pixel(58KB)】 |
また、本機には1,024×384ピクセルという横長のパノラマモードも設けられている。もちろん、XGAモードで撮っておいて、上下をカットすれば同じじゃないか!という人もいることだろう。しかし、このモードの場合、画像サイズが小さくなるので撮影枚数がXGAモードよりも増えるというメリットがあるうえ、パソコンを持っていない人でもパノラマモードを楽しめるし、パノラマ版でのダイレクトプリントもできるわけだ。もちろん、コンパクトカメラのパノラマモードと同様に、視覚的にワイドに見えるだけで、写る範囲は変わらないわけだが、実際に使ってみると、これが結構楽しめるモードといえる。なお、各モードの撮影枚数は最終調整前ということで確定していない。
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【1,024×384pixel(76.4KB)】 |
このほか、パソコンの画面をデータファイルとして保存し、カメラに転送して、液晶やテレビ画面で再生できるソフトや機能も備えているため、電子アルバムや簡単なプレゼンテーション機器として利用できる点も見逃せない魅力といえる。
しかも、いずれもソフト処理のみで実現しているので、これらのためにあまりハードウエアのコストが上がっていないこともあって、おまけ的な感覚で楽しめるのもいい(ソフトを組む側は大変なんだろうけど……)。
【1.024×768pixel(164KB)】 | 【1,024×768pixel(139KB)】 | 【768×1,024pixel(348KB)】 |
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【768×1,024pixel(254KB)】 |
それはともかく、本機の大きな特徴として、高画質プリンターである「PM-700C」に直結して、パソコンなしにダイレクトにプリントが楽しめるという点がある。この点は今回試すことはできなかったが、ユーザーの多いプリンターだけに、PM-700Cユーザーにとって大きな魅力となりそうだ(もっとも、すでにパソコンを持ってい
る人なので、ダイレクトプリントの意味がどれくらいあるかどうか疑問だが……)。
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【1,024×768pixel(148KB)】 |
さて、もっとも気になる写りだが、今回のベータ版での実写ながらも、想像以上に良好な画質が得られた。もちろん、解像度は81万画素採用機であることを十分に堪能できるシャープネスを備えている。色再現性も明るく素直で、C-800Lのような日中撮影時の青かぶりや色の濁りが感じられず、とても好感が持てた。また、階調の再現性も良好で日中のコントラストの高いシーンでもハイライトからシャドーまで整った階調を実現している点は立派だ。
露出も実に正確で、順光はもちろん、逆光時でも的確な露出が得られた。このあたりのチューニングにはかなり神経を使って開発されたモデルといえる。全体に再現域の狭い補色系CCDの欠点をうまくカバーしたものとなっており、結構感心してしまった。まだ、ベータ版のため、最終的な製品版ではさらに画質が向上するという ことなので、大いに期待したい。
また、撮影感覚はコンパクトカメラ風で、なかなか軽快に撮影できる点も好感が持てる。もっとも、現時点では高画質モードで液晶OFF時の記録速度が約7秒と長めなのが気になるが、製品時には若干改良される可能性もある。操作性は比較的よく考えられているが、機能が多いこともあって、若干複雑になってしまったのが残念だ。しかし、個人的には常時ストロボモードをOFFにできる点や、液晶でのファインダー表示をスイッチ一つで指先だけでON・OFFできる点に好感が持てた。
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【1,024×768pixel(151KB)】 |
ビジネスショー直前だけに、ライバル機が多数登場することが予想されるが、現時点でこのモデルを見る限りでは、81万画素という高画質さをうまく消化した、使い勝手のいいモデルといえる。しかも、多機能でアイデアが各所に感じられる、かなり楽しめるモデルといえる。実際に現在デジタルカメラに求められる要素の大半が盛り込まれており、価格も8万円台とお手頃だ。今回は試写をするために、エプソンの本拠地である松本での撮影となったうえ、短時間の使用だったので、本機の機能をすべて確かめることはできなかったが、それでも十分に魅力的なカメラであることは体感できた。ある意味で本機は、現行モデルのいいところをバランス良く網羅した、(ちょっと欲張りなほどの)完成型といえそうだ。だが、サイズとデザインと操作性に関してはもう一頑張りしてほしいし、目先の機能だけではなく、デジタルカメラとしての本質的な部分で新たな提案を感じさせる部分も欲しい気がした。発売は7月始めというが、「もっと早く使いたい!」と思わせるだけの魅力が感じられるモデルだった。
□セイコーエプソン株式会社のホームページ
http://www.epson.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.epson.co.jp/epson/japanese/whatsnew/1997/970428.htm
□参考記事
【4/28】エプソン、1,024×768ドット出力で89,800円のデジカメ「カラリオ CP-500」発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/970428/epson.htm
デジタルカメラ関連記事インデックス
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/digicame/dindex.htm
■注意■
('96/5/1)
[Reported by 山田 久美夫 ]