ソニーのICレコーダーICD-50 標準価格15,000円 |
それを見てしまった俺は、速攻で家電店に行き、そのICレコーダーをゲット。使用法は簡単で、録音ボタンを押して声を吹き込むだけ。最大録音時間は16分で、録音した声が番号で整理される。ビジネスマンがちょっとした音声メモを残すために使う装置だが、俺の場合、思い付いたアイデアやおもしろい言葉などを録音・記録し、原稿執筆時にそのアイデアを生かそうという、かなり無理やり&後付け的な購入理由を構築して、その衝動買いをよしとし、いじくり始めた。
久々におもしろくてカッコいいオモチャを手に入れた感じで、声を録音したり再生したりして遊んだ。すると、昔やった趣味の事を思い出した。
学生時代のことだ。当時は、電子楽器が流行り始めた頃で、ポストYMO時代、ヒップホップミュージック開始という感じ。その頃、どうしてもヒップホップをやりたくて、友人とバンドを結成し、気合とバイトを融合させてすんげえ高級な電子楽器を買った。AKAIのS612というサンプラーと、YAMAHAのRX11というリズムマシン、いくつかのエフェクター、シンセサイザー、MTRなどなど。男の60回払いのローンを組んでも、1回2万円近い支払となった。それらの機材を使って作った曲の音質は、音楽というには余りにヘボく、なんかラジオっぽいミキシング結果となってしまったものだ。ソニーのICレコーダーICD-50の再生音を聞いた俺は、そのヘボい音質を思い出したのだった。
そこで俺は、久々に楽器関連雑誌(リットーミュージックのだヨ!!)を購入し、最新のMIDI関連電子楽器の世界を鳥瞰してみることにした。
64ボイス音源モジュール、RolandのJV-2080 |
と叫びながら雑誌を読みまくっていたら、なんかとてつもなく凄いMIDI規格対応音源を発見した。RolandのJV-2080だ。説明を読むと、なんか未来の世界のことを読んでいるみたいで信じ難かった(古い人間ですみません)ので、さっそく楽器屋に行ってその音を聴いてみた。
10年ぶりくらいに鍵盤を押してみたら、スピーカーから生楽器の音が。あ、なんかサンプラーの音が出ているらしい。「あの~、サンプラーじゃなくて、こっちのJV-2080という音源の音を聴きたいんですけど」と店員に言うと「えっ、ですから今鳴ってるのソレの音ですけど」。
うぉおぉぉ~ッ!! 凄い!! 凄過ぎる!! これが現代の音源というものか!! 欲しい!! 欲し過ぎる!! ていうか買った。
昔は(まだ言ってるよ>俺)、単にちょっとリアルな金属音が出るとか、ピアノに近い音が出るとか、同時に32音出せる(32音ポリフォニック)とか、その程度で"すげえ音源"ということになっていたのだが、未来世界の未来の人が作ったらしい未来からやってきた音源であるところのJV-2080は、64音同時発音(64音ポリフォニック)で16パートマルチティンバー(16種類の違った音色を自在に出せる)で、あらかじめプログラムされている音色は640種類とかあるのだ。当然GM規格にも対応している。信じられん。やはりこれはタイムマシンで未来から持ってきた音源であろう(くどい>俺)。
ともかく、俺はコレ1台あるだけで何でもできそうな気がしてきた。こうなったら昔の機材引っ張り出してきて再びDTM野郎と化すゼ!!
パッチベイを購入 |
パッチベイで複数の機材をフレキシブルに接続したら、今度はミキサーのチャンネル数が足りなくなってきた。それからリミッターも必要だ。あとコンプレッサーも要る。ついでにエフェクターがもう1系統あるといい。などということになり、俺はまた楽器系雑誌を開いた。
欲しいモノ全部揃えたらすっげえ金かかるだろうなー、と思って計算してみたら、案外安い。5~6万円で買える!! ワンランク上の機材を買っても10万円で収まる!! 安い!! 激安!! と思ったのは、きっと俺がいつもパソコンなどを衝動買いしており、ハードウェア購入時の金銭感覚が失われているからであろう。ふつーは“楽器を補佐するための装置”に10万円出さないのだろう。
という感じで、もうソニーのICレコーダー以降の衝動買い行為を考えたくもないほど衝動買いしてしまった俺の前にあったのは、人間の手では弾ききれない電子楽器だった。
パッチベイの次には、ラックを導入 |
このように勇み過ぎて衝動買いをすると、たいてい失敗というか苦い思いというか、パソコンライターにあるまじき買い物をするというか、残念な結果になるのであるが、まあそれはよくある悲劇ということで置いといて、PowerBook1400cは(旧機種になったことを悔やまなければ)、かなりイカシたノートパソコンだ。
俺は以前、PowerBookの5300シリーズを買って、そのヤケクソな不安定さに四苦八苦して速攻で売り払ってしまった。でも今回買った1400cは、液晶もイイし、漢字Talkも新バージョン(と言っても7.5.3)だし、とりあえず今のところ不調はない。DTM用にだけ使うにはちょっとゴージャスだが、まあとにかく、コレを使っていろいろとやっている。
で、結局、四苦八苦して俺の最強に強まったサウンドシステムをコンピュータによって管理できるようになったのだが、今度は、なんか、外見上いまひとつスッキリしない。モジュールは積み重なってるし、机の上に音源だのサンプラーだのを置いておくのはヒッジョーに邪魔である。ということで、俺は速攻でそれらを収めるためのラックを買った。
テレビショッピングしたパワードライバー |
ところで、モジュールをラックに取り付けたことのある人ならご存じと思うが、この、“モジュールをラックに取り付ける”という作業はけっこう大変だ。ひとつのモジュールを取り付けるのに最低4箇所はネジ止めしなければならないし、サポート役がいないとかなりしんどい。しかも俺のように凝り性だと、モジュールの位置が気に食わなくなって、取り付けと取り外しを何度も繰り返したりすることになる。
で、ラックへのモジュール取り付けに辟易してテレビを見ていたら、画面にいつものアイツが登場した。「これさえあればあらゆるネジを信じられないほどスピーディーに回せるんだ。アメリカでは日常茶飯事のナンバープレートの交換作業だって一瞬。面倒だと思う暇さえないんだ」とか言っている。それだ!! そのパワードライバーってやつだ!! 俺は一瞬の閃きでパワードライバーを買った。
パワードライバーは、手動のドリル型のドライバーで、手を握ったり開いたりするだけでネジを締めたり緩めたりできる。テレビでその広告を見る限りでは、けっこう胡散臭いのだが、使ってみたら実によかった。非常に快適だ。このキットには各種ビット(ドライバー先端部分)がついている。プラス、マイナス、星型、四角型、六角など、たいていのネジに合致するビットがあるので、これが1キットあれば、パソコンから家具からバイクまでをバラバラに分解できるって分解してどうする>俺。ともあれ、久々に“当たり”のテレビショッピングをした。コレを使ってのラックマウント作業はかなり快適だった。
ちなみにその後、俺は友人とバンドを結成し、地道かつふざけつつ、音楽活動をやったりやらなかったりしようという心意気である。
[Text by スタパ齋藤]