後藤弘茂のWeekly海外ニュース
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●Intelが300MHz版Pentium IIを来月発表か?

 ともかく、これだけ米Intel社関連のスクープがあふれた週はこれまでなかった。Pentium IIがいよいよ近いと見られているたためか、各ニュースサイトはIntelの次世代MPUの話題で持ちきりだった。たとえば、「Intel's plans include 400-MHz Pentium II chips」(InfoWorld,4/21)では、Intelが来月、300MHz版までのPentium IIプロセッサをアナウンスすると報じている。これまでの各サイトの報道では、Intelは当初233MHz版と266MHz版を発表するとされていたが、この様子では、それに急遽300MHz版をプラスすることになったらしい。さらに、今年遅くか来年初めに333MHz版、来年の第2四半期に350MHzと400MHz版(!!!)と続くという。このペースは、明らかにこれまでの予想ペースよりも半年以上速い。出荷計画を大幅に前倒しにしたと見ていいだろう。米AMD社のPentium II対抗MPU「AMD-K6」の性能が思ったよりよかったので、Intelも本気になったということだろうか? 一方、モバイル版Pentium IIは、233MHz版と266MHz版を来年早期に、300MHz版を来年の第2四半期に出すという、こちらも急ピッチな展開が伝えられている。

 ただし、「Pentium, Pentium II hit new highs」(CNET,4/18)によると、来月発表すると見られる300MHz版Pentium IIは、当初は極めて限られた量しか出荷されず価格も高くなるらしい。もっとも、これは当然の話だ。そもそも、MPUの高速品というのは、大量に生産したチップの中から、300MHzで駆動するものをより分けるようなカタチになる。だから1個でも動作するものが採れれば発表はできるわけだが、最初は採れる量が限られる。段々、ラインを動かしているうちに、より大量に高速品が採れるようになるというわけだ。これまでIntelはおおむね発表時には製品をかなりの数出荷できる体制にしておくというポリシーを守ってきたわけだが、これからはそう悠長なことは言っていられそうもない。


●233MHz版ノートパソコン用MMX Pentiumも続く?

 さて、Intelが急ピッチで拡充しようとしているのは、Pentium IIだけではなさそうだ。「Intel plans more powerful Pentium, Pentium Pro chips」(InfoWorld,4/14)を信じるなら、9月には200MHz版と233MHz版のノート用MMXテクノロジPentiumプロセッサ、コード名Tillamookが登場することになる。また、Intelは5月に133MHz版のノート用MMX Pentiumも出すという。現行のMMX Pentiumより低速版を出すというのは奇妙に聞こえるかも知れないが、低消費電力/低価格版という位置づけと考えれば納得がゆく。というのは、現在、ノートパソコンメーカーからは150MHz/166MHz版MMX Pentiumだと、熱設計が大変でサブノートに載せにくいというクレームが出ていると言われるからだ。133MHz版の方がシステムクロックが高くなることを考えれば、133MHz版ノートと150MHz版ノートでは性能差がほとんどないと予想される。とまれ、このチップが本当に出れば、ノートパソコンでMMXがさらに身近になることは間違いない。また、このほか、デスクトップに233MHz版のMMX Pentium、サーバー向けには1MB 2次キャッシュ搭載版のPentium Proが登場するという。


●次世代Pentium IIでは駆動電圧は1.8Vへ

 こうしたIntelの大攻勢を支えているのは、立ち上がり始めた0.25ミクロンの次世代製造技術だ。「Shrinking device elements will bring mobile Pentium IIs to market this year」(InfoWorld,4/16)によると、現行の0.35ミクロンから0.25ミクロンに移行することで動作周波数がアップするだけでなく、チップの駆動電圧も2.5Vから1.8Vに下がるという。精細化することで、半導体のスイッチのようなものが軽くなるから高速&低電圧になると考えてもらえばイメージをつかみやすいだろう。だからノート用Pentium IIも可能になるわけだ。さらに、Intelでは2000年頃には0.18ミクロンに素早く以降するという。つまり、400MHzを超えるクロックで、しかもノートパソコンに載るようなモンスターチップが登場してくる可能性があるわけだ。

 また、「Pentium II Boards Coming In June, Sources Say」(Electronic Buyer's News)によると、IntelはPentium II用のNLX仕様のマザーボードも6月には提供するらしい。これに搭載されるチップセットは、CN430TXとなっている。IntelのPentium II用チップセットは、これまで440LXと言われてきたがもしかすると名前が変わった可能性もある。


●CyrixもM2で266MHzを実現?

 Intelの急展開に刺激されたのか、他のMPUメーカーも展開を早めつつある。「Cyrix Discloses M2 Clock Speeds」(Electronic Buyer's News)によると、米Cyrix社が近い将来発表すると見られている次世代MPU「M2」の動作周波数は、166MHz、200MHz、233MHzで、266MHzもそれに続くという。これまで予想されていたよりもペースは速いが、それでもIntelがハイクロック攻勢を強めるならかなり不利なことは確かだ。


●ラリー・エリソンApple Computer会長兼CEOは実現するか?

 米Oracle社のラリー・エリソン会長兼CEOと言えば、今や米Apple Computer社の買収発言で時の人。ニュースサイトには、エリソン氏&Appleの続報が次々と流れている。「Apple, Ellison Draw Swords Over Ailing Computer Maker」(The Wall Street Journal,4/18,有料)によると、エリソン氏は、Appleの大手株主に対して彼の買収プランに協力するように要請したという。ただ、情報筋によると、株主はApple株に対してある程度のプレミアを提供するというエリソン氏に対して、それほど感銘は受けなかったそうだ。また、「Oracle's Ellison wants top post if he takes Apple」(InfoWorld,4/18)では、エリソン氏が、Apple買収に成功したら、彼自身がトップの座を求めると語ったと伝えている。また、これは日本の新聞のインタビューでも言っていたが、Appleのブランド名を利用してNCを製造する計画も暖めているらしい。「Macintosh NC」だそうだ。うーん、確かにインパクトはある。


●コンピュータ業界vs放送業界、デジタルTVを巡る戦い

 先週に引き続きデジタルTVと米Microsoft社の関係のニュース。「Microsoft Plans Digital-TV Push With Hardware, Programming」(The Wall Street Journal,4/16,有料)が非常によくまとまっていてこの件に関する状況の全体像をつかみやすい。簡単に内容を説明すると、Microsoftは先週、放送業界に対してデジタルTVのビジョンを示したわけだが、放送業者はそのビジョンを今のところ受け入れなかった。というのは、放送業界側はMicrosoftが提案したのとは別なフォーマットをデジタルTV用に推進しているからだ。今のところは真っ向から対立しており、いくらMicrosoftがパソコンに自社の推進するデジタルTVチューナーを搭載させたとしても、このままでは肝心の放送が提供されないという事態もありうるという情勢だ。しかし、Microsoftはこれで引き下がるつもりはないらしい。放送業者や制作会社、TVメーカーを自社の陣営に引き込もうと、ガンガンと勧誘活動を行っているという。記事によると、デジタルTVに熱心な米Walt Disney社傘下のABCあたりがMicrosoft側につく可能性もあるそうだ。また、Microsoftは自分自身が新しいコンテンツのプロデューサにもなろうとしているという。コンピュータ業界vs放送業界、はたして勝のはどちらか。


●MSNはメールサーバーがダウン

 ところでMicrosoftと言えば、先週はThe Microsoft Network(MSN)のメールサーバーダウン事件がニュースサイトをにぎわした。朝日新聞にまで報道されてしまったくらいだから、もはや説明は不要とは思うが、一応概略を説明しておこう。「MSN email outage ahead」(CNET,4/16)「MSN says mail has arrived」(CNET,4/21)などの報道によると、MSNのメールサーバーはここ数ヶ月間、トラブルを抱えていたが、先週になってイニシャルがC,D,EのユーザーとTからZまでのユーザーのメールを担当する2台のサーバーが本格的におかしくなった。そこで、メールサーバーの入れ替え(9台から18台へ)を急きょ予定を早めて行うことにしたという。そのため、先週の後半MSNのメールサービスのほとんどが停止してしまったというわけだ。

 今回に限らずMSNにはトラブルが多い。数10万人という単位で毎月ユーザーが増えているのだから仕方がないと言えば仕方がないし、AOLも同様なトラブルに泣いているからMSNだけの話ではない。しかし、MSNはWindows NTシステムのショーケースだけにMicrosoftのイメージがこうむったダメージは少なくない。たとえば、去年は、いつまでたってもユーザーに請求書が届かない、そして届いたと思ったら数ヶ月分まとめて請求されたという事件もあった。もっとも、この時には日本ではあまり騒ぎはならなかった。というのは、この事件で得した人もいたからだ。たっぷり使ったはずなのに、なぜか基本料金しか請求されず、その間の利用データがWindows NT課金サーバーのデータベースの闇に消えてしまったなんて幸運なユーザーもいる。それが誰かって? それは秘密だ。


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('97/4/22)

[Reported by 後藤 弘茂]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp