後藤弘茂のWeekly海外ニュース
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●PC業界ビッグスリーがTV業界に挑む

 先週は、ともかくTVがらみでのサプライズの多い週だった。発端は、ラスベガスで開催されたカンファレンス「National Association of Broadcasters(NAB)」で、Microsoft、Intel、Compaq Computerの3社が、コンピュータ業界からのデジタルTVスタンダードを提案したこと。「PCs' Big Three Join to Fight For Digital-TV Standards」(The Wall Street Journal,4/8)によると、PCメーカーはPCに100ドルから150ドルをプラスすればデジタルTVに対応できると試算していて、2003年には2,000万から5,000万台のデジタルTVレディPCが予想されるとしている。一方、TV業界は、今回3社が提案したものとは異なる方式を提案している。いよいよPC業界対TV業界の対決が本格化か。


●PCメーカーはこぞってデジタルTVに意欲

 もっとも、デジタルTVを機にTV産業に食い込もうとしているのは、3社だけではない。コンピュータ系メーカーはこぞってこの市場に入ろうとしているという記事が「Vendors see TV in Net dreams」(CNET,4/7)だ。米IBM社はデジタルTV時代のバックボーン技術「LogiCast」パッケージを発表し、米Silicon Graphics社も編集システムを、米HP社もブロードキャストサーバーを売り込んでいるという。デジタル化する次世代TVシステムは、放送側も受信側も実質的にコンピュータになってしまうかも知れない。


●MicrosoftがWebTVを買収

 TVがらみでもうひとつのサプライズは、Microsoftによるインターネット端末&サービスベンチャ「WebTV Networks」の買収だ。WebTVは、セットトップボックスタイプのインターネット端末をSony Electronics社とPhillips Consumer Electronics社と組んで、昨秋にいち早く市場にもたらした。しかし、「Microsoft moves to link computers, TV  $425 million purchase of WebTV puts it ahead in race to build new sets」(The Seattle Times,4/7)によると、技術的なリードにもかかわらず、わずか5万から10万台しか売れず、利益を上げられなかったという。そこへMicrosoftが手をさしのべたわけだが、じつはWebTVの最大の出資者のひとりは、Microsoftの共同創業者のポール・アレン氏。そして、昨年WebTVはMicrosoftと技術提携と資本参加を発表している。つまり、予想できた展開だったわけだ。ちなみに、WebTVのメインメンバーは、元Apple Computer社員で、MagicTVの開発部隊。またまた、Appleの資産がMicrosoftに取られてしまったカタチだ。


●IntelがMPU価格をカット

 次はIntelの話題。「Intel quarterly chip discounts due」(CNET NEWS.COM,4/11)によると、IntelがMPUのプライスカットを4月28日に発表する見込みだという。これは、Intelが四半期ごとに定期的に行っているカットで、意外ではない。記事では、Pentium Proファミリが25%のプライスダウンになり、ローエンドPentiumの価格も下がると予測している。また、「Intel to detail 0.25-micron technology on Tuesday」(InfoWorld,4/11)によると、Intelは火曜日に次世代MPU向けの0.25ミクロン技術を明らかにするという。現行の0.35ミクロン技術よりも、低コスト、低消費電力のチップを作れるようになり、Pentium II高速版の「Deschutes(コード名)」などがこのプロセスで作られる予定だ。


●IA-64と既存チップは当面併走

 また、Intelは先週、次世代のIA-64アーキテクチャMPU「Merced(コード名)」のプラン概略を発表した。「Intel's Grove touts speed of NetPC, outlines Merced plans in Innovate speech」(InfoWorld,4/9)によると、Mercedは'98年遅くか'99年早期に登場する予定という。また、これに同期して、IntelとIA-64アーキテクチャを開発している米Hewlett-Packard社のMPUプランのニュースが伝わってきた。「HP to continue development of PA-RISC in addition to Merced effort」(InfoWorld, 4/7)によると、HPは共同開発チップと平行して、現行の自社RISCアーキテクチャ、PA-RISCの開発も続けるという。共同開発チップは、Intelのx86とPA-RISCの両方にバイナリコンパチになる(!)ことがすでに知られている。しかし、性能をフルに引き出すにはリコンパイルが必要と見られているため、ネイティブのPA-RISCコードで高速に走るPA-RISCの開発を平行して続けると思われる。「Intel's Grove Lays Out Merced Road Map」(COMPUTER RESELLER NEWS,4/9)によると、Intelも同様にx86系を平行して強化するというが、これも同じ理由だろう。ちなみに、米Microsoft社は、すでにIA-64命令セットにWindows NTを移植することを発表している。Windows NTは、MIPSとPowerPCのサポートを打ち切るので、Windows NT 5.0からはx86とAlphaだけになってしまうわけだが、'98年末からはそれにIA-64アーキテクチャチップが増えることになる。2001年あたりには、Windows 95はPentium II系、Windows NTはIA-64/Alpha系とMPUが分かれてしまっているかも知れない。


●K6をHPやDECが採用?

 前にコラム「海外ニュース」で予想した通り、AMDは次世代MPU「AMD-K6」をPentium IIより先に発表したものの、やはり大手メーカーからのシステム発表は間に合わなかった。日米どちらでも小メーカーやショップからの発表だけだったが「Big players sign on for K6」(CNET,4/10)によると、AMDはいよいよ大手PCメーカーへの出荷を始めたという。業界筋からの話として予測されているのは、米Hewlett-Packard社と米Digital Equipment社、それに米Compaq Computer社も可能性があるという。大手メーカーの動向は、K6の行方を左右するわけだが、さてどうなるか。いくら製造コストがPentium IIより安くても、大量に出荷できなかったら設備投資コストがAMDにのしかかることになる。


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('97/4/15)

[Reported by 後藤 弘茂]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp