【周辺】

確かに小さい。けど…「NEC ピコナ」

プロカメラマン山田久美夫が見た


「NEC ピコナ」ファーストインプレッション




 同じ性能なら小さいほうがいい。とくに、デジタルカメラのように持ち歩くことが前提の商品はなおさらだ。しかし、世の中そううまくは行かないもの。たとえば、ソニー Cybershotの電池などはいい例で、もし、サイズ的な制約がなかったら、もっと大容量の電池を搭載して、”スタミナ Cybershot~”なんて宣伝したかも知れない……(そういえば、ソニーは例のスタミナシリーズで省エネ関係の賞を獲得したらしいが、デジタルカメラまで含めたら、きっと対象外だよね<1ユーザーの弁)。

 それはさておき、今日14日に、液晶付きのメモリーカード採用機で世界最小最軽量を誇る「NEC Picona」が発売された。早速実写レポートをお届けしよう!



●ポケットに楽々入る抜群の携帯性

作例1

【640×480pixel(23KB)】


 「やっぱ、相当ちっちゃいなあ~」というのが、改めて手にしたときの第一印象だ。もちろん、私自身は、すでに発表会で一度見ているわけだが、それにしても、ちっちゃい。ほとんど、たばこの箱と同じ大きさで、手の小さな私でも、なんとか片手で持てるサイズに収まっているのは、やはり驚きだ。まあ、PMAで見た「松下 Palmcam」ほどではないが、カード採用モデルと考えると、このサイズはかなり立派だ。また、重さも軽く、胸ポケットにいれておいても、ほとんど気にならないレベルといえる。

 しかし、ボディー全体がプラスチックでできており、高級感がなく、液晶モニターの開き具合やボタン類の操作感などが少々安っぽい感じがするのは残念。このサイズで質感が高ければ、結構素敵なアイテムになりそうなのに……。


●やはりブレやすかった親指シャッターボタン

作例2

【640×480pixel(39KB)】


 ボディーが小さいこともあって、気になるのが操作性。このあたりは、まだ一考を要する部分がある。基本的に縦型のデザインは悪くないと思うのだが、個人的にはあまり持ちやすいとは思えず、安定性もいまひとつ。

 さらに、ボディー背面にあり、親指で押すシャッターボタンも、あまり感心しない。ビデオカメラではこのようなタイプを採用した機種もあるが、ビデオは基本的に録画開始と停止するとき以外は使わないし、押した直後に微妙にカメラが動いてもなんとかなるかもしれない。しかし、スチルカメラの場合は、的確なシャッターチャンスを掴む必要があり、その瞬間にカメラが動いてブレを起こしたら、元も子もない。

 だが、本機はシャッターボタンは親指操作で、しかも、一段目のストローク(半押し状態)で露出をロックし、その後に2段階目で押し切るタイプ。そのため、自分では動いていないような気がしていても、撮影するときに、微妙にカメラが動いてしまうことが多い。これは力学的にいっても、ブレやすいと思う。


作例3

【640×480pixel(77KB)】


 発表会での説明では、「人差し指がかかる位置(レンズ下)にシャッターがあると、誤操作をする心配がある」という説明だったが、実際に使ってみると、レンズ下の人差し指がかかる位置にあるのが順当だと思う。実際に編集部でカメラに不慣れな人に使ってみてもらっても、かなりブレたというので、この感覚は私だけのものでもなさそうだ。

 また、スチルカメラ特有の縦位置撮影時のホールディングやシャッターの押しやすさもあかり感心しない。
 なにしろ、小型で軽量なボディーは、ただでさえもブレやすいのだから、このあたりは、トータルでのデザインを含めて、再検討するだけの価値が十分にあると思うのだが……。



●小さすぎる操作ボタン

作例4

【640×480pixel(39KB)】


 やはり、小型化でもっともしわ寄せがくるのが、操作性。この点は本機でも基本的に解決されてはいない。とくに、モード切り替えボタンがきわめて細い上に、押したときの感触に乏しいので不安感がある、もっとも、液晶モニター上に、モードや操作指示や設定結果が分かりやすく表示される点は便利だし、好感が持てるが、それでも、基本的な操作感をカバーできるほどではない。


●のんびりとした記録速度

作例5

【640×480pixel(65KB)】


 本機の画像記録は、普通のデジタルカメラとはちょっと違ったものとなっている。というのは、撮影後にそのままのデータを一度メモリーに書き込み、その後、それを呼び出してJPEG圧縮しなおして記録するというものだ。そのため、シャッターボタンを押し切って撮影すると、一度液晶表示が小さくなって、シャッターが切れたことを示した後、即座にメモリーへの書き込みが始まる。その後、数秒経つと液晶表示が通常の撮影時と同じ表示に切り変わって、再び撮影できるようになるのだが、その間にも液晶右下では書き込みや圧縮処理中であることを示す赤い表示がかなり長い時間表示されている。そして、さらにもう一枚撮影すると、バッファーメモリーがいっぱいになるため、処理中という表示がでっぱなしになり、シャッターがロックされるわけだ。


作例6

【640×480pixel(47KB)】


 もちろん、処理中にスイッチをOFFにしても、液晶が消えるわけではなく、処理中なのですぐOFFにできないという表示がでたままになり、終了すると自動的にOFFになるわけだ。

 実際に使ってみると、なんとも不思議な感じで、JPEGのノーマルモードで40秒間も圧縮や書き込み処理をしているのは、見ていてだけでも、結構じれったい。しかも、処理中は液晶が表示されっぱなしになるので、電池の消耗も心配だ。次の撮影ができるまでの待ち時間は約12秒と、こちらも結構長く、表情を狙ったスナップ撮影をしたいときなどは、リズミカルな撮影は到底望めない。


●画質は比較的良好だが、遠景は苦手

作例7

【480×640pixel(35KB)】


 やはり気になるのは、その画質だ。発表会の時の画質に比べると、ちゃんと向上しており、現在の35万画素クラスのなかでは比較良好な部類に入るレベルに進化していた。

 色や階調の再現性もよく、とても自然な写りをするカメラといえる。また、直線が曲がって写る歪曲収差も結構少なくて、良く補正されており感心する。露出レベルも適切で、画面内に光源が入り込むような結構厳しい条件でも適度な露出になる点も好感が持てる。

 しかしながら、本機は一般撮影時に微妙なピント合わせができないパンフォーカス式となっている。そのため、この手のカメラに共通した、遠距離のピントの甘さが感じられる。これはとても残念だ。また、中間的な距離での解像度ももう少しシャープ感が欲しい感じもある。

 だが、マクロ時には、A4と名刺大で最良のピントが得られるように切り替えられるので、解像力や写りは結構良好。このくらい写れば、メモ用には十分だ。しかし、本機は液晶表示の画像が結構粗い上に、表示画像もQVシリーズのようなコマ送り風のため、微妙なピントを確認することは困難だ。そのため、マクロ時でも基本的にはほとんど目測に近い撮影になるので、やや不安感があり、もう一工夫欲しい気がした。


●魅力的だが完成度はもう一歩

作例8

【480×640pixel(40KB)】


 このサイズで、よくこれだけの機能を盛り込んだものだと感心するが、細部を見ると、まだまだ詰めの甘さを感じさせる部分もある。また、電池は単3型2本と結構頑張っているが(編集部注:大容量バッテリボックス使用時は4本)、今回の実写ではメモリーカードを一枚撮りきらないうちに、ローバッテリー警告がでてしまったのには、ちょっとガッカリ。やはり、まだちょっと無理があるような気もする。

 全体に見ると、確かに小さいけど、完成度はもう一歩かな?というのが正直な感想だ。個人的には、ぜひともシャッターボタンの位置と押したときの感触を改良して欲しいと思った。本機を検討している人は、ぜひとも店頭で一度その感触を確かめて購入することをお薦めしたい。 。




□日本電気株式会社のホームページ
http://www.nec.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.nec.co.jp/japanese/product/personal/news/H9_02/13.html

□参考記事
【2/13】日本電気、世界最小の液晶搭載型デジタルカメラ「Picona」を発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/970213/picona.htm
デジタルカメラ関連記事インデックス
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/970311/dindex.htm

■注意■

('96/3/14)

[Reported by 山田 久美夫 ]


【PC Watchホームページ】


ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp