●デバイスベイ標準化が次世代パソコンの焦点か?
このところ、パソコンの新しいハードウェア拡張仕様としてデバイスベイの標準化の話が持ち上がっている。「Intel, Microsoft, PCMCIA lead plug-ins effort」(Electronic Engineering Times,3/3)によると、PCMCIAがノートパソコンパソコン用デバイスベイの共通仕様策定のためワーキンググループを作ろうと動いており、その一方で、米Compaq Computer社、米Intel社、米Microsoft社などは、デスクトップ用デバイスベイのドラフト策定をここ数ヶ月間続けているという。どうも4月くらいにはデバイスベイが、確実に次世代パソコンのトレンドとして話題となりそうな気配だ。
これから1年あまりは、Intel MPUのあまりのバリエーションに混乱してしまいそうだ。Intelのドキュメントを入手したComputer Reseller NewsによるIntelの97/98年MPUロードマップ解説によると、Intelは、来年早期にデスクトップからサーバー向けに300MHzの「Pentium IIプロセッサ」(コード名Deschutes)を、ノートパソコン向けに233/266MHzのDeschutesを出すそうだ。また、モービル版のMMXテクノロジPentiumプロセッサ(コード名Tillamook)を今年の第3四半期に投入し、デスクトップ用にも233MHzのMMX Pentiumを出すという。うーん、めまぐるしい展開。「An Intel Roadmap For 1998」(TechWire:Computer Reseller News,3/2)
米Microsoft社関連のニュースでは、まず目を引いたのがMSN関連の再編成の話。「MSN to cancel features, lay off contract workers」(USA TODAY,2/28)によると、MSNがショウ(コンテンツ)の一部を中止して、80人の契約社員をレイオフしたという。Microsoftは、ハリウッドにスカウトオフィスを置いて、エンターテイメント産業のタレントやプロデューサを盛んに集めている。今回首を切られたのは、こうして集めた外様部隊らしい。鳴り物入りで始まったWeb版MSNコンテンツも、始まってみると話題にはほとんどなっていない。成功したとは言い難い状況だ。MSNはTVと同じく13週を1クールとしてヒット率の低い番組は取りつぶすと言われていたが、これで、結果が出せなければすぐ首を切られることも明らかになったわけだ。つまり、人材の使い捨てというパターンまで、ハリウッドに倣うというわけ。
さて、Windows NTを基幹業務分野に切り込ませる切り札としてMicrosoftが力を入れるWindows NT用クラスタリングAPI「Wolfpack」。サーバーのクラスタ構成を実現するこのAPIの出荷予定が、また後ろへずれ込みそうだという。「Microsoft Struggles To Meet Wolfpack Deadline」(Communications Week,2/28)は、第1四半期登場の予定が6月までのびてしまったWolfpackが、さらに第3四半期までのびる可能性がありと報道している。この手の分野は、Microsoftは実績がないだけにかなり苦労しているのかも知れない。
クラスタリングは、次のサーバー技術の核であるため各社が力を注いでいる。「IBM,Microsoft, Novell, and Sun prepare to offer rival clustering products」(InfoWorld,3/1)がその状況を概説している。米Sun Microsystems社は今週Full Moon APIを発表、米Novell社も今月Wolf Mountain APIを発表するとか。皆、狙っている市場は同じというわけ。
今月13~19日は、ドイツのハノーバーでヨーロッパ最大級の情報機器展示会「CeBit」が開催される。CeBitと言えば、アメリカ大陸を離れる気楽さで、業界関係者が口をすべらすケースが多いことで有名なイベント。今年も面白いニュースが数多くニュースサイトに登場するだろう。とりあえず、今のところは、Wintel陣営がNetPCに関して詳細を発表するという話と、Intelが「Pentium II」のデモを行うという話が「Latest industry technologies to be displayed at CeBit 97 show in Germany」(InfoWorld,2/25)あたりで報道されている。Intelに対抗して、米Motorola社も300MHz PowerPC 603eもデモするとか。これであと米AMD社や米Cyrix社も対抗して何か発表すると面白いのだが。
立ち上がったはいいものの、まだまだ先行きが不鮮明なDVD。米国ではこのところずっとElectronic Engineering TimesがDVDコンテンツのスクランブリングシステムの暗号アルゴリズムのソフトウェアライセンスの問題を追いかけている。松下電器がライセンスを握っているのだが、その取得がなかなか進まないのだという。これが実現しないと、パソコンでPentium IIプロセッサを使ったDVDソフト再生が実現できない。先週合意に達するというニュースもあったのだが、また流れたようだ。「PC camp closes in on DVD-crypto deal」(Electronic Engineering Times,2/24)
さて、先週のサプライズは米3Com社と米U.S. Robotics社の合併。このニュースは、Rockwell Semiconductor Systems社や3Comが56kbpsモデムの普及を目的とした団体「Open 56K Forum」を結成したというニュースの直後に流れたため、これで56Kモデム標準化かと日本では騒がれた。しかし、今のところこの合併で56Kモデムの動向がどうなるかは不鮮明だ。それよりも米国の記事では、3Comがこれで通信機器をフルラインナップ揃え、ネットワーク機器市場を支配する米Cisco Systems社に挑戦するというところにポイントが置かれている。「3Com's Deal With U.S. Robotics Challenges Cisco's Dominance」(The Wall Street Journal,2/27 またはこちらでサーチ)や「3Com and U.S. Robotics CEOs hope merger will lead to No. 1 networking spot」(InfoWorld Electric,2/27)などで。
最後は、このところニュースが絶えていたNC (Network Computer)関連から。「NC vendors work with Open Group」(CNET,2/27)によると、米Oracle社、米IBM社、米Sun Microsystems社、米Netscape Communications社などのNC推進企業は、「The Open Group」と協力してNCの仕様の標準化を進めるという。じつは、NC仕様ガイドラインに関して、標準化機関の設立も含めて次のステップを考えているというのは、昨年11月に日本オラクルから聞いていた。それがようやく表面化してきたというわけだ。NC陣営の動きに関して気になるのは、こうしたペースの遅さ。2年前までなら別にスローペースと言われなかったかも知れないが、すべてが加速しつつある昨今では、ちょっと問題がある。
そう考えている業界関係者は少なくない。その証拠に、Oracleのラリー・エリソン会長兼CEOは、昨年発表した諸々の公約を果たさなければならないという記事「Time To Deliver Last year, Larry Ellison hyped the NC. Now, Ray Lane and Oracle's 30,000 employees must deliver on the promise」(2/24,informationweek)も登場している。Oracle側は、いちおう、次の山場は4月と考えているようだ。同社のNC戦略子会社Network Computer Inc.(NCI)は、4月に東京とウィーンで開催される「Oracle OpenWorld」で、Intel MPU版のNCを発表する予定だと報じるのは「Oracle unit to launch BSD Unix-based network computer software in April」(InfoWorld,2/27)。Intel MPU版NCでは、ベースのOSがまた変わり、BSD Unixベースになるかも知れないという。
('97/3/3)
[Reported by 後藤 弘茂]