さて昨年の1996年、秋葉原の年末商戦はどうだったのか? どのショップも'95年の年末商戦のような大幅な売り上げアップと忙しさを予想していたと思うのだが、実際には予想していた伸びはあまりなく、おおむね'95年と同じぐらいにとどまったようだ。恒例の秋葉原電気まつりのくじ(*1)は'95年並みの伸び率を予想してたくさん作ったのは良いが、結構余ったという話もあるし……。
秋葉原にお客となる人が来なかったわけではないと思う。秋葉原周辺は'95年以上に人が多かったように思えた。狭い秋葉原駅の改札への階段はいつも以上に通るのに時間がかかった気がするし、歩道も人だらけでまっすぐ前に進むことは出来ない。駅前駐車場には駐車待ちの車が行列を作る。パソコンユーザーの数は1996年中にも飛躍的に伸びているのだから、訪れる人は確実に増えているのだと思う。人の数が増えたのに比例して、どこのお店も混雑していたように思えた。
じゃ、なぜ売り上げが伸びないのだろうか?
*1 | 秋葉原電気街振興会に入っている大きなお店で商品を買うと一定額ごとにもらえる。景品はけっこう豪華。筆者も秋葉原のLAOXで本をかなり買っているため、数枚もらっていた。でも外れた。 |
'95年11月23日、秋葉原がいちばん熱かった夜。夜中の0時から販売されるWin95をいち早く買おうと、ユーザーが詰めかけた。 |
'96年の春や夏の商戦ではデジタルカメラが注目されたが、年末に向けて出た新製品は少なかったり、マイナーチェンジしただけの商品も多く、特に「よく売れた」という気はしない。28日にPC Watchに掲載された「デジタルカメラ売れ筋ランキング」を見ればわかるが、人気機種ベスト10の半分以上が昨年の夏前に発売をしていて、年末商戦前にはすでにある程度売れている商品ばかりである。ここら辺の機種を持っている人が新たに買い換えることは、現在のラインナップでは少ないのではないか。
つまり売り上げが思うように伸びないのは、購買意識を煽ったり、買い換え需要を呼ぶような注目できる新製品や高額商品が少なかったのが主な原因ではないかと思われる。
*2 | 昔は1年間以上OSがバージョンアップしなくても、何にも不自然に思わなかったけど、近年はハードウェアの進歩のスピードが速いから気になってしまいます。 |
*3 | 実際にはOSR2(OEM Service Release 2)というものに変わっているのだが、これはそれほど気にする必要はないと思う。大幅に変わったわけじゃなくて、細かいところが少し変わっただけ。気にしたのは上級者と、メーカーやショップの開発やサポートセンターの人だけ。OSR2については近いうちに書きたいですね。 |
年末の大ヒット商品となった、エプソンのPM-700C |
在庫があればあるだけ、一日二日で売れてしまうような状況である。人気が高すぎてエプソンの生産が追いつかず、年末は品薄の状況が続いた。貼り紙で「PM-700C在庫在ります!」や「年内納品可能!」と表示しているショップもあったほどだ。その貼り紙も数日後見るともう無いのが当たり前。久しぶりに大ヒット商品という感じがする唯一の商品だった。そのぶん、他のメーカーのプリンターがあまり売れなかったのも事実だ。
買い換え需要が無いということはつまり、パーツ等を追加・交換するだけの簡単なアップグレードを行なう人の方が多いということだ。パーツ類の売り上げはかなり伸びたと言えるだろう。特にメモリは値下げ合戦が激しく、毎週、確実に値下がりしていることもあってよく売れた(*6)。メモリは現在、72pin SIMM EDO-DRAM 32MBを2枚単位で購入するのが主流になってきている。しかし、パーツ類は単価が低いため、売り上げの大幅アップの要因としては力不足なのだ。
ノートパソコンはIBMのThinkPad 535とPanasonicのLet'sNoteが値ごろ感も強く、結構売れた。とはいえ、発売してからちょっと時間が経っている事もあり、「東芝のPentium搭載Libretto発売間近」という噂の影響もあって、爆発的な売り上げまでは行かなかった。ノートパソコンで目立ったのは価格競争が激しかったことだ。
*4 | 筆者個人としては内田有紀のCMが一番良かったと思う(笑)。 |
*5 | EPSON MJ-700V2CはPM-700Cの直系の祖先にあたり、当時としては一般ユーザーには信じられなかった720dpiという画質を低価格で初めて提供した機種である。非常に人気が高かったのを覚えている。EPSONがまだPC-98互換機をメインで売っていた頃の話ですね。 |
*6 | 1997年1月30日時点ではPC Watchでも報じられていたように、メモリ価格の値上がりが始まっているようだ。今後どうなるのかさっぱり先が読めない。大幅な円安状況なのでそのほかの輸入品も値上がるかもしれない。 |
そうそう、年度末だと決算前の在庫整理で思わぬ商品が激安で売られることが多いので、ふだんよりまめにチェックを入れることをお勧めします。
[Text by AMUAMU]