先週火曜日(1/21)から今週月曜日(1/27)にかけて、PC-9800シリーズの新製品が文字通り「続々と」発表された。本体スペックで分類しても14機種、モデル別で数えると30種類にものぼる。
また、昨年から各社が模索している、家電パソコンともいうべきジャンルの「セレブ(CEREB、写真右)」という新系列も登場した。
ここでは、主にハードウェア寄りの視点から、今回発表された98について解説してみたい。
98MATE X | ビジネスユーザ向け |
ValueStar | 個人ユーザ向け |
98MULTi CanBe | 子供のいる家庭向け |
CEREB | リビングルーム向け |
98NOTE Lavie | フルスペック型ノート |
98NOTE Aile | 軽量薄型ノート |
MMX Pentium(P55C)搭載機 | ValueStar(PC-9821V200,V166), CEREB(PC-9821C200), 98NOTE Lavie(PC-9821Nr166,Nr150), 98NOTE Aile(PC-9821Ls150) |
非MMX Pentium(P54C)搭載機 | 98MATE X(PC-9821Xa20,Xc16,Xc13,Xb10), 98MULTi CanBe(PC-9821Cu13T), 98NOTE Aile(PC-9821Ls12) |
USBポート搭載機 | 98MATE X(PC-9821Xc16、Xc13) ValueStar(PC-9821V200、V166) |
USBポート非搭載機 | 98MATE X(PC-9821Xa20、Xb10) 98MULTi CanBe(PC-9821Cu13T) CEREB(PC-9821C200) 98NOTE Lavie(PC-9821Nr166、Nr150) 98NOTE Aile(PC-9821Ls150、PC-9821Ls12) |
98にUSBポートが搭載されるのも今回が初めてだ。搭載機はリアパネルに2ポート装備している。USBポートを備えたAT互換機と同様、キーボードとマウスは従来のインターフェースを使っている。また、現時点では、NECからUSBポートに接続する周辺機器は発売されていない。
USBポートは、新規設計のマザーボードを使用しているPC-9821XcとValueStarに搭載されており、既存のマザーボードを流用したと思われるPC-9821Xa20、Xb10、Cu13Tには搭載されていない。98NOTEに搭載されなかったのは、現状ではUSBは必須の外部インターフェースとなっていないためだろう。
CEREBは、新規に設計された製品なのにUSBポートを搭載していない。次に述べるSDRAMにも対応していないことなどから考えると、マザーボードの設計はかなり以前に終了しており、発売時期を見計らって出荷を始めたのではないかと思われる。
なお、USBのコントローラにはNEC製を使用している。USBポート搭載機が採用しているチップセット(Intel 430VX PCIset=Triton2)にはUSBインターフェースが内蔵されているはずなのになぜ?という疑問を持つかも知れないが、次のような理由による。
Intel 430VX PCIsetは、82437VXシステムコントローラ(TVX)と82438VXデータパスユニット(TDX)、および82371SB(PIIX3)という3種類のチップから成る。このうち、USBコントローラの機能を集積しているのはPIIX3である。しかし、PIIX3はATアーキテクチャ用に構成されたペリフェラル(PCI-ISAブリッジ、 IDE I/F、 タイマ、 割り込みコントローラ、 DMAコントローラ等を含む)を集積したチップであるため、98アーキテクチャではそのまま使用することができない。98では、PIIX3の代わりに、自社開発の98アーキテクチャ用ペリフェラルLSIを使用している。このため、USBのコントローラもNEC製となったのだろう。
SDRAM+EDO/FP DRAM対応機種 | 98MATE X(PC-9821Xc16、Xc13) ValueStar(PC-9821V200、V166) |
EDO-ECC DRAM対応機種 | 98MATE X(PC-9821Xa20) |
EDO/FP DRAM対応機種 | 98MULTi CanBe(PC-9821Cu13T) CEREB(PC-9821C200) 98MATE X(PC-9821Xb10) |
SDRAM(Synchronous DRAM)の採用も、98では今回が初めてだ。USBポートと同様、新規設計のマザーボードを使用している機種で採用されている。CEREBで採用されなかったのは、USBと同様の理由と考えられる。
SDRAMというとサーバ機などのハイスペックマシン用というイメージが強かったが、現在のチップ価格はEDOタイプなどにかなり接近しており、今年中にはほぼ同程度の価格になると予想されている。
SDRAM対応機種は、SDRAM用のDIMMソケットのほかに、EDO(Extended Data Out)/FP(Fast Page Mode) DRAM用のSIMMソケットも備えているので、手持ちの、あるいは安く入手可能なSIMM(ノンパリ)でメモリ増設することもできる。
ただし、当然のことながら、EDO/FP DRAMを使用すると、SDRAMに比べてパフォーマンスが低くなることは覚悟しておく必要がある。転送開始の2サイクル目以降の速度(瞬間最大風速にあたる)を比べると、SDRAMでは66MHzのシステムクロックと同期してノーウェイトで転送可能なのに対し、EDO DRAMでは1ウェイト(転送速度1/2)、FP DRAMでは2ウェイト(同1/3)入ることになる(設計によってはそれ以上ウェイトが入る場合もある)。
機種名 | DIMMソケット数 | SIMMソケット数 |
---|---|---|
PC-9821Xc16/M7 | 2 | 2 |
PC-9821Xc13/S5 | 1 | 2 |
PC-9821V200/M7 | 2 | 2 |
PC-9821V200/S7 /SZ | 1 | 2 |
PC-9821V166/S7 /S5 | 1 | 2 |
新製品の詳細なスペックを眺めていると、Microsoft社が定義したPC 97をある程度意識していることが感じられる。ただし、完全に準拠しているいうわけではない。PC 97のスペック自体に多少先走り感がある(例えばOnNowやIEEE1394に関する定義など)からだろう。逆に、PC 97の定義に関わらず、メモリ容量などのように時代の流れで充分なスペックになっている部分もある。
CPU | PC-9821Xc13はWorkstation PC97に合致しない PC-9821Cu13TはEntertainment PC97に合致しない Basic PC97=Pentium 120MHz以上 Workstation PC97、 Entertainmnt PC97=Pentium 166MHz以上 |
L2 cache | 全機種256KB搭載 PC97=256KB以上 |
メモリ | 全機種32MB搭載 Basic PC97、 Entertainment PC97=16MB以上 Workstation PC97=32MB以上 |
OnNow | PC-9821Xc、 ValueStarがサスペンド・レジュームをサポート (ただし、OnNowそのものではなさそう) PC97=必須 |
静音設計 | サポート Entertainment PC97=稼働時に静音が必須 Basic PC97、 Workstation PC97=待機時に静音が推奨 |
USBポート | PC-9821Xc、 ValueStarのみサポート PC97=必須 |
IEEE1394 | 非サポート Entertainment PC 97=必須 |
ISAバス | CanBe、 CEREBは(ISAバスに相当する)Cバスなし PC97=ISAは推奨しない |
ビデオ出力 | CanBe、 CEREB、 98NOTE Lavieで可能 Entertainment PC97=必須(大画面がないとき) |
このなかで、特に筆者が高く評価したいのは「静音設計」だ。ファンの感温制御や、ハードディスクを制振材を介してマウントするなどの配慮を行って、発生する騒音を約30dB(図書館程度)まで落としたという(ディスク起動音・シーク音などがない状態で)。
家庭のように静かな環境でパソコンを使うときに発生する騒音は、非常に耳障りだと筆者は常々思っていたので、このような流れは大歓迎だ。低価格化競争のなかでは、このような部分にまで気を配った設計は困難だったと思われるが、このところの価格競争の沈静化で、メーカにもしっかりした製品設計をする余裕が出てきたということだろうか。
もうひとつ、気になる機能にデスクトップ機のサスペンド・レジュームサポートがある。
ノート型ではあたりまえの機能だが、デスクトップ機でこれをやるには困難が伴う。一番の問題は拡張ボードで、ハードウェアやドライバがサスペンド・レジュームを考慮していないため、電源を切ってしまうとハードウェアを元の状態に戻せなくなってしまう。このため、今回採用されたのは、拡張ボードなどには電源を供給したまま、CPUをHALT状態にして消費電力を極力落とす、というどちらかというと消極的な(しかし実際的な)方法だ。
将来的には、PCIカードやドライバが対応することで、デスクトップ機でのハイバネーションも可能になるが、それまでのつなぎとして、今回の機能もそれなりに評価できるのではないだろうか。