【リレー連載 物欲道修行記】


リレー連載 物欲道修行記

第18講 業界通情報講座 講師:一ヶ谷兼乃

 今回の一ヶ谷講師のレクチャーは、講師が最近購入されたノートパソコンについてである。「次はノートパソコンネタです」という予告はいただいていたのだが、機種は原稿ができるまでヒミツ、ということであった。東芝のPORTEGE 620とは、さすがにシブい選択ですね。宣伝料をもらっているわけではないが、この連載の編集担当も、市ヶ谷講師と同じく、IBMと東芝以外のノートパソコンは買ったことがない(って、1台ずつしか買ってないけど)。ちなみにIBMと東芝では、壊れたときのサポートは、IBMのほうがノートでも取りに来てくれるぶんGoodです。
 話は変わりますが、この連載を執筆していただいている筆者によるインプレスの人気入門書「できるシリーズ」の「できるNetscape Navigator 3.0」が近く発売されます。スタパ師の「PC道」同様このコーナーでプレゼントする予定ですのでお楽しみに。(編集部)


携帯用ノートパソコンはバランスが命

ノートパソコンでの失敗

 Windows 95が発売されて一年が過ぎた。現在、まわりを見るとWindows 95パソコンだらけで、DOS/Windows 3.1がプリインストールされているパソコンもないわけではないが、一年前には考えられないペースでWindows 95化が進んでいると感じているのは私だけだろうか。
 私はこれまでノートパソコンはあまり使わなかった。たまに、どうしても出先で通信環境や文字入力環境が必要なとき以外には、デスクトップしか使わない。もちろん、PCカードの評価などで使うこともあるが、その頻度は低い。
 PCカードの評価マシンとして、日本IBMのThinkPad 530Cs(1FC)の初期モデルを一年前に購入した。価格が安く、真剣に使う気がさらさらなかったので、最新機種でなくてもいいだろうと判断したのだ。
 しかし、デスクトップパソコンの環境があっという間にWindows 95になってしまうと、ノートパソコンもWin95で使いたくなるのが人情というもの。四苦八苦してなんとかThinkPad 530CsをWin95化したものの、486DX2-50MHzと640×480ドットの解像度の画面はストレスがたまる。もちろんメモリは16MB増設して、20MB搭載しているのだが、お世辞にも快適だとはいえない。
 そういうこともあって、このThinkPad 530Csはほとんど日の目を見ない不遇なパソコンになってしまった。もちろんこれはThinkPad 530Csに問題があったわけではなく、私の選択が甘かったのが原因であったのにほかならない。


それでも携帯用ノートパソコンが欲しい私

 今年の初夏以降に発表されているノートパソコンには、私の興味をそそる機種がいくつか登場していた。もっとも気になったのはThinkPad 560。画面が広い、薄い、ThinkPadであるといったことで、購入を真剣に考えた。当時は32MBのメモリも高価で、TFT液晶モデル本体とあわせて、安いルートを探してみたものの35万程度の出費は覚悟しなくてはいけかった。以前ノートパソコンで失敗した経験があるため、購入してもホントに使うのだろうかという疑問もあって、二の足を踏んでいた。
 もちろんその間も、手元にある不遇なThinkPad 530Csが気になって、改造32MB DIMMの装着やCPU交換を何度も検討した。これはThinkPad 530Csをたまに使うたび、何度も何度も考えた。しかし、10万円投資する価値が見出せなかったのだ。
 そうしているうちに、仕事でも携帯用ノートパソコンがあれば役に立つようなシチュエーションが増えてきて、自分に対しても使える携帯用ノートパソコンがあれば便利なハズと言い分けが立つようになってきた。


一ヶ谷風携帯用ノートパソコン選択法

PORTEGE 620CT
PORTEGE 620CT
ALMADA
ALMADA 4120T

 昨年の失敗を反省して、携帯用ノートパソコンの選択方法をいろいろ考えてみた。そこでもっとも重要なコトは目的をはっきりと持つということだ。現状では携帯を前提に考えて、大きさ、重量、拡張性、連続動作時間、価格を検討すると、すべての項目をクリアするような機種はない。そこで、自分の必要とする機能、必要としない機能をはっきりさせて、数あるノートパソコンをふるいにかけていくわけだ。自分のニーズをはっきりさせてみたところ、次のような条件が浮かび上がってきた。

 1.内蔵バッテリーで3時間は動作すること
 2.800×600ドット以上の解像度で、TFT液晶であるもの
 3.B5版サブノートか、A4版薄型ノートパソコンであること
 4.40MB以上メモリが搭載できること
 5.Pentiumプロセッサ100MHz以上のCPU

 これらの他にも購入価格が安いこと、個人的な嗜好でIBMもしくは東芝製が希望といった条件がひととおり出揃った。

 その時点で、ふるいに残った機種は2機種。東芝PORTEGE 620CTコンパックARMADA 4120Tだ。どちらも、所有する喜びが得られる「質感」をしっかり持っている。
 特にARMADA 4120Tは、PCカードスロットが左側にあるといった細かな点が気になったが、FDが内蔵できるところや、拡張性が優れているなど、現在最もお勧めできる薄型ノートパソコンだ。ただ、私が購入を検討していた時期では、拡張メモリを含めた価格があまり安くなかった。現在では、拡張メモリがサードパーティから発売されており、本体で20万を切った店舗が出現してるとの噂もあり、最もお勧めのノートパソコンのひとつであることに間違いない。
 

でも買ったのはPORTEGE 620CT

PORTEGE label
 特に何の目的もなく西新宿のパソコンショップを眺めていると、妙に安いノートパソコンが目に入ってきた。購入第二候補のPORTEGE 620CTだ。恥ずかしいのだが、第二候補だったため、実売価格なんて考えてもいなかった。ところが、今年の夏発表された現行機種が、ゆうに20万円を切った価格で売られていたのだ。32MBメモリを足して、20万円を超える程度。
 多機能、高性能を誇るARMADAと比べると、PORTEGE620CTは見た目も機能的にもシンプルである。ここで、PORTEGE 620の私なりの割り切りを説明してみる。

 まず、良いところ。これは先にあげた条件を満たしているところ。バッテリーはフル充電で4時間を超える連続動作が可能である。カタログスペックではなく、実際に私が使ってみた数値である。
 次に、東芝ブランドであることが挙げられる。非常に個人的な意見になってしまうが、ノートパソコンなら東芝か、IBMしか選択の余地はないと考えている。それはカタログスペックには出てこない作りの良さを感じるからだ。例えば、長時間液晶画面を見ていても疲れにくいとか、細かな部分の作りの正確さなどがあげられる。ただ、ARMADAは例外で、非常に作りのいいノートパソコンだと感じる。
 また、標準で1.3GBのハードディスクが内蔵されていることもありがたい。これまでの自分のパソコンの使い方を考えると、800MB程度の容量では、少々こころもとない感がある。ハードディスクの場合、容量の大きなものに入れ替えるのは、それほど難しいことではないので、あまり気にはならないのだが、標準でついていることにこしたことはない。

 逆に割り切りが必要な部分もいろいろとある。赤外線通信ができない。PS/2マウス、キーボードコネクタがないといったところが代表的なところである。ただ、これらの部分はThinkPad 530Cs時代にほとんど使った記憶がない。私には必要のない機能だということになる。
 ほかに、PORTEGE 620CTはサブノートパソコンとしては「重い」というデメリットがある。他社の製品が1.8kg前後であるのに対して、PORTEGE 620CTは2.2kgと2割強重い。この重さに関しては、気にはなったがいまのところ2.2kgが苦痛と感じたことはない。これは、電車での移動がほとんどなのだが、長時間持つバッテリーのおかげで、ACアダプタをいっしょに持ち歩く必要がないからだ。これも私見になるが、1.8kgだと持ち出すことができて、2.2kgだからそれができないということはない。1台は1台、持ち出して役に立つのであれば、持っていくし、役立たずなら持っていかないというだけだ。
 

とっても素直でいい感じ

accupoint
 実際に数週間使ってみて、トラブルらしいコトにはぶつかったことはいまだ無い。数週間のうち、半分以上は外に持ち出して使っているが、非常に安定した動作が嬉しかったりする。
 PORTEGE 620CTは、持って歩いて、知り合いに「どうだ、カッコいいだろう」と自慢するようなパソコンではない。抜群のバッテリの持ち以外には、これといって特別な機能は見当たらないが、余計な機能がなく、シンプルでいて、基本性能が高いレベルでまとめられている。使ってみた人だけが感じることができる安心感、信頼感があるのだ。
 使ってみて実感したことのひとつにアキュポイントが挙げられる。弓のようにカーブした横長のボタンが縦に2個並んでついているのが特徴になっている。他社のノートパソコンのポインティングデバイスのボタンは横に2個並んでいるものが多い。この横長のボタンが縦に2個あると、左右どちらの手でも違和感なく右クリック操作が実現できるのだ。右手の指で「ポッチ」を操作していても、左手でなんなく右クリックができるため、ドラッグなども簡単にできる。
 ひとつ気になるところは、標準でインストールされているPCカードのユーティリティソフト「CardWorks(システムソフト)」がインストールされている状態で、新しくPCカードを挿入すると、Plug&Play機能を無視して、CardWorksで認識してしまう点だ。これは、認識後、ユーティリティの中でPlug&Play機能を生かす設定にはできるものの、最初はちょっと戸惑ってしまった。ただ、一度設定してしまえば、PCカードを挿入すると対応したプログラムを起動できる機能などもあり、便利ではある。
 最後に、PORTEGE 620CTで特筆に価するのは、「コストパフォーマンス」だ。私の場合は特殊かもしれないが、20万円程度で本体+32MBメモリを購入することができた。しかし、平均的な店頭価格でも25万円はオーバーしないはずだ。参考までに東芝ダイレクトのページを見てみるといいだろう。
 

[Text by 一ヶ谷兼乃]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp