後藤弘茂のWeekly海外ニュース


MicrosoftがMSNを一新

WWW上の会員サービスに移行するMSNを米国でプレビュー開始

 米Microsoft社は9月30日、つまり日本時間で10月1日未明から、いよいよThe Microsoft Network(MSN)のWWW移行バージョンのプレビューを米国で始めるらしい。これは、CNETなどいくつかのニュースサイトで報道されているもので、まだMicrosoftから正式なアナウンスはない。しかし、北米のMSN会員には希望者にプレビューCD-ROMの配布などを始めており、WWW版MSN用サーバープラットフォームの外販版「Normandy」も、この秋にβ版が出る予定なので、かなり確実性は高いだろう。

 これでMSNはその姿を大きく変えて、インターネット会員サービス&大規模Webコンテンツ群になると思われる。正直な話、これまでのMSNでは、Windows 95からのアクセスが簡単なインターネットプロバイダとして使う人はいても、中身を真剣にのぞいている人は、日本ではほとんどいなかったに違いない。だが、今後は、単なるプロバイダを超えた会員サービスとして、またユニークなコンテンツの提供サービスとして、WWW上でかなり目立つ存在に変わるかも知れない。

 13ヶ月前にWindows 95と連携したパソコン通信としてデビューしたMSNは、インターネットの急速な発達を受けて、これまでもWWWとの融合を強めてきた。今回で、アクセスの足回りはTCP/IPへ完全に移行するのは間違いがない。すでに、日本のユーザーにも12月1日からはTCP/IPオンリーになるという通知が届いている。

 もちろん、これまでもTCP/IPでのMSNへのアクセスはできた。しかし、データ形式はHTMLではないので、専用のクライアントソフトがサービスごとに立ち上がる形だった。しかし、MSNがチャットなどで明らかにしたところでは、今後はデータはHTMLベースとなり、Webブラウザでも基本的にはコンテンツが見えるようになるそうだ。

 ただ、もちろんMicrosoftのことだから、単なるHTMLにはならないだろう。おそらく、ActiveXのさまざまな技術によって、拡張したコンテンツを提供する、ActiveXのショーケースになるに違いない。また、クライアントのブラウザも、IE 3.0ならActiveXコントロールによっていくらでもカスタマイズできるはずだ。

 さて、MSNを新規まき直したMicrosoftは、一体なにをしようとしているのだろう。Microsoftにとっては、これまでのMSNは最初にインターネットの興隆を見誤った回り道でしかなく、今後は、インターネット戦略のひとつの柱になるに違いない。それは、リッチなインターネット会員サービスとリッチなコンテンツの2つの側面からなると思われる。そして、その狭間で、パソコン通信としてのMSNの要素のひとつだったコミュニケーション系サービスは、おそらく縮小されるに違いない。

 MSNをちょっと覗いたことがあればわかる通り、MSNは旧来のパソコン通信と比べて、コミュニケーション系サービス--フォーラムやチャットはそれほど重視されていなかった。つまり、会員同士のコミュニケーションを楽しむ要素より、コンテンツを楽しむという要素の方が強い、新世代のパソコン通信だったのだ。WWW上に移行することで、MSNのこの色彩はいっそう強化されると思われる。

 じつは、オンラインサービス業者にとって、フォーラムの維持というのはマンパワーがかかる割に、アクセス料金しか取れない、じつに割に合わないサービスだ。そして、パソコン通信にとって、これが負担になりはじめた。それは、インターネットアクセスが重要な要素になったことで、この2月以降ますます低料金化が進んだインターネットプロバイダと、料金面で競合しなければならないからだ。おそらく、コミュニケーションなど余計なサービスは、今後、多くのパソコン通信業者が縮小する方向に向かうだろう。そうすると、身軽になって、よりコンペティティブな料金体制も打ち出せるようになる。会員も、現在の150万人から大幅に増やすことが容易になるし、他のプロバイダとの提携もしやすくなるというわけだ。まあ、MSNの場合、プロバイダの部分は実際は他の業者にまかせているので、その実態は会員サービス的なものだ。そこで、MSNの付加価値としてはコミュニケーションではなく、これからのインターネットをに必要な認証サービスなどの提供に向かうのだろう。

 MSNのもうひとつの側面であるコンテンツはどうなるか。報道では、現在MSNに出店しているICP(インディペンデントコンテンツプロバイダ)のほとんどは、離れることになるという。実際、ICPは最近はほとんど増えていないので、これは確かだろう。それによって、MSNはICPがコンテンツを提供するための土台から、Microsoftの自前のコンテンツの塊へと変わることになる。

 おそらく、今後のMSNは、これまでのMSN内のコンテンツにプラス、WWW上で進めてきたWebzineや先週発表したシティエンターテイメントガイト「Cityscape」などを統合したコンテンツ群に変わるに違いない。強まるのは、エンターテイメント色だ。これは、Microsoftの人事でも予想できる。というのは、Microsoftは3月に、ワーナーブラザーズのクリエイティブ部門担当副社長のBob Bejan氏を引き抜いて、MSN担当に据えているからだ。ニュースサイトの記事では、TV的なイメージになると書いているものもある。さもありなんだ。

 パソコン通信から、WWW時代のオンラインサービスへ変身するMSNは、あとに続くCompuServeなどのモデルケースとなるだろう。そして、その波は、日本のパソコン通信にも波及する可能性は高い。

◎関連記事
「MSN will be born again」
CNET (NEWS.COM)
September 4
http://www.news.com/News/Item/0,4,3049,00.html

◎関連サイト
http://www.msn.com/
http://www.microsoft.com/internet/normandy/

('96/9/30)

[Reported by 後藤 弘茂]


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