後藤弘茂のWeekly海外ニュース


MicrosoftがInternet Explorer 3.0を正式発表

Netscapeキラーでブラウザ市場40%を狙う

 MicrosoftとNetscapeの決戦パート3がいよいよ始まる。

 先週、ほとんどのニュースサイトに、米Microsoft社が「Internet Explorer(IE) 3.0」を正式発表するというニュースがアップされた。ニュースを総合すると、Microsoftは米国時間で12日月曜日にIE3.0の発表イベントを計画しており、月曜の真夜中、つまり13日の0時にWebサイトからダウンロードできるようにするらしい。

 IE3.0の登場により、昨年から続いているMicrosoft対Netscapeのブラウザウォーは新しい局面を迎えることになる。Netscapeがあっと言う間にトップシェアを握ったWebブラウザ市場に、MicrosoftがWindows 95とペアとなるIE1.0で参入してから1年弱。最初のNetscape Navigator 1.x対IE1.0ではほとんど勝負にならず、Navigator 2.0に対抗して速攻で開発したIE2.0も、はかばかしい戦果を収めることはできなかった。その要因は、Netscapeがシェアをバックにした豊富なNavigator用プラグインソフトを揃えられたことや、Javaサポートなどカギとなる機能で先行したことにある。

 しかし、Navigator 3.0対IE3.0の戦いは、これまでとは風向きが違う。それは、Microsoftが先行するNavigatorに、ついに機能面で追いつくことができたからだ。HTMLの解釈機能はほぼ同等、Javaサポート、VRMLビューアやコラボレーションツールのバンドルなど、おもなフィーチャーはほとんど同列になった。そして、さらにMicrosoftはIEにActive Xという強力な武器も与えた。

 IE3.0におけるActive Xの意味は大きい。まず、ソフトウェアコンポーネントであるActive Xコントロールを、プラグインモジュールとしてもWebサーバーからダウンロードして実行するアプレットとしても使える。これで、まず、プラグインソフトが少ないという劣勢を一気に挽回できる。Microsoftは、IE2.0でプラグインインタフェースを設けたものの、ソフトメーカにプラグインを作るように積極的にアプローチをかけなかった。今考えれば、それはActive Xコントロール戦略が控えていたからに違いない。つまり、Microsoftは始めからNetscapeに勝負をかけるのはIE3.0と決めていたというわけだ。

 Active Xコントロールは、Javaと同様にインタラクティブWebやイントラネット用のダウンローダブルなカスタムアプリケーションも実現できる。米国では、すでに開発者がOLEに馴染み始めていたので、その資産と開発者のスキルをそのまま活かせるというのは、かなり魅力がある。Windowsのソフト開発者を、そっくりインターネット/イントラネット向けアプリケーション開発に引き込むことができるというわけだ。また、IE3.0ではDocObjectによって、Excelのような既存のアプリケーションのデータをそのままブラウザのフレーム内に表示できるので、既存のデータもHTMLに変換せずにそのままWebに載せることができる点も魅力だ。

 強力な機能を備えたIE3.0に、Microsoftはかなり自信を持っているらしい。発表イベントを開いたりすることもそうだが、先々週には、ビル・ゲイツ会長がWebブラウザ市場で40%のシェアを取れるかも知れないと発言したとも米国では報道されている。ちなみに、調査会社のシェア調査では、現在はNetscapeが75~85%程度のシェアでシェア1桁台のMicrosoftに大きく水を開けている。Microsoftは、これをひっくり返してほぼ互角にまで持ち込めると考えているのだろう。

 その根拠は機能だけではない。Microsoftは米AT&T社、米America Online社、米CompuServe社というインターネットプロバイダ最大手にIEを供給する提携を結んでいる。大手プロバイダやパソコン通信から供給されれば、それだけでも個人ユーザー市場ではバランスをくずすには十分だ。ただし、企業ユースに浸透するには、クロスプラットフォーム対応が欠かせないため、Macintosh版やWindows 3.1版が出揃うまではまだ厳しい戦いが続くだろう。

 追われる立場のNetscapeは、IE3.0の登場でますます厳しい立場に立たされることになった。同社もNavigator 3.0(Atlas)を、8月中に正式に出荷すると言われているが、IEが急迫してきたというイメージは、同社にとって不利に働くだろう。とくに、IEの方が前バージョンからの変化がドラマチックなので、話題が多い。Microsoftが思惑どうりに互角にまでIEのポピュラリティを持ってくることができたら、インターネット/イントラネットアプリケーションのプラットフォームとしてのNavigatorが地位が一気にゆらいでしまいかねない。

 次の戦い--年末から来年にかけてのIE4.0(Nashville)対Navigator4.0(Galileo)の対決では、両社がどう出るか、なかなか楽しみだ。

米Microsoft社IEのホームページ(すでに予告がはじまっている)

IE3.0日本語版ベータ2のホームページ

('96/8/12)

[Reported by 後藤 弘茂]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp