PC ExpoとAMDの新CPU
●Intelへの挑戦を続けるAMD
月曜日からニューヨークで始まるPC Expoは、各ニュースサイトの予測記事を見る限り、それほど目玉はなさそうだ。せいぜい、Sonyが米国で初めてパソコンを発表するとか、IBMがJavaに対応したOS/2の次期バージョン「Merlin(コードネーム)」を発表するといったニュースが流れている程度。しかし、その中でちょっと目を引く話題があった。米AMD社の新MPUだ。
AMDは、Pentium対抗MPU「K5」シリーズの新バージョンを発表する。内容はPentium 100MHz相当のもので、3月から出荷しているPentium 75/90MHz相当のバージョンの上位版にあたる。また、PC Expoでは、さらに上位バージョンのデモも行われるという。
MPUにちょっと詳しい人なら、ここで「K5」と書いたことに疑問を持つかも知れない。というのは、K5というのはコードネームであり、AMDは製品では「5K86」と名づけたはずだったからだ。しかし、どうやらAMDはチップの名称を変えたらしい。Copmutex TaipeiではK5という名前で展示されていたとかで、AMDのサイトでも、いつの間にかみんなK5に戻っている。どういう理由で、こんなややこしいことになったのかは、まだ不明だ。
さて、AMDはようやくこれで、Intelの現在のローエンドに追いついたことになる。しかし、それでも遅すぎた感がある。そもそもK5は、Pentiumの1.3倍の性能を目指して開発された。当初は、これでIntelから最速のx86系MPUの冠を奪うつもりだったはずだ。ところが、実際にサンプルができてみたら、Windowsでよく使われる一部の命令の処理がやたらと遅かったために、それがネックとなって性能が出なかったという。その手直しをした、より高速な(たとえば120~166MHz相当など)バージョンも投入する予定だが、今回、そうした高速版のデモが行われるとしても、その出荷はまだ少し先になってしまうだろう。そうなると、価格以外では魅力が出しにくく、Intelに正面切って挑むのはちょっと厳しそうだ。
AMDは、これまでIntelに3度チャレンジをした。Am386の時はIntelに486へと逃げられ、Am486の時は法的措置で出足をくじかれてPentiumへと逃げられてしまった、そして、今回のPentium戦ではAMDの開発の遅れで、IntelにまたP55Cへと逃げられてしまいそうだ。しかし、AMDはまだ次の機会をうかがっている。それは、同じx86互換MPUメーカ米NexGen社を買収して手に入れた次世代MPU「K6(コードネーム)」で挑む、対P55C/Pentium Pro戦だ。
K6は、NexGen時代はNx686と呼ばれたチップで、当時の発表によればPentium Proと同等かそれ以上の性能を出し、しかもすでにサンプルが完成していたというとんでもないシロモノだ。AMDは先頃IntelからMMXのライセンスを取得しており、それをK6に組み込むと見られている。そうすると、Pentiumの後継であるP55Cに正面切ってチャレンジできるというわけだ。
AMDがP55Cからそれほど遅れずにK6を投入し、米Cyrix社もMMX互換のマルチメディア機能を備えたM2を投入できたら、結構面白くなるのだが、どうだろう。
AMD-K5-PR100の登場を伝える記事
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NexGenのホームページ
('96/6/17)
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