新しく生まれ変わった「バイオノートSR」の魅力を探る
~無線/有線LAN、Bluetoothを内蔵、重さ1.26kgを実現



 冬のボーナスやクリスマス需要をあてこんだ年末商戦に向けて、各社から新製品が続々と発表されているが、その中でも、今回がフルモデルチェンジとなるソニーのバイオMX、バイオノートSR(VAIO SR)、バイオC1は特に注目すべき製品である。そこで、11月17日に発売される新VAIO SRを試用する機会を得たので、早速その魅力を紹介していくことにしたい。



●初代VAIO 505の遺伝子を色濃く継承したVAIO SRシリーズ

 VAIOシリーズのヒットにより、国内のPC市場で確固たるシェアを占めるようになったソニーだが、そのVAIOシリーズの躍進のきっかけとなったのが、'97年11月に登場した初代バイオノート505(PCG-505、VAIO 505)である。PCG-505は、B5サイズで厚さ23.9mm、重さ約1.35kgという携帯性の高さと、マグネシウム合金を採用した美しいボディで、大ヒットとなった。その後、VAIO 505は何度かモデルチェンジを繰り返し、現在はPCG-R505シリーズにその栄光の「505」という型番が受け継がれている。

 しかし、PCG-R505シリーズは、初代PCG-505に比べるとサイズが一回り以上大きくなり(PCG-505は、259×208×23.9mmだったのに対し、PCG-R505FRは279.5×239×23~29.3mm)、重さも約1.7kgにまで増加してしまっている。ボディのサイズが大きくなったことで、搭載している液晶パネルのサイズは10.4インチから12.1インチへと拡大され、視認性は向上したが、その代わり携帯性が多少犠牲になっている。もちろん、PCG-R505シリーズも製品としては素晴らしいのだが、筆者のようにほぼ毎日のようにノートPCをバックパックに入れて持ち歩くには、ややサイズ・重量的に厳しい。

 筆者が今までに利用してきたノートPCは10台を超えるが、そのうち比較的最近のものを順に挙げると、NEC PC-9821 La13/S14→ソニー PCG-505→ソニー PCG-505EX→松下 Let's note CF-A44→松下 Let's note CF-M1VAとなる。Let's noteの2機種は、11.3インチ液晶パネルを採用しているのでB5ファイルサイズに属するが、それ以前の機種は全て10.4インチ液晶パネルを搭載したB5サイズ(厳密にいえばB5よりやや大きいが)ノートPCである。

 徒歩や電車で持ち歩くには、12.1インチクラスの液晶パネルを搭載したB5ファイルサイズノートはやや大きく重いというのが、筆者の実感だ。そういった意味において、初代PCG-505のコンセプトを真に受け継いでいるのは、10.4インチ液晶パネルを搭載したVAIO SRシリーズのほうではないかと筆者は考えている。

 2000年5月に発表された初代VAIO SRは、PCG-505とほぼ同等のサイズ(259×209×23.7~32.1mm)と重さ(約1.34kg)のボディに6セルのバッテリを搭載することで、従来の約2倍にあたる約3.5~5.5時間(モバイルPentium III 600MHzを搭載したPCG-SR9/Kの場合)のバッテリ駆動時間を実現したB5サイズノートPCである。携帯性とバッテリ駆動時間という相反する要素を両立させたVAIO SRは、まさにモバイル派待望の製品である。VAIO SRシリーズは、3回ほどマイナーチェンジが行なわれたが、今回発表された新VAIO SRはボディデザインが一新されただけでなく、機能も大幅に強化され、さらに魅力的な製品に仕上がっている。


●新機能を搭載しながら、さらに小さく軽くなった新VAIO SR

 新VAIO SRには、搭載CPUやHDD容量、Bluetooth機能の有無などの違いによって、上位モデルのPCG-SRX7と下位モデルのPCG-SRX3の2モデルが用意されているが、今回は上位モデルのPCG-SRX7を試用した。

印刷ではなく彫り込まれているVAIOロゴ。四隅が丸みを帯びているので、サイズ以上に小さく感じる

 新VAIO SRは、ボディのデザインやカラーリングが変更されているが、ボディのサイズもそれまでのVAIO SRに比べて一回り小さくなっていることが特徴だ。旧VAIO SRのサイズは259×209×23.7~32.1mmであったのに対し、新VAIO SRは横幅は259mmで変わらないものの、奥行きは15mm小さい194mmとなっている。厚さは27.8~32.0mmであり、最薄部はやや厚くなったが、最厚部はほぼ同じである。重量も、旧VAIO SRの約1.39kg(PCG-SR9M/Kの場合)よりも130gほど軽い、約1.26kg(PCG-SRX3は約1.25kg)となっている。新VAIO SRでは、ボディの四隅が丸みを帯びているため、デザイン的にもさらに小さくなったという印象を受ける。

 10.4インチ液晶パネルを搭載したB5サイズノートPCの中で、トップクラスの携帯性を実現した新VAIO SRは、常に持ち歩くためのマシンとして十分合格点をつけられる。



●B5ファイルサイズノートに匹敵する基本性能を実現

 新VAIO SRは、PCとしての基本性能も非常に高い。PCG-SRX7ではCPUとして低電圧版モバイルPentium III 800A MHz-Mを、PCG-SRX3では低電圧版モバイルCeleron 650MHzを搭載している。ともに0.13ミクロンプロセスルールで製造された、いわゆるTualatinコアを採用したCPUであり、L2キャッシュ容量が従来のCoppermineコアのそれぞれ2倍に増えているため(モバイルPentium III-Mは512KB、モバイルCeleronは256KB)、高いパフォーマンスを発揮する。

 また、チップセットとしては、Intel 815EMを採用していることも特筆できる。本来、Tualatinコアのモバイル向けCPUは、Intel 830MかIntel 440MXと組み合わせて利用することが前提になっているのだが、新VAIO SRでは、IntelにIntel 815EMのTualatin対応版を特別に作らせることで、TualatinコアのCPUとIntel 815EMの組み合わせを実現している。

 VAIO SRでは、実装スペースと機能を両天秤にかけて考慮した結果、Intel 815EMがベストであるという判断がなされたのだという。Intel 815EMは、グラフィックスコアやイーサネットコントローラを統合しているため、基板のサイズを大幅に削減することができる。標準実装メモリは両モデルとも128MBだが、Micro DIMMを利用することで増設が可能だ。ソニー純正品として用意されているMicro DIMMは128MBのみだが、サードパーティから発売されている256MB Micro DIMMを利用すれば、最大384MBまでメモリを増設することができる。プリインストールされているWindows XP Home Editionは、Windows 2000以上に多量のメモリを要求するOSであるが、384MBまでメモリを増設できるVAIO SRなら問題はない。

 HDD容量もPCG-SRX7が30GB、PCG-SRX3が20GBと大きいので、不満はない。また、背面のネジを2本外して、カバーを取り外すだけで、HDDにアクセスできる構造になっているので、HDDをより大容量のものに換装することも簡単だ(もちろん、HDDをユーザーが交換することはメーカー保証外の行為となるが)。液晶には、10.4インチTFT液晶パネル(XGA表示)が採用されている。10.4インチでのXGA表示はかなり字が小さくなるが、一応許容範囲といえる。

 このように、新VAIO SRの基本性能は高く、一回りサイズが大きなB5ファイルサイズノートPCにも匹敵するといえる。

メモリ増設用のMicro DIMMスロット。純正で用意されているMicro DIMMは128MBまでだが、サードパーティからは256MB Micro DIMMが発売されている Micro DIMMスロットは、キーボードの下に隠れている 背面のネジを2本外して、カバーを取り外すだけで、HDDにアクセスできる


●無線LAN機能とBluetooth機能をダブルで搭載

 新VAIO SRの目玉として挙げられるのが、無線LAN機能とBluetooth機能を標準装備していることだ。無線LANは、現在最も普及しているIEEE 802.11bに準拠したもので、転送速度は最大11Mbpsである。

 IEEE 802.11b準拠の無線LANは、昨年あたりから、アクセスポイントや無線LANカードなどの価格が手頃になったことで、急速に普及が進んでいるが、ノートPCで無線LAN機能を標準搭載している製品は、VAIO SRの他は日本アイ・ビー・エムのThinkPadシリーズの一部くらいで、まだそれほど多くはない。そのため、通常のノートPCで無線LANを利用しようとすると、PCカードタイプの無線LANカードをPCカードスロットに装着することになる。しかし、PCカードタイプの無線LANカードはアンテナ部分がスロットの外にはみ出してしまうため、カードをさしたまま持ち歩くには抵抗がある。

 筆者も、自宅や出版社などで無線LANを利用しているが、ノートPCを持ち歩く際には、無線LANカードを上に向けてバックパックに入れるなどして、無線LANカードを壊さないように気を遣っている。しかし、無線LAN機能を標準で内蔵している新VAIO SRなら、そうした気遣いは不要だ。アンテナ部分が出っ張ることもないので、気軽に持ち歩ける。

 Bluetoothに関しては、以前のVAIO SRやVAIO C1でもすでに搭載されていた機能であり、VAIOシリーズとしては特別に目新しいというわけではないが、やはりまだ標準で搭載している機種は珍しい。Bluetoothは、当初期待されていたようには普及が進んでいないというのが現状だが、PDAや携帯電話などとPCを結ぶインターフェースとしては有望である。なお、下位モデルのPCG-SRX3では、無線LAN機能は装備しているが、Bluetooth機能は省略されている。

 新VAIO SRでは、無線LANやBluetoothといったワイヤレス機能のオンオフがワンタッチで可能な切替スイッチを装備していることも特徴だ。スイッチでハード的に素早く切り替えられるので、非常に便利だ。無線LANとBluetoothを同時にオンオフするのか、または無線LANあるいはBluetoothのどちらかをオンオフするのかは、ユーティリティソフトによって変更できる。また、無線LAN、Bluetoothそれぞれの機能が動作しているかどうかを示すインジケータが手前に用意されているので、今の状態が一目でわかる。

 新VAIO SRの無線LAN機能は、IEEE 802.11bの相互接続規格であるWi-Fi認定を取得しているので、Wi-Fi認定機器同士なら基本的に問題なく接続できるはずだ。筆者は自宅で、エレコムからLaneedブランドとして発売されているアクセスポイントと無線LANカードを利用しているが、新VAIO SRはそのままその無線LAN環境にアクセスすることができた。

上位モデルのPCG-SRX7では、上面にBluetoothモジュールが内蔵されている 左側面にワイヤレス機能(無線LAN/Bluetooth)の切替スイッチが用意されている 手前左側にBluetoothと無線LANの動作インジケータが用意されている

ワイヤレススイッチでどの機能を切り替えるかを、ユーティリティで設定できる 自宅で利用している無線LANのアクセスポイントをそのまま認識した


●使いやすいキーボードとセンタージョグを装備

 新VAIO SRは、以前のVAIO SRに比べてボディの奥行きが15mmほど小さくなっているが、その秘密はキーボードにある。キートップの縦方向のサイズを少しずつ縮めることで、キーボード全体の奥行きを短くしたのだ。といっても、極端にキートップの形状が変わっているというわけではないので、ほとんど意識せずにタイピングが可能だ。キーボードの配列は標準的で、キーピッチもほぼ一定(約17mm)なので、快適に入力が行なえる。キータッチもわりとしっかりしている。

 ポインティングデバイスとしては、従来と同じインテリジェント・タッチパッドが採用されているが、新VAIO SRでは、タッチパッドの手前にジョグダイヤル(センタージョグ)が配置されている。ちなみに、旧VAIO SRでは、本体右側面にジョグダイヤルが配置されていた。センタージョグは、ソニー製の携帯電話などでもお馴染みだが、指でジョグを上下に操作してメニューを選択でき、押し込むことで実行が可能だ。旧VAIO SRとは違って、ホームポジションから手を移動することなく利用できるので、より使いやすくなっている。また、バックボタンも用意されており、メニューの階層などを一段階戻ることが可能だ。

キーボードの配列は標準的で、キーピッチも一定である。キートップの縦のサイズがやや小さくなっているが、タイピングのしやすさはほとんど変わらない。キーボード手前にはステレオスピーカーが装備されている パッドの手前にセンタージョグを装備。ジョグの右側にはバックボタンが用意されている


●豊富な拡張ポート類を装備

 新VAIO SRは、拡張ポート類も豊富に装備している。ワイヤレスでインターネットにアクセスできる無線LANは確かに便利だが、全ての場所で無線LAN環境が整っているわけではない。通常の有線LAN(100BASE-TX/10BASE-T)やアナログモデムを利用してネットワークにアクセスする場面もまだまだ多い。

 新VAIO SRは、有線LAN機能やアナログモデムも標準装備しているので、そうした場合でも、本体のみでスマートに利用できる。また、PCカードスロット(Type2×1)とマジックゲート対応メモリースティックスロットのほか、USBポートやi.LINKポートも装備している。

 なお、外部CRTポートはコネクタの形状が特殊なので、ディスプレイやプロジェクターなどに接続するには、オプションのディスプレイアダプター(PCGA-DA1S)が必要になる。また、i.LINKポートの隣には、VAIO関連製品専用の電源供給ポートが用意されており、オプションのDVD-ROM/CD-RWドライブ(PCGA-CRWD1)などを、ドライブにACアダプタを接続することなく利用できることも便利だ。

左側面に用意されたポート類。左からLANポート、PCカードスロット、外部CRTポート、i.LINK、VAIO関連製品専用電源供給ポート、モデムポート 右側面に用意されたポート類。左からメモリースティックスロット、USBポート、ヘッドホン、マイク、ACアダプタ接続ポート


●ソニー製品らしいデザイン的なこだわり

 新VAIO SRは、性能や機能が優れていることはもちろんだが、デザイン的にもソニー製品らしいこだわりが感じられる。その1つが、HDDアクセスランプやCAPSロックなどのインジケータのイルミネーション表示である。これは、LEDをパームレスト部分に埋め込み、LEDが点灯するとその光によってアイコンが浮かび上がって表示されるというものだ。LEDが消えているときにはアイコンはほとんど見えない仕組みで、デザイン的にも非常に美しい。

 また、液晶パネルのヒンジ部分には、リトラクタブルスイング機構が採用されており、スムーズにパネルの開閉が行なえるようになっている。リトラクタブルスイング機構では、回転の支点となる部分が通常よりも下側にあるので、開いたときに液晶パネルとキーボードの位置が近くなり、視線移動が少なく、疲れにくいという利点もある。

LEDが点灯するとアイコンが浮き上がって見えるイルミネーション表示 LEDが消えている状態ではアイコンはほとんど見えなくなる

スムーズに開閉できるリトラクタブルスイング機構を採用 キーボードと液晶パネルの位置が近いので視線の移動が少なく、疲れにくい


●バッテリ駆動時間も長い

 VAIO SRシリーズは、スタミナモバイルノートという別名がついていることからもわかるように、バッテリ駆動時間が長いこともウリの1つだ。標準で6セルのバッテリを装備し、約4~6時間という駆動時間を実現している。また、標準バッテリの2倍の容量を持つオプションのバッテリパック(LLL)を利用すれば、駆動時間はさらに2倍になる。これだけの駆動時間があれば、外国への出張の際などにも、安心して利用できる。

標準で6セルのリチウムイオンバッテリを装備 バッテリの電圧は11.1V、容量は3600mAhである


●アクティブなモバイル派にはオススメの1台

 新VAIO SRはB5サイズのボディに、無線LANやBluetooth、有線LANなど、さまざまな機能を詰め込んだ製品であり、モバイルノートPCとしての完成度は高い。また、上位モデルのPCG-SRX7で22万円前後、PCG-SRX3なら15万円前後という実売価格も、非常にリーズナブルである。液晶パネルのサイズが小さく、光学ドライブも内蔵していないので、1台目のメインマシンとして使うには向いていないが、高性能なマシンを常に持ち歩いて使いたいというモバイル派にはオススメできる製品だ。筆者も、個人的にはなかなか気に入ったので、今使っているCF-M1VAの後継として購入しようと考えている。

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(2001年11月16日)

[Reported by 石井英男@ユービック・コンピューティング]


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