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第127回:最新B5サブノートPC、注目したこの2台 |
なお、僕が“公式に”行なえると聞いたと書いた根拠は、マイクロソフトがサンフランシスコで行なった記者向け説明会において、米国担当者が「ProfessionalはHomeのアップグレードを行なえる」と発言していたからだ。実際、技術的にはアップグレードを行なうことができる。
ただし、日本ではそのサポートは行なわれず、来年の第1四半期にHomeからのアップグレードを行なうためのパッケージを用意するとのこと。現在、COMDEX Fall出張中で細かな事実確認は行なえない。関係者からは、米国で行なわれているHomeをプリインストールしたPCと同時購入したProfessionalに関してキャッシュバックを行なっているが、日本ではキャッシュバックが習慣的に合わないとの理由で、別途、価格設定を見直したパッケージを用意するのが目的と聞いている。
ずっとWindows XP関係を書き続けてきたので、久々にハードウェアの話題を取り上げよう。いや、取り上げよう、というよりは、この年末に向けて登場した新製品に、個人的に興味があるのだ。
本当は昨年から使っていたLaVie MXの後継機種を待っていたのだが、残念ながら微透過液晶パネルを採用したモデルはなくなってしまった。この機種の熱心なファンからも、TM5800搭載の次機種を待ってたら、微透過液晶パネル搭載機がなくなってしまったので、急いで微透過液晶の夏モデルを注文したというメールをいただいた。ビジネス的には難しい位置にある製品とは言え、ほかに追随する製品が出てきそうにないことを考えると、惜しい製品をなくしてしまったと今更ながらに思う(直販モデルLaVie Gとして販売はされてはいるが)。
●候補に挙げたのはこの2台
最近、歳をとってきたのか、10.4インチ液晶パネルにXGAの組み合わせは、文字の大きさ的にかなり辛くなってきた。12.1インチの機種でもいいかと思っていたが、10.4インチ液晶を搭載するB5サイズのサブノートPCが、また一段軽くなってきて、再び魅力的に見えてきた、というのが、今回個人的にB5サブノートPCに興味を抱いた理由だ。
読者の、しかも若い人たち(という言葉で若い人を呼ぶようになったということは、正真正銘のオヤジになったのだと実感する)なら、VAIO C1やLOOX SあるいはT、FIVAといた機種にも興味を持つのだろうが、あまり小さな字を見ているとストレスがたまってしまう。理想を言えば12.1インチ、11.3インチでも許容範囲、10.4インチならなんとか、というレベルだ。まぁ、慣れの問題だとは思うのだが。
というわけで、あくまで個人的なモノ選びからは、こうした字の小さな横長画面の機種をはずした。実のところ世界最軽量をうたうLOOX Sには、密かに期待をかけていた。しかし、ある編集部にあった試用機をさわってみたところ、重いアプリケーションを動かしてもいないのに、明らかにメモリが不足した動きをすることに閉口してしまった。標準128MBだからしかたがないと言えばそれまでだが、初代機とは異なりメモリがMicro DIMMではなくオンボード実装になっているため、これ以上増やすこともできない。
Micro DIMMも先週末にメルコが256MB版を発表し、今週半ばには店頭に並ぶと聞いているだけに、実に残念だ。以前にもこの連載で述べたように、OSや利用するアプリケーションの変化で必要なメモリは増えていくものだ。時にメモリ最大容量は、そのPCの用途範囲の限界を決めてしまうだけに、何かしらのソリューションが欲しいところだ。
さて、そんな失望の中、個人的趣味で選んだ軽量ノートPCの代表が、ソニーの「バイオノートSR」とコンパックの「Evo N200」である。
バイオノートSRはシリンドリカル6セルバッテリを背負い、無線LANとBluetooth、有線LANにIEEE 1394と、有線、無線のオールスターを揃えつつ、1.25kg(実際に秤にかけてみたところ、1.24kgほどだった)という軽量ボディを実現していることからまずはピックアップ。この年末のバイオシリーズはC1やMXの派手さが目立つが、SRはそれ以上に見逃せいない製品だと思う。
Evo N200は今年6月にニューヨークで行なわれたPC Expoで、超低電圧版モバイルPentium III-Mと同時にお披露目された時から目をつけていた機種だ。1.13kgのボディに11.1V 1,600mA時のリチウムイオンバッテリを内蔵。厚さも2cmちょっとしかない。スクエアなデザインを採用し、DEC時代からの面々と続くキーボードスタンド兼用のセカンドバッテリ(シリンドリカル4セル)を取り付け可能で、ドッキングステーションも利用できる。セカンドバッテリを取り付けると、重量は1.4kgを切る程度となる。
●実際に使っているぞ、と言わんばかりの細かい配慮が魅力のSR
バイオノートSR |
まずはバイオノートSRだが、なにより「実際に開発者が仕事で使っているんだぞ」という感じがわかる心配りが、最大の魅力ではないだろうか。そう感じたポイントは2つ。1つはスイッチ1つでワイヤレス機能をオン/オフ可能なワイヤレススイッチ。いちいちユーティリティで電源を切ることを思えば、かなり快適に2つのワイヤレス技術を使える(といっても、僕はBluetooth対応機器を所有していないのだが)。自分で使い込まなければ、こんな機能は付かなかったはずだ。
もう1つは液晶パネルを閉じた際のロックがバネではなく、マニュアル操作であること。僕が使っているLaVie MXは床に落としてしまったときに、パネルをロックするための爪が折れてしまったのだが、これが逆になかなか使いやすいのだ。SRの場合は、最初からロックをマニュアルで行なうことを前提に、閉じた位置から数度開くまで、閉じる場合よりもヒンジのトルクが大きくなるメカになっている。
つまり、閉まるときにはふつうに閉まり、あけるときには最初だけ少し抵抗が大きい。リッドをスライドさせなくても開け閉めができつつ、だらしなく開いたりもしない、なかなか使い心地がいい機能(?)だ。ただし、この影響で液晶パネルを閉めるときにはリッドスイッチでスタンバイさせることができるが、開けるときに自動復帰させることができない(誤動作で電源がオンになることを防ぐためだろう)。
もちろん、(前述したようにBluetoothは使っていないが)無線LANが内蔵されていること、それとともに有線LANポートも付いていること、悪くないキータッチや、高機能な電力管理ソフト(きちんとWindows XPのNative Processor Performance Control=OSがプロセッサのクロック周波数を動的に切り替える機能にも対応していた)、IBMの流体軸受けタイプの30GBハードディスクを搭載していることなども気に入った。そして、何よりこの手の製品の中では抜群に軽い。
先代のSRはなんとなく華奢なイメージがあったが、今回のモデルはヒンジのがたつきなどもなく、さわっていて安心感がある。サイズも数字以上に小さくなった印象だ(そのぶん、手前方向へ薄くなるスラントしたシェイプではなく、少し厚ぼったくなってしまったが)。多少大人っぽくなったカラーリングとともに、多少トシを感じてきた僕にも抵抗感なく使える製品になっていると思う。
もっとも、何事にも完璧はないわけで、不満点がゼロというわけではない。プロジェクタへの接続を考えればVGA出力は欲しいところだが、これは専用コネクタが必要。手持ちにはIEEE 1394のコンピュータ機器がないので、USBが1ポートというのも多少不満に感じる点だ。無理を承知で言えば、メモリースティックが付いているよりは、何かほかの装置が付いていた方がいい。
とは言うものの、このクラスの新製品の中では出色の出来であることは間違いない。開発関係者に話を聞いても、単に入れられるものは何でも詰め込んだというのではなく、実際に使ってほしいものを詰め込んだのだという。企画と開発にかかわるメンバーのほとんどが、旧SRおよびB5時代の505を所有し仕事に使っているそうだ。
●遊びはないが実践的なEvo N200
Evo N200 |
先ほど話題にしていた新バイオノートSRと比べると、N200のスペックや外観が少々気にくわないという人もいるだろう。全体のフォルムはそれほど悪くないと思うのだが、シルバーとブラックのツートンカラーが、どうも今1つ垢抜けない印象だ。まぁ、このあたりは思い切り自分の主観が入ってはいるが。
しかし、それ以外の部分に関しては、地味ながらもなかなか実践的な作りで、ビジネスユーザーのことを考えた構成が好印象だ。まずこのサイズでVGA出力端子がきちんと付いていること、脱着しやすいドッキングステーション、USBが2個あること、そしてプロセッサの冷却ファンが存在しないこと、オプショナルのバッテリがスマートに取り付けられることなどが、SRと比べたときの大きな違いだろうか。ハードディスク容量は20GBだが、こちらもIBMの流体軸受けタイプが採用されている。
実はSRでもふつうに使っているだけならば、ほとんど冷却ファンが動くことなかったのだが、やはりあると無いでは信頼感が異なる。冷却ファンは劣化して故障の原因になるだけでなく、たいていは古くなるほど動作時の音が大きくなっていく。今は静かでも、使っているうちにうるさくなってくるものだ。
N200はファンレスの700MHzということで、AC駆動時の発熱をチェックしてみた。各種アプリケーションのインストールや画像ファイルの一括変換、ベンチマークテストなどを動かしてみたが、底面はたいして熱くならない。ファンレスのPentium III搭載機が欲しいならば、N200は今のところベストの選択肢だと思う。
メイン電源とサスペンドボタンが別々にちゃんと実装されているのもいい。僕の場合、リッドスイッチは常にオフにして使っているのだが、電源スイッチに休止状態を、サスペンドボタンにスタンバイを割り当てて利用している。こうしておくと、スタンバイにはさせたくないが、とりあえず液晶パネルを閉じてその上で何か書き物をしたり、液晶パネルの電源だけ落としておきたい場合に便利だからだ(利用のスタイルは人それぞれなので、それがオススメというわけではない)。
まだWindows XPには行くつもりがない、と思っている人には、プリインストールOSがWindows 2000で、Windows XPへのアップグレードが7,000円で可能なクーポンが付属する。本機は最大メモリが192MBであるため、ユーザーの使い方や気持ち次第で、Windows 2000がベストなのか、Windows XPがいいのかは異なると思う。
【お詫びと訂正】初出時、Windows XPへの無料アップグレードクーポン券が付属するという記述がありましたが、正しくは7,000円でアップグレード可能になるクーポン券が付属します。詳しくはこちらをご覧ください。お詫びして訂正させていただきます。
キーボードは、タッチそのものは適度なクリック感があり、SRよりも良いという印象を持った。しかし、タイプ時に(大きな音ではないが)カチャカチャと高い周波数の音がして耳に付く場合がある。音自体は小さいので、静かな自室でタイプするとき以外にはあまり気にならないとは思うが、もう少し上質な感じが欲しいところ。また、配列の面ではスペースバーの右端がBとNの間のあたりにあるため、右手親指でスペースバーを押す時に指が届きにくい。慣れるまでに多少苦労するかもしれない。
また、ポインティングデバイスそのものの性能は、Synaptics製で悪くないのだが、サイズが多少小さく、パームレストとパッド面の段差が大きく、操作時に多少気になることがあった。
文句が多いのはいつものことだが、口で悪く言うほど気に入らないわけではない。むしろ、新SRと同じぐらいに気に入っているのは、本製品の筐体がかなりカタく丈夫なためだ。SRとの仕様面での違いやプロセッサの違いも、むしろお仕事用にはいい。サイズ以外の共通点は少ない両者だが、なかなか迷う2台である。
●期待以上に伸びたSRのバッテリ
さて、実際に外に持ち出してみると、やはり気になるのはバッテリ駆動時間だ。いつものように(?)ベンチマークではなく、実際に仕事用に持ち出して使ってみたのだが、なんとも意外に低電圧版モバイルPentium III-M 800MHz搭載のSRのバッテリ駆動時間が延びるのだ。
液晶パネルの輝度は下から3番目にして使っていると、通信をしていない限りなかなか電池が減らない。専用の電源ユーティリティでメモリースティックスロットやIEEE 1394ポートなどをすべてオフにしていたせいもあるのかもしれないが、PHSカードや無線LANなどで通信を行なわなければ5時間程度は利用できる(さすがにカタログスペックの6時間は無理があると思う)。途中、PHSカードや無線LANを使っても、4時間半程度は使えるだろう。
バッテリ持続時間も超低電圧版モバイルPentium IIIを搭載した機種と比較すると多少短いが、たとえばThinkPad s30と使い比べてみても、実質的なバッテリ持続時間の差は30分ぐらいだと思う。実のところ、実際に自分の使い方で動かした時のバッテリ持続時間に関しては、あまり期待していなかった。反射型液晶搭載のPCと比べることはできないが、これぐらいならと思える範囲だ。
難点は大容量バッテリ、と言ったとたんに700gグラムもある12セルのバッテリになってしまうことだろう。確かに10時間使えて本体との合計が約1.6Kgなら、ThinkPad s30の9セルバッテリよりも良さそうだが、バッテリを後ろに伸ばせないSRでは、ちょっと不格好になってしまう。なんとかスマートに9セルぐらいのバッテリが取り付けられるといいのだが。
その点、N200はキーボードスタンド代わりのバッテリがスマートに収まる。残念ながら標準装備のリチウムポリマーバッテリは11.1V 1,600mAだから、容量的にはSRの半分以下。実質のバッテリ持続時間も、およそ2時間ちょっと(スペック値とほぼ同じか少し下)程度だが、4セル14.8V 1,950mAのバッテリを取り付ければ、6時間ちょい(これもやはりスペック値より少し下ぐらい)は使える。セカンドバッテリを取り付けたときの重さは、おおよそ1.4Kg程度となる(実は試用した試作機は製品版よりも100gほど重いため実測できない)。
バッテリに関しては、こちらの方がスイートスポットにはまるという人もいるはず。また、N200のACアダプタはとても小さくて軽い。容積的にはSRの約半分といったところで、重さも160gほどだった。会社と自宅を往復するときに持ち歩くが、外出先ではあまり使わないという人は、N200の薄さ、軽さが魅力となるだろう。
ただ、価格を含めて考えると、ハードディスク容量や無線LAN内蔵などの付加価値を考えるとSRに買い得感があるのに対して、企業向け製品としてのサポートも含まれたN200の値付けは多少割高に感じる(市場が違うと言えばそれまでだが)。また、N200は液晶バックライトのインバータをケチってる(?)のか、明るさ調整の幅が狭い。最大輝度は似たようなモノだが、最少輝度はSRの下から3番目ぐらいに相当する。
どちらか1つを選択するとなると、個人ユーザーは妥当に考えてSR(もしくはThinkPad s30)。お仕事に特化するならN200といったところか。なかなか決められないうちに、もう次の商戦に突入しているというのがいつものパターンなのだが、今回はメモリ搭載容量が明暗を分けるかもしれない。
ご存じのようにWindows XPはメモリ食いなOSだ。今後、アプリケーションのメモリ消費量も増えていくだろうし、OSが安定したことでエージェント的にバックグラウンドで動作するソフトウェアも増えるはずだ。なんてことを考えていると、メモリは多いに越したことはない。N200が最大容量256MBの440MXを採用し、オンボードが64MBしかない(よって最大容量は標準装備の192MB止まり)のは、コンパックの責任とは言わない。
しかし、本来はTualatinサポートが無かったi815EMのBステップをIntelに作らせたソニーの方が、今回は結果的に良かったとは言える(i830系は物理的にSRには入らないそうだ)。前述したようにMicro DIMMの256MBがほぼ同時に投入されたのも、なんともタイミングがいい。
実はこの原稿、COMDEX Fallが開催されるラスベガスへの飛行機の中で書いている。ちょうど試用期間のタイミングとCOMDEXが重なってしまったためだが、標準メモリの128MBにたまりかねて、256MBが出ることを知りつつ、Micro DIMM採用機も持っていないのに128MBのモジュールを購入してしまった。
サブノートPCを選ぶ決め手がパッケージングや使い勝手ではなく、メモリの最大容量というのはなんともバカバカしいことだが、今現時点だけを見ればしかたがないのかもしれない。来年には、メモリなど気にせずに選べるようになっていてほしいものだ。
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【10月12日】ソニー、有線/無線LANを搭載した新「バイオノートSR」
~従来モデルより一回り小型に
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011012/sony1.htm
【11月5日】コンパック、厚さ21mmのB5ノートPC
~超低電圧版モバイルPentium III-M 700MHzを搭載
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011105/compaq.htm
(2001年11月13日)
[Text by 本田雅一]