元麻布春男の週刊PCホットライン

DVD-Videoをもっと手軽に作るには


●オーサリング無しでDVD-Videoを作りたい

 前々回取り上げたリコーのDVD+RWドライブMP5120Aで、どうやら当面の間入手可能な書込み型のDVDデバイスは出揃った。松下のDVD-RAM/Rドライブ、パイオニアのDVD-R/RWドライブ、リコーのDVD+RWドライブといった布陣である。短時間であるとはいえ、一通り試してみて思ったことの1つに、果たしてオーサリングというプロセスは本当に必須なのだろうか、ということがある。

 ご存知のように、市販されている(プレスの)DVD-Videoタイトルには、必ずメニューがあり、そこから字幕の設定や音声の選択といったシステム設定を行なったり、特定のチャプターから再生する、といったことがサポートされている。また、10月26日に発売される「ファントム」( http://www.digiturbo.co.jp/phantom_dvd/dvd.html )のように、DVDのオーサリング機能をフルに使ったゲームさえ登場する。筆者はこうした「プロ」の仕事を否定するつもりは全くない。ぜひ、いい仕事をして、楽しませて欲しいと思う。

 しかし、こうしたオーサリングにかかわる作業は、本当にすべてのユーザーに強制されるべきものだろうか。たとえば、書込み可能なDVDメディアにMPEG-2で圧縮された動画ファイルを書き込んでおけば、プレイヤーがディレクトリ名/ファイル名順にファイルを見つけて、連続的に再生する。すでにMP3に対応したCDプレイヤーが実現している以上、技術的には何の困難もないハズだ。問題になりそうなのは、bitレートや音声フォーマットのサポートといった互換性の部分で、ここだけはある程度のガイドラインがあった方がベターだと思うが、それほど厳密である必要もないだろう。

 もちろん、MPEG-2ファイルを書いただけのメディアは、古いDVDプレイヤー では再生できない。だが、しょせん古いDVDプレイヤーでは、書込み可能なDVDメディアの互換性も保証できない。現在、せっかく書き換え可能なメディア(DVD-RW/DVD+RW)であっても、DVDプレイヤーとの互換性を重んじるあまり、追記ができないという状況にある。ならば、DVD-Videoの規格は規格として遵守した上で、書込み可能なDVDの時代に対応した規格を追加することが必要になるのではないか。これから登場するDVDプレイヤーが、書き換え可能メディアをサポートすると同時に、単純なMPEG-2ファイルの再生をサポートしてくれれば、PC側の負担は大きく減少する。DVDメディアにDVD-Video互換で(凝ったメニューを作成して)書き込むか、それとも単にMPEG-2ファイルだけ書いてしまうか、ユーザーに選ばせて欲しい。

 こんなことを考えてしまったのは、このところ登場してきたDVDオーサリングソフトに、メニューの作成作業等を事実上省略した、出来合いのメニューで決め打ちしてしまうものが増えているからだ。リコーのDVD+RWにバンドルされていた「Drag'n Drop CD」がそうだし、ソニックの「MyDVD 3.0」も、上位の製品「DVDit!」に比べてメニュー作成の自由度が大幅に減少している。そして、それが必ずしも悪いことだと思わない。メニュー作成に凝りたい人は、DVDit!を使えばいいのである。


●シンプル/お手軽なオーサリング/ライティングソフト「neoDVD」

 ここで紹介する「neoDVD」も、メニュー作成に重きを置かない、手軽さを重視したDVDオーサリング/ライティングソフトだ。残念ながら現時点で、単体発売の予定は不明で、長瀬産業が販売するDVD-RAM/Rドライブのパッケージにバンドルされるほか、ジャストシステムの「MegaViDV」の新製品(11月発売予定)にバンドルされることが明らかにされている。今回、長瀬産業よりソフトウェアパッケージのみの提供を受けたため、パイオニアのDVD-RW/Rドライブでテストしたが、とりあえず動作した(すでに記録済みのDVD-RWメディアの場合、ブランクメディアに交換するよう促され、消去や上書きができなかったことからいって、DVD-RWへの対応度は低いが、DVD-RAM/Rドライブへのバンドルということからすればこれで良い、ということなのだろう)。

画面1 画面2

 neoDVDの特徴は、DVカメラからのリアルタイムMPEG-2キャプチャとDVDメディアへの書込み、既存の動画ファイル(AVIおよびMPEG-2)からのDVD作成、複製禁止ではないDVDディスクの複製、といった作業が簡単にできることだ。画面1は、neoDVDを起動すると表示されるダイアローグ(一種のウィザード)で、neoDVDで可能なことが端的に表示されている。

 画面2はDVカメラを接続してDVからDVD-Videoを作成しようとしているところだが、ほとんどユーザーが指定するようなオプションは何もない(繰り返すが、これはこれで良いと思う)。画面では黒くなっているビデオ表示ウィンドウ下のボタンでDVテープを再生し、気に入ったところで右下の赤い開始ボタンを押せば、リアルタイムでのMPEG-2ファイルへのトランスコードが始まる。もう1度同じボタンを押せばトランスコードが終了し、直ちにDVD-Videoの作成が始まる。つまり、リアルタイムでできるのはDVからMPEG-2の変換までで、DVD-Videoの作成までリアルタイムでできるわけではない。

 この時、同時にオーサリングまで行なってしまう(単にMPEG-2ファイルを作成するのではなく、DVDメディアに書き出すのと同じディレクトリを作成してしまう)ため、複数のビデオ、あるいは1本のDVテープから複数の部分を切り出す、ということはできない(事前にDVの状態で編集しておく必要がある)。おそらくこれが、CAMpegRT(後述)が同じパッケージにバンドルされている理由だろう。複数データを1枚のメディアに書き込みたい場合は、ファイルモードを使えば可能で、この場合、複数データを1枚のメディアに書き込むと、冒頭のシーンのサムネイルを使ったメニューが自動生成される。また、neoDVDによるライティングは、少量のデータを書き込む際に、ダミーデータを書き込んで互換性を向上させるタイプだが、現時点でビデオの追記がサポートされていないことを考えれば、それほど大きなマイナスではない。

 なお、DVカメラの音声フォーマットには12bit/32KHzと16bit/48KHzの2種類があるが、neoDVDは両方をサポートしていた。DVカメラの中には、アフレコが可能なことから前者のフォーマットしかサポートしていないもの(ソニーのDCR-PC7やDCR-PC10)や、両方サポートしていても初期設定が前者になっているものが少なくない。12bit/32KHzのフォーマットはDVD-Video非互換であるため、オーサリングソフトによる変換処理が必要になるのだが、neoDVDはこれをサポートしているため、何も気にしないで済む(12bit/32KHzの音声は自動的に変換される。ユーザーによる指定は不要)。

 事実上、DVD作成に伴うユーザーの自由度は何もない(?)が、これはこれで分かりやすくて良いと思う。難点をいえば、作成されたDVD-Videoの再生時、冒頭でneoDVDのバナーが必ず再生されることくらいだろう(それも、決して長いものではなく、一瞬で終わるものだが)。

 ちなみに、今回試用したバンドルパッケージには、neoDVDに加え、以前紹介したことのあるDVDライティングソフトの「PrimoDVD」、ソフトウェアDVDプレイヤーである「CinePlayer DVD 4.0」、DVからMPEG-2へのリアルタイムエンコーダーである「CAMpegRT」が含まれていた。いずれも、単体で購入可能なソフトウェアばかりで、現時点ではneoDVDのみが単体で市販されていないことになる。


●フォーマットに寛容なDVDプレーヤーがあれば……

画面3
 というわけで、ここでCAMpegRTのパッケージ版も紹介しておこう。CAMpegRTも、neoDVDと同じ米MedioStormの製品だが、国内でのパッケージ販売元はエムエスエイだ( http://mf.msa.co.jp/mediostream/campegrt/index.html )。価格はオープン価格だが、Web直販ではCAMpegRT、MyDVD 2.3、PowerDVD 3.0に、PCIバス対応のIEEE 1394ホストアダプタ(Advan Sys)、6ピン-4ピンのiLinkケーブルがセットで17,800円となっている。

 CAMpegRTの特徴は、画面3を見ればわかる通り、これまたシンプルな作りにある。できることは、IEEE 1394で接続されたDVカメラの動画データを、リアルタイムでMPEG-2でキャプチャすることのみ。ユーザーが行なうのは、キャプチャしたデータにつけるファイル名の指定。出力は拡張子が.MPGとなるMPEG-2ファイルで、再利用しやすい(neoDVDのようにオーサリングまでは行なわない)。

 こうやって作成したデータは、付属のMyDVD 2.3を使ってDVD-Videoにすることが可能(もちろん別途ドライブが必要になるが)なのだが、残念ながらこのバージョンのMyDVDは、DVDit! LEのさらに機能限定版という感じで、12bit/32KHzの音声データを変換する機能を持たない(CAMpegRT自体は12bit/32KHzの音声データも扱える)。リコーのMP5120Aに付属していたMyDVD 3.0(MyDVD 2.3/DVDit!とは別物)では可能だったのだが、MyDVD 2.3からMyDVD 3.0へのバージョンアップは11月まで待たねばならない( http://www.sonicjapan.co.jp/mydvd/upgr.html )。MyDVD 2.3の使い勝手が、CAMpegRTほどシンプルでないことと合わせ、このあたりがちょっと辛いところだ。

 しかし、ここでもう1度考えたいのは、なぜ12bit/32KHzの音声データではダメなのか、ということである。DVD-Videoの規格に準拠しないため再生が保証されないのはしょうがないとして、12bit/32KHzの音声データをサポートすることで、DVDプレイヤーのコストがどれだけ上がるだろうか、ということだ。MP3を書いたCD-Rの再生サポートしたCDプレイヤーが増えているように、単純にMPEG-2ファイルを再生してくれるDVDプレイヤーがあってもよいのではないか、その際、PCのソフトウェアDVDプレイヤーのように、柔軟にフォーマットに対応してくれれば良いのに、というのが筆者の思いである。


●オマケ パイオニアのSCSI対応外付けDVD-RWドライブ「DVR-S303」 追補

 今回、パイオニアの外付けSCSI型DVD-RW/Rドライブ(DVR-S303)を試用したが、以前このドライブを紹介した際、PrimoDVDでDVD-Rメディアに対して2倍速の書込みができなかったこと、DVDit! SEがDVD-RWの消去に対応していない、と述べた。この2点について、若干分かったことがあるので、ここでお詫びと訂正をしておきたい。

 まずPrimoDVDで倍速の書込みができなかった件だが、これは筆者がDVR-S303のテスト時に、ドライブにバンドルされていたPrimoDVDでなく、筆者がオンライン直販で購入したリテール版のPrimoDVDを使ったことが原因だと分かった。したがって、DVR-S303を購入したユーザーは、2倍速でDVD-Rメディアに書込みができるハズである(ただし、本稿執筆時点においても、リテール版をバンドル版相当にアップデートするパッチは公開されていない。サポートする義務があると思うのだが)。

 次にDVDit! SEだが、消去はできないものの、すでに記録されたメディアに書き込もうとすると、上書きしてよいか、確認してくることが分かった(つまりここで上書きを選ぶと、新しいデータが書き込まれる)。実際の使用において、必ずしも「消去」する必要がないことを考えれば、これで良いと思われる。ただ、本当にDVD-RWに完全対応をうたうのであれば、ここに「追記」というオプションが必要なのではないか、とも思う。

 それはともかく、以上2点について、お詫びと訂正をさせていただく。

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(2001年10月18日)

[Text by 元麻布春男]


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