一ヶ谷兼乃の

NTT「Bフレッツ」導入記
~最大100Mbps「ベーシックタイプ」の実力は?


■光・IP通信網サービスからBフレッツへ移行

 昨年末から始まった、NTTのFTTH試験サービス「光・IP通信網サービス」。筆者宅でも今年の3月から導入し、原因不明のパフォーマンス低下などはあったものの、結果的には非常に快適なサービスとなっていた。

 そして、光・IP通信網サービスも7月末で終了し、8月からは、いよいよ本格的なサービスとして「Bフレッツ」が正式にスタート。

 光・IP通信網サービスでは、最大10Mbpsのサービス「基本メニュー」を利用していた筆者だが、Bフレッツへ移行するにあたり、最大100Mbpsという「ベーシックタイプ」を申し込んでみることにした。だが、ベーシックタイプへの変更には、NTTによる工事が必要で、しばらくはその順番待ちという状態だった。

 筆者と同様に光・IP通信網サービスの基本メニューからBフレッツのベーシックタイプへ移行するユーザーは、とりあえずBフレッツの最大10Mbpsのコースである「ファミリータイプ」へ移行していた。なぜなら、光・IP通信網サービスの基本メニューからBフレッツのファミリータイプへ変更した場合、機材はもちろんのこと、プロバイダとの契約もそのまま継続できるからだ。

■とりあえずはファミリータイプへ移行

 そういうわけで、暫定的にBフレッツのファミリータイプを使い始め、ベーシックタイプへの切り替えを待っていた。当初、NTT東日本側の説明では、8月初旬はNTT各局の機材を変更するための工事を行なうため、実際にベーシックタイプへの切り替えは8月中旬以降からで、遅くとも8月下旬には工事を完了したいということであった。

 光・IP通信網サービスの基本メニューも、Bフレッツのファミリータイプも、最大10Mbpsという点では同じである。回線のスループットも5~6Mbps、状態の良いときは7Mbpsという速度が確認できた。

 しかもファミリータイプでは、NTT東日本へ支払う料金が、基本メニュー利用時の半分以下となる6,100円になったことと、Bフレッツ開始に合わせてプロバイダの利用料金も安くなってきたので、コストパフォーマンスという点では抜群に魅力あるサービスとなっている。

 試験サービス時点では、NTT東日本に支払う料金と、メインに利用していたプロバイダ「DION」の料金を加算すると19,800円であったが、Bフレッツのファミリータイプに移行し、プロバイダをDIONから「IIJ4U」に乗り換えたことで、月々の料金を8,900円にまで圧縮できた。

 8月になってからは、Bフレッツのファミリータイプを利用しながら、ベーシックタイプの工事を待っていたが、NTT東日本からはなかなか連絡がない。筆者の自宅では、数台のパソコンしかなく、同時にインターネットを利用するのは、ほとんど1、2台という環境であり、Bフレッツのファミリータイプでも十分なパフォーマンスなので、そのまま9月まで利用していたが、さすがに以前受けた説明と状況が違ってきているので、9月5日に問い合わせの電話を入れた。

■やっと最大100Mbpsのサービスが筆者宅へ

 9月5日に電話を入れ、これまでの状況を説明したところ、翌日には、すぐにでもベーシックタイプへの切り替え工事を行ないたいとの連絡が入った。今回は土日でも工事ができるということで、9月8日の午前10時の工事を申し込んだ。

 9月8日の10時前には、筆者宅にNTT-MEの工事業者の方が2名訪れ、早速工事が開始された。

 筆者宅で行なわれる工事の大まかな内容は、ONUをメディアコンバータに取り替え、通信テストを行なうだけである。以前引き込んだ光ケーブルなどは、そのまま利用される。工事が始まるまでは、単にONUからメディアコンバータへの取り替えだけで終ると思っていたが、実際には屋内配線用の光ケーブルも交換対象になった。

 まず、戸外から引き込まれた光ケーブルを屋内用のケーブルに接続し、その接続部分を保護するための「屋内成型キャビネット」を開けて、古い屋内用の光ケーブルを取り外した。これまで使用していたONUは、この屋内用光ケーブルをつけたままの状態で取り外された。

ユーザ系屋内光ローゼットの内部。単に光ケーブルを保護するための箱のようだ ユーザ系屋内光ローゼットに両面テープで貼り付けた状態のメディアコンバータ

 ここで、新たに用意された屋内用の光ケーブルと戸外から引き込まれた光ケーブルを「Optical Fiber Connector Cleaner」という器具でコネクタ面を洗浄してから、屋内成型キャビネット内で接続した。今回の光ケーブルも前回のものと見た目は同じなのだが、入ってる光ファイバーの本数が異なっており、前回のものは2芯で、今回のは1芯であった。接続が終ると、屋内用光ケーブルのメディアコンバータ側のコネクタにTektronix製の「Optical Power Meter」を接続して、信号のチェックを行なっていた。

 結果は、-13.13dBmとなっていたが、NTT-MEの工事者によると、すこぶる良い状態だということであった。

 続いて屋内用の光ケーブルをメディアコンバータと接続する作業になった。メディアコンバータに接続するときも、光ケーブルが抜けたり、光ケーブルが折れないように再び「ユーザ系屋内光ローゼット」という箱の中でケーブルが巻かれた後で、メディアコンバータと接続される。ユーザ系屋内光ローゼットとメディアコンバータが強力な両面テープで固定された後に、光ケーブルをメディアコンバータに挿し込んだ。

 今回使用するのは、NTT東日本の「スタンドアロン型BLT S-BLT」というメディアコンバータで、ONUと並べた状態で撮影はできなかったものの、ONUと比較して非常に小型になっている。メディアコンバータには、光ケーブルを挿すコネクタと、100Base-TX対応のEthernetポート、ACアダプタを接続するコネクタ、4つのDIPスイッチが装備されている。4つのDIPスイッチは、Ethernetポートの100Base-TXと10Base-T、半二重と全二重を切り替えるもので、自動認識モードが初期値になっていた。

メディアコンバータのDIPスイッチでEthernetポートの設定ができる メディアコンバータ側の光ケーブル接続ポートとEthernetポート。Ethernetポートの横には通信状態を示すLEDが装備されている

 ここまでの工事が終ると、工事業者が持ち込んだノートPCでの接続テストが行なわれた。テストは、いつものことながらフレッツ・スクエアにPPPoEで接続し、通信速度をチェックするページで大まかな速度を確認するという内容である。持ち込まれたパソコンはA4フルサイズのノートPCで、機種までは確認できなかったが、ゲートウェイ製のPCであった。

 フレッツ・スクエアには、フレッツ・ISDNやフレッツ・ADSL、Bフレッツのファミリータイプの速度を確認するページはあるのだが、まだベーシックタイプのページは用意されていなかった。実際にはファミリータイプのページで何度か速度チェックを行ない、結果は、約13Mbpsであった。

 そこで、筆者にも開通の確認を行なって欲しいと言われたが、ついさっきまでBフレッツのファミリータイプを利用していたうえ、ベーシックタイプの工事日が2日前に突然決まったことから、ベーシックタイプでのプロバイダ契約を行なっていなかった。そのため、筆者が別に契約しているフレッツ・ADSLを使い、IIJ4Uのユーザーページからコースを変更した。今回は、オンラインであっさりとコースを変更できたが、ファミリータイプからベーシックタイプへの切り替えを行なうとき、場合によっては、プロバイダのサービス切り替えが最も問題となる部分なのかもしれない。

 愛用のThinkPad X20とメディアコンバータをLANケーブルで直接接続し、問題なく接続できた。ここまでで、工事は完了したということで業者は引き上げていった。

 業者が引き上げたあとに、引き続きThinkPad X20を使って、先ほどのフレッツ・スクエアで通信速度を確認したが、だいたい13~16Mbps程度の結果が確認できた。

■インフラに合わせてネットワークを再構築

 インフラが新しくなったということで、ネットワークの配線も見直すことにした。Bフレッツのベーシックタイプでは、同時に2箇所のプロバイダに接続することができるため、筆者宅では、メディアコンバータにHubを接続し、そのHub経由でブロードバンドルータを接続している。Hubにはフレッツ接続ツールをインストールしたPCを直接繋ぐことでブロードバンドルータを使用しない環境が手軽に実現できるようにしてある。

 光・IP通信網サービスのときには、ONUのEthernetポートの仕様が半二重の10Base-Tであったので、手元に余っていた半二重モードしかない100Base-TX対応のDualスピードHubを流用していた。

 しかし、メディアコンバータのEthernetポートは100Base-TXの全二重モードにも対応しているということなので、Hubを新調することにした。それと同時にONUを設置していた場所よりも、離れたところへメディアコンバータを設置するため、LANケーブルも購入した。

プラネックスコミニュケーションズのFX-05SC 今回購入した薄型のLANケーブル(下)。どちらもカテゴリ5仕様となっている

 早速、近所の量販店に行ってHubとケーブルを物色したところ、Hubは100Base-TXの全二重モードに対応し、手ごろな大きさ、価格のプラネックスコミニュケーションズのFX-05SCを選んだ。LANケーブルも引き回しに邪魔にならないように、きしめん状の非常に薄いケーブルであるエレコムのLD-CTFS/BK5を購入した。購入したHubの各ポートは、接続した機器によって、全二重/半二重、100Base-TX/10Base-Tを自動切換えできないので、メディアコンバータ側をあらかじめ100Base-TXの全二重固定の設定にしてみた。

 ところが、Hubの電源を入れた後に、メディアコンバータの電源を入れると、うまく通信ができない状態になってしまった。電源を入れる順番を逆にすると、Hubの表示では、100Base-TXの通信はできているが、半二重モードになっているようであった。せっかく、全二重モードのためにHubを購入したので、なんとか全二重モードで利用すべく、いろいろ設定を変えてみた。結局、全二重固定にしていたメディアコンバータ側の設定を、自動認識にしておくことで、問題なく100Base-TXの全二重モードで利用できるようになった。

 あとは、Hubとブロードバンドルータ「NetGenesis OPT」を接続し、無事にベーシックタイプのサービスが受けられるようになった。

■現時点で最も高速なインターネットインフラの1つを使ってみて

 現状、個人向けインターネットインフラのサービスの速度は最大100Mbpsである。そのサービスの1つであるNTTのBフレッツ・ベーシックタイプを1週間ほど使ってみたが、不満のない速度が実現されている。さすがに最大100Mbpsという速度ではないが、個人向けのサービスとしては、十分過ぎるほどの速度だと思える。例えばメール受信を行なった場合でも、あたかもLAN上にメールサーバがあるような速度で、メール受信ができるのだ。ホームページ閲覧やファイル受信に関しても、申し分のない速度である。

 あくまで参考程度の数値として掲載するが、ADSL実験室( http://webclub.kcom.ne.jp/tm/ogata/adsl/index.htm )で、速度を計測したところ、比較的高速なサイトでの数値は約20Mbpsとなった。計測に利用したパソコンは、筆者がメインに利用しているもので、Pentium III 1GHzを搭載し、Windows 2000 Professionalをインストールした自作パソコンである。通信関係のチューニングを行ない、NetGenesis OPTを経由してのアクセスだ。

 気になる月々の料金に関しても、NTT東日本への支払いが合計で10,100円、現在利用しているIIJ4Uへの支払いの合計が7,800円となり、総計17,900円である。通信インフラが低価格化している現状では、決して安いとはいえないが、実効速度でフレッツ・ADSLの10~15倍の速度が安定して得られることを考えると、筆者にとってはコストパフォーマンスはすこぶる良いと判断した。

 まだまだ、Bフレッツのサービスを受けられる地域は少ないが、非常に良質なサービスのため、1日でも早く日本各地で提供されることを期待したい。

■おまけ:Windows PCのチューニング

 ご存知のとおり、Bフレッツのベージックタイプは、NTTが提供している個人向けサービスとして現時点では最速のものだ。この高速なサービスを生かすには、利用する端末も高速な通信を実現できる性能を持っている必要がある。

 例えば、CPUの動作周波数が200MHz以下のWindows 95/98マシンでは、たとえ100Base-TX対応の最新型のNICを搭載しても、100Mbpsでの通信はできないということだ。この場合、問題となる点は2つあり、1つはPCの処理速度、もう1つはWindows 95/98の仕様によるものだ。もし、CPUを1GHzクラスにすれば、より高速な通信を行なう端末にできるかもしれないが、やはりWindows 95/98を使う限りは、それほど効率のよい通信はできないのである。

 高速通信を行なうために、PCをグレードアップするというのは最後の手段にするとして、まずはWindows上で高速なインフラをより効率のよく利用するために、チューニングをするといいだろう。Windows 2000やWindows Meのユーザーであれば、元々ある程度は効率よく通信できるような設定になっているが、チューニングすればさらに効率はよくなるはずだ。今回、筆者もBフレッツのベーシックタイプに切り替えたことで、主に利用しているパソコンはいずれもWindows 2000をインストールしているが、あえてチューニングを行なった。

 ここで行なったチューニングとはTCP Receive Window(RWIN)やMax Transfer Unit(MTU)の値を調整することを指している。RWINやMTUに関しての説明は割愛するが、TARA氏のホームページ「Net Lan Do!( http://www.ne.jp/asahi/welcome/netland/index.htm )」にあるMTUやRWINに関するページ( http://www.ne.jp/asahi/welcome/netland/newpage0800.htm )などを読んで理解しておくと損はない。特にWindows 95/98ユーザーは、MTUとRWINの値を調整することで、大きな効果が得られる可能性があるだろう。

□NTT東日本「FLET'S Official Site」ホームページ
http://www.ntt-east.co.jp/flets/index.html
□NTT西日本「フレッツ・シリーズ」ホームページ
http://www.ntt-west.co.jp/flets/index.html

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[Text by 一ヶ谷兼乃]


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