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NEW PRODUCTS TESTREPORT

ソニー
VAIOノートGR PCG-GR9/K
モバイルPentium III-M 搭載のフラグシップノート
TEXT:法林岳之 Takayuki Hourin


●VAIOノートのフラグシップが完全リニューアル

快適な操作感を提供するセンタージョグ。サイズも大きく、誰でも抵抗なく扱うことができるだろう
 移り変わりの速いPC市場において、常に話題を提供し続けているソニーのVAIOノート。そのなかでも可搬性の高い505シリーズと並ぶ人気モデルが、ハイスペックなA4サイズのラインナップで、古くはPCG-7xx/8xxシリーズ、最近のインタークーラーフラップを装備したVAIOノートXRシリーズがこれに該当する。今回発売されたVAIOノートGR「PCG-GR9/K」は、これらのA4サイズノートを継承するもので、VAIOノートのフラグシップモデルとして位置付けられている。

 CPUはIntelが7月末に発表したばかりのモバイルPentium III-M 1.13GHzを搭載し、チップセットも同時発表のIntel 830MPを一早く採用している。モバイルPentium III-Mは0.13μmプロセスを採用したもので、従来のモバイルPentium IIIの2倍となる512KBの2次キャッシュや、アプリーケーションの負荷に合わせて自動的に動作クロックを切り換える拡張版SpeedStepによる省電力性の向上などの機能強化が図られており、1.13GHzは現時点でのモバイルCPUとして最高クロックの製品となる。

 メモリは128MBのPC133対応SO-DIMMを搭載し、底面の空きスロットを利用することにより、最大256MBまで拡張することが可能だ。HDDはUltra ATA/66対応の30GBを搭載し、Cドライブが9.3GB、Dドライブが18.5GBという構成でパーティションが区切られている。なお、出荷時の空き容量はCドライブが6.4GBとなっていた。


本体左側面にはDVD-ROM・CD-R/RWコンボドライブを搭載しており、多彩なメディアに対応可能となっている
 ドライブはDVD-ROM・CD-R/RWコンボドライブを本体左側面に備えているが、これは着脱式になっており、オプションで提供されるリチャージブルバッテリと交換することも可能だ。FDDはUSBポートに接続する外付けタイプのものがオプションで提供されている。

 OSはWindows 2000 Professionalがプリインストールされており、「VAIO WindowsXPアップグレードプログラム」の対象となっているため、Windows XP Professionalに安価にアップグレードすることが可能だ。なお、同社の直販サイトのSony StyleではWindows Meを搭載したオリジナルモデル「PCG-GR9」も販売されている。

 また、このクラスのVAIOノートとしては初めてマジックゲート対応メモリースティックスロットを左側面に装備している。マジックゲート対応メモリースティックで音楽ファイル管理や作成を行なうために、ほかのVAIOシリーズ同様、「OpenMG Jukebox」もインストールされている。

 液晶ディスプレイは最大1,400×1,050ドット表示が可能な14.1型SXGA+対応TFTカラー液晶を採用して、左右ともに70°、上50°、下60°という非常に広い視野角を確保している。ビデオチップはATI Technologiesの最新モバイル向けチップMOBILITY RADEON-Mを採用し、8MBのビデオメモリを搭載する。


●新デザインの採用で向上したユーザビリティ

付属のツールを使用することで、アプリケーションごとにセンタージョグの動作を設定しておくことも可能だ
 従来のVAIOノートXRではインタークーラーフラップ機構という独創的な放熱機構がデザイン上のアクセントにもなっていたが、今回は後述する放熱機構の変更により、こうしたギミックを持たないシンプルな形状に回帰している。

 XRシリーズを見慣れたユーザーにとっては少々もの足りない印象だ。しかし、ボディそのものはグンと薄くなっており、VAIOノートXRに比べると、最薄部で3.5mm、最厚部で8.3mmのスリム化を実現している。重量もウェイトセーバー装着時で2.5kgまで軽量化され、モバイルにも十分利用できるA4ノートとして仕上がっていると言えよう。

 放熱についてはインタークーラーフラップに代わり、新たに設計された「ハイパーサーマルクーリング機構」を採用している。この機構は1GHz超のCPUにも対応できることを目指したもので、熱伝導率の高い純銅製受熱板から吸収した熱を大型ヒートパイプで放熱部に伝導し、特殊形状フィンを持つファンにより、側面側に排熱するものだ。CPUそのものの低電圧化も関係しているのだろうが、ファンの静音化により、家庭内で利用しても音が気にならなくなった点は高く評価できる。


キーピッチやキーストローク、パームレストなど、余裕のあるキーボードまわり。ただしスペースキーは小さめ
 キーボードは静音性と快適なキータッチを実現するために、XRシリーズのステンレスメカキーに代わり、新たに開発されたエンハンスト・リニア・ムーブ機構を採用し、約19mmのキーピッチと約3mmのキーストロークを実現している。

 ノートPCとしては十分なスペックだが、キータッチは他機種に比べて若干柔らかい印象が残る。好みが分かれるところだが、もう少しタッチがしっかりしていてもよかったのではないだろうか。

 ポインティングデバイスは従来同様、タッチパッドを採用しているが、その手前にBACKボタン付きセンタージョグを搭載する。センタージョグはPCG-R505系のモデルでも採用されているが、本機のものはサイズが大きく、操作性もかなりよい。

 BACKボタンはジョグダイヤルランチャーのメニューを戻るときに利用できる。R505のセンタージョグでも感じられたことだが、パームレスト中央にあると格段に使用頻度も高くなるほか、本機ではインタークーラーフラップに代わるデザイン上のアクセントにもなりそうだ。


本体背面部にはモデムとEthernetポートのほか、USBやパラレル、外部ディスプレイポートなどを備えている
 インターフェイスは三つのUSBポート、2基のType2対応PCカードスロットのほか、プリンタポート、外部ディスプレイ端子、IEEE 1394端子、AV出力端子などを備える。オプションのポートリプリケータを装着すれば、PS/2端子、シリアルポート、S-VIDEO出力端子なども拡張できる。

 ポートリプリケータ装備時でもUSBポートが三つ利用できるのは、大きなメリットと言えるだろう。通信機能は標準的なV.90/K56flex対応モデムを内蔵するほか、ブロードバンドへの対応を考慮し、Ethernetポートも背面に備える。ポートリプリケータを装備したときは、ポートリプリケータ側に装備されたEthernetポートが利用可能だ。

本体背面下部には折り畳み式の足が用意されており、必要に応じて本体をチルトアップできる オプションのポートリプリケータにより、シリアルやPS/2などが使用可能となる

本体右側面にはメインバッテリパが内蔵される。また、その隣にはHDDが搭載されている。ネジ1本で取り外しが可能なため、未保証ながら交換は容易だ
 バッテリはリチウムイオンを採用し、メインバッテリは本体右側面から装着できる。バッテリ駆動時間はカタログ値で2~3時間となっているが、コンボドライブの代わりにセカンドバッテリを装着することで4~6時間まで延ばすことが可能だ。

 ちなみに、セカンドバッテリは標準装備のバッテリと同サイズのものが採用されているため、クルマのタイヤをローテーションするように、二つのバッテリを上手に使い回しながら、バッテリそのものの寿命を長くするといった使い方もできる。

 アプリケーションソフトはVAIOノートでおなじみの「Movie Shaker」、「DVgate」、「URecSight」、「MusicShaker」、「Navin'You Ver.5.1」などのソニーオリジナルソフトウェアがプリインストールされている。また、静止画や動画を編集するために、「Adobe Photoshop Element」、「Adobe Premiere 5.1LE」もインストールされている。


OpenMG Jukebox Ver.2.1J for VAIO。音楽CDを取り込み、ジュークボックスのように管理できる 地図ソフトのNavin'You Ver.5.1では、単純な地図閲覧のほか、ルート検索などを行なうことも可能

●フラグシップにふさわしい総合力の高さ

 ハイエンドモデルということで気になる性能だが、今回はHDBENCH Ver.3.30を使用して、マザーボードにASUSTeK CUSL-2、CPUにPentium III 1.0BGHz、ビデオカードにLeadtek WinFast GeForce2 MXといった構成の自作機と比較した。

 その結果は、ビデオまわりこそ差を付けられているものの、CPU性能に関しては倍増した2次キャッシュのためか大きな向上が見られ、メモリ性能も同じPC133対応SDRAMながら本機の方が良好な数値を示している。ここまでの性能があれば、最新の3Dゲームでも遊ばない限り、デスクトップ機と比較してもなんら遜色はないだろう。

自作機の構成 CPU:Pentium III 1.0BGHz、マザーボード:ASUSTeK CUSL2、メモリ:PC133 SDRAM 256MB(CL=3)、ビデオカード:Leadtek WinFast GeForce2 MX(32MB SDRAM)、HDD:IBM DTLA-307030(30GB)、OS:Windows 2000(SP2、DirectX 8.0aインストール)、画面解像度:1,024×768ドット/32bitカラー/75Hz

 9月4日時点での実売価格は約330,000円弱となっており、ノートPCとしては高価な部類に入るが、CPUをモバイルPentium III-M 1GHzに換装し、そのほかの機能をPCG-GR9/Kと同等にした「PCG-GR7/K」も8月23日に発表されている。手頃な価格で購入したいのであれば、こちらのモデルを選択するのもいいだろう。

 本機は現在のA4サイズのノートPCに求められるニーズに応えながら、VAIOノートのフラグシップモデルの名に恥じないスペックを実現した製品だ。XRのインタークーラーフラップのような強烈な個性がなく、全体的に地味になった感もあるが、性能的には十分過ぎるほどのものを持っており、ホームユーザーからビジネスユーザーまで、幅広い層にオススメできるノートPCと言えそうだ。


  • 製品名:VAIOノートGR PCG-GR9/K
  • 標準価格:オープン(Sony Style価格329,800円)
  • 問い合わせ先:ソニーマーケティング株式会社
  • TEL:03-5454-0700
  • URL:http://www.vaio.sony.co.jp/
  • CPU:モバイルPentium III-M 1.13GHz
  • チップセット:Intel 830MP
  • メモリ(最大):128MB PC133対応SDRAM(最大256MB)
  • HDD:30GB(Ultra ATA/66)
  • DVD-ROM・CD-R/RWコンボドライブ:DVD-ROM読み出し最大8倍速、CD-R書き込み最大8倍速、CD-RW書き換え最大4倍速、CD-ROM読み出し最大24倍速
  • ビデオチップ:ATI MOBILITY RADEON-M
  • ビデオメモリ:8MB
  • ディスプレイ:14.1型TFTカラー液晶
  • 最大解像度:1,400×1,050ドット/1,677万色
  • サウンドチップ:AC '97 CODEC
  • モデム:56kbps(V.90/K56flex対応)
  • キーボード:87キー
  • 拡張スロット(空き):PCMCIA Type2×2(Type3×1、CardBus対応、空き×2)、マジックゲート対応メモリースティックスロット×1(1)
  • インターフェイス:USB×3、IEEE 1394(S400、4ピン)×1、パラレル(D-Sub 25ピン)×1、ディスプレイ(D-Sub 15ピン)×1、ヘッドホン×1、マイク×1、モデム(RJ-11)×1、10BASE-T/100BASE-TX(RJ-45)×1、AV出力×1
  • 電源:リチウムイオンバッテリおよびAC電源
  • バッテリ駆動時間:約3時間
  • 本体サイズ(W×D×H):312×261.2×35.5(最薄部)~36.7(最厚部)mm
  • 重量:約2.9kg
  • OS:Windows 2000 Professional
  • 付属ソフト:DVgate Ver.2.3、Premiere 5.1 LE 日本語版、OpenMG Jukebox Ver.2.1J for VAIOなど

    ■写真撮影
    若林直樹(STUDIO海童)

    □ソニーのホームページ
    http://www.sony.co.jp/
    □製品情報
    http://www.sony.co.jp/sd/products/Consumer/PCOM/PCG-GR9K/
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