大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

第12回:Gateway日本撤退のもう一つの理由


●ソリューション展開の差が大きな原因

閉鎖当日の秋葉原ゲートウェイカントリー店頭
 8月29日に発表されたGatewayの日本撤退は、各方面に波紋を呼んだが、その撤退理由については、日本法人側でも、発表されたニュースリリース以上のことは明確にはしていない。いや、むしろそれ以上のことは知らされていないといった方がいいようだ。そのため、同社関係者の間からも「米本社の真意が計りにくい」という声があがっている。

 もちろん、ここにきて世界的な業績が悪化しているという事実もある。

 最新四半期となる2001年4~6月の数字を見ても、日本をはじとめするアジア・パシフィック地域では、前年同期比36%減、同時に撤退を決定している欧州地域に関しては46%減と、いずれも大幅な落ち込みを見せている。

 だが、これは米国本社でも同様に前年実績を落としており、海外拠点だけが悪いというわけではない。そして、海外の全拠点を閉鎖する必要にまで迫られていたのかどうかも疑問だ。

 唯一、日本ゲートウェイが、撤退理由としてあげているのがリリースで明らかにしている以下の点だ。

 「Gateway本社では、各市場ごとにGatewayのソリューション戦略を展開できる能力があるかどうかの評価をすすめてきました。しかし、現在の日本法人が有する資源では、この戦略を成功裡に推進し、日本市場において上位に立つとともに、利益を拡大していくことは困難である、と判断するに至りました」

 実は、米国Gatewayの企業体質と、撤退を決定した海外拠点との体質の差は、ここで触れられているソリューション展開の差であったといえよう。

 米Gatewayの収益構造は、最新四半期の決算でも明らかなように、売上高の17%が、トレーニング、周辺装置、インターネットアクセスビジネスなどのソリューション分野からのもの。収益に至っては42%を占める。しかも、これはやや数字を落とした実績。昨年末のクリスマス商戦を含む第4四半期(10~12月)の実績では、売上高の24%、収益では100%と、パソコン本体の利益がゼロでも、ここで収益をあげるという体質を作っていたのだ。

 Gatewayでは、これを「Beyond-the-box」という言葉で表わし、箱(=パソコン)売りからの脱皮を狙ったビジネスモデルと位置づけていた。パソコン本体とともに、ソフト、周辺機器、さらにはトレーニング、インターネットアクセスといったサービスまでセットにして提供するという仕組みだ。

 つまり、日本での撤退理由も、この「Beyond-the-box」が、今後、実現できる体制にあるかどうかを探っていたというわけだ。

 だが、日本法人の現状は、「極論すれば、この分野はゼロに近い数値だった」(同社関係者)という。

 確かに、日本でのGatewayの印象は、ソリューションベンダーというよりも、最新技術を搭載したパソコンを低価格で販売するBTO型直販メーカーである。米国におけるソリューションベンダーとしての印象とは大きく異なる。

●箱売りから脱却できなかった日本法人

 日本ゲートウェイの前社長であったエドワード・ナイハイゼル氏は、社長就任直後から、米本社が標榜していた「Beyond-the-box」を日本法人でも定着させるべく、直営店ゲートウェイカントリーでの教室運営や、カルチャースクールを運営する企業との提携などを模索していたが、結果として、これが成果に結びつかずに、わずか1年で退任するという結果に至った。現社長のカート・ジェイデン氏に至っては、まだ何も手をつけいないという段階での撤退決定になったといえるだろう。

 直販メーカーといえども、パソコン本体の効率的な製造、流通構造だけでは経営が成り立たなくなってきた。

 この分野で先行するデルコンピュータは、いまや企業向け販売が、出荷数量全体の9割以上を占め、DTCと呼ばれる専任のコンサルティングチームが、企業の導入前のコンサルティングからシステム構築、運用までをサポートする体制を整えている。そして、これが収益の源泉になっている。

 Gatewayは、いかに、デルモデルに近づくことができるかが鍵だったというわけだが、残念ながら日本では、それができないと判断、これが撤退の判断材料になった。

 個人向けのパソコン販売不振だけが撤退の理由ではなかったのだ。


□関連記事
【8月24日】米Gateway、再建策を発表、日本撤退へ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010829/gw2k.htm

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(2001年9月3日)

[Reported by 大河原 克行]


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