IDF Fall 2001レポート

USB 2.0コントローラ内蔵チップセットやモバイルPentium 4 2GHzなどを公開

 Intel Developer Forum Conference Fall 2001も3日目を迎えた。本日は、デスクトッププラットフォームグループジェネラルマネージャのルイス・バーンズ副社長、モバイルプラットフォームグループジェネラルマネージャのフランク・スピンドラー副社長、ワイヤレスコミュニケーションズ・コンピュテーショングループジェネラルマネージャのロン・スミス上級副社長による基調講演が行なわれた。

 この中でルイス・バーンズ氏は、3GIOやUSB 2.0に関する説明を行ない、フランク・スピンドラー氏はモバイルPentium 4 2GHzを、ロン・スミス氏はXScaleのファーストシリコンを利用したシステムを公開した。


●CPU能力の向上にあわせプラットフォーム側の進化も必要

Intel デスクトッププラットフォームグループ ジェネラルマネージャ兼副社長のルイス・バーンズ氏

 3人のうち、最初にステージに登場したのはデスクトップ製品を担当するルイス・バーンズ氏で、「CPUの処理能力の向上にあわせて、周辺部分であるプラットフォーム側の進化が必要」と述べ、Intelが先頭に立ちPC業界と協力しながら、プラットフォームの進化を促していく必要があると述べた。その具体的な取り組みとして

 の3つを挙げた。3GIOは既に後藤氏の記事「次世代のシリアルI/O規格「PCI 3GIO」の姿が明らかに」( http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010829/kaigai01.htm )で詳しく解説されているが、PCIバスに代わり今後10年間のPCの内部バスとして採用されるであろうバスで、春のIDF Spring2001でバーンズ氏が「秋のIDFで詳細を発表する」と告知して以来、どのようなバスになるのか注目が集まっていた。

 バーンズ氏は3GIOに関するビデオを上演し、その特徴を説明した。

 と説明し、クロックは最高で10GHzまでスケーラブルに上げていくことが可能であり、将来性に優れた仕様であると説明した。バーンズ氏はこの3GIOの利用用途について、「デスクトップはもちろんのこと、モバイル、サーバー、そしてネットワーク機器などのチップ間接続がターゲットになるだろう」と述べた。3GIOはチップ間接続に利用されるため、サーバーとサーバーを接続するInfiniBand、ネットワーク間を接続するEthernetなどと共存していくという。

3GIOの状況を説明するスライド 3GIOに賛同している企業のリスト 3GIOがカバーするのはチップ間の接続

USB 2.0コントローラを統合したチップセットを搭載したサンプルマザーボード。Intelは2002半ばのICH4でUSB 2.0コントローラをサウスブリッジに統合する
 また、USB 2.0についても触れ、2002年にUSB 2.0コントローラをサウスブリッジに統合したチップセットを出荷すると述べ、実際にUSB 2.0コントローラを統合したチップセット搭載のマザーボードを公開した。これは、モバイルPentium 4のデモにも利用されていたリファレンスマザーボードで、チップセットはノースブリッジにIntel 845、サウスブリッジにICH3-Mを採用したものだと推測される。

 情報筋によれば、Intelは2002年の半ばにTulloch、Brookdale-Gという2つのチップセットを計画しているという。この2つのチップセットのサウスブリッジはICH4というチップだ。

 実はこのICH4というチップは、ICH3-Mとピン数が同じ421ピンになっている。ICH3(とICH4)のピン数がICH2の360ピンに比べて増えているのは、USBのコントローラ/ポート数をICH2の2コントローラ/4ポートから3コントローラ/6ポートに増やしUSB 2.0に対応したためと、パワーマネージメント関連の信号線が増えているためだ。

 しかし、ICH3-MではUSB 2.0に対応させることを早々に諦めたため(おそらく互換性検証に膨大な時間がかかるためと思われる)、結局USB 1.1対応のコントローラの機能のみを有効にして出荷された。つまり、ICH3-MにもUSB 2.0のコントローラは内蔵されているのだ。

 今回バーンズ氏が公開したのはこのICH3-M相当のサウスを搭載したチップだと思われる。Intel社内ではこのボードを利用した互換性の検証が進んでいるということだろう。

 なお、情報筋が伝えるところによればTulloch(2チャネルまたは1チャネルのDirect RDRAMインターフェイスを搭載したチップセット)、Brookdale-G(Intel 845のDDR版に、Intel 830M相当のグラフィックスコアを統合したチップセット)は2002年の第3四半期での出荷が予定されており、今年の末までにはサンプルの出荷が開始される予定だ。

シリアルATAのケーブルの使い勝手を強調するバーンズ氏
 また、バーンズ氏はシリアルATAについて触れ、「これまでのパラレルATAでは扱いにくいケーブルを利用する必要があった。しかし、シリアルATAでは扱いやすいケーブルになり、より使い勝手が向上し、しかもデータ転送速度も向上する」と述べ、シリアルATAへの対応が、ユーザーの使い勝手やディスクサブシステムのパフォーマンスの向上につながると強調した。

 さらに、「今日、シリアルATAのスペックがフィックスしたことを発表するのを嬉しく思う」と述べ、シリアルATA Specification 1.0が公開されたことを明らかにした。


●モバイルPentium 4 2GHzをデモンストレーション

モバイルプラットフォームグループ ジェネラルマネージャ兼副社長のフランク・スピンドラー氏
 モバイルを担当するフランク・スピンドラー副社長は、Intelのモバイル戦略について触れ、「'80年代は持ち運べることに意味があった。これに対して'90年代にはバッテリ持続時間が問題になり、'90年代後半には接続性が問題になった。21世紀に入った今はワイヤレスの技術にどれだけ対応しているかが1つの課題となっている」と述べた。

 さらに「既に市場には802.11bによる無線LAN、Bluetoothがあり、2002年以降には3Gの高帯域の携帯電話が登場するなど無線技術が利用可能になっている。モバイルPCでもこれらを利用可能にすることが重要だ」と付け加えて、今後モバイルPCの向かうべき方向はワイヤレスであると述べた。

 そして壇上にあったIBMのThinkPadシリーズに接続されていたケーブル類を1つ1つ取り外していき「ワイヤレスにすることで、このようにケーブルレスで利用することができるようになる」と、ワイヤレス化がPCの使い勝手を改善すると述べた。

 ワイヤレスへの対応により、「モバイルPCにはより高いパフォーマンス、バッテリ持続時間、そして優れたフォームファクタが必要になる」と述べ、そうした条件を実現する要素の1つとして、同社が来年の前半に公式発表するとしているモバイルPentium 4についての説明を行なった。

 モバイルPentium 4は、昨日の「モバイルNorthwoodやXeon MPの実物を公開 」( http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010829/idf04.htm )でも解説したようにPentium 4のモバイル版で、NetBurstマイクロアーキテクチャに基づくCPUとしては初めてのモバイル向け製品となる。

 スピンドラー氏は「モバイルPentium 4プロセッサは2002年の前半にメインストリーム市場に向けて出荷される」と説明し、実際に顧客向けのリファレンスシステム(デスクトップPCと同じようなマザーボードを利用している)を2GHzで動作させて見せた。

21世紀にはワイヤレスの接続性が争点となっていると述べる モバイルPentium 4 2GHzをデモ。ただし、このシステムはリファレンスマザーボードで、CPUクーラーなどはデスクトップPC用のものが利用されていた

 また、バッテリ持続時間、すぐれたフォームファクタという意味では、モバイルPentium IIIの低電圧版、超低電圧版について触れ、これらにより長時間のバッテリ駆動や小型のノートパソコンが製造可能であるとした。

 さらに「2003年にはBaniasが投入される。BaniasにはMicro Ops Fusion、Special Sizing Techniques、Aggressive Clock Gatingという3つの技術が採用されており、これらにより、さらにバッテリ駆動時間を延ばせたり、より小型のフォームファクタのマシンを製造できるようになる」と述べた。

 また、バッテリ持続時間を延ばすには、CPUだけでは難しいという従来の見解を繰り返し、「今後ディスプレイサブシステム、ハードディスクなど各コンポーネントを製造するメーカーに働きかけ、積極的に各コンポーネントの消費電力を下げていきたい」と述べ、今後も業界への働きかけを続けていくという姿勢を強調した。


●XScaleのファーストシリコンをデモ

ワイヤレスコミュニケーションズ・コンピュテーショングループ ジェネラルマネージャ兼上級副社長のロン・スミス氏。手に持っているのはStrongARMを採用したNTTドコモの携帯電話
 最後に壇上に登ったのはXScale担当のロン・スミス氏で、「Accelerating the Wirless World」と銘打った講演を行なった。

 その中でスミス氏は、「NTTドコモのiモードは確かにWAPに比べて明らかに成功している。しかし、iモード対応サイトは、インターネットにある無数のWebサイトに比べればわずかでしかない。今後こうしたジャンルで成功を収めるには、そうした一般的なインターネットサイトに接続できるような努力が必要だ」と述べ、一般的なインターネットサイトへ接続できる技術を採用したワイヤレス機器こそ、市場で勝者になるという見解を明らかにした。

 そこで、スミス氏はIntelのPCA(Personal Client Architecture)に基づいたPDAや携帯電話などを取り出し、それを利用して一般的なWebサイトへのアクセスを行なって見せ、マクロメディアのFlashに対応したサイトなどでもちゃんとPCと同じ表示ができるという点を強調した。

 「Intelは今日、PCA開発者向けにDeveloper Networkを開設した。そこに参加してもらえれば、PCAに対応したアプリケーションなどの制作が容易になる」と述べ、今後こうした開発者向けサイト( http://www.intel.com/pca/developernetwork/index.htm )などを含めPCA開発者を手厚くサポートしていくという姿勢を明らかにした。

XScaleのファーストシリコンを利用したデモ。StrongARMに比べて動画をなめらかに再生していた

 最後にスミス氏はPCAの最も重要な部分であるCPUについて触れ、「今日ここに持ってきたのは、XScaleのファーストシリコンだ。従来のStrongARMに比べて大幅にパフォーマンスアップしている」と述べ、StrongARMよりもなめらかに動画再生できるようすをデモした。

□Intel Developer Forum Conference Fall 2001ホームページ
http://www.intel94.com/idf/index2.asp

(2001年8月31日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


【PC Watchホームページ】


ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp

Copyright (c) 2001 impress corporation All rights reserved.