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●IDFで公開された将来のPCのブロック図
今回のIDFで、ハッキリしたことの1つは、PCインターフェイスのシリアル化にIntelが並々ならぬ意欲を持っている、ということである。前回のIDFで予告を行ない、今回紹介を行なった3GIOはもちろんシリアルインターフェイスだ。3GIOは、現在のPCIに代わる、次世代の汎用外部I/Oインターフェイスであり、チップ間の接続、あるいは拡張スロットのインターフェイスやノートPC等のドッキングにも使われる予定だ。
図1 |
現在、グラフィックスはAGP、拡張スロットはPCI、North-South接続はHub-Link(Intelの場合)とバラバラだが、3GIOの登場時には、1つに統合される可能性を示唆している。これはPCIの登場時にきわめて近い。
3GIO以外の部分に目を向けても、ハードディスクの接続にはSerial ATAが、おそらくキーボードやマウスの接続用にUSB 2.0が用意されており、インターフェイスのシリアル化がかなり進んでいる。むしろ、CPUやメモリのインターフェイスがシリアルでないことが不自然に感じられるほどだ。というより、これらのシリアル化をIntelが考えていないなど、筆者には到底信じられない。
たとえばメモリインターフェイスだが、しばらく前に、Intelが主要なメモリメーカーの首脳を招待し、次世代のメモリ技術(AMT: Advanced Memory Technology)を共同で開発する、という話があった。しかし、その話が出た後、これについて全く話が聞こえてこない。
筆者はその理由は、Intelとメモリメーカー間、あるいはメモリメーカー間に、大きな溝があり、それが一向に埋まらないからではないか、と勝手に思っている。それだけ大きな溝として、おそらくIntelがメモリインターフェイスのシリアル化を主張しているのに対し、これに同意しないメモリメーカーが少なからず存在するのではないか、というのが筆者の想像だ(AMTの最初の会合にRambusが呼ばれなかった、という話もあったが、もしIntelがシリアルインターフェイスを念頭に置いているのなら、これも納得がいく)。
CPUのFSBについては、Intelは基本的にオープンにはしない。求められ、条件的に合意した場合にのみライセンスする。したがって、次世代のFSBの情報が公開されるのは、次世代のCPUアーキテクチャが固まってからになる。NetBurstアーキテクチャの展開が始まった現時点で、次がどうなるかなど、知る由もない。
が、NetBurstアーキテクチャが維持される限り、FSBだけに大幅な変更が加えられるとは思いにくい。さすがにFSBが大きく変わったら、それは異なるCPUアーキテクチャに扱われるだろうし、NetBurstアーキテクチャの動作クロックが10GHzまでスケールする、と言われていることを考えると、FSBが現行のパラレルインターフェイスでなくなるのは、少なくともかなり先だと考えられる。ただ、次がシリアルインターフェイスになると言われても、筆者は驚きはしないと思う。
●一気にSerial ATAに行きたいIntelと、まだパラレルを使いたいデバイスメーカー
Serial ATAのコネクタ。ホットプラグを意識して電源(右)、信号(中央)ともに、アース端子が長くなっている。左に見えるのはテストピンで、ジャンパスイッチではない |
先日、MaxtorがUltraATA/133を発表した時、発表文の支持者の名前の中にIntelの名前が見当たらなかったが、さすがに痺れを切らした、というところなのだろう。IDFの展示会場で、Serial ATAの担当者にUltraATA/133の発表で、Intelのロードマップに変更があるのか尋ねてみたが、変更はない、という返事だった。
つまり、IntelはUltraATA/100から直接Serial ATAへの移行を望んでおり、UltraATA/133を挟むことを望んでいない、ということだ(MaxtorもSerial ATAを否定しているのではなく、間にもう1回、高速化されたパラレルインターフェイスを挟みたいのだと思う)。Serial ATAの最初の製品がリリースされるのは2002年になりそうだが、ホストコントローラやコネクタといった部品は、年内にも製品出荷が始まるということである。
となるとIntelのチップセット(ICH)への統合が気になるところだが、残念ながら具体的なスケジュールはわからない。ただ、以前は同一ICH内にSerial ATAとパラレルATAが混在すること(1つのICHがパラレルとシリアルの両方をサポートすること)を否定していたのが、今回移行措置について尋ねたところ、最初のチップセットは両方をサポートすることになるだろう、というように答えが変わってきた。
回答が現実的になるということは、実用化の近さを物語っているようにも思う。最初はパラレルインターフェイスが使われ、まずハードディスクがシリアルに移行し、最後にCD-ROMやDVD-ROMもシリアルに移行する、というのが今のシナリオのようだ(パラレルインターフェイスを放棄するのは半導体製造プロセスによる必然であり、移行する際は一気に切り替える、というのが以前の回答だった)。展示会場には、信号用、電源用ともに、正式な(製品に使われるのと同じ)コネクタを用いたモックアップが飾られていた。
●シリアル化を認めているHDD業界と、拒否しているメモリ業界
さて、こうしたIntelによるインターフェイスシリアル化の意向と、必ずしもそれに賛同しない業界の意向を、筆者の独断と偏見でまとめたのが図2だ。グラフィックスの項でカッコ内にSerial AGPと書いてあるのは、3GIOイニシアチブの一部という形でSerial AGPの規格化が進んでいることを指す。Serial AGPの前に、AGP 8Xもあるのだが、図では割愛している。ただ、業界の意向として、AGP 8XからSerial AGPへの切り替えがスムーズにいくとは限らない可能性もある。
図2:インターフェイスシリアル化の意向 |
PCI-Xが点線になっているのは、一時期PCI-SIGのメンバの(少なくとも)一部が、デスクトップPCに対してもPCI-Xの採用を呼びかけていたことを指す。今回、3GIOが次のPCI 3.0に含まれる(今後、標準化作業もPCI-SIGの枠組みの中で行なわれる)ようになったことを受け、PCI-Xをデスクトップに、という動きは沈静化するだろう。かといって、PCI-Xが全く使われないということではなく、おそらくEISAのような役割、次世代の高速インターフェイスが登場するまでの「つなぎ」の役割を、サーバ/ワークステーションを中心に担うものと考えられる。
改めて図2を見ると、Intelの項が真っ赤(みなシリアル)であることに気づいてもらえるハズだ。これに対して業界は、必ずしも赤く染まっているわけではない。ある意味、DDR/DDR IIとUltraATA/133の立場は同じだという気がしているが、異なるのはハードディスク業界がSerial ATAへの移行を基本的には認めており、問題はそれがいつか、ということであるのに対し、メモリ業界(の少なくとも一部)はシリアル化へのステップであるRambusを拒否しているだけでなく、メモリインターフェイスをシリアル化することにも同意していない、と考えられることだ。
インターフェイスをシリアル化することのメリットは、スキューの問題が生じないなどの理由で、ある時点からパラレルインターフェイスより高速化が容易になることだ(ある時点で帯域あたりのコストが逆転する、とも言える。もちろん、逆転するのがいつか、ということにコンセンサスがないから、Intelとメモリメーカーの間に合意が得られないわけだし、部品メーカーにとってはシステム全体のコストより、自分たちが負担するコストの方が重要なわけである)。加えて、光インターフェイスへの移行も、シリアル化しておくと楽だ。
逆にデメリットは、パラレルからシリアルへといったドラスティックなインターフェイスの変更は、開発費を含めてリスクが高い、ということだ。ハードディスクにせよ、メモリにせよ、市況が厳しく、高額な開発費を負担できる状況にない。また、ここでIntelの言いなりになって、シリアル化を行なうと、さらに5年後、今度は光インターフェイス化を強要される、という恐怖があるのかもしれない。ハードディスク、メモリ共に現在は需要の多くをPCが占めているにもかかわらず、いずれの業界も今後はPC以外の需要が増大する、と力説するのもIntelの影響力を軽減したいからだと見ることも可能だ。いずれにしても、インターフェイスのシリアル化(およびその前段階としてのバスの狭幅化)を急ぐIntelと、パラレルインターフェイスを延命させたい業界の間で綱引きが繰り広げられることになるだろう。
(2001年8月31日)
[Text by 元麻布春男]