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次世代I/O「シリアルPCI」構想をPCI SIGが発表--Intelの3GIOとの関係は?


●4GB/sec以上の帯域を狙う高速なSerial PCI

 PCIはシリアルへ向かう。7月24日から米サンノゼで開催されたPlatform Conferenceで、PCIの規格策定団体PCI SIGが、次世代PCI規格として「Serial PCI」の構想を明らかにした。これで、次世代I/Oがいずれもシリアルあるいは狭幅インターフェイスへと向かうことは明確になった。

 Serial PCIは、ポストPCI-Xの構想として明らかにされた。基本的にPCやサーバーの内部のバスとして使う。帯域は明確にされていないが、次々世代PCI-XであるPCI-X QDR(Quad Data Rate)が4GB/sec以上の帯域までスケーラブルにアップできるとされている。つまり、最大で4GB/sec以上を達成できるということだ。主な特徴は以下の通り。

・PCI-Xプロトコルのサポート
・PCI-X QDR以上までスケーラブルな帯域
・新カードフォームファクタ
・ビデオ・音声ストリーミングのためのQoS(Quality of service)
・よりユーザーフレンドリなメカニカルフォームファクタ
・オンボード以外にケーブルやワイヤレスのサポート
・パワーマネージメントの向上
・プログラミングモードの拡張
・PCI規格とのフルソフトウェア互換性
・PCI規格とのフルハードウェア互換性
・PCI周辺機器のサポート
・プロトコルの簡素化
・フォールトトレラントの向上(ECC、CRC)

 シリアル化によりケーブル接続やワイヤレスが可能になるところが注目される。また、PCI規格との互換性は非常に重視されている。Platform Conferenceでは、既存のPCI-Xと共存するヒエラルキーも示された。それによると、Serial PCIのスイッチにPCI-XのためのリンクやHUBを接続することで、PCI-Xバスもシームレスに接続できるようにする。


●PCI-Xの拡張規格2.0は今年第4四半期に発表

 このほか、PCI-SIGは第2世代のPCI-X規格「PCI-X 2.0」の構想も明らかにした。この規格は、Compaqがチェアマンを努める「PCI-X 2.0 Workgroup」で策定中で、今年中に明らかにされるという。

 PCI-X 2.0の特徴は、バス型ではなくポイントツーポイント型のインターコネクトになる点。これはもちろん高速化のためだ。PCI-X 2.0のフォーカスは帯域の拡大に置かれており、PCI-XをDDR (Double Data Rate)にすることで2GB/sec(266MT/sec)の転送を可能にする「PCI-X DDR」と、QDR(Quad Data Rate)化で4GB/sec(533MT/sec)になるPCI-X QDRの2規格を策定しているという。また、ECCのサポートも加えるという。PCI-X 2.0の使われ方としては、ホストの下にPCI-X DDR/QDRのブリッジが来て、その下に従来のPCI-XのブリッジやPCI-X DDR/QDRなどが来るトポロジで、下位のPCIも束ねるような使い方が想定されている。PCI-X 2.0でポイントツーポイントになることを考えると、唐突な印象のあるSerial PCIも自然な流れと感じられる。

 また、時期的にもSerial PCIの話を持ち出すのは、妥当な時なのかもしれない。というのは、来月の「Intel Developer Forum(IDF)」で、Intelが次世代インターコネクト技術「3GIO(third-generation I/O)」の概要を発表するからだ。それに対抗して、AMDを中心とするHyperTransport陣営も、Platform ConferenceでHyperTransportのコンソーシアムを発表するなどここへ来て次世代バスを巡る戦争が激しくなり始めた。いずれも、ポストPCIを狙う規格だけに、PCI SIGも方向性を示す必要があったのだろう。

 だが、状況はそう単純でもなさそうだ。というのは、Intelの3GIOとSerial PCIの関係が明瞭でないからだ。Intelが3GIOでポストPCIを狙う以上、Serial PCIとの関係を調整しなければならないのは確かだ。もしかすると、3GIOとSerial PCIが合流することもありうるかもしれない。それは、サーバー用I/O規格「InfiniBand」という前例があるからだ。

 InfiniBandは、Intelが主導していた「NGIO」と、CompaqやIBM、Hewlett Packard(HP)が標準化していた「Future I/O」が統合されて誕生した。NGIO陣営とFuture I/O陣営は標準化で対立していたが、結局は妥協して業界団結でInfiniBandへと向かった。そして、その時のFuture I/O陣営というのは、PCI-SIGでPCI-Xを提案し、PCI規格の進化を提唱したメンツだったのだ。こうしたInfiniBandの過程を振り返ると、PCI-Xの先に位置するSerial PCIと3GIOがこのまま併走するとはあまり思えない。8月末のIDFが注目される。

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【7月25日】AMDなど、HyperTransport技術の普及に向けコンソーシアム設立
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010725/hyper.htm


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(2001年7月27日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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